最強攘夷志士は異世界でも最強?   作:極丸

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随分と放置していた割りに短いです。
今回のサブタイみたいなことをちゃんとしていたから、銀魂はあんなにも愛されていたんだなと感慨深く思いました。
まだまだだな


ギャグとシリアスの境界線はハッキリさせないと読者からのヘイトを買うから気をつけろ。

オルクス大迷宮の目の前にてメルドは南雲達に呼びかけを行っていた。

 

「よし!それでは全員気合を入れていけ!ここから先は本当の命のやりとりをする!いいかお前ら!一瞬の気の緩みが生死を分ける!それをしっかりと頭に叩き込め!」

 

先日までの豪快で穏やかな性格とは一変し、一切の甘えを許さないその表情に、クラスは一段と気を引き締める。

メルドが全員の顔を確認すると、満足げに微笑みいつもの様に笑った。

 

「よし!全員その気概だ!それが分かれば問題ない!それでは行くぞ!」

 

そして南雲達クラスメイト全員での初の迷宮攻略が始まった。

洞窟内を進む中、八重樫はメルドに駆け寄る。

 

「それにしてもメルドさん、先程の鼓舞は凄かったですね?普段とは違ってびっくりしましたよ」

「おお?そうか?いやー、そりゃあ嬉しいな!実を言うとアレはただのモノマネでね?俺の憧れの人の鼓舞の仕方をやってみただけなんだよ」

「憧れの人?いったい誰ですか?」

「ああ、ありゃあ俺がまだ騎士団に成り立ての頃の話だった。王都の騎士団が全盛期で一番強いと言われてた時期でな?まぁ今でも強いと思うが、その頃には顔のいい連中も揃っててな、今よりも民衆からの声も高かったんだ。そんな中、はるか辺境の田舎からやってきたならず者みてぇなチンピラ集団がやってきてな?その連中の大将が騎士団試験に参加するなりこう言ってきたんだ」

 

『すまねぇが、俺達はあんたらみてぇに神の為だとかに剣を振るう訳じゃねぇ。俺たちの護りてぇもん護る為にやるんだ。そこであんたら騎士団の皆様方には、俺達チンピラ集団が街を守れる連中だって言うこと証明して欲しいためにここに来たんだが?いいか?』

 

「こう言われてこっちも黙っちゃいなくてな?初っ端から俺達の存在意義根底から覆す様な事かましてくるもんだから、そん時その場にいた騎士団員全員でそのチンピラ集団囲い込んでボコボコにしようとしたんだが……まぁそいつらの強ぇのなんの。その集団の倍以上いる団員をバッタバッタとなぎ倒していきやがる。それでいて戦闘職が天職じゃねぇって後から言いやがるから、もう襲いかかった奴らのメンタルは粉々。そんで後から大将格がこう言いやがったんだ」

 

『どうですかい?これであんたら王都の護り手とやらを倒せる様な力を持ってるのを示せた訳でさぁ。この事実隠して欲しけりゃ、何するか分かってるよな?』

 

「ふ、今思い返しても滑稽さ。大の大人が10にもみたねぇ様なガキに頭掴まれて身悶えてんだ。当時の俺からしたら一気に騎士団の権威が失墜してったね。以来、その時期は騎士団の中じゃ誰も話さないタブーになっちまってな。今でも団員の中にそいつらを恨んでる奴らは多いんだ」

「へ、へー、そうなんですか?」

「ああ、だが俺は、一度しか会ったことのないあの人たちに憧れてね。いつかトータスの騎士団をあの人達の作る団よりも素晴らしいモノに仕上げるって言うのが俺のその日から変わらない目標なのさ」

 

思い返す様に目を閉じながら語るメルドに天之河は引きながらも感心する。そりゃあ、ゲスなところはあったが、今の騎士団よりも強いと言われていた時期の面子を、その半分以下で倒したと言うのだ。強さのみで言うと、確かに感心するのも無理はない。

 

「っと、そろそろ魔物が出てくる頃合いだな。いいかお前ら!まず最初に魔法職の面々が後方から敵の数をあらかた減らせ!そこから近接職の人間が各個で敵を減らしていけ!危なくなったら俺らもフォローをするから安心しろ!」

 

メルドは声高にクラスメイト達にそう伝える。そしてそれを聞いたクラスメイト達にも緊張が走る。

皆一様に己の武器を握りしめ、息を大きく吸いながら緊張をほぐし始めた。

 

「おい、サカタ!オマエも早く準備を始めろ!」

 

それを確認し、メルドは後方を歩いていた坂田達に注意を促すため、後ろを振り向くと……

 

「だからなんでお前は頑なにビアンカを推し進めんだよ?男なら黙ってフローラ一択だろうが」

「いいや、君の方が理解できないね。ビアンカの幼い頃からの思いを踏みにじると言うのかい?それを裏切ってまでフローラを選ぶことは僕にはできないね」

「けどよ、ビアンカは正直言って、もう結婚しすぎただろうが。一体何人の主人公がビアンカと合体したよ、一体何人のフローラがアンディと合体したよ。も、いいじゃねぇか。違う合体を体験させてやれよ。フローラが主人公と合体してもいいんじゃねぇの?」

「馬鹿だね、フローラとアンディは主人公とビアンカと同じで幼馴染さ。その幼馴染2組が誰にも邪魔されることなく結婚することができるんだから、これ以上にない幸せなことだろう」

