ドラえもん のび太の獣友冒険記   作:獅子河馬ブウ

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いや〜、ハーメルンを運営している人には感謝しかありません。まさかけものフレンズの文字が再現できるfontを作ってくれるとは、これで小説のモチベーションが上がるといいなぁ。


そんな事でこれからはけもフレ文字を使って、今まで再現したかった場面チェンジのところを修正していきますので、今後ともよろしくお願いいたします。


第8話とくべつなごほうび

海の中にあるステージを調査していたドラえもん達一行は途中カリフォルニアアシカが長時間海にいるのは危険だと伝え、船の上に戻って来ていた。

 

 

「んー!楽しかったね!」

 

「まあ、ちょっと驚いたけど中々面白かったわ」

 

 

まだ全て調査しきれていなかったが、アヅアエンの様にキュルルの記憶の一部が蘇った事だけでも良い収穫だ。サーバル達は彼女の記憶はなんなのか聞くが、「帰ったら教えるよと」言って彼女はもったいぶる。すると、それを聞いたカラカルは目を輝かせる。

 

 

「じゃあ!もう此処には用が無いからさっさと帰りましょう!あと少ししたら辺りも暗くなるから帰るときが大変になるわ!」

 

 

先ほどまで海の中を泳いでいたが、やはり海上は海中と違って波風に船が揺れ、転覆するかもしれないと考えて彼女はこれ以上長くいるのは精神的に耐えられない為、陸に戻ろう催促する。カラカルの必死な表情を見てドラえもん達は思わず苦笑いを浮かべる。それと余談だが、仮に船が転覆したとしてもテキオー灯の効果はまだ続いている為、カラカル達が溺れる事はない。

 

 

「じゃあ、陸まで送ってくれない?」

 

「いいよ〜」

 

「ですが、その前にご褒美をお願いします」

 

「あ、あんた達こんな時でも現金な性格してるわね」

 

 

カラカルの意見に賛成したドラえもん達一行はカリフォルニアアシカ達に船を押して貰うよう頼むと、2人は両手を出して頑なにご褒美を要求してきた。それを見たカラカルは呆れた表情を見せる。一方でキュルルは不満も言わず2人に「待ってて」と言って鞄に手を入れる。

 

 

「はい、ご褒美です」

 

「わーい!ご褒美♪」

 

 

彼女は鞄に入っていたジャパリコロネを取り出すと、それを2人に差し出そうとする。バンドウイルカは喜んでジャパリコロネを受け取ろうとする。それを見たカラカルは安心して陸へ帰れるとホッとする。

 

 

「待ってください!」

 

「え?」

 

「アシカちゃん?」

 

 

しかし、カリフォルニアアシカがジャパリコロネを渡そうとするキュルルを止める。突然の彼女の行動にバンドウイルカを含めた5人が困惑の表情を見せる。

 

 

「ひょっとして、ジャパリコロネはもういらないんですか?」

 

「あっ。いえ!別にジャパリコロネは好きなんですけど……」

 

「じゃあ、なんなの?」

 

 

何か言いたそうなアシカだが、言うべきか言わないべきかしばらく悩んだところ彼女は意を決心して口を開いた。

 

 

「あの!ジャパリコロネではなく特別なご褒美をお願いします!」

 

「特別な……」

 

「ご褒美……?」

 

 

サーバルとキュルルは2人揃ってアシカの発言を復唱すると、頭の上に疑問符を浮かべて首を傾げる。

 

 

「ちょっと!こっちはジャパリコロネをあげるのにそれとは別の物が欲しいって図々しいじゃないの!」

 

「ちょ、ちょっとカラカルちゃん!」

 

 

一方でカリフォルニアアシカの発言に文句を言うカラカルと彼女をドラえもんは宥めようとする。しかし、彼は内心カラカルの意見と同じだ。

 

 

「すいません、確かに自分でも図々しいと思っています。ですが、わたし達はどうしても"特別なご褒美"が欲しいんです」

 

「そもそもその特別なご褒美ってなんなの?」

 

 

"特別なご褒美"というものに執着するカリフォルニアアシカを見てサーバルは彼女にそれはなんなのかと質問した。

 

 

「わかりません」

 

「ハァッ!?」

 

「わからないの?」

 

 

特別なご褒美について要求してきたカリフォルニアアシカ自身がどんなものか分からないことに4人は面食らった表情を見せる。彼女が欲しい物を知らないとなると、その特別なご褒美はどんな物なのか想像する事が出来ず、4人は頭を悩ませる。すると、その中でドラえもんは一つ気になった事があり、カリフォルニアアシカに質問する。

 

 

「そもそもどうして特別なご褒美を求めるの?」

 

「そ、それは……」

 

 

ドラえもんの質問に彼女は言葉をつまらせる。すると、サーバルが「あっ」と声をあげて何かに気づいた様子だ。

 

 

「そういえばアシカはここへ来る前にキュルルちゃんからジャパリコロネを貰ったけどあまり嬉しそうな顔をしてなかったよ。もしかしてそれと関係があるんじゃないかな?」

 

「そうなの?」

 

 

サーバルの発言を聞いてドラえもんはカリフォルニアアシカに確認する。

 

 

「……はい。実は私たちは毎日互いに芸を見せて、ご褒美を出し合っていたんですけど、全く満足出来ないんです。だからこそ私たちの"何か"を満たしてくれる"特別なご褒美"が欲しいんです」

 

「そうだったんだ……」

 

 

彼女達が自身の心を満たせるように自分たちの得意とする芸を行っているが、どうにも納得出来ていないようだ。

 

 

「けど、なんで僕たちなの?」

 

「そうよ、なんで私たちにその"特別なご褒美"を要求するのよ?」

 

 

自分たちもわからない特別なご褒美を求めてくる事にキュルルとカラカルは疑問に思っていると、彼女は答える。

 

 

「それは貴方達が私たちの事を褒めてくれた時に何か…こう……心から嬉しい気持ちが溢れてきて……今まではこんな事はなかったので、もしかしたら私たちが今まで満たしてくれなかった物を貴方達なら満たしてくれると思ったんです」

 

「アシカさん……」

 

 

カリフォルニアアシカは4人に会った時から自分たちの満たされなかった物を満たしてくれる可能性があると気付き、特別なご褒美を求めたようだ。

 

