おや……? 盾の勇者の様子が……?   作:やがみ0821

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フォーブレイ(タクト)『急募:テロ対策の専門家』
メルロマルク(女王)『許してください、何でもしますから……』
波の尖兵の皆さん『大丈夫だ……まだ慌てるような時間じゃない……』


メリエル「^^」


あっちこっちの反応

「これは、本当のことなのか?」

 

 フォーブレイの末席の王子、タクトは思わず問い返した。

 彼の問いに、報告書を持ってきた部下は頷いて肯定する。

 

「……そうか」

 

 タクトはそう答え、部下を退室させると、力なくソファに座り込んだ。

 

「……まずいことになった」

 

 タクトは現代地球からの転生者だ。

 だからこそ、報告書に書かれていた、これをやった連中に心当たりがあった。

 

 教会に突っ込んで自爆する。

 それも、子供にやらせるという卑劣極まりない連中を。

 

「俺は、勇者だ……強いんだ……」

 

 そう呟いてみせるも、不安は拭えない。

 彼が転生する前でも、よくニュースに出ていた。

 そういう自爆テロをする連中のことを。

 

 タクトは確かに強い。

 色々と裏事情はあるものの、伊達や酔狂で勇者を名乗れるものではない。

 それだけの実力と実績が伴っており、またその人心掌握術は優れたものだ。

 

 だが、それも所詮、個人の力でしかない。

 

 組織的に、同時多発的な自爆テロを起こすような連中と戦えるか?

 

 相手はおそらく、自分と同じ、現代の地球からやってきた過激なテロリスト共だ。

 どういう手段か、分からないが自分と同じように神――それも連中が信じる神――に送られてきたかもしれない。

 

 フォーブレイどころか、この世界の国々ではいくら魔法があるとはいえ、そういうテロを防ぐことは難しい。

 相手は一般人と見分けがつかず、常時警戒をするにしても、今度は警戒する兵士達を狙われる可能性がある。

 何しろ、相手にとって標的は別に一般市民でなくてもいいからだ。

 

 タクトが例えばある場所でのテロを防いだとする。

 だが、それは1箇所しか防げない。

 仲間達を動員しても、国中をカバーするのは不可能だ。

 

 しかも、いつどこで起こるか分からない。

 自分や仲間の誰かが偶々その現場にいれば防げるだろうが、いなければ無理だ。

 同時多発的にテロが行われた場合、今回のメルロマルクのように甚大な被害が出る。

 

「……どうすればいいんだ」

 

 タクトは逃げ出すということができない。

 何故なら、彼はフォーブレイの王子であると同時にこれまでの過去の実績と実力から国中から期待されているが為に。 

 逃げた途端に、偽勇者の烙印を押されかねない。

 

 彼は自分が今までやってきたことを後悔した。

 地球で知っていた技術などをフォーブレイで実用化にこぎつけたまでは良かった。

 まさに我が世の春を謳歌してきた。

 盤石な地位を築き上げたと確信したし、事実そうだった。

 

 だからこそ、今回もその実績から知恵を求められる。

 メルロマルクのような事態を防ぐにはどうすればいいか、と。

 

 だが、彼が持つ知識の中にテロ対策に関連するものなど、全く無かった。

 

 

 

 タクトと同じように、波の尖兵としてこの世界に送り込まれていた大勢の現代日本からの転生者、転移者達のうち、メルロマルクのことを知った者達は誰も彼もが不安に駆られることになった。

 どの世界でも、その連中は存在していたが為に。

 当然ながら、テロを防ぐ為の知識があるわけもなく、自分がそんなことになる筈がないという日本人的な思考で、不安を覆い隠すのが精一杯だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むー」

 

 ラフタリアは非常に不満だった。

 頬をこれでもかと膨らませ、尻尾を振って私、怒ってますと猛烈にアピールするくらいには。

 

 一番に私がメリエル様の奴隷であったのに、気がついたら女の子がいっぱい増えていると。

 ラフタリアのそれは恋とかそういうのよりも、単純に最近構ってもらえてないことに対する不満だ。

 

 現に今もフィーロとティアを――フィーロもティアも体が大きくなるという意味合いでの成長は止まっている――本来の姿でひょいっと抱きかかえて肩車をしたり、高い高いといいながら空高く投げたりしている。

 

 傍目には凄まじい絵面であるが、周りは慣れたものだ。

 

 

「メリエル様!」

「はいはい」

 

 フィーロとティアを地面へと下ろし、メリエルはラフタリアへ近寄ってきた。

 ラフタリアは思いっきり不満をアピールすると、メリエルは頭を撫でる。

 

