なるべく本編も早くかけるように頑張って行きます。
それと今回の話はプロローグののび太視点の続きになっていますから、読むときはプロローグを先に読んでください。
のび太とイエイヌ
ドラえもん達と離れ離れになったのび太は森の中で出会った少女の住む家に招き入れてもらって話を聞いていた。因みに家に着くまでに互いに自己紹介を行った。
「えーと、つまりイエイヌちゃんは元々動物で"サンドスター"って言うのに当たったらそんな姿になっていたの?」
「その通りです! 流石はご主人様、話が早いです!」
「えへへ、それ程でも……」
可愛い少女に褒められると顔を赤くして照れるのび太だが、先ほど少女が言った言葉に思わず耳を疑った。
「ま、待って! と言うか僕はイエイヌちゃんの事を全然知らないよ? 僕達これが初対面だよ」
「いえ! きっとご主人様は"きおくそーしつ"で私の事を忘れているだけです!」
「そんな無茶苦茶な……」
記憶喪失で押し通そうとする少女にのび太は思わず頭を悩ませ、なんとか誤解を解こうと普段からあまり使えない脳を必死に動かして考える。
「そうだ! 僕は野比のび太って名前だからイエイヌちゃんのご主人様の名前とは違うよ」
流石にこんな珍しい名前のご主人様はそういないだろうと自虐的な思いをしながら言うが、
「大丈夫ですよ。わたしもご主人様の名前を忘れてしまいましたが、きっとその名前でした」
「そんなぁ〜!」
まさかのイエイヌ自身がご主人の名前を忘れているありえない事態が発生した。というよりご主人の名前を忘れてなぜのび太がご主人とわかったのか全くわからない。そこに気づかないのがのび太らしいが、
(どうしよう、どうすればこの子は僕がご主人様じゃないとわかってくれるんだろう)
のび太は必死になってなんとかイエイヌにご主人では無いことを説明しようと考えるが、中々思い浮かばず頭を悩ませる。そんな姿を見て彼女はある事を思いつく。
「あ、少し待っててください」
「え?」
するとイエイヌは部屋の奥に行くとお盆に謎の赤い液体が入った透明感溢れるガラスのポッドとカップを持ってきた。
「どうぞ……これはご主人様がいつも飲んでいた葉っぱを浸けたお湯です」
彼女はポッドの中身をカップに注ぐとそれをのび太に渡した。彼は彼女から貰ったコップの中身を覗くとそこには紅く透き通る上品な香りがするお湯が入っていた。
「えっと、お茶の事かな?」
謎の液体の正体は洋菓子と共に飲む紅茶と判断したのび太は恐る恐るイエイヌがカップの中に淹れてくれた紅茶をチビチビと口に入れる。
「うん、美味しい!」
「ありがとうございます! それとじゃぱりまんも食べませんか?」
再び部屋の奥へ行くと、自分の拳より1.5倍デカイ饅頭らしき食べ物を持ってきて、のび太に渡した。その饅頭には大きな"の"の模様が描かれており何処と無く親近感が湧き、丁度お腹を空かしていた為、有り難く頂いた。
「ぷはぁー、美味しかった」
「それは何よりです。それじゃあ、ご主人様、食後の運動にコレを投げて遊んでください」
そう言って彼女はのび太に黄色い円盤、"フリスビー"を渡した。このフリスビーもじゃぱりまん同様に大きな"の"の模様が描かれている事に親近感が湧く。普段ののび太なら食事を終えたらすぐ昼寝るのだが、
「うん、喜んで!」
女の子の頼みとなればどんな事も聞いてあげる。それが野比のび太という人なのです。
2人はお家から出るとある程度距離を取り、まるで西部劇に出てくるガンマンの決闘のように互いに緊張感が走る。
「いくよ〜、それ!」
のび太はイエイヌに向かってフリスビーを投げる。しかし、のび太はあまりフリスビーをうまく投げられず、真っ直ぐ飛ばずイエイヌの斜め左に高く飛んでいくが、
「わおーん!」
なんと、彼女は絶対に届きそうではないフリスビーに向かって大きくジャンプして口でキャッチする。そのシュールな姿にのび太は思わず笑い声をあげる。
「ははっ、口でキャッチするんだ」
「はひ、ほうなんれふ(はい、そうなんです)」
口にフリスビーを咥える彼女を見てのび太はかつて飼っていたある犬の事を思い出しながら、慣れた手つきで彼女からフリスビーを受け取ると、もう片方の手でイエイヌの頭を撫でる。すると、彼女はとても幸せそうな表情を浮かべて「くぅ〜ん」と声を漏らす。
「なんでしょう、ご主人様に撫でられるととても心が穏やかになっていく感じがします」
「え、そうなの?」
心が穏やかになっていくと聞いて、のび太は一瞬首を傾げるが、イエイヌが幸せなら別にどうでもいいかと判断し、あまり詳しくは聞かなかった。
「そうです!ご主人様何か命令してくれませんか?」
「へ?急に何言い出すの?」
突然自分に命令してほしいというイエイヌにのび太は思わず、疑問符を浮かべる。
「はい、今思い返してみたら私はご主人様にお願いしているばかりで、本来ならご主人様のお願いを聞くのが私の役割と生き甲斐ですから、なんでも命令をして欲しいのです」
「急に言われても……うーん」
イエイヌはなんでも命令して下さいと言ったが、のび太は彼女を
「よし、決めた!イエイヌちゃん!」
「なんでしょう!」
イエイヌは己の尻尾を振りながらのび太の命令を待った。
「一緒に散歩しよう」
「はい!」
それからのび太はイエイヌと共にお家の周辺の森の中をしばらく散歩した後、お家に戻ってくると、
「あ!そろそろ暗くなってしまいますね……」
「本当だ、もう日が沈み始めてる……」
