東方浄華石 ~ Chaotic mist and tender girl   作:例の饅頭

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図書館弾幕戦争

 時間を巻き戻し、霊夢と魔理沙。

 レミリアを捜しに行くかと思いきやそんな事はなく、二人は別のある場所に足を運んでいた。

 

「何してるのよ、こっちはレミリアのとこじゃないでしょ?」

「ここに来たからにはやる事は決まってるよな?」

「いや全然。私はさっさとあいつのとこ行きたいんだけど。楓華の事も気になるし」

 

 得意気に(?)返す魔理沙に対し、霊夢は露骨に不満そうな顔を向けた。

 一応、異変と楓華のあれこれは気に掛けているらしい。

 

「つれないなあ……おっ、ここだここ。図書館。私は漁って行こうと思うが、お前はどうする?」

「……まあ、ついてくわよ。勢いで死なれても嫌だし」

 

 あっちはあっちで気になるが、魔理沙を一人にしたら何するか分かったもんじゃないのでついて行くことにした。

 

 暫く歩いていると、やがて大きな扉の前まで辿り着く。

 それを魔理沙が押すと音を立てて開いて行き、二人はそこから忍び込――

 

「監視の目は無し、だな。行くぜ霊夢……って、おい?」

「パチュリー入るわよー!」

 

 魔理沙の隠密的ムーブを意に介さず、そんな柄じゃないと言わんばかりに霊夢はずかずかと広大な図書館の奥へと足を踏み入れて行く。

 

「……何の用?」

 

 霊夢の発言に何となくダウナーで不機嫌そうな声が答える。

 この大図書館の主、パチュリーだ。

 

「仕方ないヤツだなぁ。パチュリー、また本借りに来たぜ!」

 

 そんな魔理沙の言葉を合図にしたかのように、パチュリーが怒気を強めながら現れた。

 

「来て早々死にたいようね」

「はっはっは。それほどでもないぜ!」

 

 そんな様子を見た魔理沙はやる気満々に構える。

 対するパチュリーもやれやれといった感じで迎え撃つ姿勢を取る――

 

「……まあ、持ってくなら持ってくで勝手にすればいいわ。今忙しい所なのよ」

「あー? 咲夜と言い、やけに諦めが良いな」

 

 ――かと思いきや、そんな事は無かった。

 いつもだったら一悶着ある所、今日のパチュリーは少し大人しい。

 いや、大人しいだけなら普段通りだが、それよりも気になるのは諦めが良い事だった。

 これはもしかすると、と霊夢は訊く。

 

「もしかして“取り込み中”とか言い出すのか?」

「……分かってるならさっさと用事済ませてさっさと帰りなさい。しっしっ」

 

 話が早いと言わんばかりに速攻で切り上げ、追い払うような動作をする。

 しかしそんなので追い払えるならこの二人ではない。

 

「断る。ただでさえ今異変が起こってるのに、更に何か問題でも起こされたら堪ったもんじゃないわ。実際なんか起きそうだし」

「なるほど、こりゃ何か起こるぜ。霊夢の勘はよく当たるからな」

 

 そして、そんな魔理沙の予想だか経験だかもまた当たる物のようで。

 

「もう、仕方ないわね。せめて邪魔は――あっ」

 

 響く轟音。

 何かと3人が見上げた時、天井に大きな穴が開いているのが見えた。

 霊夢と魔理沙は一瞬何が起こったか分からなかったが、とにかく何かマズそうである事は分かった。

 

「……くっ、破られた!」

「言った側から……あー、何だ。通気性が良くなったな?」

「集中緩ませておいて悪い冗談……って、え?」

 

 パチュリーの声に前を向き直ると、そこにはレミリアとフランドールに頭をぶん殴られて倒れている楓華の姿があった。

 

「なんで二人とも? それにこいつ誰?」

「何だ、凄い怒ってるな。それに楓華が下敷きだ。怒らせたか?」

「怒ってるのはさっき言ってた案件の事だから違うと思うわよ、たぶん」

 

 どうやらレミリアが暴れるのと楓華という謎の人物が紛れ込んでいる事は予想外だったようで、パチュリーはぽかんとしている。

 しかし相手は待たず、依然として殺気を緩めない。

 ……魔理沙と霊夢は静かに構えた。

 

「まあ話は後だ。どうやら勘は当たりみたいだぜ、霊夢。準備は良いか……っと!」

 

 姉妹は弾幕を放ち、それに反応した霊夢と魔理沙は素早く飛び退く。

 そしてすぐさま体勢を整えた霊夢は相手の方を向き直って言う。

 

「そっちこそ。……落ちるんじゃないわよ!」

「分かってるぜ!」

 

 その言葉と同時に左右に展開すると、レミリアは霊夢、フランドールは魔理沙に付いた。

 分離させて個別に撃破する流れで行くつもりのようだ。

 

***

 

「おう、何があったのか知らんがそんなイライラすんなよ!」

 

