プロローグ
東京都練馬区月見台すすきが原、その地域にある一件の住宅地に何時もの様に眼鏡をかけた少年が居候のロボットである彼の名を泣きながら叫んだ。
「ドラえも〜ん!!!」
「どうしたんだいのび太君?」
「スネ夫がまた僕を除け者にしたんだ!」
「またか、それで今度は何に除け者されたんだ?」
「今度世界中の動物達が集まってる動物園に行くって、言うんだ!」
「世界中の?それは普通の動物園じゃないの?」
グスグスと泣きながら、眼鏡を下から涙を流す彼の言葉にどうせいつもの事だろうと考えながら"一応"耳を傾ける。
「違うんだ!その動物園は絶滅危惧種の動物がいくつも居るんだ」
「ふーーん、そりゃ凄いね」
興味なさそうに返事をしながら漫画の続きを読み始めるが、のび太が抱きついてきた。
「そうなんだ!だから僕も連れて行ってよ〜!」
「また無茶な事をだけど、動物園なんて未来の方がよっぽど凄いのがあるよ」
「本当に?」
「うん、最近出来たばかりなんだけど其処は世界中の動物が生きられる環境になっているんだ。しかも絶滅した動物も最先端の技術で蘇らせているんだ」
「すっごーい!ねぇ、なら早くその動物園に連れて行ってよ!」
「落ち着いてのび太君。確かにその動物園は凄いけど、その動物園に行けるのは抽選式になっているんだ。仮に応募しても当たる確率は砂漠の中から米粒を探し出すのと同じなんだぞ」
「ええ〜ッ!?そんなぁ……」
「まっ、早々に諦めるんだね」
「そこをなんとかしてよぉ〜!」
「動物見たいなら、図鑑とかテレビとかあるでしょ」
「僕は本物が見たいの〜〜〜!」
グラグラと青のボディを揺らすのび太に呆れつつも、これ以上言わせたら何をしでかすか分かったものでは無いドラえもんは溜息を吐き、腹部にある白のポケットの中へ手を入れた。
「まぁ、取り敢えずあまり期待しない方が良いよ」
落ち込む彼に気の毒に思ったドラえもんはなんとか抽選に当たろうと思い、お腹に付いている四次元ポケットからハガキを5枚取り出した。
「応募用のハガキはたったの5枚しかないけど、1枚当たるだけで最大5人まで連れて行けるからね」
「5人か〜、当たったらしずかちゃんも誘おう」
「スネ夫とジャイアンはどうする?」
「スネ夫とジャイアンは僕を除け者にしたんだから絶対誘わないよ!」
「はいはい(これはまた何時ものパターンだ)」
ドラえもんは過去に何回ものび太が冒険へ行く時必ずジャイアンとスネ夫が強引で着いて来ていた事がある為、今回もそうなるんだろうなと思いながら応募ハガキを5枚書くと、机の引き出しを開いた。
「あれ?何処に行くの」
「このハガキは22世紀の郵便ポストに入れてくるよ。それまでちょっと待っててね」
「うん、わかった。気をつけてね」
ドラえもんは引き出しの中へ入っていった。それからのび太はが彼が早く帰ってこないかと待ちわびた。暫くするとドラえもんは引き出しから出てくる。
「ど、どうだったドラえもん⁉︎」
「さぁ、わかんないよ。結果なんてすぐ来る訳じゃないから早くても明日か明後日ぐらいだよ」
結果が待ち遠しいのび太はドラえもんに当たったか聞くが、まだ送ったばかりで結果は来ていないと告げる。それを聞いたのび太は一瞬がっかりするが、
「ん?ドラえもん引き出しがなんか光っているよ」
「へ?」
目を向けた先には引き出しの隙間から溢れんばかりの七色の光が漏れ出している光景だった。ドラえもんが恐る恐る引き出しの取っ手に触れようとした瞬間。
「うわぁ!な、なんだこれは!?」
二人の視界が埋め尽くされる程のキラキラと輝く結晶が引き出しの中から幻想的に現れたのだ。するとのび太は足元に何か紙切れのような物を拾い上げる。結晶の中に紛れていたのは先ほど話していた動物園のチケットらしき物であった
