おや……? 盾の勇者の様子が……?   作:やがみ0821

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ガバがあったので、ちょっとだけ訂正


毒をもって毒を制すタイプ

 ミレリアへの提案の後、メリエルはシルトヴェルトへと戻り、そのままマルティの屋敷へと赴いた。

 出迎えたマルティにキスをしつつ、彼女をお姫様抱っこして、そのまま彼女の寝室へ。

 ベッドへマルティを優しく下ろしたところで、メリエルは問いかけた。

 

「マルティ、ちょっとお仕事してみない?」

「お仕事……ですか?」

 

 はて、と首を傾げるマルティ。

 

「そう。あなたの昔の男がちょっと邪魔になったんだけど、どうせなら利益になってもらおうかと思って」

「つまり、どういうこと?」

 

 上体を起こして、問いかけるマルティにメリエルは笑みを深める。

 そして、告げる。

 

「最低でも6桁、頑張れば7桁くらいは犠牲者が出るかもしれない、世界大戦の引き金、引いてみたくない?」

 

 マルティはその言葉の意味を理解し、満面の笑みを浮かべる。

 勿論、答えは決まっていた。

 

「引いてみたいわ。でも、私でいいの?」

「あなたにしかこの仕事はできないわ。ストーリーはこうよ」

 

 メリエルはそこで言葉を切り、ゆっくりと語る。

 

「メルロマルクでの冷遇に耐えきれなくなったあなたは、放浪の末にフォーブレイに辿り着いた。そこであなたは昔の恋人であるタクトの元へ。彼の性格的にきっと優しくしてくれるわ」

 

 メリエルの言葉にマルティは頷く。

 彼女もタクトの性格は知っているが為に。

 

「そこからがあなたの大好きなことをやってもらう。タクトの女達にうまい具合に不和を撒き散らして欲しいのよ。こっちに取り込むから」

「え、そんなことでいいの?」

「そう、そんなことでいいのよ。ついでに、タクトをうまく煽てて、あなたが神だ、全世界を統治するのはあなたしかいないみたいな感じで、世界に対して戦争を仕掛けるように誘導して欲しいのよ」

 

 どうかしら、とメリエルは問いかけると、マルティは不思議そうな顔だ。

 彼女にとってはあまりにも簡単な仕事であった。

 

「そんな簡単な仕事でいいの?」

「この仕事を簡単と言えるあなたは才能があるわ。私が認める。あなたは優秀よ」

 

 直球な称賛にマルティは気恥ずかしく感じてしまう。

 そして、ふと思う。

 

 こうして褒めてくれたのはメリエルが初めてかもしれない、と。

 

「私、頑張るわ。あ、でも、その、タクトはきっと私を抱こうとするけど……?」

「そこはあなたに任せる。私はタクトに抱かれても、むしろ興奮するタイプなので」

「もう、変態なんだから……」

 

 どうしよっかな、とマルティは悩む。

 タクトをせせら笑う為に敢えて抱かれてもいいが、彼は下手なのだ。

 ましてや、メリエルと色々とアブノーマルなプレイもやっている最近では彼程度のノーマルプレイでは正直、全く物足りない気がする。

 数年は経っているので、少しは変わっている気もするが……あまり期待はできない。

 

「その時の気分とかで」

「それでいいわ。あなたしかこの仕事はできない。信じているわ、私のマルティ」

 

 メリエルはそう告げて、マルティの額に口づける。

 マルティははにかんだ笑みをみせながら、言葉を紡ぐ。

 

「ところで、メリエル様。この前の革命騒ぎのときのことなんだけど」

「あの後は燃えたわねぇ」

 

 メリエルはつい数日前のことを思い出す。

 

 あの戦いの後、疲れたから一度シルトヴェルトに帰る、と言ってメリエルは皆を連れて帰った。

 勿論、そこには見学していたマルティやフォウル、アトラも含まれる。

 

 あの天使の翼はなんだとか色々と聞かれたが、メリエルはいつものように早口で設定を言ってみせ、マルティとともに2人きりで過ごした。

 

 マルティはメリエルの力や正体に非常に興奮し、激しく求めてきた。

 メリエルとしても勿論、それに応じて明け方まで大いに燃え上がった。

 

