最強攘夷志士は異世界でも最強?   作:極丸

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更新遅れて申し訳ない……


主人公が奈落に落ちるということは主人公のステータスが上がることを意味する。

ハジメが落ちた場所には水が流れる音がした。

目を開けるとそこは暗い洞窟の様な場所であり、遠くの方から滝の流れる音がした。

ハジメは滝の音を聞き目を覚ます。

 

「う、うーん……頭がいたいな……えっと確か、僕は……坂田くんの足を掴んで、それで……」

 

ハジメは意識が朦朧とした中で必死に頭を回して記憶を探り出す。

次第にだんだんと意識が戻り始め、坂田達も一緒に落ちた事を思い出す。

 

「そうだ!坂田君に光輝君に檜山君!3人もここに落ちたんだ!早く探さないと!」

 

ハジメはそう言って起き上がり辺りを見渡す。そこは岩盤一色で所々にある光る水晶の様なものが唯一の光源だった。

 ハジメは明かりを頼りに歩き回り、3人を探す。

 そうしてハジメは大きな空洞に来た。そこには水晶が密集しており、より明るい場所となっていた。

 

「へー、綺麗な場所だなー。って違う違う、今は3人を探すのが先決で……」

 

 見惚れていたハジメだが、すぐさま自分の目的を思い出して頭を振る。すると遠くの方から何か声が聞こえた。

 

 

「……ぁー!……ぁ……ぇ……ぁ……ぇー……ぁー!」

 

 

 

「ん?この声って坂田君?」

 

それは坂田の声であった。遠くの方から聞こえてくる坂田の大きな声、さらには叫び声のように徐々に語尾が強くなっており、定期的に響いてきた。

 それを聞いてハジメは少しばかりぞっとし始める。

 

「も、もしかして坂田君、ここにいる魔物に襲われてる……?」

 

 あり得ない話ではないとハジメは思った。

 ここはハジメの予想では恐らく最深部か、そうでなくともそれに近い下層にまで落ちてきたのかもしれないのだ。先程のベヒモスのような強さを持った魔獣がいたとしてもおかしくはない。ハジメは恐る恐る坂田の声がする方へ足を運び、大きな岩陰のそばまでくる。 

 そして慎重に顔を出して坂田がいると思われる方角へ顔を向けると……

 

「かーめーはーめー……

 

 

 

 

 

……波ぁああああああああ!」

 

 腰を低く落としながら両手の手首の内側を合わせて腕を前に突き出した状態で叫ぶ坂田(バカ)がいた。

 

「何やってんだてめぇはぁあああ!」

「ごくうぅ!」

 

ハジメはすぐさま馬鹿を止めに蹴りをかましてかめはめ波の練習を中断させる。

止めに入られた坂田は少し照れ臭げに止めに入ったハジメを見る。

 

「んだよハジメ、見てたんだったら声かけてくれよ~、俺めっちゃ恥ずかしいじゃん……誰もいねぇと思ってたから全力で練習できると思ったのによ~」

「何ちょっと照れてんだよ!撃てる訳ねぇだろ『かめはめ波』なんて!お前あれ亀仙人がどんだけ熟考して作り上げた技だと思ってんだ!お前ごときが使いこなすことを目指すとか烏滸がましいにも程があるぞ!」

「いやだってよ~、ここ異世界だぜ?魔法がある異世界だぜ?だったらかめはめ波出せるかもしんないってちょっとくらい思うじゃん?諦めかけてた幼少の頃の夢がかなうかもしんないと思うと挑戦してみたくもなんじゃん?」

「だからって魔物がうようよいる今この場ですることでもねぇだろ!なんで王都にいるときやんなかったんだよやっても意味ねぇけど!」

 

 ハジメのツッコミに坂田は何を言ってるんだかと言いたげな顔で告げる。

 

「いやー、それはちょっと見られるかもしんないと思うから出来んじゃん?こういう誰もいないという前提があるから全力で練習できるんだよ」

「知らねぇよお前のポリシー!とにかく、早くここ出てほかの二人を探そう?」

「いや、半分お前のせいでもあるからな?」

「ほら行くよ」

「おい、ちょっと待てや加害者」

 

 多少自分にとって不利な話題が上がった為早急に話を切り上げてほかの二人を探し始めるハジメに坂田はある種の関心を抱くが、特にそこまで攻める気もないのか話はそこで途切れ、他の二人を探し始める。

