そんな坂田の騒動がありはしたが、なぜか最終的には畑山先生すら坂田に落ち着くよう言いより、その日は1日潰れた。ジャンプが読めないとわかってからの坂田の反応は不機嫌一色だった。そんな坂田を無視して話は進んでいく。
その間にカリスマのある天野河がクラス全員に戦争への参加を呼びかけ、それに流される形でやりたくない坂田とそれをなだめ続けていた畑山と南雲もやらされる羽目になっていた。しかし坂田のジャンプに対する愛がなせる技なのか、すぐに終わらせてジャンプをすぐにでも読む為か途中から参加する気満々だった。
それでいいのか坂田銀。
そしてその次の日、坂田とクラスメイト達はとある場所へと来ていた。
そこは軍の育成場で、無骨な剣や木刀、槍や弓がそこかしこに置いてあった。
今日日の日本では目にする事のない物の数々に目を奪われていると、坂田達に呼びかける男がいた。
「ようし!それでは全員集まったな!それではこれより、お前達にステータスプレートを支給する!」
その男の名はメルド・ロギンス。この国の騎士団長をしている男であった。
メルドはそう言うと、キャッシュカードサイズの小さな銀の板をクラスメイト達に配り始める。
それをクラス全員が受け取るのを確認すると、再び大きな声で告げる。
「よし、全員に行き渡ったか?このプレートは、ステータスプレートという、文字通り自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。何か都合が悪くなった時には真っ先にそれを提示しろ。そうすれば最悪の状況は回避できる。よし、試しに天野河!オマエ、そのプレートにさっき渡した針で血をたらしてみろ」
「はい」
メルドの説明を聞き、光輝は指に針をつけ、血をプレートに垂らす。するとプレートは輝き、そこにステータスが浮かび上がる。
天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
そのステータスを一目見て、メルドの目が変わる。なんでも初期値でこの値は相当に珍しいらしい。それを見てRPGなどをプレイしたことのある男子達は意気揚々とプレートに血を垂らし始めた。
「あれ?坂田くんまだ登録してないの?」
そんな最中、白崎は未だ登録を行っていない坂田を発見する。すると坂田は面倒臭げに言う。
「ウルセェんだよ、俺は誰の物差しでも測れないような数値を持ってるから登録しても測定出来ないから意味ねぇんだよ」
「でも身分を証明するんだから持っとかないとダメだよ?」
白崎の純然な申し出に坂田はプレートを取り……
「じゃあこれでいいか?ペッ!」
つばを吹き付けた。
「ええ!坂田くん何してるの!?」
「何って要するにこのプレートにDNAつけられればいいんだろ?だったらこれでもいいじゃねぇかよ?ってあっつぅ!」
坂田は問題ないように話すが、ステータスプレートがバチバチと奇妙な音を立てて煙を吹いた。
その様子にメルドは驚きの表情を見せる。
「おいおい坂田!何をやってんだ!それは血をその魔法陣に垂らしてステータスプレートに登録をするんだぞ!ひょっとしたらどこか壊れたかもしれんから見せてみろ!」
「う、ういっす……」
「大丈夫坂田くん?」
メルドと白崎に詰め寄られ珍しく申し訳なさそうにする坂田は、メルドの言う通りプレートを差し出す。
メルドはそのプレートを覗き込み、しばらくすると不思議げに坂田に近寄った。
「あー、すまない坂田。一応正常に機能はしている。機能はしているんだが……なんだこれ?」
「は?何言ってんのオタク?あんたんトコの道具なんだからその異常を俺が分かるわけ……」
メルドから告げられた質問に対してぶっきらぼうに答えつつ、プレートを覗き込む。
そこには……
坂田 銀 17歳 男 レベル;1