 獣のような、とはまさにアレだが、非常に良いものだった、とメリエルは何度も頷く。

 

「そうじゃなくて、あの時、ママは女王ではなくて女の顔をしていたわ。もう手を出したの?」

「ええ。ついでに妹の方にもツバをつけようかなと思っている」

「メルティも、あの時見た限りでは、かなり好意的ね。押せば簡単に堕ちるでしょう」

「それは良いことを聞いたわ」

 

 メリエルの言葉にマルティは問いかける。

 

「メリエル様はメルロマルクをどうするの?」

「どうもしないわ」

「三勇者とかも、正直いらない気がするんだけど……メリエル様がいれば良くないかしら? 他の勇者を排除して、全てを手に入れるっていうのは?」

 

 マルティの言葉にメリエルは不敵な笑みを浮かべ、答える。

 

「マルティ、あなたは勘違いしているわ。既に私はこの世界を手に入れている。なぜなら私にとって、世界を征服することも、破壊し尽くすことも、容易くできてしまうから」

 

 そのような答えはマルティにとって完全に予想外だ。

 だが、あの力を見れば納得できる。

 

 マルティは感嘆してしまう。

 とはいえ、同時に疑問も湧いてくる。

 

「メリエル様、どうしてそれほどの力があるのに、そうはしないの?」

「マルティ、単純な話よ。そうしてしまうと私が楽しくないし、面白くないの。今のままの方が世界ってのは面白いし、楽しいものよ……まあ、ちょびっとだけ世界征服とかいいなって思っていたりもするけど」

「ちょびっとだけ?」

「ちょびっとだけ。昔、世界征服をしようとしたんだけど、何だかんだでできなかったので。あの頃の夢よ、もう一度って感じ。あ、ついでに私の趣味は世界最強になることよ」

 

 マルティは両手を挙げて、降参した。

 メリエルは明らかに自分の理解の範疇を超えている。

 

「そのお手上げのポーズはどういう意味かしら?」

「メリエル様の思考回路が無茶苦茶過ぎて理解できないわ」

「失礼しちゃうわ」

 

 メリエルは頬を膨らませるが、ああ、そうだと告げる。

 

「マルティ、仕事の報酬についてだけど」

「うん」

「タクトが世界の敵として公開処刑される場面を貴賓席から眺めるってのはどう?」

「最高の報酬ね」

 

 マルティは満面の笑みとなり、頷く。

 

「一応、詳細なシナリオというか、流れについては渡すから。あ、引き抜き役はトゥリナなので、よろしくね」

「分かったわ。ああ、楽しみ……」

 

 うっとりとした顔となるマルティにメリエルは満足げに頷いた。

 そして、彼女はトゥリナのところへ赴くことにした。

 そこでメリエルはピンと閃く。

 

 トゥリナを驚かせるときっと良い反応をしてくれそうなので、試してみよう。

 

 傍迷惑なことを考えながら、メリエルはトゥリナを驚かせるべく完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)を使用したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 トゥリナは訓練風景を眺めていた。

 メリエルの従者達だ。

 元々は奴隷だったそうだが、メリエルが購入した後、奴隷紋を解除したとのこと。

 

 何とも変わった奴だとトゥリナは思うが、あそこまで万能であればむしろ、縛る必要もないのだろう、と考え直す。

 トゥリナは勿論、レールディアにも行動の制限というものはない。

 メリエルが全責任を持つ、とメルロマルクは無論、滞在しているシルトヴェルトにも伝えてある為だ。

 

 トゥリナもレールディアも、もしも何か騒動を起こしたら、メリエルからどんなことをされるか怖くて仕方がないので、大人しくしている。

 とはいえ、2人共、王族よりも良い暮らしをできている現状をぶち壊すようなことなんてしたくはない。

 

 そんなトゥリナは今日は暇潰しとばかりにこの訓練場へやってきた。

 

「……うーん、わらわよりも技量はありそうじゃな」

 

 ラフタリア達を見て、トゥリナはそう感想を抱く。

 レベル差がありすぎるので、スペック的にはトゥリナの方が上だ。

 だが、どうにも戦い方が傍目から見ているだけでも、巧いのが分かる。

 