 

「……ぁぁぁあ……ぁぁぁああ」

 

「あ!光輝君の声だ!」

「なんかやけに呻いてんな?」

「きっと何か魔物の毒物にやられたんじゃ!?大変だ急ごう!」

 

 そして光輝の声が二人の耳に入る。そしてハジメは何か毒にやられているのではと合点を付け、早急に走り出す。何もできないが居ないよりはマシなはずだ。

一心不乱に走りぬき、やがてハジメがたどり着いたのは大きな谷の渓谷だった。

そこに光輝はいた。

 

「ハァァアアアアア!!!ペガサス……彗星、拳ンンンンンン!!」

「廬山龍飛翔ゥウウウ!!」

「星矢!!」

 

 ペガサス彗星拳の構えを取って。

 なんとなくだが察しがついていたドラゴンハジメは勢いそのままに最終奥義をペガサス光輝に叩き込んだ。

 

「なんでお前も必殺技に未練あるんだよ!お前が練習するんだったらせめて天翔龍閃のしろ!なんで剣すら使ってねぇんだよ!」

「なんだハジメ君、君も近くにいたのか。しかし感心しないな?まだペガサス彗星拳は途中だったんだよ?終わるまでは突っ込まないでほしかったな?」

「大丈夫だよ終ってるから。光輝君の頭が」

 

 子供の様な文句を垂れる光輝を半ば無視し、ハジメは振り返って辺りを見渡す。青白い光を放つ水晶がハジメたちの周りを照らし、光が差し込まれていないこの下層の空間でもハジメたちはお互いを認識できていたのだ。

 ハジメは改めて自分があの衝撃波に巻き込まれた結果ここに行きついたのだと感じた。

 

(……悲観しても何も始まらないな、まずはお荷物になるかもしれないけど、二人を見つけ出すことが出来て良かったってことにしよう。後は檜山君だけど……そうだ!檜山君が!)

 

 ハジメはブルーになりそうになった気持ちをグッとこらえて、坂田と光輝にこれからどうやって生き延びていくかと、檜山捜索の作戦会議を開くため、再び振り返る。

 すると……

 

「だからちげぇよ。ペガサス彗星拳はこっからこう行ってだな……」

「それなら君のかめはめ波も言わせてもらうけど、こうからこうじゃなくて、こういってこうだよ」

「あのシーン限定のかめはめ波だろうが。ほとんどのシーンでのかめはめ波はこう構えてからだな……」

「それなら君が指摘した彗星拳も基本ポーズはこうだよ」

「だからそれは最初の彗星拳だろ?そこから星矢は徐々に改良を重ねてだな……」

 

「ゴムゴムのスタンプゥ!!」

「「ゴハァ!!」

 

 ハジメはドロップキックを放った!

 効果は抜群だ!

 バカA バカBの急所に当たった!

 

 ハジメはまたしてもドロップキックでバカたちに制裁をかます。2~3メートル吹き飛んだ後、バカたちは多少の痙攣を起こし白目をむいて動かなくなる。

 

「はぁ……この二人に協力を頼もうとしたのがまず間違いだった……もういいや、どうせ二人の事だからゴキブリ以上の耐久力を見せてくれるだろうし、しばらく放置しておくか……目が覚めるまで食料調達でもしておこう。早く檜山君の居場所を突き止めなきゃだし」

 

 そう言ってハジメは白目をむいて伸び切っている坂田と光輝をほったらかしにして錬金術師の力で作り上げた武器を片手に迷宮奥地へと歩みを進める。

 この時の南雲ハジメは長い事坂田(バカ)の相手をしてきた影響ゆえか、心に余裕が出来ていた。理不尽を相手に日ごろから揉まれてきた彼にとって、何がいるか分からない迷宮程度、恐れるに足らない存在となっているらしい。ハジメは手にした拳銃をもって食料調達に向かった。

 

「んで、俺らが気絶している間にこんだけ糞まずい犬の餌作ってきたってか?なにこれ、これなんて罰ゲーム?」

「文句言うんだったら食わないでくれる?これ取るの大分苦労したんだからさ」

「個人的には辛さは少し控えた方がいいんじゃないかな?このカレーはどう味わっても素材の風味とかを無理矢理ねじ込んだスパイスが殺してるよね。大味なのを隠したいのは分かるけどこれじゃあちょっと食べたいカレーとは思えないよ」