2人の視線には地平線の彼方に沈む橙色の夕日があり、もうすぐ夜になるとわかった。その時、のび太の胃が鳴り響く。どうやら彼の腹時計がそろそろ夕飯の時間だと告げているようだ。それを察したイエイヌは何処かへ出かけようとする。
「それじゃあ"ラッキーさん"のところでご主人様の分のジャパリまんを貰ってきますのでちょっと待っていてくださいね」
「う、うん……」
「あ、そうそう。外にはセルリアンが居るからおうちからは出ないでくださいね!」
そう言ってイエイヌは家を出てこの近くにいるラッキーさんの元へじゃぱりまんを取りに家を出て行った。
「留守番か……」
留守番を任されたが、なにして時間を潰そうか悩んだ。此処には漫画やゲーム、テレビなんて存在しない。だとすると、残っているのは昼寝しかないと思ったのび太はその場でゴロンと横になって寝ようとするが、
「……ん?あれは……」
部屋の隅っこでなにかを見つけ、部屋の隅まで歩くとその何かを拾う。
「これは……毛糸?」
のび太は手に取った毛糸を暫く眺めていると、ある事を思いついた。
「毛糸か……そうだ!あやとりをして待っていようか」
早速あやとりをしようと毛糸の切れ端と切れ端を結び輪っか状にすると、指と指に絡ませて自身のアートを作っていくのだった。
「遅いなぁイエイヌちゃん……」
あれから2時間が経ち、外はもう日が完全に沈んでしまい、少しずつ月の光が窓に差し込んできた。のび太はあやとりをやりだしてから、今の時間までもう何十通りも色々な形を作ってきたが、流石にあやとりでは空腹は紛れず段々と飽きてきた。のび太は窓の外をみて、イエイヌが帰ってきていないか気になって仕方なかった。
「ひょっとして迷子になっちゃったのかな?」
流石に此処に長く住んでいる彼女が迷子するなど考えにくいが、もしかしたら本当に迷子になっているかもしれないと心配していた。
「少しなら外に出ても……」
お留守番を任されたのび太はイエイヌとの約束を破ってしまう事に罪悪感を感じながらも玄関を開けて外へ出る。
(あれ、これってもしかしてドラえもんを探しに行けるチャンスなんじゃ?)
今ならイエイヌが見ていないためドラえもんたちを探しに行ける。のび太はそう考えて、イエイヌのお家から出て探しに行こうとするが、
「っ!駄目だ‼︎今はイエイヌちゃんを探しに行かないと!」
知り合った女の子を放っておく事は出来ない。のび太は昼間に森の中を散歩した時の道を思い出して、イエイヌを探しに行った。
「ご主人様遅くなってごめんなさい。じゃぱりまんを配っているラッキーさんが途中溝にハマっていたので助けてきました……あれ?ご主人様?」
のび太がお家を出て二、三分後にイエイヌはお家に帰ってきたが、そこにはもうのび太は居ないと認識するの数秒後だった。
のび太がイエイヌの住処から抜け、森のなかへ入ること数分後が経過する…………。
「イエイヌちゃぁ〜〜〜〜ん!!」
のび太は彷徨っていた。と、言うよりも森の中で迷っていた。ジャパリパーク内の地図すら持っていない彼が迷子(仮)のイエイヌを探す。ましてや案内の1人も居ないとなれば不可能に近い事である。そして昼間に散歩した道をもう忘れてしまっていた為、彼は宛もなく歩き回る。
「イエイヌちゃ〜〜ん!何処に居るの〜〜〜!」
何度も大声で呼びかけるが、返事をする者は誰も居ない。フレンズどころか鳥一匹すら姿を現さない真っ黒な空を見上げ、のび太は膝から崩れ落ちる。
「疲れた〜、こんなのなら抜け出さなければ良かったよ……」
そもそも、のび太自身運動音痴であり、長時間歩き続けるのは無理がある。こんな事ならイエイヌが帰ってくるのを待っていれば良かったと後悔する。
そんな時である。近くの茂みから音が鳴る。びっくりして尻餅をつきながら、のび太は口を開く。
「だっ、誰!?」
そう呼びかけ、イエイヌかと期待するのび太。彼の視界に入って来たのは……。
「………」
無言でコチラをジッと見つめる。赤目を持つ
「変なの、緑色の身体で羽根なんか生やしちゃってさ」
イエイヌじゃない事に落胆しながら起き上がり、重い足を動かそうとするのび太であったが、とある事に気付く。
「………あっ!さっきの子なら道が分かるかも!」
先程見かけたのは、恐らく此処ら辺に住む誰かなのだろう。その子ならばきっと道案内してくれると希望を抱きながら生い茂った獣道を進んでいく。
「おーーーーい!ちょっと待って〜〜〜〜!」
茂みを掻き分けて行くと、緑色の姿をした何かが現れる。やっと追いついたと肩で息をしながら追いつくと、ブヨブヨと赤い瞳をした緑の何かは、のび太に襲い掛かって来た。
「わーーーーーっ!!?(さ、さっき見かけたのは……!コレだったの〜〜〜!?)」
襲い掛かって来る自分よりも一回りも二回りも大きな怪物から必死で逃げ惑う。
「あっ!ぶべぇ!」
その途中に木の根に躓いてしまい、その場でバタリと転んでしまう。今にも背後からその巨大で自分を呑み込んでしまうのではないかと言う恐怖にのび太は叫ぶ。
「ドラえも〜〜〜〜ん!!」
その時、近くの茂みから何かが飛び出してきた。自分を守る形でイエイヌが現れる。
「野生解放です!」
目が輝き、大きく跳んだかと思うとそのまま怪物であるセルリアンの頭上に向かって腕を伸ばす。ピキッ!と、何かが割れる音と共にぱっかーん!とセルリアンがバラバラに弾け飛んだ。
「大丈夫ですかご主人様!」
「え、あっ! イエイヌちゃん!