「えへへ」

 

 それで機嫌が直るのだから、ラフタリアもチョロいものだ。

 

「ところでメリエル様、メルロマルクで何をしてきたんですか?」

「ちょっと悪徳宗教を月までふっ飛ばしてきただけよ。おっと、私は何もやっていないから。あ、でもこれもまた善行だから、やっぱりちょっとやったような……」

 

 メリエルの言葉にラフタリアは溜息一つ。

 

「もっと私達を頼ってくださいね?」

「こうやって愛でられるのがあなたの仕事よ」

 

 それはそれで嬉しいが、ラフタリアとしてはちょっとだけ不満。

 メリエルが何でもかんでもできすぎてしまい、いつまで経っても子供扱いされているような気がする。

 

「……私ってメリエル様にとって何ですか?」

「よくできた従者って感じかしら。可愛いし。ご両親の教育が行き届いていると思う。ご立派な方々だったんでしょう」

 

 メリエルの不意打ちに、ラフタリアは顔を少し俯かせ、嬉しいけど、悲しいという複雑な感覚を味わう。

 そんな彼女をメリエルは優しく抱きしめて、頭を撫でる。

 

「これまで苦労した分、これからは苦労させないわ。満足のいく食事と寝床と楽しい人生を送る義務があるもの」

 

 メリエルの言葉に小さく頷くラフタリア。

 彼女の額にメリエルは口づける。

 

 お母さんみたいだ――

 

 ラフタリアはそんなことを思ってしまったが、次の瞬間、色々台無しになってしまった。

 

「ご主人様ぁ!」

 

 フィーロによる後方からの突進。

 メリエルはラフタリアを抱きしめたまま、ひらりと回避。

 

「フィーロもぎゅっとしてー!」

「はいはい」

「ティアもー!」

「はいはい」

 

 メリエルは答えつつ、遠目に見ているヴィオラへと視線を向ける。

 

「……いいの?」

「……恥ずかしい」

 

 流石に、こんな村の真ん中で抱きつくのはちょっと、という意味にメリエルはうんうんと頷いて、あとでこっそりやってあげようと決めた。

 

「この村より先は国境地帯。さすがに復興を後回しにしてまで、妨害はしないだろうけども」

 

 お供がラフタリア、ヴィオラ、フィーロ、ティアの4人だけなら道なき道を行っても良かったが、100人を超えた元奴隷、その中には子供までいる状態で、道なき道を強引に進んでいくのはちょっと問題があるが故に、わざわざ人里まで出てきて、街道を進んでいる。

 メリエルだけが先行して、シルトヴェルトに行き、そこから転移門(ゲート)を開いて一気に、という方法でも良かったが、見栄えというのは大事で、こういうのは舐められないようにする為にも堂々と凱旋したほうが良い。

 

 メリエルにとって問題であったのはシルトヴェルトは、彼女が拠点としていた方向とは正反対の場所であったのだ。

 

 

 普通の国ならば、あそこまで大打撃を受けて、妨害をする余裕はない、とメリエルは予想していた。

 メリエルの爆弾による追加効果の火災旋風は燃えるものが残っていようとも、一定時間の経過で消えてしまう為、とっくに消えている筈だ。

 だからこそ、復興に専念できる。

 

 むしろ、この状態で妨害してきたら自分達のバカさを喧伝するようなものだ。

 やるべきことを同時にやって更に追手を掛けるだけの余裕があるのなら良いが、メリエルが入手した機密情報から計算すると、メルロマルクの常設の騎士団や兵団、また徴兵による動員力から、治安維持の為の警備が精一杯であり、短期間で復興する為には騎士や兵士も民間人も含め、全ての労力をつぎ込む必要があった。

 

 事実、ここに至るまで兵士にも騎士にも全く遭遇していない。

 念の為にティアに索敵アイテムと隠蔽アイテムを持たせて上空から監視してもらっていたが、盗賊やモンスターがたまに襲ってくる程度であった。

 それらも全てメリエルによりさくっと殲滅されているので、時折すれ違う商人や旅人を除けば知る者はいない。

 

「三勇者ってどこに行ったのかしらね……」

 

 いてもいなくてもどっちでもいいが、いざというとき邪魔されるのも煩わしい。

 だが、過激な宗教国家というのは斜め上の存在であること、メンツを潰されたことに対する反応その他諸々を想定すると――

 

 