 魔理沙の方は箒に跨って飛びながらフランに言葉を投げかけるが、依然として様子は変わらない。それどころか攻撃の勢いは増すばかりだ。

 こちらも早めに決めようと、最初から全力で行く。

 

「逃げないでよ……怖くないから」

「いやあ、怖いぜ。くわばらくわばら。なので速攻で決めさせてもらう。魔符『ミルキーウェイ』!」

 

 魔理沙がそう宣言すると、構えた八角形の箱――八卦炉から星の形をした弾を次々と放つ。

 発動は素早く、その魔力の弾が直撃したフランドールは落ち……ずに向かってくる。

 ダメージこそある程度与えたものの、勢いは大して削れていないようだ。

 

「甘いわ!」

「全く、吸血鬼っていうのは頑丈過ぎて困るぜ。とは言え、いつも以上な気はするけどな」

 

 続く攻撃の応酬、そしてまたもや犠牲になる部屋の床やら壁やら清潔やら。

 しかし戦況は未だ動かず、決定打に欠けている。

 このまま行けば持久戦で押されてしまう事は明白であった。

 

***

 

 さて、そんな激しい戦いを繰り広げている最中に、図書館の主であるパチュリーと倒れている楓華は一体何をしているのかと言うと。

 

「せめてこれ以上被害を広げないように、それぞれ障壁で囲わなきゃ……ああ、何でこうなったんだか」

「う、うう。頭痛い」

 

 頭から血を流しつつも、楓華は立ち上がった。

 

「あっ起きた。耐久力あるのね。早速質問するけど、誰?」

「楓華……とりあえず、あの二人の連れってことで納得しておいて……」

 

 パチュリーはそれを見ると、単刀直入どころかギロチン的な話の早さで問う。

 寝起きには少し酷なものとも思えるが、対する楓華もきっちり答えた。

 

「パチュリー・ノーレッジよ。で、貴方何か出来る事ないの? 魔理沙の方がちょっとキツそうだけど」

「え?」

「まあ、私としてはどうでも良いけど。どうせ死んでも死なないだろうし」

 

 まだ少しぶれている視界で見ると、霊夢は多少苦戦はしているものの問題ない程度には戦えているのが分かった。

 しかしそれに比べてみたら、魔理沙も中々良い戦いではあるものの若干ジリ貧に見える。

 違いは接近戦の多さ……なのだろうか? それとも感染源の方がより強化されている?

 

「……援護に行くよ」

「行ったら魔法障壁で閉じ込めるわよ。次やられると最悪死ぬし、集中の為に外からの口出しも出来ないからそのつもりで」

「大丈夫、分かってる!」

 

 上階での戦い(?)は予想外の展開により散々な結果だったが、それを知った今なら何とかなるかも……と考え、楓華は魔理沙を援護しに行く。

 ……今度は邪魔とかしないように気を付けながら。

 

「お、楓華。もう起きたのか」

「うん。なんか押されそうに見えたから援護しに来たよ」

「あー? 私が押されそうだって? その通りだよ、援護頼むぜ」

 

 楓華が範囲内に踏み込んだ直後、パチュリーの魔法障壁が周りを囲むように展開され、双方ともに逃げ場を塞がれる。

 完全に金網デスマッチ状態となった。

 

「またお前か! 今度はそこの白黒共々、真っ二つにかち割ってやる!」

「相変わらず口悪いね!? 本当にやりそうなのがタチ悪いよ!」

 

 先ほどからよく出る異常なまでの口の悪さに若干引きつつも、魔理沙の隣に立って前を見据える。

 そしてがっしりと身構え、攻撃を避け(あわよくば当て)る準備をした。

 

「はっ、良いな。やってみろよ。……ただし」

 

 魔理沙は面白そうな、不敵な笑みを浮かべ、フランドール……いや、恐らく別の存在であろう何かに向かって語り掛ける。

 

「倒れるのはお前が先だ。そんでフランを解放してもらうぜ」

 

 楓華もその言葉につられてよーく見てみると、確かに少しだけ異様な気配――具体的には、異形と似たようなものが感じ取れるような気がする。

 ある意味、吸血鬼そのものが異様とも言えるが。

 何かあったのかと気になって聞いてみた。

 

「もしかして、元々はこんなんじゃない?」

「少なくとも私にはそう見えるな。こんな狂犬じみた奴ではないはずだ」

 

 やはり何かあったらしい。

 本当に異形に関わる事なのだろうか。……だとすれば尚更放っておくことは出来ない、と楓華はより一層気を引き締める。

 もっとも、もし放っておきたかったとしても既に逃げ道はないが。

 

「さあ、前置きはここまでだ。第二ラウンド行くぜ! 楓華もな!」

 

 楓華はその言葉に頷き、手始めに接近戦を仕掛ける。

 ほんの少しでも牽制になれば儲けものだが……。

 

「ちょっと痛いかもしれないけど……!」

 

 案の定余裕で避けられた。何度も攻撃を仕掛けるがやはり当たらない。

 それどころか、相手に大技の発動を許してしまう。

 

