おや……? 盾の勇者の様子が……?   作:やがみ0821

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【悲報】タクト、目をつけられる 【朗報】三勇者、協定を結ぶ

 メルロマルクの王城へ帰還し、ミレリアと三勇者の前でメリエルはグラスに色々と彼女の事情を聞き出した。

 結果、とんでもない事実が明らかになった。

 

 波はただの災害などではなく、世界と世界の融合現象とかいう斜め上のものであったのだ。

 しかも、勇者はそれぞれの世界の要となる存在であり、グラスの世界では四聖勇者のうち3人が殺され、滅びの運命しか残されておらず、波の先にある世界の勇者を殺せば延命できるという伝承に賭けたというものだった。

 

 もうこれは人の及ぶところではないが、あいにくと人の域を超えたのがいた。

 そして、そいつはめちゃくちゃ興奮していた。

 

 

「燃える展開だわ! これはもう私がやるしかない! きっとそういうことをしている原因は神とかそこらの連中だろうから、私がぶっ殺す!」

 

 気炎を揚げるメリエル。

 その様子にラフタリアとヴィオラは溜息を吐き、エレナはそんなメリエルがかっこいいと目を輝かせ、フィーロとティアは何だかよく分からないが、ご主人様が楽しそうだとにこにこ笑顔。

 

「いや、今更だけど……メリエルさんって人間じゃないよな?」

「あ、私、元は人間だけど色々あってあーなってこーなって、そうなっているから」

「めちゃくちゃテキトーだなオイ!」

 

 元康のツッコミにメリエルはにっこり笑う。

 

「私の力の根源に関わることよ。秘密の一つや二つはあって当たり前だし、詮索はよろしくない。ただし、私がそうする場合を除いて」

「清々しい程の唯我独尊ですね。友達とかいないのでは……」

「失礼しちゃうわ。少なくとも1人はいる。彼がここにいなかったことを、あなた達は喜ぶべきよ」

 

 樹の言葉にメリエルはそう反論する。

 何気に樹は自分に対しても友達に関しては盛大なブーメランになっていたのだが、気づいていなかった。

 

 とはいえ、もしも彼――モモンガがいた場合、最初の扱いでメルロマルクが死の都となっていたことは想像に難くない。

 

 クズがぁあああとか叫んで絶望のオーラレベル5を撒き散らしそうだった。

 勿論、メリエルもそれを止めることはせず、どうせなら黒い羊とか召喚しましょう、と提案するので、メルロマルクは滅亡ルートしかない。

 

 それはさておき、メリエルはぽんと手を叩いた。

 ウィッシュ・アポン・ア・スターを使えば呼べるんじゃね、と。

 にんまりと彼女は笑い、告げる。

 

「もし私だけでは手に負えない場合だったら、彼を呼ぶから。ちょっと見た目、生物じゃないけど、いいヤツだから」

「メリエルさん、その彼は……どのくらいの強さを?」

「初見で情報無しなら大抵の輩は負けるんじゃないかしら。彼、戦闘が巧いし」

 

 錬の言葉にメリエルはそう答えると、どよめきが起こる。

 

「あのー、メリエル様」

 

 そこでおずおずとラフタリアが手を挙げた。

 

「何かしら?」

「メリエル様が全力で戦うと、その、どのくらいに……?」

「んー、基準がないと難しいわね」

 

 メリエルからすれば比較するものがなかった。

 ユグドラシル関連のものを出してもメリエル以外には分からない。

 かといってこの世界での強者と言われてもメリエルは知らなかった。

 

 三勇者が強ければ比較対象にできたのだろうが、メリエルの予想では彼らではグラスにすら及ばない可能性があった。

 

「とりあえず、1人で国は潰せる」

「国基準なんですか……」

「よく考えたら、私ってこの世界の強い奴を知らなかったわ。だから国基準」

 

 そんなラフタリアとメリエルの会話にミレリアは口を挟む。

 

「それでしたら、フォーブレイのタクト王子はどうでしょうか? 彼は鞭の勇者で、中々のやり手ですよ」

「詳しい情報とかあるかしら?」

 

 メリエルの問いにミレリアはすぐにタクトに関する調査書を持ってこさせ、メリエルへと提示する。

 一読し、彼女は何とも言えない微妙な表情となる。

 

 経歴を見る限りでは、いわゆる転生者というやつっぽかった。

 とはいえ、メリエルからすれば彼は称賛に値することを成し遂げている。

 