「こ、これはまさか………!」
思わず目を疑ってしまい何度も目をこすった確認したが、その紙にはパークチケットと書かれてあった。
「動物園のチケットだぁーーっ!」
それは先ほど話していた動物園のチケットである。のび太はその場で"やったー"と連呼しながら喜ぶ。一方、ドラえもんはそんなのび太と反対に喜ばず、チケットに疑心の目を向ける。
「そんな馬鹿な、いくらなんでも結果が出るのが早すぎる。しかも抽選に当たるなんて……」
当選した場合には事前に連絡が届く、または配達ロボットがチケットを渡す等があるのが普通だ。ドラえもんはチケットと共に引き出しから出てきた謎の結晶に胡散臭さを感じた。
「のび太君、行くのはもうちょっと待ってくれないかな?」
「え?どうして……」
「ひょっとしたら、これは何かの間違いで動物園側のミスかもしれないからもう一度22世紀に行って確かめてくるよ」
「そんな事しなくてもいいじゃない!これはきっと僕の日頃の行いが良かったからに違いないよ!」
「日頃の行い?」
チケットが当たったは日頃の行いと言い切るのび太にドラえもんは思わず目を細くした。今までドラえもんはのび太の日常の行動を見てきたが、遅刻に宿題忘れや他にも授業中の居眠りにテストで0点を多く取っている。それが当たり前のような日々の何処が行いがいいのかと口では言わず、心の中で思っていた。
「(まぁ、危なくなったらすぐに帰ればいいか)わかった。そこまで言うなら行こうか、ただし3日後に行こう。その間夏休みの宿題を出来るだけやっておいてよ」
「わかってるわかってる」
……それから3日後。
ドラえもんの眼前にはいつもと同じメンバーの面々が揃った光景が広がっていた。
「まぁ、こうなる事は予想していたよ」
「とほほ〜……」
「大丈夫のび太さん?」
「流石心の友だ!」
「やっぱり持つべきものは友だよね!」
折角しずかちゃんが誘いに乗ってくれたのに其処へタイミングよくあらわれたジャイアン達に自分たちも連れて行けと2人の気迫に負けてしまい、仕方なくジャイアンとスネ夫を連れてきたのび太は落ち込む。隣にいるしずかちゃんはのび太を励ます。
そして、肝心の2人はにっこりと笑みを浮かべていた。
「それにしてものび太水くさいじゃないか、そんな楽しい動物園に俺たちを誘い忘れるなんて」
「ほんとそうだよね。僕らはいつも一緒運命共同体なんだよ」
「よく言うよ。この間は僕を除け者にしてしずかちゃんと一緒に動物園に行こうとしたじゃないか?」
「まぁ、それはこれであいこって事にしとこうぜ」
ジャイアンはそう言ってのび太の肩を叩いた。
「まぁ、いいじゃない。実は僕も動物園は楽しみにしていたんだよ……ん?」
(あれ?これから行く動物園のチケットにこんな変なマークなんて書かれていたっけ?)
ドラえもんは動物園のチケットを見てみると、所々これから行く先の動物園のチケットと酷似しているが、全く別物だと気付く。
(何かおかしいぞ。このチケットは応募した動物園のチケットじゃないぞ)
「どうしたのドラえもん?」
神妙な顔をしてチケットを睨んでいたドラえもんに不審に思ったのび太は彼に話しかける。
「あ、いや、このチケットなんだけど今日はやっぱり行くのやめようかなって、グエッ⁉︎」
瞬間、ジャイアンの表情が一変しドラえもんの胸ぐらを掴み上げる。次第にドラえもんの顔は青ざめていく。
「なにぃ〜〜ッ?ドラえもんここまで来て俺たちの楽しみを無駄にする気か!?」
「ぐ、ぐるじぃ」
「そうだそうだ!せっかく僕が動物園を行くのを取りやめてやったんだ!此処で行かないなんて許さないぞ!」
