毛利探偵事務所所員 海堂純による事件記録   作:ホームズの弟子見習い

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これ投稿するのおよそ二年ぶりだよもう…。

まあ見切り発車だし、不定期更新だし…(言い訳)


海堂純が黒の組織の一端に触れるまで ~前編~

 

 

 つくづく厄介な事になってきやがったよなぁ。受けた依頼が本当の意味で解決できていないとは。

 自分の部屋でボーっとしてると、考えるのも億劫になっていく。

 

「ほら、純。気持ちはわかるけど、ボーっとしてたら何もできなくなるよ?」

「ん…おお」

 

 桜子が語りかけてくるが、俺は上の空で対応してしまう。いかん、わかってはいるのだがどうしても気分が重くなってしまう。

 今、俺は自分が住んでるシェアハウスにいる。あの後、警視庁に所長と入庁して目暮警部から事件の事情を聞いた帰りのことだ。

 アパートの自室の天井からロープで吊られた広田健三は間違いなく他殺であるという事。ロープで絞められたように偽装工作が施されていたが、首の絞め跡として大柄な男性の手形が残されていたという事。そしてその現場からは雅美さんの眼鏡が発見されたこと。彼女が生きているという希望は望み薄だった。

 が、事務所に戻る途中にコナンが雅美さんの腕時計に発信機を付けていたことを思い出して行方を追ったはいいが、途中で電池切れになったのだ。

 俺も勝手に別れて行ったコナンの後を追って、二人で雅美さんの行方を追っていたのだが、パチンコ屋に着いたところで電池切れを起こしてしまったのである。

 俺が粗方探し回っても見つからなかったところを見ると、既に雅美さんは出ているかと判断した。が、外で俺を待っていたコナンによると雅美さんは出てきていないらしい。

 何という事だ。俺達は今まで何を追っていたのだろうか。まさか幽霊が発信機を付けていたというのか!?

 まあそんな冗談は置いといて、ここに雅美さんがいないという事は確かだ。一旦ここは追跡メガネのバッテリーを充電してもらおうという事で、博士に預けてコナンはそのまま待つことにした。

 まあ俺は待っている間、桜子のお茶を飲みたくなったんでこうして自分ん家で飲ませてもらっているわけだが。

 しかし…探している途中にぶつかったガラの悪い大男は凄い迫力だったな。

 なんてことを想っていると、桜子が口を開いた。

 

「その依頼人さん、見つかるといいね…」

「偶然にも発信機が彼女の腕時計についちまったって話だからな。今は探索機の機能復旧待ちだ」

「え? 純がつけたんじゃないの?」

 

 あ、そうか。付けたのは新一―――コナンだもんな。小学一年生のガキがそういうのを付けたって知られたら少しは疑問に思われちまう。

 

「巡り巡って…って感じで依頼人についちまってさ。途中まで追いかけていたんだけど、見失っちまった」

「…深く突っ込むと探偵の守秘義務に関わるかもしれないけど、もうちょっとマシな嘘ついたら?」

 

 呆れた視線が刺さってくる。許せ桜子、これで最後だ(大嘘)。

 

「でも、それだけじゃなさそう」

「え?」

「行方知れずの依頼人とは別に、心にしこりを残したような感じだよ?」

 

 言い当てられて、俺は思わず言葉に詰まる。ホント、いつからかこいつは俺限定で鋭くなりやがって…こんなんじゃ浮気も出来やしないな。

 

「まあな…どうにもあの依頼人には、既視感を感じて」

「既視感? 会ったことあるの?」

「いや、初対面のハズ…なんだけどイマイチ自信が無い」

 

 こればっかりはしょうがない。人間の記憶というのは曖昧なものだ。どうでもいいことを覚えていたり、大事なものはコロッと忘れていたり。ましてやあれが幾度目の対面かどうかなどわからないのだから、どうしようもない。

 