「ふーん……面白そうな奴ね」

 

 銃器や重工業などの技術的な発展だ。

 この世界で披露するにはちょーっと問題があるかもしれなかった、メリエルが趣味で作った軍勢を使えるかもしれない。

 

「どういう銃を?」

「確か、マスケット銃というものでした」

「なるほど、なるほど……」

 

 メリエルは何度も頷く。

 それなら古き良き戦列歩兵の戦いができそうだ。

 

 勿論、メリエルには戦争を始まってすぐに終わらせる禁じ手もある。

 面白いことは面白いが、花火みたいに一瞬で終わってしまうので、やりたいけど中々やれない戦法だ。

 

 先制核攻撃としてメリエルがフォーブレイのあっちこっちに転移して核爆発(ニュークリア・ブラスト)を唱えて回るというもの。

 フォーブレイは戦略核の飽和攻撃を受けたみたいな、酷いことになるだろう。

 その後の統治とかそういうのは考えず、単純に絶滅戦争を仕掛ける場合のプランだ。

 

「しかしまあ、随分とタクトは女を囲っているわね」

 

 懇意にしている女性という項目にずらりと並ぶ名前と簡単な経歴。

 マルティの名前もあったが、既に関係性はないとされていた。

 

 マルティ自身に初めてのときのことを詳細に語らせたときもあったが、アレは中々興奮したとメリエルは思い出す。

 ノーマルなのもいいけど、やっぱり背徳的なのもいいよね、とメリエルは1人で納得する。

 

「あの、そろそろ退室してもいいでしょうか? 」

 

 何だか話が変な方向に飛んでいきそうだったので、樹が声を上げた。

 元康と錬も何だか居づらそうな顔だ。

 

「ええ、構いません。ゆっくり休んで下さい」

 

 ミレリアはそう告げると、3人の勇者はそそくさと出ていった。

 あとに残ったのは女ばかりだ。

 

「とりあえず、勇者同士の連携というのが重要になってくるわね。彼らはあまり期待できそうにないけど、ちょっとでも成長してくれればって思っていたりもする」

 

 メリエルの言葉はミレリアは勿論、ラフタリアやヴィオラ、エレナにとってもも意外であった。

 

「メリエル様、てっきり他の勇者はいらないとかそういうことを言うのかと思いましたが……」

「ラフタリア、使えるものがあるなら、何でも使った方が良い。まあ、もしそれに対してごちゃごちゃ言うようなら、言うことを聞かせるだけだよ」

 

 そこでミレリアが口を挟む。

 

「メリエル様、三勇者の方々はともかくとして、他の勇者と面識を持ってはどうでしょうか? タクト王子でしたら、たぶん簡単に食いついてくると思います。彼は……女好きですので」

「女好きという自覚は、この調査書を見る限りではなさそうだけど?」

「ええ。私も少しだけ会話をしたことがありますが、うまく隠していますよ」

「むっつりスケベということ?」

「端的に言うとそうですね」

 

 ふーん、とメリエルは頷きつつ、問いかける。

 

「で、彼は妾達にどういう利益を?」

「そういう面は聞いたことがありませんね」

「話にならないわ」

 

 メリエルは溜息を吐いてみせる。

 

「私は自分の味方には最大限の利益を与える。それは女であるのは勿論、たとえ男であっても」

「そういうのは抜きで、ついていきそうな者達もいると思いますよ?」

「けれど、それは少数よ。圧倒的多数は利益で動くものよ」

 

 渋い顔のメリエルにミレリアはどうやら召喚される前の世界で何かあったんだな、と悟る。

 

「現実的ですね」

「ええ。自分もそうだけれど、心ほどこの世で移ろいやすいものはない。どんなタイミングで、何がきっかけでコロッと変わるか分からないもの。そういう不確かなものを信じるよりも、明確な利益を与えた方が繋ぎ止められるし、何よりも切り捨てるときに気が楽よ」

 

 メリエルの言葉にミレリアは確かに、と頷く。

 

 率直に言ってしまえば派閥とかそういうものである。

 少なくとも、信頼とか友情とか、そういうので結ばれた仲間とかそういうものをメリエルが言っているようではなさそうだ。

 

 もうちょっと勇者っぽい振る舞いをして欲しいところだけど、とミレリアは思いつつ、タクトに関するとある情報を述べる。

 

 