天職:たまねぎ剣士
ちから:18
HP:26
みのまもり:18
すばやさ:4
MP:6
きようさ:5
みりょく:4
技能:言語理解・夜叉の面影・万事屋・攘夷四天王
もう色々とツッコミどころが多すぎる。
「なんでだよぉおお!」
南雲が叫ぶのも無理もない。なぜかと言うと全員その気持ちだからだ。代弁してもらっておいてウルセェと言う程このクラスで南雲は馴染めていないわけではない。むしろ言ってくれてありどうくらいに思われている。
「色々とツッコミどころがありすぎだろ!なんでステータス表記がドラクエ仕様になってんだよ!」
「オマエそれはアレだよ、みんなステータスって言ったらまず最初にドラクエかポケモンでその存在を知るだろ?そして最終局面のエルギオス戦に入ると、普段は装備品の着脱以外ではじっくりと眺めないが、感慨深いものだと思ってそのステータスの数値を眺め、当時スライムやズッキーニャ一匹を倒すのにニードと一緒に2人がかりで数ターン消費して戦闘が終了すると、イザヤールさんが頼もしく思えたあの頃を思い出すんだよ」
「それお前だけの話だろーが!ドラクエ9だけでの話だろーが!だったらせめて職業もドラクエ9で統一しとけよ!旅芸人にしとけよ!なんで職業だけFF仕様!?」
「そりゃオメェ、FFのたまねぎ剣士は最後の最後で最強仕様になっただろ?最初は弱くても最後の最後でこちらの期待に答えてくれただろ?時には育成を諦めそうにもなったことがあったさ、順当に強くなっていくジョブに憧れたこともあったさ。しかし、そういう葛藤を乗り越え、そのキャラクターに愛を注ぎ込み続けたものだけが見える景色ってのがあんのさ。イナイレの目金しかり、ファイアーエムブレムの村人枠しかり、大器晩成に人は皆憧れるんだよ、魅力を感じるんだよ、だからたまねぎ剣士を最後まで育成し続けたんだよ!これは、そのたまねぎ剣士に対する思いが滲み出た結果なんだよ」
「認められるかああああ!」
「そうだぞ、認められないぞそんな巫山戯たこと!」
「え!?光輝くん?」
南雲の渾身のツッコミに光輝から援護が入った。意外な援護に南雲が動揺しているのをよそに光輝は坂田に詰め寄る。
(ま、まずい!流石に巫山戯すぎたんだよ坂田くん!今の光輝くんすごい怒ってる!頼むから刺激しないでよ!)
南雲は何も出来ないまま2人の行方を見守る。そして光輝は坂田に向かって堂々と告げる。
「僕はもう我慢できない、さっきから黙って聞いていれば巫山戯たことを言うね?ステータスを最初に見るのはドラクエとか?そんな巫山戯たことを言わないで欲しい」
「んだ、主人公?文句あんなら言ってみろ?俺はいつだって真剣だっつの。たまねぎ剣士舐めんじゃねーぞ、ドラクエ仕様とはいえステータスレベルと装備揃えたら最終的にとんでもねーことになんだかんな、ロトの勇者とタメ張れんだからな」
「僕が言いたいのはそう言うことじゃない……いいかい、僕が言いたいのは……
なんでドラクエやFFは例に上がるのにテイルズは候補に挙がらないんだあああ!」
「「「そこぉおおお!?」」」
光輝の的外れな反論にクラスメイト達は総ツッコミをかますが、そんなことは御構い無しに坂田は真っ向から反論し始める。
「んだオメェ?テイルズはどう考えても候補に挙げるゲームじゃねぇだろ。確かに多くのファンやリピーターが居るのは分かる。故に候補に挙げるべきかもしれねぇ、しかし、一般世間的にいうと知名度はさっきの奴等に比べると圧倒的に低い。更にはストーリーも重厚だから子供がとっつきにくいだろうが、アビスとかヴェスペリアとか完全にキッズ向けじゃねーだろ」
「馬鹿だね、そういう古い固定のリピーターが付いているからこそ、ドラクエやFFの様に早いサイクルでナンバリングを広げる事はできないけど、その期待に応えたいと努力して、一つ一つの作品のクオリティを落とさないように慎重にしているだろう。そういうところを加味しないと、この中に僕以外のテイルズから入った人が疎外感を受けるだろう!」