あ、ありがとう! ……でも、さっきのって何?」
自身を助けてくれたイエイヌにお礼を言いながら自分を襲ってきた謎の怪物について聞く。
「セルリアンですよ。知らないんですか? ここら辺はセルリアンが多いので出るのは危険と言ったじゃないですか」
「そ、そうだったっけ……ごめん。けど、イエイヌちゃんが無事でよかったよ」
「え?」
家を出る前に彼女が忠告していたセルリアンは先ほどの怪物の事を言っていたのかとわかったのび太は彼女を探すためとはいえ、忠告を無視してしまった為、のび太は彼女に謝った。
「……ご主人様、いえ、のび太さん此方こそごめんなさい」
「え?」
突然イエイヌも頭を下げて謝る。のび太はその姿をみて思わず呆然となる。謝るのは此方である筈だ。のび太は彼女のお家でお茶とじゃぱりまんをご馳走させてもらい、さらには周辺の地理について教えてもらったり、(しかし、のび太は全く理解出来なかったが)先ほど自分を襲ってきたセルリアンを倒してくれたのだ。そんな彼女が自分に何か悪いことをしたような事は身に覚えがなかった。
「なんでイエイヌちゃんが謝るの?悪いのは忠告を無視して家を出た僕の方なのに……」
「そうじゃないんです。本当はのび太さんがわたしのご主人様ではない事は分かっていました。わたしは久し振りにヒトと会ったので浮かれてしまってついご主人様と呼んでしまいました」
どうやら彼女はのび太がご主人様ではないとわかっていながらものび太をご主人様と呼んでいたようだ。
「そうだったんだ……じゃあ、あの時ご主人様の名前を忘れちゃったのは嘘なの?」
「いえ、それは本当です。さらに言うと私はご主人様の顔すらも覚えていません」
「ええっ⁉︎本当に記憶喪失だったの?」
記憶喪失は演技だと思っていたのび太は本当に彼女が記憶喪失である事に驚きの表情を見せる。
「ただ、はっきり覚えているのはご主人様はのび太さんのようにとても優しいヒトでいつも私の隣にいるだけで楽しい方だということなんです」
「いや〜、照れるなぁ〜」
どうやら彼女は自身のご主人様の姿は忘れてしまったが、人間性はどのような物なのかはしっかりと覚えているようだ。そして、のび太は自分の事を優しく楽しい人と呼ばれ、照れた表情を浮かべる。
「そう言えばイエイヌちゃんはどうして僕の居場所がわかったの?」
「はい、のび太さんの匂いを探して見つけました」
「そっか、イエイヌちゃんは元々犬だから鼻が良いんだね」
だから自分の居場所が分かったのだと理解したのび太だった。すると、彼女はある事を思い出してのび太に質問する。
「そういえばのび太さんはお家を出た理由は誰かを探しにいこうとしたからですか?」
「まぁ、最初はそうだったけど、イエイヌちゃんが心配だったからイエイヌちゃんを探す為森の中を歩いたんだけど道に迷っちゃってね」
イエイヌはそのままのび太から事情を聞き、暫く考えた後口を開いた。
「のび太さん誰かをお探しなら探偵に頼んでみたらいかがですか?」
「え?此処には探偵がいるの?」
「はい、この先を行けば探偵をやっているフレンズさん達のじむしょというところへ行けますよ。よかったら案内しましょうか?」
「うん、お願いするね」
彼女から探偵に頼ると言う提案を受けた後、とある場所へ案内される。
そして、その2人の姿を遠くから見つめる者達がいた。
「良かったのか?我々が助けなくて」
「ああ、別にいいさ。いずれは奴等に関わる。それにイエイヌは記憶がなくなってもその本質は変わらない事を確認できた」
そこにいたのは胸に黄色または鮮やかな緑色に光る大きな蝶ネクタイを身につけた黒い少女と青く光る翼を広げた鳥のような形をした胸飾りを身につけた少女がいた。
「確かにな、それで我々はこれからどうする?」
「無論、このままあの2人の監視を続けるぞ」
「そうか、それじゃあ残りのヒトは誰が監視する?」
胸飾りを付けた少女が蝶ネクタイの少女にそう話すと、蝶ネクタイの少女はしばらく考えると口を開いた。
「……確かその内の1人はPPPの元にいたな。ならそれに適した人物がいるじゃないか」
「ああ、あいつか。とするとゴリラとキツネ擬きのヒトは誰が監視する?」
「あそこは……別にいんじゃないか?」
「何故……ああ、そういうことか」
何故かジャイアンとスネ夫だけには監視は無用だという蝶ネクタイの少女の言葉に胸飾りの少女は少し何か考えると納得した表情をする。
「しかし、招いた我々が言うのもなんだが、本当にあのヒト達がジャパリパーク、いや世界を救えるとは思いにくいが……」
「確かにそう思う……だが、厳密に言えば我々が選んだわけではない。パークチケットが選んだんだ。恐らくあのヒトはかつてこのパークを救ったヒトのように特別な何かを持っているかもしれない」
「そこまで言うほどあのヒトは凄いのか?」
「いや、正直わたしもあの程度のセルリアンで怯える姿を見たら自信をなくして微妙な気持ちだ」
先ほどのセルリアンに対して生まれたての子鹿のように足を震わせていたのび太を見ていた彼女達は頭を悩ませていた。