 

「無茶なお願いとは分かっています!それでもお願いします!」

 

 

彼女の真剣な表情を浮かべ4人に頭を下げる。その隣で先程からバンドウイルカはどうしたら良いのかオロオロと悩んでいた。そして、その2人を見て4人は思わず黙って互いに顔を見合わせる。

 

 

「………わかった!じゃあ、アシカさん達の満足する"特別なご褒美"を用意するよ!」

 

「うん、アシカさん達がここまで連れてきてくれたから記憶も戻ったからお礼はちゃんとするよ」

 

「仕方ないわね」

 

「任せて、2人が喜ぶ特別なご褒美をちゃんと用意するから」

 

 

ドラえもん達はカリフォルニアアシカの熱意を聞いて彼女達にここまで運んで貰った感謝も兼ねて頼みに応えようと思った。

 

 

「「ありがとう(ございます)!」」

 

 

4人の話を聞いた2人は笑顔を浮かべるとドラえもん達にお礼を言った。

 

 

●●●●●

 

 

ドラえもん達はアシカ達に外で待っている様にと言って、船室に入ると特別なご褒美について考えていた。

 

 

「とは言ったものの、アシカさん達が喜ぶ特別なご褒美って何だろう」

 

「私もつい勢いで言っちゃったけど、あの2人が喜ぶ物って何かしら?」

 

 

 

しかし、3人は互いにアシカ達が喜びそうなご褒美について考えるものの、全く思いつかなかった。

 

 

「サーバルちゃん何かわかる?」

 

「うーん……」

 

 

ドラえもんは先ほどアシカの心情にいち早く気付く事が出来たサーバルならわかるかもしれないと思った。一方のサーバルは近くにあったビーチボールを転がしながら目を瞑り真剣に考えている様子だ。その姿からドラえもんとキュルルは期待できそうな考えを思い浮かべそうと予想しているが、

 

 

「……わかんないや」

 

「あらら」

 

「そ、そんなにすぐに思い浮かばないよね」

 

「……まぁ、サーバルの反応は予想できていたわ」

 

 

カラカルは長い付き合いの所為か、サーバルがわかんないと返答するのは予想できていたようだ。

 

 

「あ、今思ったんだけど、ドラえもんならアシカ達が満足出来るような特別なご褒美を持っているんじゃないの?」

 

「そっか!ドラえもんちゃんのポケットの中ならありそうだね」

 

「おー!その手があったか」

 

 

盲点だったと言わんばかりにドラえもんは2人の意見を聞いて、早速アシカ達が満足出来そうな適当な道具を取り出そうとするが、

 

 

「待って!」

 

 

しかし、キュルルがドラえもんを呼び止めた。3人はいきなり止めに入った彼女に顔を向ける。

 

 

「どうしたのキュルルちゃん?」

 

「いや、なんでもドラえもんの道具で解決するのはどうかなって…」

 

「いいじゃない、私だってこのまま海の上に長くいたくないから、早く済ませちゃいたいのよ」

 

「カラカル……」

 

 

さらっと、本音を言うカラカルにサーバルは苦笑いを浮かべ、キュルルとドラえもんは思わず呆れた表情を浮かべる。

 

 

「でも…何も努力せずに楽な事で解決するのは僕たちに期待しているアシカさん達に失礼じゃないかな……」

 

 

彼女の発言を聞いてカラカルとドラえもん、サーバルの3人は黙ってしまった。確かにそうだ。アシカ達は真剣な表情をして自分達に特別なご褒美を求めていたのだ。ここで道具に頼ればそれこそ彼女たちの期待を裏切る行為になる。それに気づいた3人は自分達がやろうとした事に恥ずかしく思った。

 

 

「そうだね、あの子達はわたし達が用意する特別なご褒美を楽しみにしているんだったね」

 

「ごめんなさいキュルル。わたしが間違っていたわ」

 

「べ、別に謝らなくていいよ……ん?ドラえもん」

 

 

2人はキュルルに対して謝ると彼女は頭を上げて欲しいと頼むが、先ほどから黙っているドラえもんが顔を俯かせ気がつきどうしたのだろうと思いながら話しかける。

 

 

 

「偉い!!!キュルルちゃん君はなんて偉いんだ!!!」

 

「へ?」

 

 

今日一番大きな声を出したドラえもんにキュルルは思わず呆然となる。一方でサーバル達は近くにいた為、思わず耳を塞いでしまう。

 

 

「自分の力でアシカさん達の満足させようとするその姿勢はとっても偉いよ!」

 

「ど、ドラえもん?」

 

 

普段よりも興奮して話すドラえもんにキュルルはどうしたんだ気になった。すると、ドラえもんは急にテンションが下がりボソリと語り出した。

 

 

「それに比べて日頃ののび太くんと比べたら、宿題をやる時も道具出してや、しずかちゃんにいい所を見せたいから道具出して〜、他にも無茶の多い要求をしてくるんだ。僕とした事が一番道具に頼ってはいけないって何時ものび太くんに注意してきたのに僕自身が最初から道具に頼るなんて……」

 

「なんか知らないけど、ドラえもんも苦労しているのね」

 

 

ほぼのび太に対する愚痴を言っていたドラえもんに3人は思わず同情する。普段からのび太が何かしらトラブルにあった時に甘えてきて、最初は努力しろと厳しく接するが、結局の所すぐに道具を使ってしまうが、彼女は全く違った。

 

 

「それじゃあ、キュルルちゃんは一体どうするの?」

 

「えっと、そうだね……」

 

 

とは言え、何も最初から考えている訳じゃない彼女は船室内を見渡して何かご褒美に繋がる物はないか探していると、サーバルが手元で転がしているビーチボールが視界にはいる。

 

 

(そういえば、あの時も……)

 

 

彼女は海中のステージで蘇った記憶の中にカルフォルニアアシカとバンドウイルカが"あの少女"と共にショーをしていた時にボールを使っていた事を思い出す。そして、ここへきた時もアシカと共にボールで遊んでいた事もあった。

 

 

「(もしかしたらイルカさんのご褒美に繋がるかも)サーバルちゃん!そのボールを貸してくれない?」

 

「へ?…別に良いけど」

 

 