「じゃあアビスはどう説明すんだよ、あれ色々と波紋を呼んだぞ!ルークがめっちゃ鼻についたぞ、俺は!」
「僕だって彼の事は最初は苦手だったさ。けど最後には昔の自分と決別できただろう。どんな人間だって最後には変わることが出来るって教えてくれた偉大なゲームだ」
「ちげぇよ、アレは特殊な例だろうが。ポケモンとかドラクエを思い浮かべろ、サカキはずっと悪だったろうが」
「僕は今でもあの人は根はいい人だというのを信じているよ」
「オメェの意見じゃねぇんだよ。推測で話すんじゃねぇ」
「……戻ろっか……」
「「「賛成」」」
「お、おいこいつら放置しといていいのか?」
「いいんです、もう好きなだけ喋らせれば満足しますから……」
「光輝、俺は好きだぜ。アビス……」
だんだんと訳がわからない方向へ話がシフトし始め南雲達はソソクサとメルドを連れて部屋を出て行った。
メルドは終始混乱したままだった。
因みに南雲の天職は『錬成師』というありふれた職業だったが、クラスの中には誰もそれをいじる奴はいなかった。たまねぎ剣士でいじる気がほとほとに冷めたらしい。
数時間後、ハジメ達は食事を取るために未だ戻ってきていない2人を呼び戻しに部屋へと戻る。
するとそこでは……
「馬鹿野郎!男がゲームをやるとしたらドラクエかポケモンだろうが!ポケモンの最初の三匹を選んでから即ムックルとの戦闘に突入したあのドキドキ感を男はみんな通るんだよ!」
「違うね。みんな最初はGJの謎の質問に困惑しながらも答えていって相性のいいモンスター勧められたと思ったら、それが最初に連れて行くモンスターだとは知らずに、自分が思い描いていた選択方法と違った事に困惑を覚えるんだよ」
「それジョーカー2の話だろうが、誰がナンバリング最初にやるか!」
……まだ続けていた。
「ちょっと2人とも、もうご飯の時間だしそろそろ……」
「もうアッタマきたぞテメー!テメーをメギドラオンで身体中粉々にしてやろうか!」
「受けて立つよ!マカラカーンで打ち返してやる!」
「だから……」
「残念でしたー!メギドラオンは万能なので跳ね返せませーん!テメェは東狂で初見殺しの魔人にやられてろ!」
「そっちこそ残念でしたー!デビルサマナーではマカラカーンで跳ね返せますー!」
「いい加減にしろやテメェらぁああ!」
「「てぼっさ!」」
ドロップキック炸裂。倒れこむ2人を雑に引きずりながら悲壮感を漂わせて戻ってきた南雲を責める相手は誰もいなかった。
そしてメルドもそれに慣れたのか、特に触れる事なく話を始める。
「あー、それじゃあ全員揃ったところで明日の予定を教えとく、明日からは訓練を中心に動いてもらうぞ?そして数週間したらある場所に行ってもらうが、それはおいおい話させてもらう。それでは、今日はお疲れ様!」
「「「お疲れ様でしたー!」」」
メルドの声にクラスメイト達は意気揚々と合いの手を打つ。
そして南雲の食事はなぜか憐れまれた槍山達が相席で食事をした。
いつもとは違う気分で食べた食事はどこか新鮮な味がした。
「お前もあいつと普段からあんなやりとりして大変だったんだな、すまん、正直言って白崎と一緒に飯食ってるお前が羨ましかったけど、全然そんな事なかったわ、なんか今までごめんな」
「え、あ、うん……ありがど……」
「泣くな泣くな、うん、お前は今までよく頑張ったよ、主にストレスの原因俺たちだったけど……」
「ううん、それでも……ありがと……」
「おう、気にすんな……」
新鮮と言っても、ひどく哀愁が漂い、しょっぱい食事だったらしい。
最初描いてる時は天野河はこんなキャラになるはずでは……
どっからこうなった?