「もうビアンカもそれに飽きてきてんだって。何回リメイクしようとリトライしようと、結局最初の旦那と合体だよ。転生を繰り返し続けても、誰もフローラを選ばないんだからビアンカの方も最初の数回はそれでも幸せだったけど、もう飽きてきたんだよ、主人公との合体が。

主人公の主人公に満足できなくなっちまったんだよ。そろそろ加藤の鷹に会いたくなってきたんだよ」

「ビアンカはそんなこと言ったりしないよ。一万年と二千年前から愛していたんだよ」

「じゃあフローラは君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えなくなったぞ?こっちの方が一途ないい女だろ?」

「それは少し一目惚れによる恋愛フィルターがかかってだね……」

 

ドラクエ談義に花を咲かせていた。今回のテーマは『ビアンカとフローラ、どっちが嫁としていい女か』らしい。それを見てハジメのツッコミが炸裂する。

 

「もういいわオメーラ!何このタイミングでもゲーム談義してんだ!ビアンカもフローラも実在しねーよ!いねーよ天空の花嫁なんて!早くしねーとデボラのかかと落としオメーラにぶち込むぞ!」

「んだハジメ?オメーデボラ派か?珍しいな?だが今回ばかりは譲らねーぞ?フローラはオレのだ」

「違うよフローラはアンディのものさ。僕たちにはビアンカがいる」

「てめーらが奪い合ってる花嫁なんてどこにもいねぇよ!オメーらなんざチャゴス王子のようにミーティア姫が主人公と結婚する様を兵士に拘束されながら眺めてろ!」

「誰がチャゴス王子だ!!せめてククールレベルのイケメンだろうが!」

「それオメーがククールのストパーに憧れてるだけだろうが!いい加減諦めろ!オメーはパパスみてーなもボサボサヘアーが限界だっつの!」

「てめーパパス舐めんじゃねーぞ!ホーリーエッジでトドメの一撃喰らわしてやろうかコラ!」

「そうだよ!パパスは最後まで主人公を思いやった立派な父親だろう!愚弄するのは許さないよ!」

「ちょ、落ち着けオメーら!今はそんな時じゃねーだろ!」

 

ハジメも少しばかりハイになって収拾がつかなくなってきた。

まさかの槍山が仲裁に入るレベルでカオスと化し、言い合いが終わる頃には全ての魔物を討伐し終えた後であり、ハジメと銀と光輝はこっ酷くメルドに叱られた。ついでに言うと結論として一番いい女はゼシカになった。

そして特に大きな問題もなく20階層へと着くと、メルドが告げる。

 

「よし、ここから大迷宮の本番だ。この辺から魔物も知恵がついたやつが増えてくるから一筋縄じゃいかねぇ。よく周りを観察しながら慎重に進め!」

 

メルドの声にクラスメイト達の間に緊張が走る。坂田は未だに鼻くそをほじっていたが。

そして次の瞬間、突如として近くにあった岩がせり上がりクラスメイト達に襲いかかる。

 

「あれって……ロックマウントだ!岩に擬態してたんだ!」

 

それは魔物であった。ゴツゴツとした厳つい皮膚に覆われた二足歩行のゴリラのような魔物、ロックマウント二匹が周囲を囲んでいた。うち一匹はハジメ達後方に襲いかかるが、それは失敗に終わる。

 

「おらぁあああ!」

 

坂田であった。坂田は戦闘向きの職種でありながら、ステータスの低さが災いし、後方部隊の護衛に回っていた。

坂田は腰にさしていた木刀をロックマウントに振り抜く。そしてロックマウントは、アッサリと縦に引き裂かれ絶命した。

一太刀でロックマウントを斬り伏せた坂田に、白崎が歩み寄る。

 

「だ、大丈夫!坂田君!」

「おう、大丈夫だって気にすんな」

 

心配で歩み寄る白崎に対してなんとも適当な態度を取る坂田に、イラつく後方部隊の面々であった。

そんな考えはすぐさま飛散する。前方で爆音が響き渡り、そこに目をやるとイケメンスマイルを輝かせた光輝が立っていた。どうやら先程の衝撃は彼の攻撃らしい。

特に何の問題もなく魔物を退けた南雲達だったが、ここでトラブルが起こる。

 

ズン……

 

 

ズン……

 

 

突如として地響きが南雲達の耳に響く。

 

ズン…

 

ズン…

 

その地響きは段々と近づいてきており、遂にはハジメ達が立っていられなくなるほどの地響きが響く。

この異常事態には、メルドも困惑していた。

 

「なんなんですか!?この地響き!?ひょっとして何かトラップが!」

「いや、それはない!とにかく今はこの異常事態の原因を探るよりまずは各々の安全の確保だ!全員さっきの階段前まで走れ!」

 

畑山の質問にメルドは答えながらも全員に指示を出す。その指示にクラスメイト達は一斉に元来た場所から走り出すが、その瞬間、揺れは最高潮にまで達し、ピタリと止まった。

その代わり……

 

 

ゴルルル……

 

空気がうねる様な低音を響かせて、そこには巨大な禍々しい龍がハジメ達を見つめていた。

 

「べ、ベヒモス……」

 

メルドのささやく様な声が、その薄暗い洞窟では何故か響いて聞こえた。


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