ジャイアンとスネ夫は元々はこれから動物園に行く予定だったが、のび太の話を聞いて未来の動物園がもっと凄そうだった為急遽動物園にいくのを取りやめてのび太に無理矢理来付いて着ているのだ。その為、2人の発言は理不尽極まりない。
「わ、わかった!わかったから放して……!」
だが、ドラえもんは首を絞められ窒息しかけていて耐えきれずジャイアンの言う事を聞き、未来の動物園に行く事にした。
「そうか、やっぱりさっきのは冗談だったよな」
ドラえもんの言葉を聞いてジャイアンはにっこりと笑みを浮かべて、彼を丁寧に床に下ろす。それからドラえもんはあまり気が進まないが、荷物の最終確認を行った。
「それじゃあ、いざ動物園に出っぱーつ!」
「「「「おおーーっ!!!」」」」
5人はのび太の机の引き出しを開くと、すぐ真下にある
「じゃあ、後はタイムマシンにこのチケットのナンバーを打ち込むだけだ」
ドラえもんはそう言うとチケットに書かれている数字をタイムマシンに打ち込むと、突如、タイムマシンから変なブザー音が鳴り出した。
「うわっ!?何ッ?一体何が起きたの⁉︎」
「ど、ドラえもん何か様子がおかしくない!?」
「これって大丈夫なのかしら?」
「おいドラえもん!この変な音を早く消せよ!」
タイムマシンから鳴る聞きなれないブザー音に困惑の表情を見せるジャイアンとスネ夫としずかとのび太はドラえもんに早く止める様に言う。
「そ、そんな事言ったって、僕だってこんなことは初めてなんだ!」
必死にドラえもんはブザー音を止めようとタイムマシンの装置を弄るが、一向に音は止まる気配を見せない。
『目標地点ジャパリパ-ク。コレヨリ直チニ出発致シマス。シ-トベルトヲ締メテ衝撃ニ備エテクダサイ』
すると、タイムマシンから音声が鳴るとタイムマシンは激しく揺れ出した。
「い、今衝撃に備えてって言ったよ!」
「てことはこれから猛スピードで動くって事?」
「み、みんなぁ!何かに捕まって!そうしないとタイムマシンから振り落とされちゃうよ!!!」
全員はドラえもんの座るシートをしっかり離さないように握ると、タイムマシンはものすごい速さで動き出した。
「「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」」」」」
タイムマシンから振り落とされないように全員は必死にしがみつきながら時空間の中を飛んでいった。
「どうやら、チケットは無事届いたようだ」
「ええ、我々は待っていた。ジャパリパークを救ってくれる希望を……」
「……う〜ん……あ、あれ?」
瞼をゆっくりと日差しが目に差し込み、思わず欠伸をして上体を起こして周囲を見渡す。視界には風で生い茂る草原が広がっていた。
「僕は……そうだ!暴走したタイムマシンに乗っていたらいつのまにか気絶しちゃっていたんだ!」
ハッと漸く自分の今の状況を飲み込めたドラえもんは立ち上がると、一緒に乗ってきたのび太達がいない事に気付き周囲を見渡しながら彼等の名を呼ぶ。
「おーい!のび太くーん!しずかちゃーん!スネ夫ー!ジャイアーン!」
大きな声で彼等の名前を呼ぶドラえもんだが、彼等の声は返ってこなかった。
「参ったな、此処がどういうところかまだわからないのにみんなバラバラになっちゃった」
兎に角なんとかみんなを探し出そうとポケットの中に手を入れて、道具を取り出そうとするが、
ガサガサ!
「え?」
すぐ近くの茂みが揺れる音に気が付き反射的に振り返る。仮に此処が目的地の動物園なら出てくるのは動物か又は此処の関係者そしてのび太達かもしれない。ドラえもんはそう考えるが、もしも出て来るのが危険な動物かもしれない。そう思ったドラえもんはポケットから
そして、茂みからは黄色く先っちょの黒い耳がピョコっと現れる。
(あの耳はサーバルキャット。だけど、サーバルキャットってあんなにデカかったけ?)