「昔の純は他人に対して距離を取ってたから…そうなると、親の繋がりとか?」

 

 親の繋がり…ねぇ。確かに話し相手はいても、同年代で親しい奴なんて桜子しかいなかったしな。一応一歳上に桜子と混じって一緒に遊んだ子ならいるけど…それではないと断言できる。だって桜子が言ってたように親繋がりじゃないもん。特に一緒に遊んでいた子の内二人は今でも仕事上の交流があるからな。

 

「確かお袋が薬学の研究者で、親父が医者だった筈だから…」

 

 多分それ関係だろうけど…駄目だ、全くと言っていい程思い浮かばない。

 そんな時、家の電話が鳴った。俺が受話器を取ると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「もしもし、純君か。追跡メガネの充電が終わったから来てほしいんじゃ」

「ああ、了解。コナンもそっちにいるのか?」

「おお、おるぞ。また一人で突っ走ろうとして大変じゃわい」

 

 またかアイツ。お前自分が何で今その体なのか百回は思い返してほしい。だから蘭から大バカ推理之介とか言われるんだぞ。

 

「悪いな桜子。話に付き合ってもらって」

「フフ、なんかこの前も同じこと言われたような気がするよ。そういう時は「ありがとう」って言ってくれればいいのに」

 

 確かに、違いない。でもきっと、コイツだからこそこうやって笑い合えるんだろう。あの時から、俺が帰る場所には桜子がいるようになったんだから。

 

 ―――そういう所、零くんにそっくりだなぁ。

 

 ふと、誰かの懐かしむような声が聞こえた気がした。古い記憶に微かに残っているそれは、今思い出すにはまだ時間がかかるものだった。

 

 

 

 

 

「おっせーぞ純にい!」

 

 阿笠博士の家に行くと、コナンが待ち構えていた。大方、雅美さんの行方が判っているのに動かせない今の状況がもどかしいのだろう。

 

「落ち着けよ新一…博士、追跡メガネの方は?」

「バッテリーの持続時間と機能のアップデートを行っておいた。まだ君は以前のバージョンを試してないじゃろうから、ピンと来ないかもしれん。じゃが、前の時はせいぜい五十メートルまでしか見れなかったのに対し、今回のアップデートでその十倍は見れるようになった。実際に使う機会があればよいのじゃが…」

 

 博士はそう言うが、むしろありがたいもんだ。うまくいけば、追跡機能と並行して使えるかもしれない。とはいえ、同時に扱うなんて一般には出来ない。どちらかの目に集中して交互に見なきゃならないだろうな。

 

「ああ、言っておくが…追跡機能と望遠機能を同時に使おうとすると、バッテリーの消耗が早くなって使い物にならなくなるかもしれんから、そこは気を付けるんじゃぞ?」

 

 む、そうだったのか…。博士の注意が無ければ絶対に使ってたな。そうなると、コナンが追跡役で俺が望遠役を担うことになりそうだな…。今のところは、だけど。

 

「さて、一度探偵事務所に戻って所長に知らせるとすっか」

「…やっぱ知らせんのか」

 

 どこか不服そうなコナンだが、さては所長を戦力外とみなしていらっしゃるなこいつ。

 

「この件に関しては正直、依頼達成したとは言い切れないからな。俺も所長も折角いろいろ歩き回って解決に奔走してようやっと親子再会…かと思ったら親父さんは殺されて娘の雅美さんも行方不明。俺達探偵は、最後の最後まで解決する瞬間を見届ける義務があるのさ」

 

 俺がそこまでつらつらと言葉を並べると、コナンは降参だと言わんばかりに両手を挙げた。

 

「…やっぱり敵わねえな、純にいには」

「ハッ、お前の推理力には負けるよ」

「俺は探偵としての心構えのことを言ってるんだけどな」

 

 言い返すコナンに、俺もまだまだ先輩として捨てたもんじゃないなと思う。

 博士に礼を言い、俺とコナンは探偵事務所に戻ることにした。

 