「とりあえず我々はこのまま監視を続けるとしよう」
「いいだろう。なら、わたしは同士達に報告と他のヒトの監視を頼んでくる」
「頼んだぞ」
そう言って胸飾りの少女はどこかへ飛んで行き蝶ネクタイの少女はそのままのび太達の監視を続けるのだった。
一方のび太はイエイヌの案内により森の中をしばらく歩いて行くと、木が数本しか生えていない広場らしき所についた。そして、その中心にはわすれものせんたーと言う看板が掛けられた大きな樹木に建てられた小屋があった。
「あそこがイエイヌちゃんの言っていた探偵がいるところなの?」
「そうです。きっと、お友達を探すのに手を貸してくれますよ」
2人は近くにあった階段を上ると探偵社の出入り口に立つ。
「ごめんくださ〜い」
二回扉に向かってノックするとのび太は扉を開けた。すると、その瞬間、のび太の視界に鋭い眼光を放つ黒い影が飛び込んで来た。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!?た、食べないでぇぇぇぇええええ!!!」
「たべないよ」
「えっ、あ、あれ?」
目を凝らすと、そこには確かに目付きは鋭いが灰色の服を着た女の子が立っていた。
日が暮れて来た為、恐ろしい怪物に見えてしまったのだろう。腰を抜かしたのび太をイエイヌが起き上がらせる。
「えっと、君は?」
のび太は事務所の中から出てきた少女に何者かと聞くと、少女は答えようと口を開くが、
「いったいどうしたんですかハシビロさん?」
「ひょっとしてまた誰か怖がらせちゃったの?」
其処へ事務所の中から更に2人の女の子が出てきた。
「ごめんなさい」
「い、いえ、こっちもいきなり叫んでごめんなさい」
あれから数分後、事務所の中に招かれたのび太とイエイヌはソファに座り、お茶を頂いていた。のび太を驚かせた(事故)少女はのび太に謝ると、のび太も謝罪した。
「すいませんねハシビロさんは目つきは少し鋭いですが、とても優しいフレンズだから安心してください。あ、自己紹介が遅れました私はここの探偵じむしょのしょちょーをやっているオオセンザンコウです」
桃色の服を纏ったフレンズ…オオセンザンコウは目つきの悪いフレンズ…ハシビロコウは善人であると説明し、そのまま自己紹介をした。
「私はその助手のオオアルマジローだよ。長いからアルマーって呼んでね」
「……書記と事務員のハシビロコウ」
続いてオオセンザンコウと似た格好をしたフレンズ…アルマジローとハシビロコウが自己紹介を行う。
「僕はヒトののび太です」
「私は犬のフレンズのイエイヌです」
のび太達も自己紹介を行った。
「成る程、"ヒトの"のび太さんに"犬のフレンズ"のイエイヌさんですか。これからよろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしくね。それにしても凄いな〜」
のび太は首を動かして事務所の中を見た。其処は何処と無く自分の家の部屋に何気なく似ていて、本棚にはいくつかマンガ本らしきものが置いてあった。
「このお仕事は3人でやっているの?」
「はい、ですが、偶に手が回らない時はヘラジカ様の所からカメレオンさんやシロサイさんの力も借りますけど」
「ヘラジカ様?」
オオセンザンコウの口から出た初めて聞く名前にのび太は首をかしげる。
「そーだよ、私たちは元々へいげんちほーに住むヘラジカ様率いるヘラジカ軍の一員なんだよ」
「今は"訳あって"この探偵という仕事をしているの」
「「訳あって?」」
ハシビロコウの口から出た訳あってという単語にのび太とイエイヌは思わず疑問符を浮かべた。
「いったい何があったんですか?」
「それは……」
ハシビロコウとオオセンザンコウは言いづらそうな表情(ハシビロコウの表情は大して変わりないが)ちらりとオオアルマジローに視線を移す。
「なになに?どうしたの?」
2人に見つめられるオオアルマジローは不思議に思いながらなぜ見つめるのか聞くが、2人は「いえ、なんでも」と素っ気なく答える。恐らくこの探偵の仕事をやる根本的なキッカケは彼女なんだろうとイエイヌは察するが、のび太は全く分からず首を傾げて疑問符を浮かべたままだった。
「そ、それでご依頼の方は?」
とりあえず話を進めようとオオセンザンコウは
「実はこちらにいるのび太さんのお友達を探してほしいんです」
「そうですか、お友達を探して欲しいですか………ん?…今、なんと言いましたか?」
イエイヌから仕事の内容を告げられたオオセンザンコウは動きが止まり、首をギギギと音を鳴らしながらイエイヌの方に向けて恐る恐る聞き返した。
「だから僕の友達を探してほしいんだ」
「それってつまり……人探しの依頼ィィィィィィィィイッ!?」
のび太の言葉を聞いて彼女は大きく目を見開きながら奇声を発した。それを聞いた2人は「うわっ⁉︎」と驚きの声を上げる。
「や、やったよセンちゃん人探しの依頼だって!」
「ようやくですよ!この仕事は絶対やり遂げましょう!」