サーバルはとくに拒む事なくビーチボールをキュルル渡した。彼女は先ずイルカのご褒美について検討が付いてきた。しかし、ただボールだけで遊ぶのはいつもやっている事だと思い、何かボールに一手間加えようと再び辺りを見回して何かないかと探そうと思ったが、丁度足元にいたラッキーさんの存在に気がつく。

 

 

「そうだ!ラッキーさんここにはこのボール以外に何があるの?」

 

 

この船の内部構造はラッキーさんが知っている為、ボールや酸素ボンベ以外にも何かあるのではと思い彼女は話しかける。

 

 

『ココには、主に海でのフレンズと遊べるように釣り竿やボール。その他にも色々揃っているヨ〜』

 

「釣り竿か…じゃあ、その釣り竿は何処にあるの?」

 

『任セテ、釣り竿は目の前の壁に…壁に……』

 

 

ラッキーさんは釣り竿を取ろうと動き出す。しかし、目の前には沢山の箱や色々な道具で山積みになって釣り竿がどこにあるのかわからなかった。

 

 

『マカワワワワワワ』

 

「ラッキーさん⁉︎」

 

「またなの?」

 

「肝心な時にこれね」

 

 

いつもの様にラッキーさんはフリーズを起こしてしまう。それは仕方ない事だ。ラッキーさんに手が有れば荷物をどかして釣り竿を取り出す事が出来るが、手がない為手伝うことができないのだ。そのことを察したキュルルはラッキーさんの頭に手を乗せる。

 

 

「ありがとうラッキーさんあとは僕に任せて」

 

 

ラッキーさんにお礼を言うと辺りの物を手当たり次第どかし始める。どうやらなにかを探している様だ。

 

 

「キュルルちゃんはなにをしているのかな?」

 

「さあ、なにか探している様だけど手伝った方が良いかしら?」

 

 

2人は船室の中にある積まれた荷物をどかして何かを探している彼女の姿を見て、自分達も手伝おうと思ったが、

 

 

「いや、ここはキュルルちゃん1人でやってもらおう」

 

 

だが、ドラえもんがサーバル達に手伝うのを止める。

 

 

「なんでよ?」

 

「そうだよみんなでやったほうが早く出来そうだよ」

 

 

サーバルとカラカルは効率を考えてやった方がいいと提案する。

 

 

「2人ともキュルルちゃんの顔をよく見て」

 

「「ん?」」

 

 

2人はドラえもんに言われた通り、キュルルの顔を見ると真剣な眼差しで集中している様子だった。その表情は今までも何回も見たことがあった顔だ。

 

 

「今のキュルルちゃんはアシカさん達の為に一生懸命何かをしようとしているんだ。それを僕たちが手伝おうっていうのはキュルルちゃんにとって妨げになるかもしれないよ」

 

 

そう言われると、2人は納得したのか少し黙り込む。

 

 

「……そうだね、じゃあ見ているよ」

 

「まあ、たしかにキュルルのあの姿を見ると手伝いにくいわね」

 

 

2人はキュルルの行動を見守ることにした。一方でキュルルは様々な荷物を退かしていると、ある物が目に入る。

 

 

「見つけた!」

 

 

彼女が取り出したの長い棒に先端には細い糸が付いている物だ。それを見たドラえもんはその道具の名前を言う。

 

 

「それって釣り竿?」

 

「つりざおってなに?」

 

「魚を釣るための道具だよ。糸の先端にある釣り針に魚の餌をつけて魚を釣り上げるんだよ」

 

「すごーい!ねえ、私も触りたい!」

 

「いいよ」

 

 

初めて見る釣り竿にワクワクしたサーバルはキュルルに貸してほしいと頼む。対して彼女は釣り竿をサーバルに渡した。

 

 

「へえ、これがつりざおか〜」

 

「これで本当に魚が釣れるの?」

 

 

手に取った釣り竿を見てサーバルはじっくりと観察した。隣にはカラカルがいるがいまいち釣り竿を信用していなかった。そして、その様子をドラえもんは親が玩具で遊んでいる子供を見る目で見ていた。

 

 

「見せてくれて、ありがとう」

 

「うん、じゃあ早速作るよ」

 

 

満足したサーバルは釣り竿をキュルルに返した。釣り竿を返してもらった彼女は釣り竿を探していた時に見つけた道具箱からいくつか道具を取り出して、釣竿を組み合わせ始めた。

 

 

(そうそう、前にのび太君も鳥人間の翼を作ろうとこんな感じに集中してやっていたな)

 

 

その後ろ姿からはドラえもんの目には紙と木で翼を作ろうとするのび太の姿と重なっていた。一方でサーバル達は気になって彼女を挟む様に隣に座って組み合わせていくところを見ていた。

 

 

「出来た!」

 

 

ボールと釣り竿を組み合わせたキュルルはそれを3人に見せる様に掲げる。

 

 

「これが……」

 

「特別なご褒美?」

 

 

2人の前には船室にあった釣り竿と吊り下げられたビーチボールだ。カラカルはキュルルの作った物に全く特別凄いような物は感じなかった。しかし、サーバルは目を輝かせ釣り竿に吊るされるボールを思わず叩いた。

 

 

「みゃ!みゃみゃ!」

 

「さ、サーバルちゃん⁉︎」

 

「ふふ、どうやらサーバルちゃんは気に入ったようだね」

 

 

作った本人である彼女はいきなりサーバルがボールを叩いてきた事から驚くものの、ドラえもんがサーバルは喜んでいると聞いてキュルルは笑顔を浮かべた。

 

 

「あれ、カラカルはやらないの?」

 

「や、やらないわよ!」

 

 

一方でカラカルはサーバルと違ってやるつもりはないと言っているが、先ほどからチラチラとボールを叩いているサーバルを見ていた。どうやら口ではそう言っているが、体は正直なようだ。

 

 

「キュルルちゃんこれでいいの?」

 

「うん、イルカさんの特別なご褒美はこれにするよ」

 

 

ドラえもんはこれで完成したのかと確認すると彼女は満足した表情を浮かべて肯定する。サーバル達もキュルルの作った物を特別なご褒美に賛成した。

 

 

「あとはアシカの特別なご褒美だけどどうする?」

 

「そもそもアシカが喜ぶ物って何かしら?」

 

 

サーバル達はイルカの特別なご褒美は決まったものの、アシカの特別なご褒美についてはどうしようかと

 