「……タクト王子は女の手篭めの仕方が……ちょっと問題があるような気がします」

「洗脳でもするの?」

「似たようなものかと。人心掌握術に優れているというか、そういうものです」

「あれかしら、自分を全肯定するイエスマンばかりで固めて、宗教みたいなことになっているとかそういう?」

「印象としてはその通りです。どうしてそれをご存知で?」

「昔、仕事でそういうカルト宗教を潰したことがあったのよ。タクト王子の詳しい情報が欲しいわ。特に性格や思想とかそういうの。面倒くさいことになりそうな気がする」

「調べさせます」

「影の子達が取り込まれないようにしなさいよ。何なら私がツバをつけて……」

 

 真面目な話から一転して、そういうことを話すメリエルにミレリアは笑ってしまう。

 メリエルはむっつりスケベではないことは、ここにいる誰もが分かっている。

 

「メリエル様……」

「なぁに? 私のタヌキちゃん」

「誰彼構わずに色目を使わないでください」

「いいじゃないのよ。少なくとも、私の女になれば王族よりも良い暮らしをさせてあげるわ」

「そういう問題じゃないです」

 

 むー、と頬を膨らませるラフタリア。

 メリエルはけらけら笑う。

 

 分かっていてからかっていることは丸わかりだった。

 

「あ、ミレリア。この後、食事でもどうかしら? 2人で」

 

 ラフタリアはジト目でメリエルを見つめるが、すかさずにメリエルは彼女に耳打ちする。

 

「外交よ、外交」

「……本当に外交なんですか?」

「それとついでに世間話。国の最高権力者と太いパイプを作っておくのは色々な面でメリットしかないわ」

「それでしたら……でも、埋め合わせはしてください」

「ええ」

 

 メリエルはそう答え、ラフタリアの頬に口づけた。

 

「今はこれで満足して頂戴」

 

 ラフタリアはメリエルが離れて、そう言われたところでようやく頭で理解できた。

 彼女は一瞬で顔を真っ赤にし、メリエルを涙目で睨む。

 

「あ、赤ちゃんができちゃったらどうするんですか!」

 

 メリエルは勿論、その場にいた全員が目を丸くした。

 そして、一斉にラフタリアへと視線が集まる。

 その視線にラフタリアは困惑した。

 

「え……? 赤ちゃんってキスしたらできるんじゃないんですか?」

 

 今度はメリエルへと視線が集まる。

 お前、教育どうなってんだよ、とそういう意味合いの視線だ。

 

「ちょ、ちょっと待って欲しい。ラフタリアは私が奴隷商から買ったときは10歳くらいのチビダヌキ幼女だったのよ。模擬戦とかしてたらどんどん成長して……」

「亜人の特性ですね……しかし、まあ、メリエル様が……」

 

 ミレリアの声にメリエルは頬を膨らませる。

 

「10歳くらいの無知な女の子を抱けっていうの!? 私は悪くない!」

「いや、まあ、そうですけど……というか、手を出していないんですか?」

「実のところ、マルティにしか手を出していないのよ」

 

 ミレリアは困惑した。

 てっきり片っ端から女に手を出しているとばかり思っていた為に。

 

「と、ともあれ、もう終わり解散閉廷! ラフタリアはどうやったら赤ちゃんができるのか、シルトヴェルトで産婦人科医……専門の医者に聞いておいて!」

 

 無理矢理メリエルは解散を宣言した。

 

 なお、最初に自身の知る情報を話した後は特に聞かれることもなかった為に、グラスはずーっと拘束されたまま黙ってやり取りを見ていた。

 もっとも、彼女はメリエルの魔法により全身を支配された状態であるので、それしかできなかった。

 

 ただ、おかげで分かったことがある。

 

 メリエルさんって面白い方ですね――

 

 理不尽なまでの強さを持っている癖に、コロコロと表情は変わるし、勇者なのに魔王みたいなことを口走っているしで、存在自体が喜劇に出てくる魔王みたいだ。

 

 グラスが探している友人と何となく波長が合いそうであり、また友人探しを手伝って欲しいと頼めば普通に手伝ってくれそうだった。

 

 そのときミレリアがグラスの処遇について、メリエルに尋ねる。

 

「メリエル様、彼女はどうしますか?」

「んー、拘束はしたままで、支配の魔法は解くわ」

 

 そんなわけでメリエルは支配の魔法のみを解いた。

 するとグラスはすかさずに頭を下げて、お願いする。

 