 伊達にトゥリナも長いこと生きていない。

 封印されたりもしたが、それも過去の話だ。

 

 何となく、ラフタリアが自分を封印した輩に似ているような気がするので、末裔か何かかもしれない。

 かといって、トゥリナはラフタリアをどうこうしようなどとは思わない。

 過去の天命は封印するのが精一杯であったが、今の主は片手間でトゥリナを消し飛ばせる。

 

 恐ろしいことに、異界が構築されるまでの間の魔法攻撃は全て牽制であったという。

 

 そのとき、ラフタリアがトゥリナに気がついた。

 彼女はトゥリナへと近づいて、声を掛ける。

 

「あれ? トゥリナさん、どうかしましたか?」

「なぁ、ラフタリア。メリエルは……何じゃ?」

「この世全ての理不尽が服を着て歩いている存在です」

「言い得て妙じゃな……というか、普通にそういうことを言ってもいいんじゃな」

 

 トゥリナの言葉にラフタリアは首を傾げる。

 その反応を見て、トゥリナは簡単に説明する。

 

「わらわもタクトは勿論、過去に何人かの勇者を見てきたが……大抵、連れている女共は勇者へ冗談だとしても悪口みたいなことは言わなかったぞ」

「メリエル様の悪口というか、ツッコミですかね……変なことを言ったりやったりするので。まあ、悪口を言っても許してくれそうですけど」

「変なこと?」

「例えば波のボスを三勇者に任せて、私達は高みの見物とかしたり……」

 

 変なことじゃなぁ、とトゥリナは遠い目になる。

 そんな彼女にラフタリアは告げる。

 

「あ、でも、メリエル様は舐められるのは嫌いらしいですよ? シルトヴェルトに来てから、メリエル様を亡き者にしようと堂々と毒を盛った方がいたんですけどね」

「命知らずな奴じゃな……どうなった?」

「2日前くらいに病死しました。心臓麻痺だとかなんとかで、朝になってベッドの上で亡くなっているのが発見されたそうです」

「……あいつ、本当に勇者なのか? それ、メリエルがやったんじゃろ、どう考えても」

「それが証拠もなくて、そもそもメリエル様にはアリバイがあるんですよ。ちょうどその日の夜は明け方までシルトヴェルトの偉い人達から接待されていて……メリエル様が部屋を出たのはトイレに行った5分だけだそうですよ」

「怖いのぅ……実のところは?」

「メリエル様が落とし前をつけたんですよ、きっと。私はそう考えています」

 

 じゃろうな、とトゥリナは頷く。

 

「ラフタリア、何故、お主はメリエルに従っておるんじゃ? 正直、アレは大魔王じゃぞ?」

「色々と恩もありますし、良い生活をさせてもらっているので……給料も良くて……」

 

 最近になってメリエルはラフタリアやヴィオラの奴隷紋を解除した。

 フィーロとティアに関しては魔物というカテゴリーになってしまうので、法律的に危険予防の為、解除は禁止されているので、そのまま刻まれている。

 

 ともあれ、良い機会であったのでこれまでのお小遣い制ではなく、月給制でメリエルはラフタリア、ヴィオラ、フィーロ、ティアに給料を支払っている。

 メリエルが彼女達に求める水準は非常に高い。

 特に戦闘に関しては生死に直結するだけあり、一切の手抜きはなく、模擬戦は厳しいものだ。

 また最近では模擬戦以外の様々な鍛錬も加わり、それらも中々にハードだった。

 

 その分、給料は非常に良い。

 月に金貨20枚が支払われており、また諸々の経費(例えば装備品や消耗品の代金)は全てメリエル持ちという太っ腹だ。

 更にメリエルは無制限の住居購入費用の肩代わり、休暇制度その他色々の福利厚生までつけてきたので、誰もが羨む労働条件になっている。

 

 そんなに出さなくても、ついていきますよ、とラフタリア達は言ったが、正当な報酬を支払うのは当然、とメリエルは主張し、ラフタリア達は渋々受け入れた。

 

 

「……それは仕方がないな」

「あと、正直、メリエル様を野放しにしておくと、大変なことになりますので……」

「あー、うん、それもそうじゃな……」

 