ドラえもんの知識は豊富だが、目の前の茂みに隠れているのは仮にサーバルキャットだったとしても耳が大きすぎる為、確信出来ない。そして、その茂みから謎の耳の正体が出てくる。
「お、女の子?」
そこに居たのは頭から耳を生やした少女だ。ドラえもんは思わず目を丸くする。一方、少女はドラえもんの姿を暫く見ると、にっこりと笑顔を見せて近づいてくる。
「はじめまして、私はサーバルキャットのサーバル。あなた何のフレンズ?何処から来たの?」
「へ?……フレンズ?」
ドラえもんは突然少女が自己紹介をしたかと思えば、そのあとに言った聞いたことのない単語に思わず首を傾げた。
「フレンズっていうのはよくわからないけど、僕ドラえもんです。君は此処に住んでいる人なの?」
「うん、ここはさばんなちほーだよ」
「サバンナ⁉︎ということは此処はアフリカなのかな?」
「あふりか?……わかんないや」
彼女の性格に少々調子が狂うドラえもんだが、此処はさばんなちほーという所は理解出来たが、今いる場所はなんのサバンナと呼ばれる場所なのか聞こうとするが、
「あ!そうだった。私急がなきゃ!」
「え、何処に行くの?」
慌ててその場から走り去ろうとした彼女にどうしたのかと聞くと彼女は答える。
「さっき、ロバにカラカルがセルリアンに襲われているって聞いて今助けに行くところなの」
「セルリアン?」
またも出てきた知らない単語にドラえもんは首を傾げる。彼はそれはなんなのかと彼女に聞こうとするが、
「それじゃあ私行くね。バイバイ、ドラえもんちゃん!」
「あっ、ちょっと待っ!……行っちゃった……」
サーバルはドラえもんが話しかける前にもう遠くへ走って行ってしまった。その場に残されたドラえもんはこれからどうするか考える。
「……とりあえず今はあの子について行ってみよう」
周囲にサーバル以外の人の気配はない為、彼女についていこうとしたが、彼女の足は速く、自分の速さじゃ見失うと悟るドラえもんはポケットからタケコプターを取り出すと頭に付け、空を飛んで彼女の後を追いかける。
暫く飛んでいると、森の中にサーバルと彼女に似た耳と服を着た少女と帽子を被った少女を見つける。
「あれはなんだ?」
彼女達の目の前には巨大なカメラの様な一つ目の化け物が立っていた。
「ひょっとしてあれがサーバルちゃんの言っていたセルリアン?」
先ほど彼女との会話に出てきたセルリアンが今目の前にいるモンスターであるなら納得いく。そして、考えている間そのセルリアンはサーバル達に襲いかかった。
「危ない!」
ドラえもんは丸腰の彼女達を助けようとポケットから道具を取り出そうとするが、彼女達はオリンピック選手顔負けの運動神経でセルリアンの攻撃を避け、サーバルは人間ではありえないほど高く飛び上がり、セルリアンの真上から右手を叩きつける。すると、セルリアンの体はバラバラに吹き飛んだ。
「あがっ!?」
思わず信じられない光景を見てドラえもんは顎が外れるくらい口を大きく開けて呆然となる。しかし、そんな呑気にしている場合ではなかった。帽子を被った少女の後ろに先ほどサーバルが倒したセルリアンと同じ種類のものが近づいている事に気付きドラえもんはサーバル達の方を見るが、彼女達は先ほどセルリアンを倒したばかりに油断をして、もう一体のセルリアンの存在に気づいていなかった。
セルリアンは三脚の様な足を帽子の少女に向かって振り上げる。その少女も漸くセルリアンの存在に気付き悲鳴をあげ、サーバル達はその少女の悲鳴を聞いてもう一体のセルリアンの存在に気がつく。
「もう一体いたなんて!?」
「危ない!」
彼女達はその少女を助けようとセルリアンに向かって走るが、セルリアンの方が速く動き帽子の少女に向かって足を振り下ろす。
「た、助けてぇぇぇぇぇぇええっ!!!」
帽子の少女は声を上げて助けを求める。その瞬間、セルリアンの攻撃により地面は抉れ、砂煙が舞う。サーバル達はそんな光景を見て思わず絶望感に包まれるものの、サーバルの耳が動きだす。
「あれ、あの音は?」
サーバルは音のした所を振り向くと、其処には先ほどセルリアンの攻撃にやられたかと思っていた少女とその少女を抱えながら空を飛ぶドラえもんの姿があった。
