気分が乗ったらまた書く気が起こるかも。
鉛色の空の下で、一人佇む刀を差した男がいた。
その男は何をするわけでもなく、雲を眺め終始無言であった。
男の体は血に染まり、足場には死体の山が積み重なっていた。
突然男の口が開く。
「……ーーー・〜ー..:*……〜ー〜ーー……・,」
しかしその声は終ぞ聞こえず、男は口を閉じた。
すると周りに変化が訪れる。男の周りを囲んでいた死体が消えて行くのだ。山の様に積み重なり、腐臭を撒き散らし、烏が肉を啄ばんでいた死体が一つずつではあるが確実に消えていく。その様を男は静かに眺めていた。
すると男の方にも変化が訪れる。体が透けて行っているのだ。足元から段々と実態が無くなっていき、光の粒の様に男の体は飛散して行く。
それでも男は焦るそぶりも見せず、腰に差していた刀を抜き、地面に突き刺す。
それを満足げに眺めると、男は何も言わずに首を上げ曇天の空を見つめる。
やがて男の実体が首だけになり、男の全てが光の粒となり消滅した時に残されていたのは廃れた大地に突き刺さった刀と、宙に舞う男の
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月曜日。それは一般の人にとっては憂鬱な日々の始まりでもある。学校に登校する最中に昨日までの休みを思い返し、ため息をつく未成年も多いかもしれない。
しかし殊、坂田銀にとっては意味が違ってくる。
この日は彼にとって最も意味のある日だからである。
「おいハジメ!今週号のジャンプ『HUNTER×HUNTER』連載再開してたぞ!もう前回の休載からなん年振りだよ!お前前回までのストーリー覚えってっか!?俺最後に覚えてるのクラピカがゴキブリ操作して飛ばしてる部分までしか覚えてねぇんだけど!」
そう、週刊少年ジャンプの発売日である。
坂田は自身の教室に入ると同時に鞄からジャンプを取り出して一人の少年に掲げる。
その少年は黒い髪にやや童顔の顔を持った中肉中背の青年であった。
「ええっと確か、双子の王子のうちの一人が亡くなって、もう一人の王子の守護念獣になった位までかな?そこから先はちょっと曖昧かも…」
「おー、そういやそうだったー!いやー、にしても『鬼滅の刃』今週号も熱かったぜー、やっぱあの作品は今後のジャンプ界を牽引して行く作品になり得るよ。只ちょっとこのままだとエンディングロールも近いと思うんだよねー、そうなったらもうジャンプのバトル作品を支える柱が無くなっちまうよ、うん」
「ね、ねぇ坂田君…何度も言うけどジャンプを堂々と持ってくるのやめようよ」
「ああ?なんだ馬鹿野郎、何をためらいながら持ってくる必要がある?隠す必要もねーもんをワザワザ隠すほど、俺はこまめじゃねーんだよ!」
「いや、そう言う事じゃなくて…」
坂田が話しかけた青年、名を南雲ハジメは困惑気味に坂田と軽快なジャンプトークをしていた。
しかしここで新たな面子が入り込む。
「あ、坂田君おはよう!」
「おーう白崎、おはようさん。んでハジメ、今週号のジャンプに話が戻るんだがブラック・クローバーがさ…」
「ちょ、ちょっと坂田君!それはまずいって!」
「あはは、いいよ南雲君!相変わらずだね坂田君は。でもジャンプ持ってくるのはどうかと思うよ?」
その面子は女子生徒であった。名を白崎香織、坂田たちが通う高校のアイドル的存在の生徒である。
坂田と比べればその人気度は雲泥の差、月とスッポンどころか太陽とボーフラレベルの差があると南雲自身は解釈している。
と言うより坂田が自身の人気を下げている点もある。
普段から坂田はジャンプを堂々と学校で読んだり、鼻くそほじくったり、無視をすればいいものを反論をして相手の反感を買ったり、鼻くそほじくったり、掃除サボったり、鼻くそほじくったり、訳の分からない自論を展開して担任教師を困惑させたり、鼻くそほじくったりととにかく鼻くそまみれの評価を他の生徒から受けていた。
にも関わらずこの白崎という生徒、毎日と言っていい程に坂田に声を掛け続けている。
坂田はそれに関して興味が薄い、若しくは無いのか、軽く受け流し続けていた。
この状況を客観的に伝えよう。
誰もが羨む高嶺の花の様なスーパーアイドルの白崎、その白崎がいつもいつもハナクソまみれの悪評しか聞かない坂田に話しかけているにも関わらず坂田は右から左へと聞き流している。
そんな光景を毎日、白崎に好意を抱いている男子生徒、白崎に好感を抱く女子生徒は見続けているのだ。
その結果、男子からは怨念、女子からは軽蔑の眼差しを坂田は受けることになった。
