「これでよしっと…」
一人の少年が何かを書き終えてベランダへと出て行き、手すりの上に立った。そして深く深呼吸をすると、あろう事かそのまま下へと飛び降りていった。所謂飛び降り自殺だ。少年の部屋はマンションの15階、地上から約45mのところに位置する。恐らく死は免れないだろう。
「(さよなら。父さん母さん、それに皆、今までありがとう)」
飛び降りてから数秒後、どちゃっという生々しい音と共に少年の人生は幕を閉じた…かのように思われたが少年は見たことのない場所で目を覚ました。
「っ!ここは一体…俺は死んだ筈じゃ…まさか死ねなかったのか?」
目を覚ました少年は、取り敢えずの状況確認の為辺りを見回す。が、何も無い。ただひたすらに何処までも暗闇が続くだけだった。と思いきや唐突に、電気を点けたかのように暗闇が消え明るくなり、それと同時に目の前の何も無かった筈の空間から謎の青年が現れた。
「やあ、やっと起きたか。少年」
急に現れた青年に驚き困惑した少年は口を鯉のようにパクパクとさせ、声にならない声を上げる。
「ん?現状が理解できてないみたいだね。しょうがない、この優しい俺が懇切丁寧に説明してやろうじゃないか」
何故か上から目線で地味にイラついたが目の前の青年しか状況を分かる人物はいないので少年はおとなしく話しを聞くことにした。
「まず始めに、君はちゃんと死んだよ」
その言葉を聞いた少年は更に困惑した。ならば何故、今自分に実体があるのかと。
「今、君は何故死んだのに自分は実体があるのか疑問に思ったね?その理由は簡単さ。俺が神だからだ」
「(何言ってんだ…こいつはあれか?頭があれなのか?)」
本当である。しかも若干ドヤ顔なのはどうにかならないのだろうか。
「おいおい、言葉には気をつけろよ。口に出さなくても聞こえてるんだぜ?」
心の声を読まれた少年は若干驚いたが直ぐに落ち着きを取り戻し、目の前の青年の説明に意識を集中させた。
「さて、説明を再開しよう。まずこの場所についてだが、此処は俺が作り出した空間で君がここにいる理由は選ばれたからだよ」
神の言葉を聞いた少年は考え始めた。選ばれたとは何になのか、何故自分が選ばれたのか、あらゆる考えや疑問、憶測が少年の頭の中で出ては消えてを繰り返す。
「どうやらどうして君が選ばれたのかわかってないね」
その通りなので素直に頷き、何故選ばれたのか聞いた少年。それを聞いた神は、
「選んだ理由は君が他の人間より特異だからだよ」
その言葉を聞いた少年は自身の秘密を知られている事に驚愕すると同時に改めてこの人物は神なのだと再認識した。
「さて、一体君を何の為に選んだかだけど、それは俺の暇つぶしの為ってのが一番の理由かな」
「はあ?」
驚愕の理由に少年もただただ困惑するのみだった。しかし神はそんな少年を無視して話を続ける。
「で、大事なのはここからで君にはこれから別世界に行ってもらおうと思うんだ」
これを聞いた少年は唐突な提案に文句を言おうとした。が言葉が出ない。
「ああ、喋れないのはどうせ何か言われると思って既に別世界への転生を始めてるのが原因だから。別に気にする必要はないよ」
何とも身勝手な話だろうか。少年も必死に文句を言おうとするも時すでに遅し、転生が完了したことにより少年の姿はそこにはなく、神が一人居るだけとなってしまった。