「大丈夫?」
「へ?……う、わわわわっ!ぼ、僕飛んでいる!?」
「ちょっ!暴れないで!」
帽子の少女は自身が空を飛んでいる事に状況が飲み込めず体を揺らした。
「ドラえもんちゃん!」
「なにあれ⁉︎」
サーバル達は空を飛んでいるドラえもんに一瞬驚くが、帽子の少女が無事だと分かるとホッとする。
ドラえもんはセルリアンから少し距離が離れたところに少女を降ろすと地面にぺたりと座る。どうやら先ほどのセルリアンの攻撃と空を飛ぶという体験をして腰が抜けてしまった様だ。
「大丈夫?怪我していない」
「ぼ、僕は大丈夫……」
「そう、それは良かった」
少女は怪我をしてないと分かるとドラえもんは安心する。が、其処へ先ほど少女に襲いかかったセルリアンがこちらにやってくる。
「ま、また来た!」
「ドラえもんちゃん逃げて!」
先ほど襲われたことがトラウマになってしまった少女は涙目になってセルリアンに怯える。サーバル達もドラえもん達に先ほどの様に空へ飛んで逃げる様に言うが、ドラえもんは少女の頭をそっと優しく撫でる。
「え?」
「大丈夫、安心して」
ドラえもんはそう言うとセルリアンの方に向き、ポケットの中に手を入れると其処から懐中電灯の様な道具を取り出す。
「スモールライト!」
そう叫びながらスモールライトのボタンを押すと、セルリアンに光が当たる。すると、みるみる小さくなっていき最終的には10cm程の大きさになり、ドラえもん達を見上げる。
「………」
「………」
その場にいた少女達は突然の出来事に目を見開いた。先程まで大きく凶暴なセルリアンが自分達の身長の半分も満たない大きさになるという現象に驚く。
そして、セルリアンは自分がドラえもんより小さくなった事が分かるとそそくさにその場から逃げようとする。
「逃がすわけないじゃない!」
たが、サーバルと一緒にいた少女がセルリアンに向かって飛び、その勢いで拳を叩きつけてバラバラにする。
「ありがとう」
「あ、いや、此方こそ」
セルリアンを小さくした張本人であるドラえもんに御礼を言われる彼女は少し複雑な気持ちになりながらも素直にお礼の言葉を受け取る。一方、サーバルと帽子の少女は未だにぽかーんと呆然になっており、そんな彼女達の姿を見た彼女は呆れて溜め息を吐き、サーバルに近づく。
「いつまで棒立ちしているのよサーバル」
彼女はサーバルの名前を呼びながら肩を揺らすと、漸く意識が戻りドラえもんに視線を移す。
「すっごーーい!何あれ!何あれ!セルリアンを小さくしたよ!!!それにドラえもんちゃん空も飛んでいたよ!!!あっ!ひょっとしてドラえもんちゃんは鳥のフレンズ?」
「ちょっ!サーバルちゃん⁉︎」
純粋な子供の様に目を輝かせながら質問攻めしてくるサーバルにドラえもんは思わず困惑の表情をするが、耳の生えた少女がサーバルを後ろから羽交い締めしてドラえもんから引き剥がす。
「サーバル近づき過ぎよ!そのドラえもん?も驚いているわよ」
「あ、ごめんね。つい凄かったから」
サーバルも流石にやり過ぎたと反省をする。対してドラえもんは別に気にしてないと言う。
「ところで君は?」
「私?私はカラカルよ」
「一応知っていると思うけど、僕ドラえもんです」
サーバルと同じ格好をした少女カラカルは自己紹介を行う。一方、ドラえもんも改めて自己紹介を行った。そして、サーバルは帽子の少女と目が合い近寄る。
「こんにちは!私はサーバル!あなたは何のフレンズ?」
「あの…えっと…その…」
いきなり話しかけられた事から驚いてしまい、なんて答えれば良いのかわからないようだ。それに気付いたドラえもんは帽子の少女に近づく。
「落ち着いて深呼吸をするんだ。自分のペースで話してごらん」
「あ、う、うん」
ドラえもんのアドバイスを聞いて深呼吸を2、3回繰り返すと気分が落ち着き緊張がほぐれたようだ。その様子を見ていたカラカルはドラえもんの行動に関心を覚えた。
「えっと、ぼ、僕の名前はわ、わかりません。その、フレンズ?というのもなんなのか……」
どうやら帽子の少女は自分の名前がわからないようだ。そんな少女にドラえもんは少し困った表情を浮かべながら話す。
「何処から来たのもわからないの?」