 国境地帯に大軍とまではいかないが、それなりの軍勢と三勇者を引き連れて待ち構えている可能性はあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、本当にやるべきことを間違えているわね……」

 

 メリエルは呆れていた。

 

 国境地帯まであと僅かというところで、エレナをはじめとした何人かのシルトヴェルトの密偵達が状況の調査の為に先行したところ、呆れる状況であることが分かった。

 

 端的に言えば、メルロマルクの大軍が待ち構えているとのことだ。

 三勇者やマインの姿、さらには教会の自前戦力である教会騎士団なども確認できたらしい。

 

 お前は映画に出てくるような三流の独裁者か、とメリエルはオルトクレイに思いっきりツッコミを入れたかった。

 

 機密文書やエレナ達から教えてもらった情報によれば、杖の勇者で知略に優れた者らしいが、それも本人の詐称とか、たまたまうまくいったとかかもしれないとメリエルは考えていた。

 

 いくら何でも愚か過ぎる。

 呪いか何かにでも掛かっているんじゃないか、と思うくらいに。

 

 

「どうされますか?」

 

 エレナの問いにメリエルは深く、それはもう深く溜息を吐く。

 

「これ、今のうちにメルロマルクの城に戻って国の併合を宣言した方が早いんじゃない? 今、城はがら空きでしょ」

 

 冗談なのか、本気なのか、エレナは困った顔になる。

 シルトヴェルトからすると、メリエルにはシルトヴェルトに来てもらいたいが、メルロマルクをメリエルが併合するというのもまた美味しい話だ。

 

 エレナ個人としては、どっちになろうともアレコレ理由をつけて、メリエルの傍にいることを選ぶので大した問題ではない。

 

「ま、でもシルトヴェルトって行ってみたいし、チヤホヤされたいので、一応はそっちへと行く方向で」

 

 当初の予定に変わりはないらしい。

 そのときだった。

 

 メリエルはちらりと物陰へと視線をやった。

 はて、とエレナは首を傾げる。

 

「遠くから見る分には見過ごしていたけれど、そんなに近くで覗き見は頂けないわね」

 

 メリエルの言葉にエレナもつられて、物陰へと。

 確かに人が1人、しゃがめば隠れられるくらいの大きさではあるが――

 

「申し訳ありません」

 

 その言葉と共に、その輩は現れた。

 エレナは瞬時に臨戦態勢に移り、敵の正体を悟る。

 

 メルロマルクの裏側の戦力、影の連中だと。

 忍び装束っぽいものに身を包んだその人物は女性であった。

 

 影はその構成員のほとんどが女性だという。

 メルロマルクの国としての特色が現れた部隊だ。

 

「所属は?」

「メルロマルクの女王陛下護衛部隊です」

「今になって何の用? 国境で待ち構えている連中のように、私と一戦交えようと?」

 

 挑発的な物言い。

 また事態に気がついたのか、ラフタリアとヴィオラが駆けつけてきた。

 すかさず剣を抜こうとする2人をメリエルは片手を上げて、止める。

 

「女王陛下より、全ては自らの責任であり、あなた様に謝罪をしたいと……」

「前置きはいいわ。用件は簡潔に。私はこれから、やることがあるので」

 

 メリエルの言葉に影は少しの間をおいて、告げる。

 

「全ての要求を飲むので、我々を見捨てないでくれ、とのことです」

「都合の良い話ね。どこまでご存知かしら?」

「状況からの推察に過ぎませんが、三勇教を潰したのはあなたということです。全く捕捉できない隠密性と速さで移動される、あなたしか、なし得ないという結論です」

 

 ふむ、とメリエルは両腕を組む。

 エレナはメリエルへと視線をやり、ラフタリアとヴィオラはその視線を影とメリエルへと交互にやる。

 

「私が本気で動いたら、あの程度で済まないわ。無差別に攻撃を仕掛けなかった、そのことを有り難く思って欲しいくらい」

 

 メリエルとしては、王城をはじめとし、城下町内にある兵士や騎士の駐屯所、食堂、各種店舗、主要な広場、橋、住宅街などなど、もしもやるとなった場合の攻撃目標はとうの昔に選定済みだ。

 

 影はメリエルの言葉の意味を察し、その身を震わせる。

 メリエルは自分達、影と同じような思考をしている、と。

 躊躇なく、目的の為にあらゆる手段を実行することができるのだと。

 

 倫理や道徳といったものを超えて、己の利益の為に行動する。

 他者からどのような評価を受けようとも、決してそれは揺らぐことはない。

 他者の評価など、どうでもいいのだから。

 