のび太の依頼に2人は手を取り合って大はしゃぎする。それを見たのび太とイエイヌは呆然となる。しかし、すぐに意識を取り戻し近くにいたハシビロコウに恐る恐る訳を聞く。
「どうしてあんなに喜んでいるんですか?」
「……わたし達は事務所を構えて1年半、それまで探偵っぽい仕事がなかったからあなた達の依頼が探偵っぽい依頼だから嬉しいの」
「へ、へぇ〜、そうなんだ」
幾ら探偵っぽい仕事が今までできなかったとはいえ、若干オーバーなのではと心の中に思うのび太だった。
「ちなみにそれまで何をしていたのですか?」
「……オオセンザンコウ、アルマジロー話してもいい?」
イエイヌは彼女たちは普段どんな仕事をしているのか興味があり、ハシビロコウに聞くと彼女は未だに大はしゃぎしているオオセンザンコウに話しかける。
「やったやったー!ハッ⁉︎……ゴホン!……か、構いませんよハシビロさん」
しばらくはしゃいでいたオオセンザンコウはハシビロコウの声にハッとなり、だんだんと顔を赤くしていくが、咳払いをして誤魔化しながら窓の方を向いてのび太達に表情は見せないようにして、ハシビロコウに許可をした。許可を得た彼女は自身の机の引き出しから数十枚の紙を取り出して、そこに書かれていた文章を読み上げる。
「主にやっていた仕事は博士やカフェのアルパカからりょーりの材料やお茶の材料を取ってくるように依頼をされていた」
「えーと、それって」
「おつかい?って事かな?」
2人は依頼の内容はおつかい。つまり買い物の依頼だと思ったが、オオセンザンコウは否定した。
「いえ、ただボスの管理する畑から食材をバレないようにとってくる依頼ばかりです」
「え?それって、野菜泥棒じゃ「私たちじゃ、その依頼はこなせないからカメレオンさんに任せていました‼︎」あ、ハイ」
自分たちもやっている事が泥棒である事を自覚していたのか、のび太の台詞に被せるように話を続けて誤魔化した。
それからオオセンザンコウは自身の机に座り、ハシビロコウが淹れた紅茶を飲んで冷静になり、某碇司令のように腕を組みのび太と目を合わせる。
「それでどんな方をお探しですか?」
「探して欲しいのは4人でそのうちの1人はドラえもんって言うんだけど、青くて丸いずんぐりむっくりとした体型が特徴なんだ」
オオセンザンコウはのび太からドラえもんの特徴を聞くが、「うーん?」と唸り声を上げながら顎に手を当てて考えるが、どうもピンとこない様子だ。
「えーっと、青くて丸くてずんぐりむっくり……すみません、想像しづらいの出来たら絵でその…ドラえもん?でしたか、その方を描いてくれませんか?」
そう言ってオオセンザンコウは机の引き出しから色鉛筆と一枚の白紙を取り出し、のび太に渡した。すると、それを見たイエイヌは「あっ」と呟いた。
「どうしたのイエイヌちゃん?」
「いえ、なんでもありません。ただ、その道具を見て何か一瞬ですけど頭に何かが過ったんです」
「色鉛筆のこと?オオセンザンコウさんその色鉛筆をどこで手に入れたの?」
イエイヌが注目した色鉛筆を見てのび太はどこで手に入れたのかオオセンザンコウに聞くが、彼女の代わりにアルマジローが答えた。
「これはね、へいげんちほーのライオンの城にあった物なんだよ」
「はい、わたし達がこの探偵業を始めるときヘラジカ様を通じてライオン達から頂いた物です」
「ら、ライオン⁉︎」
色鉛筆をライオンから貰ったと聞いてのび太は驚きの声を上げる。ライオンと聞いて大きな鬣を持ち、腹ペコなイメージがある為、フレンズの状態でも常に肉に飢えている恐ろしいイメージが湧いた。
「よ、よく無事だったね」
「?なんで怯えているの?」
アルマジローはのび太の中のライオン像を知らない為、どうして彼が怯えているのか全く分からなかった。一方、オオセンザンコウは目を半開きにして、何かを察した様子だ。
「ゴホン、それではのび太さんそのドラえもんと言う方を絵で書いてください」
「わ、わかったよ。えーと、最初は確か…まるかいてちょん、まるかいてちょん、まるかいてちょん、あれ、3回だっけ?ま、いっか、おまめにめがでてうえきばち~うえきばち~、七月七日にUFOが~あっちいって、そっちいって、おっこちて~、お池が四つできました~!お池におふねをうかべたら~お空に満月のぼってた~。ひげをつけたら……よし、出来たよ」
「見せて下さい」
のび太の描いたドラえもんの絵を受け取ったオオセンザンコウは早速その絵を見た。アルマジローとハシビロコウも隣から覗くと、アルマジローは微妙な表情を浮かべる。
「ね、ねぇセンちゃん。こんなフレンズ本当にいるのかな……?」
「い、いやしかし、よく見ればタヌキのフレンズに見えなくも……」
「………」
3人はのび太の描いた絵を見て若干引いていた。のび太はドラえもんの絵描き歌を歌いながら描いたが、所々歌詞が異なり画伯の絵みたいな感じになってしまった。
「それでもこんな真っ青なフレンズって……⁉︎」
「あの、ドラえもんはフレンズじゃないんだけど」
「え⁉︎フレンズじゃないんですか!?」
(え?そこまでおどろくことかな?)