 

 

 

 探偵事務所に戻った俺達に待っているのは、所長の雷…かと思いきやそうではなかった。事務所のドアを開いたら、そこには蘭と所長…それともう一人、サングラスをかけたどこか気弱そうな大男だった。

 

「あ、コナン君に純にい! どこ行ってたのよ!?」

「ご、ごめんなさい…」

「実は知り合いが、雅美さんに似た人を見かけたっていうから、コナンと一緒に探してたんだ」

 

 多分この言い訳、すぐにバレそうだよなぁ…なんて思っていたら蘭がまだジト目で此方を睨み付けてくる。

 

「じゃあ何でコナン君を連れて来てるわけ?」

 

 おお、そう来たか。まあ元々、コナンが発信機を雅美さんの腕時計に付けてしまったのが始まりなわけだから…。

 

「知り合いと言っても、コナン側の方でな。前に依頼の件をコナンが話したからそれでお人よしの知り合いがこっちに情報をくれたって訳よ」

「それならいいんだけど…」

「それで蘭姉ちゃん、このおじさんは誰なの?」

 

 話に一区切りをつけたと思ったコナンが、俺達の疑問を口にする。

 

「この人も探偵なんだとよ」

「探偵? 何でここに?」

「そうだな…純も知っておいた方がいいだろうしな。コイツにも詳細を話してやってくれ」

 

 所長が向かい合って座っている男に説明を促し、男も「は、はい」と頷いた。

 サングラスの男も俺達と同じく、探偵だった。名前は“(おお)(たに)(けい)()”というらしい。そんな彼だが、彼もまた、俺達と同じく人探しの依頼を受けていたという。探し人は広田健三で、広田明という人物から依頼を承ったようだ。

 

「あれ? でもこっちは広田雅美さんからたった一人の身寄りである父親の健三さんを探してほしいっていう依頼だったんじゃ…」

「問題はそこだ」

 

 俺が口にした疑問に、所長も頷いた。

 どうやら大谷氏が受けた依頼内容は、広田健三の捜索であることに変わりはないのだが、俺達の依頼と食い違う部分があったのだ。

 依頼人曰く、「九州を出て東京に行ったたった一人の身内である兄を探してほしい」とのことだ。

 

「え…雅美さんは山形から出てきたんだろ? 何、ドッペルゲンガー?」

「純兄ちゃん、何ふざけた事言ってんの…?」

 

 呆れたコナンの視線が突き刺さる。イタイイタイ。クソつまんないジョーク流した自覚はあるからその視線止めて。

 

「それと、気になることがもう一つありまして」

「え?」

 

 俺が反応を示すと、大谷探偵は答える。広田さんが勤めていたタクシー会社の社員が言うには、いつ頃からかは定かではないが、毎日夕方になると客を乗せずに同じコースを猛スピードで走り回っていたという。所長はただのストレス解消だろうと言っているが、俺にはどうもそうは思えなかった。コナンも同じなのか、怪訝な表情を見せている。

 

「あれ? この人…」

「ん? どうした、純」

 

 ふと所長が見ていた写真を俺も覗き込むと、そこには見覚えのある男が写っていた。先程コナンと共に雅美さんを追っていた時にパチンコ店内でぶつかった大柄な男だったのだ。

 

「いや、この人さっき所長達と別れて雅美さん探してる時に見かけて…。この人、なんていう名前かわかります?」

「え、ええ…(ひろ)()(あきら)28歳。身長は190cmを優に超える大男でして…」

「お、大男だと!?」

 

 所長が驚きの声を上げる。俺も内心、驚いている。なんせ、目暮警部からは、広田さんを殺したのは首に付いた手形から見て、かなりの大柄な男性であろうと言われていたからだ。

 