「わ、わかりません」
「そっか…」
結論からしてドラえもんはこの少女は記憶喪失しているとわかり、行く宛もなくここら辺を歩き回っていたところ先セルリアンに襲われた事がよほど怖かったのだろうと思っていた。そんなドラえもんを他所にサーバルは帽子の少女を見つめて何かを考えている。
「う〜ん」
「どうしたのサーバル?」
「いや、前にもこういう自分の事がわからない子と話した事があった気がするんだ」
「それって、前に言ってたヒトのフレンズの事?」
「うん、でもその時の事はうまく思い出せないんだけどね」
「ねぇ、カラカルちゃんは僕とサーバルちゃんが来る前に会っていたの?」
「会ったのはセルリアンに襲われる直前よ。その子ここら辺をウロチョロと歩き回っていたからセルリアンに襲われるわよって忠告しようとしたら、丁度セルリアンに襲われたの」
「そっか」
てっきり、カラカルはこの少女について何か知っているのかと思ったドラえもんは的が外れてどうしようかと悩んでいると、
「ねぇねぇ!この子の名前を決めるのはどうかな?」
「「へ?」」
「僕の名前?」
「確かに名前がないとなんて呼んだらいいかわからないわよね」
その時少女のお腹からきゅるるる〜と音を鳴り、顔は段々と赤く染まっていく。どうやらお腹を空かしているようだ。
瞬間、サーバルは何かを閃く。
「わかった!あなたの名前はキュルルちゃんね」
「へ?」
「だって今きゅるる〜って!」
「いや、それはただお腹が空いたから音を鳴らせちゃっただけだと思うんだけど」
「よろしくねキュルルちゃん!」
「あ…えと…よ…よろしく」
(受け入れた⁉︎)
安直過ぎる名前に思わずカラカルは困惑の表情を見せるが、肝心の本人が受け入れた為、何も言えなかった。
「ま、まぁ、今は仮の名前って事で良いんじゃないかな?」
「そ、そうね」
ドラえもんの指摘にカラカルは納得する。これはあくまでも本当の名前が思い出すまでの仮の名だ。今はキュルルの名前でもいいかと思うのだった。
「そうだ。私たちもお腹が空いているからロバのところに行こう。あそこなら何でもあるから」
「そうね」
サーバルの提案に賛成したカラカルはドラえもんの方に向いて手招きをする。
「ほら、アンタも来なさいよ」
「え、僕もいいの?」
「勿論だよ。だって、キュルルちゃんを助けてくれたしね」
「それにアンタがまだなんのフレンズか聞いていないしね」
サーバルとカラカルは先ほどのお礼を兼ねて話をしたいようだ。キュルルもコクリと頷いている。ドラえもんは少し頭を俯かせて考える。この先で今いるところががどういう所なのか、それとのび太達が今いる場所について情報が手に入れられるかもしれない。
「じゃあ、お言葉に甘えるよ」
そう思ったドラえもんは彼女達の誘いを受ける。そして、サーバルは「あっ」と声を漏らし、ドラえもんとキュルルにある事を聞く。
「そういえばキュルルちゃんとドラえもんちゃんはどんなものを食べるの?」
「ごはん?」
「僕は特に好き嫌いはないよ」
「ぼ、僕も何でも食べるよ!」
2人は素直に答えると、サーバルはニヤリと悪巧みを思いついた子供のような顔をする。
「なんでも〜?てことはもしかして〜」
「へ?」
サーバルの深みのある言葉にキュルルはキョトンとするが、何かを察したカラカルは目を細くしてサーバルを見つめると、
「キャーッ‼︎食べないでーー!」
「た、食べないよ〜!」
サーバルの悪ふざけに間に受けたキュルルは否定しながら彼女を追いかける。その様子を見たカラカルは呆れた表情をする。ドラえもんはカラカルとは違って2人が楽しそうだと思っている。
「うふふふ、面白い子達だ(それにしてものび太君達はどうしているんだろう?無事だと良いんだけど……)」
何処かにいるのび太達の安全を祈るドラえもんはサーバル達の後を追いかけていった。
その頃、ドラえもん達と同じように離れ離れになってしまったのび太はサバンナちほーとは別の森の中に倒れていた。しばらくすると手がピクリと動き出す。
「う、うーん」
のび太はゆっくりと瞼が開く一瞬視界がぼやけて見えるが、次第に目が慣れていき視界に映る緑生い茂る木々がハッキリと見えてくる。