 

「わからないな…ん?」

 

 

するとキュルルは部屋の隅にブルーシートで隠された何かを見つける。気になった彼女はブルーシートの方に近づいた。

 

 

「何だろう……これは!」

 

 

ブルーシートを引き剥がすと其処には山のように積まれた浮き輪が置かれていた。そして、彼女の後ろではサーバル達が気になって覗いてきた。

 

 

「何かしらこれは?」

 

「真ん中に穴が空いているよ。なんだか。アヅアエンの時にあった“ぶらんこ"に似ているね」

 

 

カラカルは初めて見る浮き輪を手に取って眺める。一方でサーバルはアヅアエンで組み立てたブランコに使われていたタイヤと形が似ていることからブランコの一部か思っていた。

 

 

「タイヤの事だね。いや、そうじゃなくてこれは浮き輪だよ」

 

「「うきわ?」」

 

 

また初めて聞く言葉にサーバルとカラカルは首を傾げる。

 

 

「浮き輪っていうのはこうやって胴体に……どお゛た゛い゛にぃー!!!」

 

 

ドラえもんは手に浮き輪をとって使い方を披露しようと浮き輪の穴に体を通そうとするが、ドラえもんの体はでかい為なかなか穴の中に入らなかった。その様子を見て3人は思わず笑いそうになる。そして、しばらくして「はぁ、はぁ」と息を荒くしたドラえもんはチラリとサーバル達に視線を向ける、

 

 

「と、取り敢えずこれを体に通せば海とかで溺れずに済むよ」

 

(((誤魔化した…)))

 

 

 

浮き輪を体に通せない事を誤魔化したドラえもんに3人は口には出さず心の中で呟いていた。すると、キュルルはドラえもんが手に持つ浮き輪を見て考えていた。

 

 

(そういえば記憶の中でもアシカさんはこの浮き輪を使っていた…)

 

 

 

イルカ同様に過去の記憶の中でアシカは浮き輪を使ったパフォーマンスを披露していた事を思い出した。

 

 

「決めた!これならアシカさんの特別なご褒美になる筈だよ」

 

「それには特に何かしないのね」

 

 

先ほどのイルカの為に作った特別なご褒美のように浮き輪には何も手を加えない事に意外と思っていた。

 

 

「うん、この浮き輪はどこか付け加えなくてもアシカさんを楽しませることができるよ」

 

「そうかしら?」

 

 

イマイチ浮き輪の何処にアシカを満足させられる要素があるのかわからないカラカルは取り敢えずキュルルの言葉を信じることにした。対して彼女はある事を思っていた。

 

 

(なんだろうこの違和感は……)

 

 

2人の特別なご褒美が決まった筈なのに内心では何処か違うと訴える自分がいたが、何が違うのかわからなかった。

 

 

●●●●●

 

 

アシカ達のご褒美を用意したドラえもん達は船室から出てくるとそこにはアシカ達が楽しみに待っていた。

 

 

「部屋を出てきたということは……」

 

「特別なご褒美は出来たの?」

 

「そうだよ。キュルルちゃんが用意したんだよ」

 

 

そう言うと4人は早速アシカ達に特別なご褒美を見せる。

 

 

「これが…」

 

「特別なご褒美」

 

 

釣り竿に吊るされたボールを見て思わず呆気にとられる2人。てっきり、自分たちの為に作る特別なご褒美だからとてもすごい物を用意してくれると思ったが、目の前に出されたのはいつも遊んでいるボールにそれを吊り下がる釣り竿をくっつけただけなのだ。しかし、イルカはそう思いつつも自身の尾びれを揺らして体がうずうずしていた。

 

 

「じゃあ、さっそく遊んでみようか。イルカさんはこのボールを触ってみて」

 

「う、うん!」

 

 

イルカはキュルルに返事をすると彼女の持つボールに目掛けて飛び上がろうとするが、キュルルは竿を揺らしてイルカから逸らした。それをみたイルカはもう一度触れようとするが、またしても竿を揺らしてイルカからボールを遠ざける。普通なら此処で「なぜ揺らす」などと聞くのだが、イルカはそんな事を言わず、触れられないボールにワクワクしていた。

 

 

「そーれ!」

 

「あっ、待てー!」

 

 

今度は竿を大きく振りかぶってそのまま海のほうに向かって振り下ろすと、吊るされたボールは海のほうに飛んでいき、それをイルカは海に飛び込んで追いかける。

 

 

「えーい!」

 

 

イルカはボールに近づくとそのまま頭突きを決め、ボールを船の方まで飛ばした。そして、彼女も船まで帰ってきた。

 

 

「どうかな?」

 

「うん、とっても楽しいよ!!!」

 

 

今までしてきたボール遊びよりもキュルルが作った道具でやる遊びの方が一番楽しく感じていた。

 

 

(なんだかとても楽しそう)

 

 

一方でイルカがとても楽しそうにしているのを見て、アシカは少し羨ましく思っていた。そして、キュルルはある程度イルカと遊ぶと今度は浮き輪を3つ抱えてアシカに近寄る。

 

 

「それじゃあ、今度はアシカさんだよ」

 

「え?…私ですか?」

 

 

少しぼーっとしていたアシカはいきなり話を振られた事に戸惑ってしまう。しかし、そんな事関係なくキュルルは浮き輪を構える。

 

 

「行くよ。それっ!」

 

「え、ま、まだ準備が────」

 

 

アシカがまだ準備をしていないというのに彼女は浮き輪を三つ同時に投げる。しかし、アシカは飛んでくる浮き輪に向かって飛び上がり、自身の体を浮き輪の穴に通した。

 

 

「「「「「おおおーッ!!!!」」」」

 

「凄いよアシカちゃん!」

 

「か、体が勝手に……」

 

 

飛んできた浮き輪に彼女は自身が対応出来ると思わず、自身でも驚いていた。

 

 

(でも、楽しい)

 

 

だが、驚きよりも楽しいと言う感情が多く出ていた。

 

 

「すっごーい!一回で三つも体を通すなんてアシカはすごいよ」

 

「いったいどうやったの?」

 

「え、えっと…わたしにもよくわかりませんが、体が勝手に反応してしまいました」

 

 

すると、先ほどのアシカの動きをみたサーバルが称賛の声を上げる。それを聞いたアシカは2人に褒められた事により頬を赤く染める。

 

 

「どうだったアシカさん?」

 

「はい、とても良い気持ちです」

 

 

こんな気持ち今までになかったそう伝えると、カラカルはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「じゃあ、これで帰れr「いえ、まだ満足できてません」

 

 

アシカが満足したと思ったカラカルだったが、当の本人がまだ納得できていないと発言するのだ。

 

 

「ええーーっ!?まだ満足できないのぉ〜!?」

 

「ちょっとカラカルちゃん!」

 

 

アシカの発言からして満足したのかと思ったカラカルだが、まだ満足出来てないと聞いて、とてつもなく絶望に見舞われた表情を浮かべる。ドラえもんはあまりにも失礼な発言をする彼女に注意した。

 

 

(2人がまだ満足出来ない訳はなんだろう?)

