剱の呼吸   作:MKeepr

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難産セカンドォ
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第十四話:緊急柱合

「それでは緊急の柱合会議をはじめようか、私の剣士(こども)たち」

 

 鎹烏が情報を柱に伝え回ってから一週間後、緊急の柱合会議が執り行われることとなった。会議前に産屋敷から紹介されたのは新たに"風柱"となった不死川実弥(しなずがわさねみ)である。

 全身傷だらけの中々にインパクトのある外見をしているが、緊急の会議のためそれどころではなかった。それは産屋敷への挨拶を済ませ、屋敷内に入り会議に入り産屋敷と対面の位置に座った二人の為だ。

 まず"剱柱"燻御奏多、頰には薄く傷跡、きっちりと隊服は来ているもののそこから覗く腕や足には包帯が巻かれていて怪我人だと否応無くわかる。

 次に"花柱"胡蝶カナエ。こちらは隊服を羽織って右腕を副木で固定し、吊っている痛ましい見た目をしていた。

 

「カナエに奏多、無事とは行かなくてもよく生きて戻ってきてくれたね。ありがとう」

 

「「ご心配いただきありがとうございます。お屋形様」」

 

 二人が恭しく礼をする。

 

「それでは二人からの報告を聞こう。私は居ないものとしてくれて構わないから」

 

 産屋敷が少し下がる。

 

「それでは、私達の遭遇した上弦の弐について報告させていただきます」

 

 逆に奏多とカナエが少し前に出た。

 

「上弦の弐の血鬼術ですが、細かな粒が呼吸により肺に侵入して凍結、壊死させる効果があるようです。視認さえできず、少量なら問題ありませんが全集中の呼吸の為に多量に吸ってしまえば致命的なものです」

 

 カナエが自身の胸に手を当てる。多量に吸えば肺が壊され呼吸困難に陥る。それは鬼の前では致命的なものだ。

 

「しかも恐ろしいことにそれは副次効果のように思えます。主体はあくまで氷結させる氷の血鬼術。以前悲鳴嶼さんが倒した異能の鬼に似たような者がいたと聞いていますが、範囲、汎用性、破壊力全てが圧倒的に上です」

 

 奏多が頷く。町の一角を完全凍結させたものや地面から氷樹を生やす遠距離攻撃。恐らく他にも多数の技があり底が知れない。

 

「血鬼術だけじゃなくて上弦の弐の本体の強さも厄介だ。以前の会議で出た予想ほどの硬さは無かったものの、再生力の高さが尋常じゃない。下弦の腕を切断したら再生まで結構な時間を要すが、あの様子じゃものの数秒で新たな腕が生えてくるぞ」

 

 長期戦となれば生身の人間であるこちらが不利だ。短期決戦と行きたいがあの再生力が邪魔をする。鉄扇に軌道を逸らされたあの一撃が、アレで頸を切っていれば、と悔恨が滲み出てくる。

 

「それに鉄扇の強度が厄介だ。正直なにでできてるんだあれって位硬いぞ」

 

 肩をすくめる奏多に宇髄と伊黒がため息を吐く。

 

「剱柱に硬いとか言わせるたぁ本当に恐ろしい強度なんだな」

 

「そんな事でどうする? 切れないと決めつけて満足か?」*1

 

 言い方に不死川がイラっとしたが、親方様の手前それを態度に出すことはしない。

 

それで例の血鬼術とは厄介極まりないな! 相性が良さそうなのは蛇柱と水柱だが実際出会えばそんな戯言言ってる暇はない!

 

 柱単独ならば不利と見れば逃げられるかもしれない。しかし柱が向かう場所には鬼殺隊が守るべき人々や導き育てるべき隊員達がいる。柱はそれを守るためなら逃げる事などしない。自身が死ぬとわかっていても全身全霊をもって鬼と戦い、殺す。それはすべての柱に共通する。

 

「相性は遭遇した時点で無い物ねだりってことだな」

 

 だからこそ誰が遭遇しても勝てる道筋が少しでも生まれるようにこうして情報の共有を行なっている。

 

「ありがとう、カナエに奏多。今までその輪郭すらほぼ分からなかった上弦の月を知ることができた、これは大きな一歩だよ。未だ切り崩すことは叶わない。それでも目標が見えたことはとても、とても」

 

 ごほ、と産屋敷が小さく咳を吐いた。

 仕切り直しと言わんばかりに微笑んで口を開く。

 

「さて、次の議題だ。鬼に対する毒の報告があるそうだね」

 

「はい。甲隊員、胡蝶しのぶが研究している鬼に対する毒が下弦に対しても効力を発揮することが確認できました」

 

 カナエの報告に暗くなっていた雰囲気が明るくなる。奏多もどこか自慢げである。

 

「隊員に持たせれば新たな牙となり鬼どもを倒す切り札となるな」

 

 "虎柱"の牙穿好乃が嬉しそうに腕を組む。首を切らないといけないという制限から解放されれば一般隊員達の負担が減る。

 

「確かにな。ただ、持たせてやりたいが、鬼に効く以上に人間にとっても強力な毒として機能する筈だぜ。地味に死にたくなければ扱いの習熟の必要があるな」

 

人が人を殺す事はあってはならないからな! その通りであろう!