状況をあまり把握できていないのび太は周囲を見渡す。
「此処は……何処だろう?……ねぇドラえもん」
のび太は隣にいてくれる彼に話しかけるが、そこにはドラえもんや一緒に来たしずか達の姿が何処にも見当たらなかった。
「あれ?ド、ドラえもん⁉︎何処にいったの?それにみんなは?」
あたりを見渡しながら彼等を探すが、何処にも見当たらなかった。
「みんな何処に行ったんだよぉ〜!」
誰も見つからず一人ぼっちなのび太はべそをかきながら、行くあてもなく森の中を歩き回っていると、
ガサガサ
「な、なにっ?」
すると、すぐ近くにあった茂みが揺れ、のび太は恐る恐るその茂みに近く。
ガサガサガサガサッ
「うわぁぁぁ〜〜〜〜〜〜ッ!?」
先ほどよりも茂みは大きく激しく揺れ、のび太は思わず大きな悲鳴を上げてその場で身を丸くして、ガタガタと震える。しかし、一向に何もやってこないことから何かおかしい事に気付き、ゆっくりと瞼を開けると、其処には頭に犬のような耳と尻尾の生えた全身灰色の服を着た少女がキョトンとした顔でのび太を見つめていた。
「き、君は一体?」
目の前にいる犬の様な少女にのび太も驚いた。少女はのび太の声を聞いてハッとなり次第に表情は笑顔になっていく。
「あ、あい……」
「あい?」
ボソリと呟いた声にのび太は首を傾げると、
「会いたかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
「え、うわぁぁぁぁぁあああ!?」
そこから思いっきりのび太に向かって飛び跳ねてそのまま抱きついた。そこから少女はのび太の服に顔を擦り擦りとあてながら匂いを嗅ぎだす。
「くんくん、懐かしいな〜この匂い」
「あ、ははは、ちょ、ちょっとくすぐったいよ〜」
そう言っているものの顔を赤くして鼻の下を伸ばして嬉しそうな表情をする。下心丸出しなのび太であった。だが、すぐに我に返ると改めて彼女の面と向き合う。
「ちょ、ちょっと待って!君は一体……?それと、此処はどこなの?」
「? 此処ですか、此処は─────」
その頃、また別の場所ではしずかはライブ会場みたいな場所の近くで眼鏡をかけたネコ耳を生やした女性と会話をしていた。
「大丈夫ですか?」
「ええ、あ、ありがとうございます」
「別に大丈夫ですよ、それにしてもいきなりコウテイさんが気絶した貴女を背負ってくるなんて羨まっ、ゴホッゴホン!…なんて驚きましたよ」
一瞬何やら下心を剥き出した女性だが、しずかちゃんに気づかれないよう咳払いをしてごまかす。
「そ、そうなんですか……ところで、私以外に人は見ませんでしたか?」
「え?"ヒト"なら心当たりがありますが………」
すると、眼鏡をかけた人物はジッとしずかの顔を見つめる。
「ど、どうしたんですか?」
「………貴女アイドルに興味ありませんか?」
「あ、アイドル!?ちょ、ちょっと待ってください。その前に聞かせて?」
「はい、何でしょうか?」
「えっと……此処ってどこなんですか?」
「何処って、それは勿論───」
「なぁスネ夫、ここって本当に動物園なのか?」
「ドラえもんが世界中の動物が生きられる環境になっているって言っていたから、ジャングルじゃない?」
スネ夫とジャイアンは運良く同じところにいて、共にジャングルの中を歩き回っている。
「そうなのか?まぁ、良いや!せっかくだからライオンとかゾウとか強そうな動物でも見に行こうぜ」
「ええ!?待ってよジャイアン!ドラえもん達が来るまで待っていようよ〜!」
あまり人気がないジャングルの中もし猛獣と出くわしたらどうしようと怯えながらジャイアンにドラえもん達を待とうというが、自信満々なジャイアンは右腕を出して力をアピールする。
「大丈夫だ、どんな動物が現れたってこのジャイアン様の敵じゃない!」
「調子のいい事言っちゃって、もぉ〜……」
怖いもの知らずのジャイアンに溜息を吐いていると、
ガサガサ
2人の近くの草木の陰から物音が鳴る。それを聞いた2人は思わず音が鳴った方向にゆっくりと首を向ける。
「なっ、なんだ?誰か居るのか!?」
「ど、ドラえもんなの?それともしずかちゃん?の、のび太なんだろ、どうせ僕達を脅かそうって魂胆なんだろ!?……何か言ってよねぇ!!」