 

 

一方でキュルルは彼女がまだ満足出来ない訳を考え出す。自分が作り出した特別なご褒美は蘇った記憶を頼りに作った為、ひょっとするとその記憶の中にアシカが満足できるヒントがあるかも知らないと思い、記憶を振り返る。

 

 

(まず、2人がいた場所はあのステージ。そして、周りには沢山のフレンズ達。そのフレンズ達に2人はショーを披露していた……そうか!)

 

 

2人が"どう言う場所"で"どんな状況"で"何をしていたのか"一つ一つのピースを埋めていき何かに気づくと彼女はドラえもんの方振り返る。

 

 

「ねえドラえもん。ドラえもんは海の上に浮かぶステージとフレンズ達を呼ぶ道具は持ってない?」

 

「へ?まあ、一応あるにはあるけど「あるの!?」…だけど、僕のポケットの中にあるステージは海に浮かばないし、仮にフレンズのみんなを呼んでも海に溺れちゃうよ」

 

「そっか……」

 

 

ドラえもんに海に浮かぶステージはないかと聞いたが、ドラえもんはないと答え、キュルルは残念そうな表情を浮かべる。

 

 

「……でも、なんとか出来そうな道具はあるよ」

 

 

それを聞いたキュルル達は思わず驚愕の表情を浮かべてドラえもんに顔を向ける。対してドラえもんはいつものようにポケットの中に手を突っ込むとそこから道具を取り出す。

 

 

「室内旅行機〜!」

 

「それはなんですか?」

 

「それもご褒美?」

 

 

ドラえもんが出した道具を見て、もしかしたらご褒美と思ったアシカとイルカだった。

 

 

「まあ、そんなものかな。それでキュルルちゃんは海の上に浮くステージとお客さんで良いんだっけ?」

 

「あ、うん…」

 

 

ドラえもんはキュルルに質問すると、彼女は何がなんだかわからないが思わず肯定する。一方でサーバル達4人もドラえもんの出した新たな道具に興味津々の様子だ。

 

 

「ドラえもんちゃん次はどんな道具なの?」

 

「ひょっとしてステージを出す道具だったりして」

 

 

カラカルは冗談半分でそう答えると、ドラえもんはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「ちょっと違うかな」

 

「え?…ちょっと?」

 

 

ドラえもんの発言を聞いて思わず彼女は聞き返した。一方でドラえもんは取り出した室内旅行機を船の上に置くと、それについている幾つかのボタンを押し出した。

 

 

「えっと、設定は海に浮かぶステージと観客席っと……これでよし!」

 

「「「「「うわっ(きゃ)⁉︎」」」」」

 

 

ドラえもんは室内旅行機に付いているスイッチを幾つか押すと、光出した。サーバル達は室内旅行機から発する光に思わず目を瞑る。そして、暫くして光が止み、彼女達は恐る恐る目を開けると思わず声を上げる。それもそのはず、今彼女達は船の上にいるのではなく見覚えのないステージの上に立っているのだ。

 

 

「私たち先ほどまで船の上にいた筈なのに……」

 

「どうなっているの?」

 

「なにこれ!なにこれ!」

 

「なんだか、海にあったステージに似ていますね」

 

「うん、それになんだかワクワクしてきたよ!」

 

 

5人は目の前に起こった現象に思わず驚きと好奇心が溢れていた。

 

 

『アワワワワワワワ』

 

 

一方でラッキーさんはアヅアエンのラッキーさんの情報や着せ替えカメラとテキオー灯の力を間近で見てある程度耐性がついているのかと思いきや、まさか自分たちのいる場所が全く変わる現象にフリーズを起こしていた。

 

 

「うわ〜!とってもひろ〜い!」

 

「サーバル、走ると危険よ」

 

「へーき、へーk──「ガンッ!」うぎゃぁっ!!!」

 

「「サーバル(ちゃん)!?」」

 

 

サーバルはステージの上を走り回っていると、彼女の足に何かが強打してしまい彼女は足を押さえながら転がった。それを見たカラカル達は慌ててサーバルに駆け寄る。

 

 

「大丈夫サーバルちゃん?」

 

「ぅぅ…何かが足にぶつかった」

 

「何かって、何にぶつかったのよ?」

 

「足元には何も転がってないよ」

 

 

カラカル達の言う通りである。彼女が足を強打した場所とその周辺には何も障害物は置かれてはいなかった。サーバルもそれを見て不思議に思った。

 

 

「あー、ごめんごめん。説明するのを忘れてた」

 

 

サーバルに軽く謝るドラえもんだが、何かを知っていそうな口ぶりだった。

 

 

「ドラえもんちゃんどうなっているの?」

 

「今いる場所はに室内旅行機から作り出された映像なんだよ」

 

「「「「えーぞー?」」」」

 

 

ドラえもんの説明に出た"映像"と言う言葉にキュルルを除いた4人は思わず首を傾げる。一方、映像の意味を知るキュルルはドラえもんの言っている意味がすぐに理解できなかったが、次第に理解してきた。

 

 

「要する此処は幻のステージで実際僕たちは船の上にいるだけなんだよ。周りの景色だけをステージに変えただけだから、船の構造は全く変わっていないから多分サーバルちゃんは船の柵に足をぶつけたんだと思うよ」

 

 

ドラえもんがさらにわかりやすく説明をしたところで4人は「あ〜」と納得の声を上げる。

 

 