間近で坂田と白咲のやり取りを見ている南雲としては心臓に悪い事この上ない。
なんせ渦中の二人はそんなことは気にも止めていないのだ。
白崎は天然故に気付かずに、坂田は分かっていながらどうでもいいと切り捨てて静観を決めていた。
『自分も坂田君がいなかったら今の坂田君と同じ様な状況に陥るのでは無いか』と考え、胃をキリキリと痛めながら二人の会話、と言っても白崎が坂田に対して一方的にしゃべっているのを坂田がジャンプを読みながら聞き流しているだけだが、を眺めていた。
「香織、また彼に説教をしているのか?」
そしてふと、そんな声が坂田達3人の耳に入る。
声の方に振り向くと3人の男女がいた。
「おはよう坂田君、南雲君、毎日大変ね」
「全く、香織は優しいな」
「全くだぜ、そう何遍も言って聞かないような奴はどうしたって無駄だと思うぜ?」
三人の中で唯一朝の挨拶をした女子生徒の名前は八重樫雫。長い艶やかな髪を後ろで縛り上げた少しばかり釣った目が特徴的な剣道場の娘である。
次に、最初に白崎に声を掛けた男子生徒が、天之河光輝。好青年を地で行く様なザ・イケメンの男子生徒である。
最後にどうでも良さげに白崎に言葉を投げかけた男子生徒は坂上龍太郎。光輝の親友で、『努力』好きである。
「おーう、おはようさーんガッさん」
「お、おはよう、八重樫さん、天之河くん、坂上くん…」
坂田はチラリと八重樫を一瞥しながら挨拶をすると、すぐ様目線をジャンプに戻す。
その様子を終始ハラハラしながら見つめる南雲の事など一切気にせずに。
その様子を見た天之河は呆れる様にため息をつき、坂田に注意をする。
「全く……坂田、お前も少しは南雲の様に普段の行動を見直したらどうだ?少しは他人に気を配れ。いつまでも香織の手を煩わせてたらダメだろう?」
「あ、あははは……」
光輝の注意に坂田は意を介さない。終始ジャンプのページに目を向けている。
その瞬間南雲に予感が走る。これは面倒ごとが起こると。
坂田はジャンプのページをめくりながら言った。
「おーいハジメ、今週号のONE PIECE休載だったわ」
「な……!」
南雲は手で頭を抑えたくなった。この男、終始光輝の話を耳に入れていないのである。
愕然とする光輝を前に坂田は続ける。
「俺は自分を曲げる気はさらさらねぇよ。つーか、本当に人が他人に気を配ってやる時なんて精々、駅前でティッシュを配ってる時くらいだっての」
(おいいいいいいい!挑発すんなぁああああ!)
南雲、叫ぶ。明らかに煽ってるとしか言えない言葉に光輝は開いた口を更に開けて驚愕の表情を浮かべる。しかしその顔はすぐさま怒りへ変わり、机を叩きながら白崎に詰め寄る。
「……もう我慢できないぞ!香織!こいつとは離れた方がいい!香織の為にならないぞ!」
「え?私は坂田君と一緒にいて楽しいよ?私は私の意思でここに居るんだから」
「え?そ、そうか…香織は優しいな……」
「どうして私が優しいことになっちゃうの?」
しかし彼の必死の願いも軽くあしらわれる。予想外の反応に光輝は少しばかり口元をひくつかせていた。
「あ、そうだガッさん、この前貸した『ニセコイ』の一巻から五巻返してくれや」
「あ、ああ、そうだったわね。中々に面白かったわよ…少年誌の恋愛漫画は初めて読んだけど、あそこまで純粋なものもあったのねぇ…また続き読ませてちょうだい」
「そういうと思って、六巻から十巻まで持ってきてるぜ」
「あ、ありがとう、いつもいつも…」
(オメェは無視してなに『ニセコイ』の貸し借りしてんだああああ!状況をよく見ろ!つーかさっき紙袋の中身見えたけどあれ『ToLOVEる』じゃね?女子になんつーもん貸そうとしてんだオメーはぁあああ!)
「ああ、そういやオレの頼んでた奴持ってきてくれたか?」
「おうあるぜ、ほいこれ。ちゃんと綺麗に使えよ、オレもたまに読むんだから」
(
本人たちの知らぬ間で起きているアクシデントを終始目撃していた南雲は変な汗が止まらなくなっていた。
その時南雲は、いたたまれなさから普段だったら絶対に口にしないような願いを念じていた。
(お願いします!なんでもいいから彼らに気づくチャンスを!気まずくなる前にハプニング起きてくれぇえええ!)
と、同時に
魔法陣は浮かび上がった。
そして突如として光が浮かび上がり教室を包み込む。光が収まったその時には、誰もその教室にはいなかった。
南雲はこの時の瞬間をこう言っていた。
『とりあえず二人の紙袋をうやむやに出来たのが良かったです』
ご感想よろしくお願いします。
基本的に銀魂キャラは異世界側の予定です。