のび太が描いた絵はフレンズではない事を知り、余計に3人は表情を歪めて絵を見る。ただし、ハシビロコウの表情はあまり変わらないが、
「えっと、このドラえもんという方はフレンズじゃなければ何者なんですか?」
「うん、ドラえもんはそんな見た目だけど一応猫型ロボットなんだ」
「ね、ネコ型?」
「ろぼっと〜?」
フレンズじゃない見た目をしているドラえもんがもしかしたらセルリアンではないかと思ったオオセンザンコウは恐る恐るのび太からドラえもんについて聞くが、初めて聞く言葉にアルマジローとともに首をかしげる。
(アルマーさんよくわかりませんが、どうやらこの方は猫らしいですね)
(え〜、そうかな?それにしては耳がないよ。というかろぼっとってなんだろう?)
(う〜ん、わかりません。あとで博士にでも聞きに行きますか)
ロボットについて全く知らない彼女達はドラえもんについて考えるのをやめて残りの3人の情報を知るために話を続ける。
「それで他の方々は?」
「えっと、あと3人いて僕と同じヒトなんだけど、1人目はしずかちゃんって言うんだ。とても可愛い女の子で黒髪の二つ結びの髪型をしているんだ。あと、ジャイアンなんだけどゴリラのような怖い顔をした奴なんだ。凶暴でいつも僕を虐めたり音痴な歌を歌うガキ大将なんだ。スネ夫はジャイアンといつもいてキツネみたいな顔をして、ジャイアンと一緒に僕を虐めたりご機嫌をとったりする奴なんだ」
「……なんでしょう、そのしずか…ちゃんでしたか?その方以外のお二人はあまり印象がよろしくない様子ですね」
明らかにジャイアンとスネ夫と比べてしずかちゃんを贔屓している事にオオセンザンコウは微妙な表情を浮かべる。
「センちゃんがきだいしょうってなんだろうね?」
そして、アルマジローはジャイアンの情報の中にあったガキ大将という単語を聞いてオオセンザンコウに質問する。
「よくわかりませんが、ライオン軍にいるオーロックス達がライオンの事をたいしょうって呼んでいたから、群れのボスみたいなものじゃないでしょうか?」
「え、てことはジャイアンってヒトはヒトの群れのリーダーって事?」
「おそらくそうだと思います」
「……」
ガキ大将と呼ばれているジャイアンが人の群れのリーダーだと思い込む、2人に対してハシビロコウはただ黙ったままだが、その目からは"多分違う"という否定的な感情がこもっていた。
「わかりました。我々はこの方々を探してみせましょう」
「ところで報酬はどんなものですか?」
「え?報酬?」
「当たり前ですよ。わたし達はあくまでも仕事でこの探偵をやっているのでただ働きはちょっと……」
「ええ!?そんなぁ〜」
せっかくドラえもん達を見つける少ない手段だというのにのび太はどうにかできないかと悩んでいると、
「安心してください。報酬ならしっかり私が出します」
「い、イエイヌちゃん⁉︎」
「ほほう。それで報酬はどんなものですか?」
再び机に座るオオセンザンコウは威厳を出すためにもう一度某碇司令のように腕を組みながら報酬について聞く。
「はい!報酬はジャパリスティックとじゃぱりまん限定カレー味になります!」
「「カレー味……!?」」
「………」
カレー味。それはあるフレンズが「じゃぱりまんに料理を付けて食べたらどうだろう」という言葉がきっかけで博士達が広めた新たなじゃぱりまんであり、その生産個数は1日30個だけと言われている希少なじゃぱりまんなのだ。ちなみにジャパリスティックも希少なのだが、限定のカレー味と比べるとインパクトが薄くなってしまう。
「私達に任せてください! ……じゅるり」
「きっとその友達と言う方を探してみせます! ……じゅるり」
2人はのび太の依頼に全力を尽くすつもりだが、口からよだれが流れていて探偵としての威厳があまり感じない。
「急に乗り気になったね」
「これも全てじゃぱりまん……いえ、依頼主の為!」
「私達がきっとじゃぱりまん、いや、依頼を解決するよ! 行こうセンちゃん! あ、ハシビロちゃん留守番お願いね!」
2人はそう言って事務所から出て明後日の方向へ走っていった。のび太達も遅れて外に出ると既に2人は遠くへ行ってしまった。
「ドラえもん……見つかると良いなぁ……」
少し不安だが、ここはオオセンザンコウ達に任せるしかなかった。
「ここがあのフレンズの"たんていじむしょ"ね‼︎」
「うわっ!?え、誰?」
突然2人の後ろから大きな声が響き、のび太は思わず驚きのあまり大きく飛び上がる。イエイヌは咄嗟に後ろを振り返るとそこにはマフラーを巻いた1人の少女が立っていた事に気づく。
「あなたは……アミメキリンですか?」