「それなら先に言って欲しかったな」

 

「説明する前にサーバルちゃんが走り回るから言うのが遅れちゃったんだよ」

 

 

ドラえもんは半分自身に責任がある事を理解しているが、もう半分は何も考えずに走り回ったサーバルの自業自得である。そのことに指摘された彼女は「あ、ははは…」と乾いた笑い声を出して誤魔化した。

 

 

「取り敢えず次はお客さんを出そうか」

 

 

そう言ってドラえもんは室内旅行機のスイッチを押すと、誰も座っていない観客席に沢山の人間のお客さんが現れた。

 

 

「お、お客さん達だ!」

 

「すごい!あんなにもいるなんて初めて見ました!」

 

 

イルカとアシカは観客席が満席になる程の数のお客さんを見て大興奮していた。しかし、それを他所にサーバル達があることに気がつく。

 

 

「あれ、でもあそこにいるのは耳のないフレンズばかりね」

 

「本当だ」

 

「ドラえもんあそこにいるのは?」

 

 

観客席に座っているお客さんが頭には耳は生えておらずさらには老若男女がいることにドラえもんあそこにいるのは誰なんだと3人は聞いてきた。

 

 

「あそこにいるのは全てフレンズじゃなくてヒトだよ」

 

「え?てことはキュルルちゃんと同じヒトなの?」

 

「キュルル以外のヒトは初めてみるわ」

 

 

目の前に座るお客さん達は人であると知りサーバルとカラカルはじっくりと観察する。キュルルも自分以外初めてみる人に思わずじーっと見つめていた。すると、此処でサーバルがある事を思いついた。

 

 

「そうだ!あそこにいるヒト達にキュルルちゃんの巣はどこにあるか聞いてみようよ」

 

「良いわね!」

 

 

観客席にいる誰かならキュルルのお家の手がかりを知っているかもしれないと考えたサーバルとカラカルは早速話しかけようとする。

 

 

「サーバルちゃんそれはできないよ」

 

「え?どうして?」

 

 

しかし、サーバル達はドラえもんに止められる。2人はなぜ話をすることができないのか訳を聞くと、ドラえもんは説明する。

 

 

「あそこにいる人たちはこのステージ同様に室内旅行機から作り出された映像なんだよ」

 

「そうなの⁉︎」

 

「そっか……」

 

 

目の前に座るお客さんは全員本物の人では無いと知るとがっかりするサーバル達。それを見たドラえもんとアシカ達は3人のがっかりする姿を見て心が痛んだ。

 

 

「せっかくキュルルちゃんの巣の手がかりが見つかると思ったのにな〜……」

 

「……ま、まあ、とにかく。今はアシカさん達を楽しませよう!」

 

 

本当なら一番キュルルががっかりするにも関わらず彼女は自身よりもアシカ達の望みを叶えようとする姿勢を見せたのだ。

 

 

「…そうだね」

 

「けど、なんでこの幻のステージとお客さんが必要な訳なの?」

 

「多分2人にとっての特別なご褒美は自分たちの芸を見てくれたお客さんの声と笑顔だと思うんだ。僕の思い出した記憶には2人はとても嬉しそうだったしね」

 

 

キュルルは記憶の中で生き生きとお客さん達に芸を見せるアシカとイルカの姿を思い出す。彼女はそれを見て特別なご褒美とはお客さんの声と笑顔であると推測し、それができるように記憶の中のショーを再現しようと考えたのだ。

 

 

「ドラえもんあそこに座っているお客さんは動くの?」

 

「うん、ちゃんと本物のように動くからアシカさん達の芸に反応する様になっているよ」

 

 

ドラえもんはキュルルにそう返すと、彼女は笑みを浮かべ「わかった」と返事をしてアシカ達に視線を向ける。

 

 

「それじゃあ、アシカさんにイルカさん。2人の芸を此処にいるみんなに見せてよ」

 

「「……はい(うん)!」」

 

 

2人は元気よく返事をすると、ステージの真ん中に立ち、いつもやっている芸を含めキュルル達と協力した芸を映像であるがお客さんに見せると歓声と拍手を送った。その途中サーバルやドラえもん達もアシカ達を真似てショーをやるが、所々失敗して観客席から笑い声が上がったり、サーバルがステージの端っこに行こうとしたら、誤って海から落っこちるアクシデントもあったものの、それを助けるようにイルカが海に潜ってサーフボードのようにサーバルを背中に乗せ、波に乗りステージに戻ると一番の歓声と拍手を浴びるのだった。

 

 

●●●●●

 

 

アシカとイルカが満足するまでショーをやっていたら、夕方になってしまい。ドラえもん達はアシカ達に船を押してもらい陸まで戻ってきていた。

 

 

「皆さん今日はどうもありがとうございました」

 

「ありがとう!」

 

 

アシカとイルカは自分たちの求めていたご褒美をくれたドラえもん達に感謝の言葉を送った。

 

 

「いや、こちこそとても楽しかったよ」

 

「うん、本当に楽しかったよ」

 

「ほんと、海に落ちたサーバルを2回も助けてくれてありがとうね」

 

「カラカル〜!」

 

 

4人もそれぞれアシカ達に感謝の言葉を送ると、イルカが両手を後ろに何かを隠していることに気づいた。

 

 

「はい、これをあげるよ」

 

 

イルカはドラえもん達に自分たちが普段遊んでいるボールを渡した。

 

 

「うわ〜!もらって良いの?」

 

「うん、おともだちの証だよ」

 

「それにボールは沢山ありますから」

 

「それじゃあ、こちらも今日のお礼にどうぞ」

 

 

アシカとイルカからボールを受け取ると、対してキュルルもお返しとしてスケッチブックから紙を切り取るとそれをアシカ達に渡す、するとその紙を見た2人は笑顔を浮かべる。そこにはステージの上でお客さんにショーを見せるアシカとイルカの絵が描かれていた。

 

 

「ちょっと波で船が揺れていたからあまり上手く描けなかったけど、どうかな?」

 

 

キュルルはあまり出来の良い物では無いと言うが、2人にとってはその絵はとても良い絵に見えた。

 

 

「うん!とっても良いよ!」

 

「はい、私たちにとってこれは最高のご褒美です。そうです!皆さんが困った事が有れば我々は何処からでも駆けつけますからね」

 