「じゃあいまから光輝君の口に魔物ねじ込んで殺してあげようか?魔物の肉なんて嫌悪感あるだろうからって配慮して王都の厨房からくすねたスパイスふんだんに使って臭い消したのにこの仕打ちだよ」

「おめぇな、ちゃんと玉ねぎ飴色になるまで炒めたか?カレーはスパイスも重要だが、そこに載せる具材がおざなりになっちまってたら意味ねぇぞ?」

「あいにくだけど火は節約したいからそんな事に使えないよ。もし玉ねぎを飴色に炒めるんだったら坂田君を墨色になるまで炙るよ」

 

 数時間後、3人は火を焚いてある大きな鉄鍋の前で食事をとっていた。メニューは魔物のカレー鍋(仮)である。ハジメが手当たり次第に捕まえてきた魔物たちをとりあえず錬成で作り出した鉄鍋にスパイスと一緒に放り込み、なけなしの魔力で火を焚いて水を注いで作った即席鍋だ。スパイスは魔物に対しての目くらましとして使えないかと思って持ってきていたものだ。

 ちなみに水を作る段階でハジメの魔力が尽きかけた為、途中から魔物の血を鍋に水増しで注いだのはハジメだけの秘密だ。

 得体の知れないモノであるにも拘らず、ムシャムシャと食べ始め特に変わった様子のない二人を確認した後食べ始めたハジメは、現在半ば鍋奉行をやらされていた。

 

「にしても、これからどうする?ここじゃあいずれ魔物に見つかったら終わりだよ?一応戦えるメンツが揃ってるから、脱出に手が無い訳では無いけど、それより……」

「あー、檜山の野郎の捜索って奴か?」

「当然探すべきだ。この広いダンジョン内で僕ら三人がこんなにも早く合流することが出来たんだし、檜山君もきっとすぐに見つかるはずさ」

「そりゃあすぐ見つかるよ、世界広しといえどあんたらレベルの馬鹿は早々いないからね。ま、それは置いといて、それじゃあ……」

「まぁ順当だよな。おーし、んじゃあ上に上がりつつ捜索ってことでいんじゃね?」

 

 

 狩った魔物も残りわずかになってきた頃、ハジメの切り出した話題に坂田と光輝は軒並み同じ意見を述べる。

 その肯定的な意見にハジメはほっと一息つくと、二人は空となった食器を鍋に放り込んでおもむろに立ち上がる。その様子にハジメはキョトンとしているが、それも無視して二人はずんずんと足を進める。

 

「ちょ、ちょっと二人とも!?」

「んだよハジメ、速くいくぞ」

「そうだよ、急がないと手遅れになるかも知れないんだから、早く」

「ええ!?もう探しに行くの!?いろいろと方針とか決めないと……」

「「んなもんいつも通り……」」

 

 二人はハジメの方を振り返りながら言い放つ。

 

「「ガンガン行こうぜで何とかなんだろ」」

「…………」

 

 その振り向いた顔は厭味ったらしいにやけ顔だった。

 しかしその笑みはどこか信用出来るような、方法は無茶苦茶でも最後は何とかなるような気がする、そんな笑みだった。二人はそう言い終わると再び歩き始める。

 ハジメはその笑みを見て呆れ半分にため息をつく。

 そして、もうどうにでもなれと言わんばかりに乱雑に足を前へと進め、二人の横に並び立つ。

 

「分かったよ、もうこうなったら二人に合わせるよ。今の状況じゃ僕の方が異常って考えた方が楽だ。周囲に迷惑をかけるわけでもないし、今はどうでもいいって考えた方がいいね」

 

 そう言ってハジメは二人と並んで広場を去る。馬鹿とツッコミが揃ってこそ、バランスは保たれるのだ。

 

 

 

 

 

「…………ここ何処だ……」

「……あなた、誰?」

 

 そして檜山も坂田の影響か、本来とはあり得ない出会いを果たしていた。

 否。

 果たしてしまっていた。

 

「お前こそ誰だよ……」

 

 呆然と目の前を見つめる檜山の前には……

 

「…………名前、あなたがつけて……」

 

 白い結晶体に体を拘束された金髪の少女が赤い瞳でぼんやりと檜山を見つめていた。

 

 

 

 




なんかどんどんわけわかんない方向へ進んでいく予感が……

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