「キリンって……あの首が長い?」
彼女の事をキリンと呼ぶとのび太はあの首の長いキリンを思い浮かべた。すると、彼女ものび太達の存在に気づいた。
「む!アナタ達は?」
「僕の名前は……」
「待って!この名探偵である私にかかればアナタがどんなフレンズなんかはお見通しよ!」
「え!?」
自己紹介をしようとしたが、急にアミメキリンはのび太を頭から爪先までじーっと見ると、眉間に指を当てて考え出した。
「その大きくて丸い特徴的な目に、さっき驚いた時に見せたジャンプ力……アナタ、メガネザルね!」
「メガネザルだって!?違うよ!」
アミメキリンの出した推理でメガネザルと呼び、のび太は思わず大声で否定した。
「なっ!?名探偵であるこの私が間違える筈が……」
自分の推理が誤っている訳がないアミメキリンはのび太が何か嘘をついているのではと思い、問い詰めようと考えたが、
「い、いや、それよりも私はここにいるギロギロ、じゃなくてオオセンザンコウさんに依頼を受けてもらおうと」
「え?あなたもオオセンザンコウさん達に依頼を?」
「え、ひょっとしてあなた達もなの?」
アミメキリンものび太達と同じようにオオセンザンコウに依頼をしにきた事を知る。
「残念だけど、探偵のオオセンザンコウさん達ならもうわたし達の依頼を受けて行ってしまいましたよ」
「そっ、そんな!?」
イエイヌからオオセンザンコウとアルマジローが今はいないと知ると、彼女は頭をガクリと下げて項垂れる。
「うぅ、行方知れずになった先生を捜索してもらおうと思ったのに……」
「大丈夫?」
「それにギロギロのモデルになったオオセンザンコウにも会えないなんて……!」
「ぎろぎろ?」
彼女の口から出た聞きなれない単語にのび太は聞き返すと、彼女は懐から一冊の本を取り出してみせる。
「ギロギロって言うのは私の大好きなオオカミ先生が描くホラー探偵ギロギロの漫画の主人公よ」
「あ、この表紙に描かれているのってオオセンザンコウさんだ!(あれ、この漫画は字が全く書かれていないや)」
「ふふん、そうよ。私はギロギロの元となったオオセンザンコウが探偵をやっていると知って依頼を受けてもらおうと思ったのにぃ〜。いないなんてぇ〜!」
アミメキリンから彼女がここへやってきた事を知ったのび太はまた項垂れる彼女の姿を見て可哀想だと思い、声をかける。
「事情は良く分からないけど、僕にできる事があるなら手伝おうか?」
「ご主人様の言う通りです。私も手伝います」
「ありがとう、……はっ!?」
2人が自分に協力してくれる優しさに心打たれたアミメキリンだが、ここで何かに気づいた。
「そうよ!探偵に頼らなくても名探偵である私が直々に探しに行けばいいんだわ!」
オオセンザンコウ達がいない今は名探偵(自称)である自身が探しに行くという発想が思いついた彼女は早速動いた。
「誰かは知らないけどありがとう!私、先生を捜しに行ってくる!」
彼女は2人にお礼を言うと背を向けてオオセンザンコウ達が向かった先へ走り去って行った。
「「あの子、何しに来たんだろう……」」
「………」
嵐のように去って行ったアミメキリンにのび太とイエイヌは困惑するのであった。ハシビロコウは相変わらず何も喋らずただ、彼女の走っていく姿を見ていくだけだった。
「じゃあ、僕たちも行こうか」
もう、此処には特に用はなくなったのび太はあとはイエイヌのお家でオオセンザンコウ達がドラえもんを連れてきてくれるのを待つばかりだと思い、イエイヌと共にお家へ帰ろうとするが、
「待ってください」
「ん?どうしたの?」
突然イエイヌがのび太に待ったと声をかけて止めると、ハシビロコウに話しかける。
「ハシビロコウさんお願いがあります」
「なに?」
「しばらくのび太さんをここに居させてください」
「え!急にどうしたのイエイヌちゃん⁉︎」
突然のイエイヌの発言にのび太は困惑しながらもイエイヌから事情を聞こうとすると、イエイヌはのび太の方に体を向けて口を開いた。
「私はのび太さんに迷惑をかけてしまいました。無理やり私のご主人様に仕立て上げようとしたから、共にいることなんて出来ません」
どうやら彼女はのび太を騙していた事に罪悪感を感じて、のび太と一緒にいる事がいけないと思っているようだ。
「そんな事ないよ!確かにイエイヌちゃんは僕を騙していたけど、僕は全然気にしていないよ!」
「それでも!優しいのび太さんを騙した事は変わりないんです!」
「イエイヌちゃん……」
彼女の心からの声にのび太は思わず、何も言えなくなる。