「簡単に許すと思ったら、大間違いよ。ま、見捨てるかどうかの条件は教えてあげる。あなた達が私にとって利益があるかどうか。それによって、どうするか決めるわ」

 

 そして、メリエルは影に顔を上げるよう指示し、その耳元で囁く。

 

「フォーブレイのように、あなた方も私の血を入れることを望むなら、そうしてやってもいいわ。私は男のアレを生やせるので」

 

 安直な手段をメリエルは教えてやった。

 エレナもラフタリアもヴィオラも耳は良い方なので、一斉にジト目でメリエルへと視線を送ったが、当の本人は全く気にしない。

 

「それに私は選り好みしないので」

 

 メリエルはさらに続けて、影から離れた。

 

「というわけよ。とりあえずシルトヴェルトにいるから、女王との会談ができるようになったなら呼んで頂戴。さすがにシルトヴェルトに来いとは言わないから」

 

 メリエルの言葉に影は深く、頷いてその場から去っていった。

 それを見送り、さてどうしたものかとメリエルは腕を組む。

 

 ぶっちゃけた話、ここから太陽でも落とせばそれで終わりな話だが、三勇者を殺すのはマズイような気がメリエルはしていた。

 わざわざ四聖召喚と銘打つくらいなのだから、1人でも勇者が死ぬとそれがトリガーとなって、面倒くさいことになる可能性がある。

 

 そもそも波というのも何だかよく分かっていない。

 召喚というよりは別次元からやってきているような感じがする、とメリエルは根拠はないが、そう仮定した。

 何だかよく分からないので、とりあえず別次元からの侵略者みたいなことにしておけばいいだろう、という具合だ。

 

「……やはり、アレらを投入するしかないか」

 

 波に対してワールドエネミーをいっぱい湧かせて投入しよう、それでもダメなら――アレらを投入するしかあるまい。

 

 フレーバーテキストは現実化している。

 不老不死の薬は不老不死になるし、若返り薬は若返るし、愛剣は精霊がたぶん宿っていてさらにはヤンデレだ。

 メリエルという存在に対する設定もまた、現実化している。

 厨二全開である為、見えないようにしてあるので、ギルメンやフレンドなどの極一部しか知らない、大爆笑必至のアレもまた現実になっている。

 

 

 思い出して、メリエルは胸が苦しくなった。

 ゴロゴロと転がって、悶絶したいが、周りの目がある以上、そんなことはできない。

 

「……メリエル様、どうかしましたか?」

 

 ラフタリアがメリエルの異変に気がついたのか、問いかけてきた。

 エレナとヴィオラも気づいたのか、心配そうな顔だ。

 

「元々は 対異教の神々、対悪魔、対邪神、対高次元生物などを主眼として創られた汎用人型決戦天使。物質界だけではなく、高次元空間などの全ての空間・次元において十分な戦闘行動を行え、敵対者全てに永遠の安息を与える。だが、闇に堕ちし時、窮極の門は開かれた。混沌となりし彼女は何者にも縛られず、縛ることもできない。混沌であるからこそ、彼女は矛盾をも内包する。ちなみに、欲望に素直である――ってどう思う?」

 

 聞き取れる程度には早口で、メリエルは尋ねた。

 ラフタリア達はきょとんとしている。

 

「ええっと、最後のところの、欲望に素直であるって何ですか?」

「文字数の都合で……ビッチであるでも良かったんだけど、設定が被るので……」

「よく分かりませんけど、いいんじゃないでしょうか?」

 

 ラフタリアの言葉にヴィオラとエレナもまた頷く。

 その優しさが、メリエルにとってはとても辛かった。

 

 何それアハハーとでも笑ってくれたほうが、メリエルとしてもまだネタにできた。

 モモンガなら、厨二乙。クトゥルフが途中で交じっているじゃないですか、ナイアルラトホテップにでもなるつもりですか、と流れるようにツッコミを入れてくれただろうに。

 

「やはり、ツッコミ役が欲しい……」

 

 問題児は叱ってくれる人がいてこそ、問題児をやれたのだとメリエルは実感する。

 叱ってくれる人の筆頭がモモンガだった。

 

「えっと、メリエル様、国境越えは結局、どうしますか?」

「ちょっと私が行って交渉してくる」

 

 ラフタリアとヴィオラは察した。 

 1人で行かせたら、ダメなやつだと。

 絶対碌でもないことを仕出かすという確信があった。




メリエル「オタク特有の早口」
某ナザリックの至高の御方々の纏め役「ないわー、あの設定はないわー」
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