「メリエルさん、実は折り入って頼みたいことが……」

「何よ、藪から棒に」

「私は友人を探しています。彼女は私の世界の四聖勇者なのですが……」

「ふーん。名前は?」

「風山絆です」

「戦力的にも、四聖勇者が増えるってのはいいことね」

「狩猟具の勇者なので、魔物相手には強いのですが、人を相手にするとなるとちょっと……対人戦ではサポートです」

「……他にできることは?」

「あと、釣りが大好きなので、食卓を豊かにすることもできます」

「うーん! 採用!」

 

 そんな安請け合いしていいのか、という視線がグラス以外から集中するが、メリエルは気にしない。

 グラスにメリエルは問いかける。

 

「ちょっとうちの世界のゴタゴタを処理してからでもいい?」

「構いません」

「あなたもこれまで私がこの世界で戦った中では強い方なので、パーティーに加わらない? その友人とやら、私と一緒にいたほうが出会える確率は高いわよ」

 

 問いにグラスは即答せず、じっとメリエルの瞳を見つめる。

 

「あなたは波の原因をどうにかすることができますか?」

「当然よ。どうやら私が天文学的な確率で、こうなってここにいるのは、それをする為かもしれないし」

 

 自信を持って、メリエルは告げた。

 グラスは微笑んだ。

 

「分かりました。あなたのパーティーに加わりましょう」

「決まりね。ところで元いた世界と比べて、不調とかはある?」

「……実は、波が起きている間は元々の実力だったのですが」

「うん」

「波が静まり、元の世界との繋がりが完全に無くなったことが原因なのか、レベルがその……」「あー、レベルダウンね。どのくらい下がったの?」

 

 メリエルは5か、あるいは10程度の低下だと予想する。

 中々にキツイペナルティだが、それくらいなら取り戻せると確信する。

 

「……レベル1になりました」

「は?」

 

 メリエルは真顔になった。

 

「その、レベル1なんです」

 

 恥ずかしそうに顔を逸らすグラスにメリエルは近寄って、デコピンを一発かました。

 かなり威力を抑えて。

 先の幽霊船のときならば、少しのダメージで済む程度だろうと考えて。

 

 グラスは悲鳴と共に体がほとんど透明になり、消えかけた。

 メリエルは無言でエリクサーを彼女にぶっかけた。

 消えかけたグラスは元通りになった。

 

「……え、マジ?」

「マジです。あと、何でデコピンを……」

「先の幽霊船で戦ったときのあなたなら、痛いで済む程度に威力を抑えたんだけど……」

「もうちょっと他に確かめ方があったでしょう!? 死ぬところでしたよ!?」

「蘇らせるのでセーフ」

「どういうことですか……」

 

 メリエルの言葉にグラスは溜息を吐いた。

 そして、メリエルは指示を出す。

 

「あー、ラフタリア。産婦人科医に赤ちゃんのでき方を聞いた後、皆でグラスのレベル上げよろしく。私が帰るまでにカンストさせといて」

「はぁ……分かりました。もしも異世界に行くなんてなったら、気をつけないといけませんね」

「大丈夫、それも私が何とかするから」

 

 何とかできるのか、とメリエル以外の全員が思ったが、何をやるのかは怖くて聞けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、一足先に城を後にした三勇者達は城下町にある食堂に集まっていた。

 元康が2人を誘ったのだ。

 

「俺達は、弱い。ゲームと同じだが、ゲームそのものじゃない」

 

 元康の言葉に樹も錬も頷いた。

 

「強くならなくちゃいけませんね」

「ああ。このままだとメリエルさんにおんぶに抱っこだ。おそらく、彼女も相当な廃人だぞ。何より、彼女の元いた世界を考えると、メンタルも強いだろう」

 

 錬の言葉に2人は頷く。

 

「ただ、彼女が使っていた魔法が分からない。現断(リアリティスラッシュ)とか唱えていた」

「それは僕も知りませんね。ただ、あのソウルイーターを一撃で真っ二つに切り裂いたことから、威力も高いのでは……」

「そういう威力の高い魔法は燃費が悪いと相場が決まっている。彼女はそれを撃ってもケロッとしていた」

 

 樹と錬の言葉に元康は腕を組む。

 

「3人共知らないってことは、メジャーなゲームじゃないってことだな。案外、メリエルさんが言っていたユグドラシルとかいうゲームの魔法だったりしてな」

「ということはメリエルさんはゲーム内のアバターとステータス、アイテムその他を丸々引き継いで召喚されたっていうことですか?」

 

 樹の言葉に元康と錬は妙に腑に落ちた。

 