「ありがとう。けど、そこまで言われると照れるなぁ」

 

 

2人に凄く褒められた事にキュルルは嬉しそうな顔を浮かべる。すると、波が大きく「ザパーン」と音を立てると全員は一斉に海の方向に首を向ける。

 

 

「あっ、夕日が沈んでいく」

 

「とても綺麗ね」

 

 

昼間までは天高く登っていた太陽はオレンジ色に変わり、海に沈んでいくように見える事から彼女達にとって今までの中でとても良い景色だと思っていた。

 

 

「そうだ!夕陽を背景にしてもう一枚これを背景に絵を描いてみよっと」

 

「はは、それはいいね」

 

 

キュルルの創作意欲は燃えて、スケッチブックを取り出して色鉛筆を片手に目の前の光景を絵に描いていた。それを見たドラえもんは微笑ましく思っていた。

 

 

「私たちは何時もこの時間はあの夕陽を見ているんだ」

 

「ええ、こうやって眺めると心がとても落ち着ますからね」

 

「へぇー、そうなんだ」

 

 

アシカ達もこの景色はとても好きなようで昼間は散々彼女達に振り回されたカラカルだが、この景色に対する思いは共感できていた。一方でサーバルも夕陽を眺めていた。サーバルも夕日が海に沈んでいか景色を見て心を打たれる。

 

 

「うわぁー、きれ……え?」

 

 

 

だが、その一瞬目の前の夕日は燃え盛る船とそれにしがみつく黒い大きなセルリアンに見えた。

 

 

 

「なに、今のは……?」

 

「どうしたのサーバルちゃん?」

 

 

ドラえもんは呆然としているサーバルが気になって、話しかけてきた。

 

 

「あ、なんでもないよ」

 

「そう?それなら良いけど……」

 

 

ドラえもんは彼女は本当になんでも無さそうだと分かるとそれ以上追求はしなかった。対して、サーバルはもう一度夕陽を見つめるが、特に先程のように夕日では無い別の何かに見える事はなかった。

 

 

(なんだったんだろうさっきのは……?)

 

 

全く見覚えのない物を見てサーバルはそれが一体なんなのだろうと考えるが、

 

 

(なんでだろう……考えるととても胸が締め付けらるように痛い)

 

 

彼女はどうして胸が痛むのかわからなかった。だが、考えると胸が痛くなるのなら考えなければ良いとそう思った。

 

 

(これ以上胸が痛くなるのは嫌なのに、それ以上に考えるのをやめたくない……なんでだろう?)

 

 

しかし、サーバルは胸の痛みを感じながらも先程の光景について考える自分に矛盾を感じていた。そして、今までこんなにも深く考えた事はないサーバルは"先程の光景"と"謎の痛み"と"深く考える己"の三つは何かを意味している……そうじゃないか推測するが、

 

 

「ちょっと、早く行きましょう?もう用は済んだんだから……」

 

「……カラカル」

 

 

てっきりもう海は克服したかと思えば未だに海を怖がるカラカルの声を聞いてサーバルは思考を停止させる。すると、先程考えた事を忘れるように半ば呆れたように苦笑いを浮かべる。側に居るドラえもんとキュルルも同じ様子だ。

 

 

「皆、疲れてるみたいだからそろそろ行かないとだね」

 

「そっか、もうお別れかぁ……楽しかったのにな〜〜」

 

「そうですね。皆さん、私達に付き合ってくれてありがとうございました」

 

 

ドラえもんの言葉に名残惜しそうな様子のイルカとアシカ。そんな二人の言葉にキュルルは「お礼を言うのは僕達の方だよ」と答える。すると、今日一日4人についてきてくれたラッキーさんは前に立つ。

 

 

『カイジュウエンは楽しめたかな?ボクのガイドはここまでだケド、道中は気を付けるんだヨ〜』

 

「そっか、案内ありがとうね。ラッキーさん!……あ、そうだ!」

 

 

キュルルはラッキーさんにお礼を言うと何かを思い出し、スケッチブックのページを開き、筆を走らせる事数分。彼女はスケッチブックから一枚紙を切り取り、それをラッキーさんに渡した。キュルルを除いた全員はラッキーさんの耳に挟まれている絵を覗くと、そこには今日このカイジュウエンを冒険するきっかけとなったアシカ達の水族館とステージの絵に自分たちがショーをやっている姿が描かれていた。

 

 

『マハロ(ありがとう)!マーラマ・ポノ(元気でね)!』

 

「「「「「「ラッキーさんありがとう!」」」」」」

 

 

ラッキーさんはドラえもん達にお礼を言うと、ドラえもん達もラッキーさんにお礼を返すと、ラッキーさんは一足先に絵を持ってぴょんぴょんと跳ねてその場から去っていった。すると、今度はアシカとイルカがは互いの顔を見合わせ始めた。

 

 

「それじゃ、最後にアレやろっか!」

 

「そうですね。……せーの」

 

「「さよーなら〜〜〜〜」」

 

 

彼女達は初めて会った時と同じように手を振りながら別れの挨拶をいう。

 

「さようなら!アシカさん!イルカさん!」

 

「元気でね〜〜」

 

 

そう言い、アシカとイルカは手を振る。そう、別れを告げ、手を振る。手を振る、振る、振る、振る、振る─────

 

 

「………アナタ達?いつまでそれをやって?」

 

 

まだ自分達は一歩も歩いていないのに、手を振り続ける彼女たちを見て変だと思っていた。すると、だんだんと手を振るのが辛くなってきたのか少し手を振る速さが遅くなり、2人の顔もだんだんと赤くなってきた。

 

 

「ごめんね、早く行って!」

 

「これ一度やると、見ている子が居なくなるまでやめられないの!」

 

「「「ええ!?」」」

 

「あー、確かに。見た事あるなぁ」

 

 

水族館のショーでアシカとイルカがお別れをする際、器用に前脚を振る姿をドラえもんは頭に浮かべつつ、キュルル一行は彼女達の身のために颯爽とその場を後にしたのだった。

そして、ドラえもん達が去った事により漸く手を振るのをやめられた彼女達は深く息を吐いた。

 

 

「行っちゃったね〜」

 

「えぇ、困った時はいつでも呼んでと言ったけれど……大丈夫かしら?」

 