「遅い! 紅魔『レッドスパーク』!」

「うわ!?」

 

 一瞬で距離を取って両手に魔力を溜めたかと思うと、それを思い切り放って来た。

 それは極太の紅いビームのような形を取り、二人を焼き尽くさんと迫る。

 

「恋符『マスタースパーク』ッ! スペルカードをパクるとは、いよいよ別人だな!」

 

 魔理沙がそれに対抗する為に同じくスペルカードを宣言すると、八角形の箱から虹色の極太ビームが放たれる。

 それは相手のものと激しくぶつかり合った後、相殺して押さえ込む状態に落ち着いた。

 そこから発生する衝撃波は凄まじく、強い気迫と魔力を放っている。

 

「う、うわあ……似てる?」

「前にもコレを見せる機会があってな。あいつの中に居るヤツは多分記憶からパクったんだろうな」

 

 発動の動作が似ていることに疑問を抱いた楓華が問うと、魔理沙はそう答える。

 

「……おっ」

 

 さておき、二つの魔砲の中から何とか相手の動作を観察した魔理沙は、相手が動けない様子である事に気付いた。

 

「見てみろ、相手はアレに力込めてて動けないみたいだ! ……同じく私も動けないが。代わりにやってくれ」

「分かった、やってみるよ!」

 

 今まで何回も避けられているので少し躊躇いはあったが、意を決して近付く。

 そして腕に魔力を纏い始めると、巨獣の異形を倒した時のように火の形を取り……

 

「もし瘴気にやられてるなら……はぁッ!!」

 

 そのまま勢いよく打ち込む。

 相手も止まっていて、狙いも正確だ。

 今度は絶対に外すまいと、楓華の腕が渾身の一撃を放つ。

 

「ふんッ!!」

 

 だが楓華の思いとは裏腹に、金属を殴ったような鈍く鋭い音が鳴り響く。

 見てみるとフランドールは片方の手をこちらに伸ばし、魔法障壁のようなものを張っている。

 展開された赤黒いそれは、またもや楓華の攻撃が失敗した事を意味していた。

 

「またか!」

「くそっ……魔力でも吸われてるのか?」

 

 魔理沙のマスタースパークの勢いが弱まってきており、そろそろ限界が近いように見える。

 

 そろそろ持たなくなってきそうな事は戦い慣れていない楓華でも容易に理解出来た。

 どうにか出来ないかと必死に考えるも、自分一人では出来ない事が多すぎる。

 このままでは――。

 

「助けが必要そうだね」

「っ、こいし!?」

 

 突如楓華の背後からこいしが現れる。

 今までどこで何をしていたのかと楓華は気になったが、それを声に出して問う前にこいしは話し出す。

 

「あの床の穴の一つ下に厨房があってね。美味しそうなすうぃ~つが置いてあったから食べてきちゃった。なんかフランドールとか名前が書かれてた気がするけど美味しかったよ」

「えっそれは」

 

 ……その時、フランドールが驚愕したような顔を見せ、周りの空気が変わるのを感じた。

 そしてレッドスパークも障壁も中断し、じっとこいしを見つめる。

 

「……」

「てへ」

 

 刹那、殴りかかる。

 しかし狙いは上手く定まらず、こいしのふわっとした動きで回避される。

 床には大きなクレーターが出来、打撃と衝撃波で轟音が響く。

 その勢いのまま底知れぬ怒りを灯した目で見つめ、言い放つ。

 

「コンティニューしたく無くなる位、ぶっ飛ばしてやる!」

 

 普通の状態であれば怒っても仕方のない所、フランドールは怒り狂った

 ……もし瘴気で感情が誇張されているのだとして、素の部分からもちょっと苛つきが滲み出てる風にも見えるような。

 

「こいし、それはちょっと……罪では?」

「そーだ! 一発でコキュートス行きよこんなの!」

 

 敵味方よくわからない事になったが、それ程食べ物の恨みは恐ろしいのだろう。

 とそんな状況をポカンと見つめていた魔理沙が一言喋った。

 

「……何だこれ」

「何だろうね……?」

「まあ、何だ。良く分からんがチャンスらしいぜ?」

「あっ本当だ」

 

 魔理沙は若干呆れながらも指示を送る。

 そしてそれを受け取った楓華はこっそりとフランドールの背後へと忍び寄り、魔力を纏った手をかざす。

 

「……はぁっ!」

 

 そのまま内側に潜む何かを押し出すように力を込めると、反対側から赤黒いモヤが吹き出して霧散した。

 すると、元気よくこいしに文句と攻撃を浴びせていたフランドールが突然意識を失ってその場に倒れる。

 それと同時に霊夢の方も片付いたようで、それを見届けたパチュリーは魔法障壁を解除した。

 

「よし……なんとか、なった……」

 

 楓華も疲れていたのだろう。

 何とか無事に終わった事に安堵し、倒れ込んだ。

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