「ってことはメリエルさんって強くてニューゲーム状態かよ。そりゃ強いわけだ」

「何かズルいですね……」

「ズルいはズルいが、そこに至るまでに費やした時間と労力、そしておそらく金も考えれば……ズルいというか……そうまでしたくないというか……」

 

 ユグドラシルの基準というのは分からないが、3人から見たメリエルは何でもできそうであった。

 上から数えた方が早い実力かもしれない。

 そして、MMOで廃人になる為の条件は何よりも時間を作れるかどうかだ。

 

「もしかしてメリエルさんってニートじゃねーか?」

「ありえそうですね。きっとボトラー……いえ、下手をしたらオムツ、あるいは垂れ流しかも……」

「最悪の予想だが、中身は男なのでは……?」

 

 うげぇ、と3人は顔を一斉に顰めた。

 しかし、元康はヘコタレなかった。

 彼は一番に立ち直った。

 

「つーかよ、メリエルさんが男だったとかニートだったとか、そういうのって俺らの予想で、実際にメリエルさんが男でニートでオムツの垂れ流しとかそういうところを目撃してないんだよな」

「まあ、そうだな」

「そうですね……」

「だから、見た目通りってことにしとこう。そっちのが精神に良い」

 

 元康の言葉に錬と樹が頷いたことを確認し、元康は話題を変えるべく告げる。

 

「MMOで、うまくやっていく心得その一! 廃人とは喧嘩しない、仲良くすることだ!」

 

 樹と錬は道理だと頷いた。

 喧嘩したらリスキルされまくり、煽られまくり、晒されまくり、挙句の果てには廃人の持つ広いネットワークにより他の廃人達も敵に回り、色んなコンテンツから締め出しを食らう。

 

 逆に仲良くなれば、高難易度のレイドボス討伐を手伝ってもらえたり、廃人基準では価値がなかったり、いらないアイテムをタダで譲ってくれたり、廃人ネットワークで紹介してもらい、更に他の廃人達と仲良くなれたりする。

 

 喧嘩したところでちっぽけなプライドが一瞬満たされるだけで、その数秒後から壮絶な報復が始まり、下手をすればアカウントを削除するまで粘着されまくるのだ。

 

「僕達、ギリギリのところだったんですね……」

「下手なことをしていれば、後ろから撃たれていたな」

「そういうことだ。まあ、廃人は強いからか、寛大な人も多い。持たざる者だけが嫉妬し、余裕がない。なんだってそうだけどな」

「でも、やっぱり嫉妬はしますし、ズルいとは思ってしまいますよ」

 

 樹の言葉に錬は勿論、元康もそうだとばかりに頷く。

 

「つーわけで、見方を変えようぜ。いいか? たぶん俺よりも歳上っぽい気がするから、メリエルさんは先輩だ。先輩だから、強いのも当たり前だし、色々なことができてもおかしくはない。何でもできる頼れる先輩にお前達は嫉妬するか? ズルいって思うか?」

 

 元康の言葉に2人は考えてみる。

 先ほどよりはズルいとか嫉妬とかそういうのは和らいだ気がした。

 

「そう考えればそうだな……」

「確かにそうですね。むしろ、甘えてしまおうって気になります」

「そういうことだ。俺達後輩は甘えちまおうぜ。今はおんぶに抱っこ、だが、将来は違う……っていうか、破天荒な先輩だから、任せておくと大変なことになる」

「強くなるしかないな」

「ええ」

 

 錬と樹に元康はニカッと笑う。

 

「そんじゃ、これから普段は別行動だが、定期的に情報共有ってことで集まろうぜ。波のボスへの対策も兼ねて、連携とかもやりたいしな」

「ええ。分かりました。僕も本腰を入れてレベル上げをします。正義のヒーローが魔王より弱いんじゃ、笑い話ですから」

「俺も一層、レベル上げに力を入れよう……もう二度と、被害は出さない」

「あ、それは僕もです……」

 

 錬と樹に元康も頭をかく。

 

「ま、やっちまったことは仕方がない。俺もやらかしたからな……」

 

 こればっかりはどうしようもない。

 事実は消すことはできないからだ。

 

「ともあれ、そういうふうにやっていこうぜ」

 

 元康の言葉に錬と樹は頷いたのだった。

 

 

 




タクト「俺のレベルは350、俺の仲間達は最低でもレベル250はあるぜ……メリエルなんて怖くねぇ……!」




メリエル「^^」
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