スネ夫とジャイアンは強気に言うが、それはもはや強がりに過ぎなかった。2人は互いに身を寄せ合っている。すると、草木から何かがジャイアンとスネ夫に向かって飛び出した。
「ママァーーーッ!!!」
「母ちゃーーん!!!」
2人は思わず目をつぶり悲鳴をあげる。だが、
「お前たちは誰だ?」
2人は話かけられた声を聞いて恐る恐る目を開くと、そこには黒いニット帽を被ったタンクトップ姿の女性が立っていた。2人は目の前にいるのが猛獣ではないと分かると大きく息を吐いて全身の力を抜く。
「な、なんだ人かぁ〜」
「びっくりしたぜ。てっきりライオンかと思ったのによ〜」
「ライオン?ライオンは此処にはいないぞ」
女性はジャイアンが言った事に返事をすると、目を細くして2人の顔を見つめる。
「それよりもお前達は何者だ?ここら辺では見ない顔だが」
見たことない2人を見て警戒をする女性を見てスネ夫はジャイアンに自己紹介をしようと提案をする。ジャイアンもスネ夫の提案に即賛成した。だが、よく見てみるとジャイアンの額からは汗が一滴流れる。
「(気の所為かどっかで感じた事あるんだよなこの感覚)俺は剛田たけし。ジャイアンとよんでくれ」
「僕は骨川スネ夫」
2人は自己紹介をすると女性は首を傾げながら2人の名前を復唱して考え事をする。
「ゴウダタケシ?ホネカワスネオ?そんな名前したけものなんていたか?」
「けもの?何言ってんだ俺たちは人だぜ?」
「人⁉︎お前たちが……」
女性はジャイアン達が人だと言う事に驚きの表情を見せるが、すぐに表情を戻し2人の体全体を見た。
「……わたしの知る人には全く似ていないな」
(私の知る人には似ていない?それってどう言う事だ?)
彼女の会話を聞いてスネ夫は何か違和感を感じた。
「それにしてもあんたはいったい誰なんだ?」
「私か?私はゴリラだが」
「ゴ、ゴリラだぁ!?」
自らゴリラと名乗る女性に面食らった表情を見せるジャイアンとスネ夫の二人。その内片方のスネ夫はうーんと何かを考えた素ぶりを見せる。
「ゴリラ?変わった名前、まるでジャイアンのあだ名みたい……」
「んだとぉ!?スネ夫ッ!!!もういっぺん言ってみろ!!!」
「じょ、冗談だからその拳を納めてよ!」
スネ夫がつい言ってしまった台詞を聞いてジャイアンは怒りが湧き上がって思わずスネ夫を殴ろうと右腕を振り上げながら怒鳴る。スネ夫はなんとか殴られないようにジャイアンを宥めていると、
「喧嘩は良くない!今すぐやめろ!」
「は、はい!」
ゴリラはジャイアンに止めるように言うと、思わずジャイアンは兵士のように返事をして拳を納めた。それを見たスネ夫は信じられないと言わんばかり表情をする。
「あのジャイアンが拳を納めるなんて……」
「う、うるせぇやい!女の人は殴らないのは当たり前だろう!」
「もー、強がり言っちゃってさ……」
拳を納めたジャイアン自身も何故か体が勝手に動いた自分自身に驚いていた。だが、すぐその後ゴリラは顔を青ざめて地面に膝をつく。
「ぐぅ…」
「あ、お、おい。あんた大丈夫か⁉︎」
スネ夫とジャイアンは彼女の身の心配をするが、彼女はなんとか立ち上がり左手で腹を押さえながら右手をジャイアン達に突き出した。
「し、心配するな、は、腹が痛いだけだ」
「なんだ〜、びっくりした」
「うん、てっきり俺は何処か怪我したのかと思ったんだけどな」
2人は彼女がただの腹痛だと分かるとホッと一安心する。すると、その時、彼等のお腹の音が鳴り響く。それを聞いた彼女は思わず笑い声をあげる。
「ハハッ、お前たちは腹を空かしているのか?私はこれから昼食を食べに行くのだが、良かったら一緒に食べないか?」
「いいのか⁉︎丁度俺たち朝飯も食っていなかったから腹ペコだったんだ」
「うーん、じゃあ、僕もお言葉に甘えようかな」
2人は彼女が食事をご馳走してくれると聞いて、目を輝かせた。
「よし、なら私の縄張りはこっちだ。付いて来い」
「お、おう!ところでよ。此処ってどこなんだ?」
「此処か?此処はな────」
「「「ジャパリパークです(だ)!」」」
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