「のび太さんたった1日でしたが、ありがとうございます。久しぶりにヒトと一緒にいられて本当に楽しかったです!私はこれからも本当のご主人様がお家に帰ってくるまで頑張って行きますから」
彼女はのび太が心配しないように精一杯の笑顔を見せる。
「そうだ!最後に言ってもらえませんか?おうちにお帰りって」
彼女はのび太にそう言うと、のび太は一瞬目を見開くとすぐに目を元に戻してゆっくりと口を開く。
「……お家にお帰り」
「………はi「ただし、一緒に帰ろうね」……え!?」
のび太の命令を聞いたイエイヌはそのまま帰ろうとしたが、次に言った言葉に思わず驚きの表情を見せる。
「な、なんで⁉︎」
「放っておけないよ、君を1人にするなんて……僕には出来ないよ!それに君をみているとあの子を思い出すんだ」
「あの子って……?」
彼女はのび太が自身とある人物と重ねている事に首を傾げながらあの子と言うのについて聞くと、のび太は語った。
「うん僕の友達だよ。駄目駄目な僕と違って物覚えが良かったんだ」
のび太はその友達と色々な事を教え、遊び、厳しい事もあったけど忘れられない日々だった事を話した。
「素敵な友達だったんですね。その子は今どうしているんですか?」
「うん、遠いところへ行っちゃったんだ」
「遠いところ……ですか?」
のび太は頷く。イエイヌがその友達はどこへ行ったのか聞くと誇らしく空に向かって指をさした。
「空……?あぁ!分かった!鳥のフレンズさんなんですね!」
「鳥?いや違うよ。イエイヌちゃんと同じ犬だよ」
「そうなんですか?それじゃ空を飛ぶことは出来ないんじゃ……」
するとのび太は「あっ」と呟き、何かを考えたような素振りを見せると続きの言葉を口から出した。
「友達はね、宇宙へ行ったんだよ」
「"うちゅー"?【うちゅーちほー】と言う所があるんですか?」
「いや、違うよ。宇宙は……そう、空のずっと向こうにあるんだ」
「空のずっと向こうって……あの星空が浮かんでいる"あそこ"へ飛んでいったんですか!?」
宇宙へ行くという自体にイエイヌの脳内のキャパシティがオーバーしそうになる。鳥のフレンズでさえも空のずっと上の方へ行ったことのあるものは居ないと聞いている。
「そんなの、どうやって会いに行くんですか?……いえ、そもそも会えるかどうか……」
「うん。でも……、きっとまた会えるって僕は信じているんだ」
「また、会える……」
「うん。友達は……【イチ】は、ずっと僕の事を待ってくれていたから」
たとえ1000年経っても、友達と交わした約束を忘れる事はなかった奇跡があった。それを目の当たりにしたのび太だからこそ言える。
「きっと、ご主人様は迎えに来てくれる。僕はイエイヌちゃんのご主人様じゃないけど、……しばらくの間、友達として一緒に待つ事が出来るよ」
「友達?」
「うん!……あ、そうだ。イエイヌちゃん。こんな感じに小指を出して?」
たどたどしくもイエイヌは小指を出し、のび太はとある言葉を口に出しながら指を動かした。
「ゆーびきーりげんまん嘘ついたら、針千本のーます。指きった」
「これは……?」
「僕とイエイヌちゃんの友達の証だよ
約束する。きっとイエイヌちゃんはご主人様と会えるよ」
「はい!私も信じています!ご主人と会える事を!」
彼女は自分とそのイチが境遇がどことなく似ている事に共感して、彼の代わりにのび太と一緒にいようと決意し、のび太の差し出された手を握る。
「じゃあ、行こうか」
「はい!」
そして、2人はイエイヌの家に帰ろうとするが、ハシビロコウがのび太の服の袖を掴む。
「あの、どうかしましたか?」
「………」
2人はなにも喋らずただ彼女の鋭い目に見られて10秒が経つと漸く彼女の口が開き、
「……私も行っていい?」
「「え?」」
その後、ハシビロコウを含めて3人はイエイヌのお家へ暫く住む事になった。やったねのび太くん。女の子と一つ屋根の下暮らしだよ。
【あとがきの小ネタ】
「ところでのび太さんのイチさんと言うのはどんなフレンズなんですか?」
「フレンズと言うか……、犬と猫の王国の大統領だよ?」
「だい…とう……?」
「あー、えーっと、イチは王様なんだよ!」
「なんだー、王様なんですね………王様!?」
「そうそう!それで自力で【タイムマシン】を作ったけど何年も後の未来に移動しちゃって子供の姿で出会ったんだ!それで隕石が衝突するのを回避する為、宇宙船に乗り込んで……」
「たいむま……いんせ……うちゅー…せん……」
「それで……イエイヌちゃん?」
「わっかんないや!」
「イエイヌちゃん!?」
「あ、ハシビロちゃんはどうだった?」
「わっかんないや!」
「ハシビロちゃん!?」
その時イエイヌとハシビロコウの顔はそれはそれは