「それでこの人に、広田さんの居所を教えたんですか?」

「は、ハイ…一応…。そしたらその後に広田さんが殺されたと聞きまして。これは何かあるなと思いまして…」

 

 そこまで彼が言うと、俺と所長は顔を見合わせ頷く。どうやら、広田さんを殺害したのはこの人物で間違いないということだ。その時に雅美さんも何処かへ連れ去られたのではと所長は言っていたが、そこまではただの憶測にすぎないので何とも言えない。

 ちなみに、男性の住所と電話番号は出鱈目(でたらめ)だったらしい。ここまで雅美さんと同じだと、変な勘繰りをしてしまうな。

 

「しかし…これでは八方塞がりだな…」

「いや、そうでもないっすよ所長?」

 

 落胆する所長に、俺が異を唱える。あまりにも早すぎる反論に、思わず所長たちは一斉に俺に視線を向けだした。いや、コナンだけは例外か。

 

「さっき雅美さんを探してる途中に、その例の大男…明さんを途中で見かけたって言ったじゃないすか。そうだったよな、コナン?」

 

 そう言って、コナンに同意を求める。念のために、目元をポリポリと掻いてみる。コナンが俺の仕草に吊られて目元を指であてると、「うん!」と力強く頷いた。どうやら、俺の意図がわかったようでなによりだ。

 

「よし、でかしたぞ純! コナン!!」

「ということで、早速皆で行きましょうか!!」

 

 有無をも言わさぬ勢いで俺とコナンは事務所を出、それに所長・蘭・大谷探偵も続いた。外に出てタクシーを捕まえた俺たちは雪崩れ込むように乗り込んだ。

 さて、最重要容疑者である明さん(仮名)の追跡には、コナンの存在が必要不可欠と言ってもいい。まあ正確に言うならば、コナンが付けている“犯人追跡メガネ”が重要なのだが。

 俺達が考え出した結論として、雅美さんが付けていた腕時計は何らかの事情で彼の手に渡ったということだ。もしそうであるならば、既に雅美さんは殺されている可能性が高い。だがそれを今言うべきではない。あくまで雅美さん死亡説は仮説に過ぎないので、それを立証する証拠が全くと言っていいほどないのだ。

 真実を見るのは、彼の所に辿り着いてからでも遅くはない―――。コナンの指示に従いながら走るタクシーの中で、俺はそう考えた。

 

 

 

 

 

 そうして着いた先は、米花ホテルだった。コナンを見ると、焦りの表情が見られる。どうやら、腕時計に付いた発信機がここで止まっていることに焦っているようだ。

 一目散にホテルへ向かったコナンに遅れて、俺達も後へ続く。まずは情報収集ということで、ホテルのフロントに明さんの写真を見せる。フロントの人によると、八〇二号室に滞在しているとのことで、俺達はエレベーターへ向かった。

 エレベーターが一階に到着し、扉が開かれた。中には身なりを整えベレー帽とサングラスを身につけた女性がいて、大きなスーツケースを台車に積み重ねていた。それを運ぼうとすると、台車からスーツケースが落ちてしまった。力のある、コナンを除いた俺達男性陣で何とか積み直した。

 そんな時だった。ふと、俺は女性の顔を見る。この顔に…見覚えはあるか?

 

「所長…ちょっと気になることができたんで、先に行っててください」

「ん? なんだ急に……わかった、行くぞお前ら!」

 

 気がつけば、口に出していた俺の言葉に、所長は頷き、皆を連れて行った。そんな様子を見ていたのか、先程の女性が話しかけてきた。

 

「あの…一緒に行かなくていいんですか?」

「そうっすね…ちょっと野暮用が出来ちゃったもので」

「野暮用?」

 

 オウム返しに聞き返す女性に、俺は「ええ」と返事をする。

 

「あなたと話をしたいと思いましてね…広田雅美さん?」

 

 そう呼んだ俺に対し、彼女は目を大きく開いた―――。

 

 

 

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