「うん。最近、海のご機嫌も良くない見たいだし……」

 

 

夕焼けに照らされ、橙色に染まる海。

そこに不穏な黒い光が浮かんだ事はまだ誰も知らない。

 

 

●●●●●

 

 

一方同時刻のアヅアエンでは、ドラえもん達の活躍で直った公園はそこに住むフレンズ達の遊び場となっていた。

 

 

「というわけで我々はこの方を探しているのですが知りませんか?」

 

「え、えーと、こんな姿した人は私やジャイアントパンダちゃんの知り合いにいませんよ……」

 

 

すると、その公園には先日までさばんなちほーにいた探偵のセンちゃんがレッサーと話をしていた。

 

 

「わーい!」

 

「zzzz〜」

 

 

一方でアルマーさんは仕事をしているセンちゃんを他所にブランコで楽しく遊んでおり、その隣のタイヤのブランコでは相変わらずジャイアントパンダが寝ていた。

 

 

「お願いします。なんでも良いのでの情報をください!」

 

「えっと、あ!…それならその絵に似た人が昨日此処に来ましたよ」

 

「その方はどこに居ますか⁉︎」

 

 

レッサーパンダがこの絵に描かれている何かがドラえもんに似ていると気づき、その事を口にするとセンちゃんは聞き逃さず、その事について追求するが、

 

 

「センちゃんも一緒にぶらんこで遊ぼうよ〜!」

 

 

ブランコで楽しく遊ぶアルマーさんがセンちゃんを誘ってくる。それを見た彼女は一旦レッサーパンダから情報を聞くのをやめて、アルマーの方に振り返る。

 

 

「アルマーさん!私たちは遊んでいる暇はありませんよ!」

 

 

自分たちがこうしている間にも探している人物はどんどん遠くへ行くと言うが、アルマーはキョトンとした顔になる。その目はおかしな物を見るような目であった。何故彼女は相方をそんな目で見るのはすぐわかった。

 

 

「そう言っているけど、センちゃんはそのしーそーって物に乗っているじゃん」

 

「うっ!」

 

 

そう、彼女はシーソーに座って反対側に座るレッサーパンダから情報を聞いていたようだ。どうやら彼女もこの公園や遊ぶフレンズ達を見て遊びたい気持ちが一杯のようだ。

 

 

"公園遊ばずにはいられない!"

 

何処かでそんな声が聞こえた気がする。

 

 

「い、いいんですよ!私はレッサーパンダさんが答えやすいように仕方なく!このシーソーに座っているだけで、決して仕事を建前に遊んでいる訳じゃないんです!」

 

「そうかな?その割には随分楽しそうだったけど」

 

「うぐっ⁉︎」

 

 

アルマーさんに自身の本心を見抜かれた彼女は思わず呻き声を上げるが、そのあとすぐに先払いをして冷静になると、レッサーパンダの方に向き直る。

 

 

「そ、それよりも先ほど話の続きを聞かせてください!」

 

「えっと、確かあそこにあるものれーる?に乗ってあっちの方へ行きましたよ」

 

 

レッサーパンダが指を刺した方向には此処へくる途中目にしたモノレールのレールがあった。

 

 

「あっちの方角は確かカイジュウエンでしたね……貴重な情報ありがとうございます!」

 

 

センちゃんはレッサーパンダにお礼を言ったが、突然レッサーパンダの方から「ズズッ」と音が聞こえ、なんだろうと思いながら彼女の方を見ると、

 

 

「あ…や、やった!私まだや゛ぐに゛だっだよ゛ぉぉぉぉ!」

 

「えええっ!?何故泣くんですか⁉︎」

 

 

突然泣き出したレッサーにセンちゃんは戸惑ってしまう。すると、周りから視線を感じ、恐る恐る振り返るとそこには先程まで遊んでいたフレンズが冷めた目でセンちゃんを見ていた。

 

 

「ち、違います!わ、私が泣かしたんじゃないんですよ!」

 

 

センちゃんは慌てて否定するが、その必死さが余計怪しくフレンズ達は先程よりも敵意を彼女に向ける。

 

 

「あ、アルマーさん助けてって、いなぁぁーい!?」

 

 

先程までブランコで遊んでいたアルマーさんはどうやら逃げてしまったようだ。そして、1人残されたセンちゃんはなんとか泣くのをやめさせようと努力するが、全く効果はなかった。

 

 

「い、いくら探偵の私でも泣いている子を慰める事なんて事はできませんよー!ヘラジカ様助けてくださーい!」

 

 

アヅアエンの中心にセンちゃんの嘆きの声が響き渡るのだった。これから先彼女は一体どうなるのやら、それはまた次の話に続くのであった。




フレンズ図鑑

カリフォルニアアシカ

ネコ目アシカ科アシカ属

Zalophus californianus

器用で芸達者なショーの人気者、カリフォルニアアシカのフレンズ。
アラスカ南東部からメキシコの中央部辺りにかけて分布し、普通は海岸線に沿って生息しているが、北太平洋沿岸では河川でも発見されている。体はトドやオタリアのように水中を泳ぐのに適した紡錘形をしている。耳や尾は短く、下毛はなく体毛も極めて短い。毛色は雄は黒褐色や暗褐色で、雌はやや明るく黄褐色などをしている。のどと胸は濃く、四肢は黒色に近くて、成熟した雄の首の毛はやや長くてたてがみ状をしている。また、雌よりも雄の方が体が大きく、成長したカリフォルニアアシカの雄は額がこぶのように盛り上がってくる。四肢にはそれぞれ5本の指があるが、いずれも厚い水かきでつながっていて、魚のひれのようになっている。また、尾はきわめて短く、後足の間に隠れるようになっている。泳ぐ時には体を上下に運動させるだけではなく、前足を巧みに使って自由に泳ぎまわることができる。ふつうは水面に頭を出して泳いでいるが、急ぐときには潜水し、水中では25~30km/h程の速さで泳ぐことができる。潜水能力にも優れ、水に潜るときには鼻の穴を閉じることができ、長ければおよそ15分程も潜っていることができるほか、潜水深度は270~300mに達すると言われている。律技でちょっとお固いところがあるものの、しっかりさん。バンドウイルカの「ドルフィンキック」で放たれたボールを受け止められる唯一のフレンズらしい。
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