パチュリーはパルプンテをとなえた!   作:遊び人Lv99

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パチュリーはパルプンテをとなえた!

 ――その日、大図書館の主こと私、パチュリーは自身の図書館で見覚えのない魔導書を見つけた。

 

「こんな本、うちにあったかしら?」

 

 そうは言うものの、実のところ図書館の蔵書の全容は私自身も把握していない。多分司書を務めるこぁとここぁも同様だろう。だから私の知らない本が唐突に出て来るのもそれほど不思議な事ではなかった。

 

「どれどれ」

 

 ともあれ、自身の知らない本とくれば一度読んでみるのが私の信条である。パラパラとめくり、適当なページに目をやる。

 

 ――この時、未来の私がこの場にいたなら私を全力で止めただろう。まさかあんな事になるとは思いもしなかった。

 

「ええと……呪文書みたいね」

 

 何やら大量の呪文らしき名前が羅列されているが、肝心の効果が一切書かれていない。

 

「ええと……パ……ル……?」

 

 私は適当な呪文の名前を読み上げる。今思うと、なぜ効果のわからない呪文をあんなに安易に唱えたのか、この日の私は妙に迂闊だった。

 

「あ、何か反応が……」

 

 私が呪文を完成させると、魔導書が光り輝き――突如として、視界が虹色に染まった。

 

「な、何……きゃあああああ!!」

 

 そのまま私は虹色の世界に呑まれ、意識を失うのだった……。

 

 

   ◇   ◇   ◇

 

 

「う、うーん……はっ!」

 

 私が意識を取り戻すと、そこはいつもの見慣れた図書館のままだった。自身の身体にも何ら変化はない。驚いたわ……何であんなに安易に呪文を唱えてしまったのかしら。

 

「あぁ、パチェ。気がついたの?」

「パチュリー起きたー」

「レミィ、フランも」

 

 目覚めた私に声をかけてくれたのは私の親友でありこの紅魔館の主であるレミリアとその妹のフランドールだった。心配して来てくれたのだろうか。

 

「驚いたわよ。パチェってばいきなり倒れてるんだもの。喘息でも悪化した?」

「無理しないでねー」

「ええ、ありがとう」

 

 私は気遣ってくれる二人に礼を言う。心配をかけてしまったようで申し訳ない。

 

「私は大丈夫よ。ところで二人とも……」

 

 しかしそれよりも、私はさっきから二人に関して気になる事があった。

 

「なんで本の整理をしてるの?」

 

 そう、二人はさっきからこぁとここぁがやるように忙しく本棚の書物を並べ替えているのだ。紅魔館の当主とその妹という高貴な身分の人物がやる事ではないと思うのだが……。

 

「なんでって……お仕事だよ?」

「私たち()()が本の整理をしてるのは当然でしょう? パチェこそ何を言うのよ」

「…………は?」

 

 何を言う? いや、レミィこそ真顔で何を言っているのだ。司書だなんて。あなたは紅魔館の当主でしょ? フランはその当主の妹。そのはずだ。

 

「いやいやいや……レミィたちが司書って……こぁとここぁは?」

 

 なぜか姿が見当たらないが、この図書館の司書といえば私の使い魔であるあの小悪魔姉妹のはずだ。断じてスカーレット姉妹ではない。しかしレミィたちは私が何を言っているのかとばかりに首を傾げる。

 

「こぁ? ()()()()()なら執務だと思うけど」

()()()()()()()は今の時間だとまだ寝てるんじゃないかなー?」

「…………は?」

 

 気のせいだろうか。本来ならば眼前の二人に付けられるべき敬称がこぁとここぁに付いていた気がする。

 

「こぁお嬢様も大したお方よね。小悪魔という力弱き存在でありながら、この大きな紅魔館の未来を一身に背負っておられるのだもの。まさしくカリスマと言うに相応しいわ」

「妹様はか弱いからねー。地下室の警備は万全にしておかないと心配だもんね」

「へー。そうなの。へー……」

 

 どうやらお嬢様と妹様とやらは私の知っている小悪魔姉妹とは大分違うようだ。なるほど……。

 

「いやいやいや! 絶対おかしいでしょ!?」

「「何が?」」

 

 何がおかしいかって、何もかもがおかしい! 小悪魔たちが当主なのもおかしいし、スカーレット姉妹が司書なのもおかしい! 何よりそれに疑問を抱いているのが私だけなのが一番おかしい!

 

「あっ、あの魔導書!?」

 

 そうだ。私か気絶する前に読んでいたあの魔導書。おそらくこの無茶苦茶な状況はあれの仕業に違いない。それ以外に理由が思い浮かばない。

 きっと私が唱えてしまったあの妙な呪文の効果でこんな事になっているのだ。術者である私はその効果を受けなかったのだろう。そうと分かれば話は早い。あの妙な呪文をもう一度唱えてさっさとこの状況から抜け出してやる。

 

「ええと、確か……パ……ル……」

 

 私はこの状況に陥った元凶であろう呪文を唱えるが、何も起こらず、先ほどのように視界が虹色に染まる気配もない。

 どうやらただ唱えるだけでなく魔導書もセットでないと駄目なようだ。くっ、なら魔導書を……魔導書……。

 

「ま、魔導書がない!!」

 

 なんで!? そういえば目覚めた時から手元に無かった。レミィたちが整理してしまったのか?

 

「二人とも! 私の側に魔導書が落ちてなかった!?」

「魔導書? そんなもの、見当たらなかったけど。フラン知っている?」

「知らなーい。片付けた中には無かったよ」

「なん……だと……?」

 

 バカな。一体どこへ消えてしまったのだ。魔導書が無いと呪文を発動できない。いつまであの呪文の効果が続くのかわからないが、最悪、永久にこのままなんて可能性も……。

 

「い、いやああああぁ!? どこ!? どこへ行ったのよぉ!?」

 

 私は手近な本棚を片っ端から漁ってゆく。レミィたちは片付けた本棚がぐちゃぐちゃになるのも気にせずそんな私の様子を眺めていた。

 

 

   ◆   ◆   ◆

 

 

「ねーお姉様、パチュリーどうしちゃったのかな」

「さぁ……ストレスでも溜まってるのかしらね」

 

 パチェの様子を奇妙に感じながらも一息ついた私は、紅魔館がいつも取っている新聞である()()()()()花果子念報を読む。記事には大きく一面で霧の湖の氷精の姿があった。

 

「『最強の氷精、フラワーマスターに勝利!』か。いよいよ幻想郷最強も伊達ではなくなってきたわね」

「チルノちゃんすごーい!」

 

 ここまでくるともうあの氷精に挑戦する輩も残ってないかもね。あなたがNo.1よ。

 

「メイド長こないなぁ。そろそろお茶の時間だと思うんだけど」

「あのメイド長の事だから、またどこかで昼寝でもしているんでしょう」

 

 全く、あのメイド長の昼寝好きにも困ったものだ。また門番に叱ってもらわないと。何やら大騒ぎしているパチェの声を聞きながら私はそんな事を考えるのだった。

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