 

「なら、実験として俺の嫁たちを送るから、胡蝶の所で訓練してやってくれないか? くノ一だから毒物の扱いは慣れてる筈だ」

 

 宇髄の三人の嫁たちは全員くノ一として毒を使用することもある。試しで習わせるのにはちょうど良いはずだ。

 

『いやぁぁあごめんなさいこぼしちゃったぁぁぁごめんなさい!』

 

 変な映像が宇髄の脳内に再生されたが何も再生されなかったことにした。俺の嫁たちは頑張り屋だぜと自己擁護して。

 

「かしこまりました。宇髄さん」

 

「毒に関しては引き続きの研究を期待しているよ。それではカナエ、最後に伝えることがあるそうだね」

 

 カナエが立ち上がる。

 

「はい、私"花柱"胡蝶カナエは本日をもって柱を引退させていただきます」

 

「「なっ」」

 

 奏多と産屋敷を除いた全員が驚く。二人は事前に知っていたからだ。

 

「最初に説明したように、あの血鬼術は剣士には致命的なものです。それを私は受けてしまった。日常生活を送る分には問題ありませんが、後遺症で常中の維持すら不可能です」

 

 要の呼吸が使えないのであればいかに技量があろうとも並の隊員以下の働きしかできない。

 

「ではどうする? 柱がまた欠ければ鬼殺隊も危うい」

 

「私の次を担う者がいます」

 

 その微笑みは安心して任せられるという思いと出来ればやらせたくはないという苦悩が入り混じった物だった。

 奏多はえっなにそれ聞いてないと産屋敷を見た。産屋敷も言ってないと言わんばかりに微笑みながら頷いた。

 

「では、もう一人、新たな柱の紹介といこう。みんなももう活躍は聞いているから大丈夫だね」

 

 産屋敷が促すと妻のあまねがふすまをひらく。

 

「"花柱"胡蝶カナエに変わりまして"蟲柱"を拝命いたしました胡蝶しのぶと申します。新参者ですが皆さんよろしくお願いしますね」

 

 現れたのはしのぶだった。カナエが着ていた蝶の意匠の羽織を着ている。

 奏多の美貌がそこまで崩れるのかというくらい呆気にとられた顔を見た宇髄が噴き出した。つられて奏多を見た伊黒と牙穿が顔を伏せて肩を震わせる。不死川はここで奏多が男だと気づいた。煉獄は新たな柱の就任を祝ってて気づいていない。行冥は場所的に奏多の顔が見えない。

 

「しのぶには毒の研究とカナエから蝶屋敷の権限を引き継いでもらうことになっているから、皆も協力してあげなさい。それでは緊急柱合会議を終わりにしよう」

 

 気を取り直して全員が産屋敷に礼をし、退出していくお屋形様を見送った。さっさと移動しようとする不死川の肩を煉獄が掴む。

 

では! 今回は緊急であったが柱合会議後恒例の模擬戦と行こう!

 

 柱みんなで屋敷の一角に集まると煉獄が音頭をとった。

 

「模擬戦? なんだそりゃぁ」

 

「互いの技術向上を目的にした鍛錬だよ。次は木刀持参な? 今回は俺のやつ貸すけど」

 

 不死川に奏多が答えて木刀を渡す。奏多用の木刀なので長さが違ってしまうがないよりマシである。ちなみにこの屋敷の倉庫に柱たちが持ってきた木刀がそのまま保管してある。

 

「じゃあ次回は自前のやつ持ってくるからさっさと治しやがれよ。見てて気の毒だ」

 

「そうそう、いつまでも怪我人じゃ何の役にも立たない。仕事は溜まるんだぞ」*2

 

 ピキリと不死川に青筋が入る。

 

「おい、さっきもそうだがテメぇ、その口は何だ。お屋形様の話じゃ相当な事成し遂げてんだ。もっと労ってやるのが筋ってもんじゃねぇのか?」

 

「あっ、実弥、伊黒はな」

 

「フン、右も左もわからない成り立ての柱にはわからないか? 教えてやろう」*3

 

「上等だぁ!」

 

 まさに風の如く素早く鋭い動きを見せる風柱に変幻自在に立ち回る蛇柱の模擬戦がまず始まった。

 

「おっいいぞ二人とも! ド派手にやれえ!」

 

「元気がいいですね姉さん。あの二人は」

 

「小芭内さんは誤解されやすいですからねぇ」

 

気合いがあるのはいい事だ!

 

「南無」

 

 

 

 

 

 この模擬戦の後二人は普通に打ち解けた。

*1
お前の剣ならいずれ容易く切れるようになる諦めるな

*2
柱のお前にしかできない仕事があるんだ。療養してくれ

*3
まだなったばかりで大変だからわからないところは教える

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