 もう知らない、勝手にして、と言うと、本当にヤバイことをするのが目に見えているメリエルである。

 

「まあ、その、私がメリエル様から離れるなんて……できないんですけどね」

 

 ラフタリアの言葉にトゥリナは一瞬で意味を理解し、ニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

「ホの字か? ホの字じゃな? そうじゃな?」

 

 ラフタリアの耳はぺたんとなり、尻尾がぶんぶんと振られる。

 その反応でトゥリナは十分よく分かった。

 

「で、でも、あんまりメリエル様は人の情とかそういうのは重視していないみたいです」

「ふむ……確かにそれはあるな」

 

 トゥリナにしろ、レールディアにしろ、メリエルの人柄に惚れてとかそういうのではない。

 戦闘で負けた、という前提があるにせよ、メリエルは対価を与え、引き抜いたのだ。

 そこには情とかそういうのものはなく、利益の有無だけだ。

 タクトにつくよりもメリエルについたほうが利益があるから、という単純な理由。

 

 とはいえ、権謀術数の世界を渡り歩いてきたトゥリナにはメリエルがそうする理由も理解できてしまう。

 

「もうちょっと信じてもいいと思うんですけど……」

「わらわも封印された期間があるとはいえ、色々と見てきた。人間にしろ、亜人にしろ、感情がある者はふとしたきっかけでコロッと変わってしまう。今日の味方が明日には敵になって、寝首を掻くなんてよくあることじゃ」

 

 ラフタリアはピンとこないのか、首を傾げる。

 

「分かりやすく言うと、お主が何かのきっかけでメリエルと敵対するかもしれん、ということじゃ」

「そんなことはありません!」

 

 ラフタリアの大声に訓練を続けていたヴィオラ達がぎょっとして手を止め、2人のところへやってくる。

 

「どうかしたの?」

「私がメリエル様と敵対するかもしれないって……」

 

 ヴィオラの問いにラフタリアはそう答えると、ヴィオラは目を丸くする。

 

「勝負にならないって」

「待て待て、例えばの話じゃ。メリエルはそういう世界で生きてきたんじゃろう」

 

 トゥリナはヴィオラの言葉にそう返し、ラフタリアやヴィオラ、フィーロとティアをぐるりと見回して告げる。

 

「あやつは友人だろうが、敵になれば始末できるタイプじゃろう。だから、なるべく敵にならない為に、心を繋ぎ止めておく為に利益を与えるんじゃろう。利益があるうちは裏切らないというのは真理でもあるからな」

 

 トゥリナが言い終えた、そのときだった。

 

「中々面白いことを言っているじゃないの」

 

 びくーん、とトゥリナの狐耳と尻尾がピンと立ち、さらには全身の毛が全て逆立った。

 

 

 ゆっくりと彼女が後ろを向くと、そこには笑顔のメリエルが立っていた。

 彼女はトゥリナを驚かせようと完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)を使用して、ここまでやってきていたのだ。

 面白い話をしていたので、最後まで聞いてしまったという状況だ。

 

 

「ど、どこから!?」

「全部」

「悪意はないぞ! わらわの意見を述べただけじゃ!」

「でしょうね」

 

 メリエルはそう言って、溜息を吐く。

 

「いやまあ、正解なんだけど……職業病でね。元の世界ではエレナとかと同じ職業だったので」

 

 さらりと明かされる事実に驚くよりもまず、トゥリナも含め、ラフタリア達は納得してしまう。

 

「より具体的には世界中に商店を展開する超巨大商会お抱えの闇ギルドのボスってところよ」

「あー、そういう……その、メリエル様、私達のこと、信じられませんか?」

 

 ラフタリアの問いにメリエルは再度、溜息を吐いてみせる。

 

「少なくとも、信じていなかったら、あなた達にここまで色々と費やしていないわ。そりゃまあ、色々と元の世界でもド派手にやってきたけれど」

「どんなことを?」

「暗殺に革命、その他諸々幅広く……」

「危ない人じゃないですか! 知ってましたけど!」

 

 ラフタリアの叫びにヴィオラ達もうんうんと頷く。

 

「もしかしなくても、わらわよりも悪いことしてないか?」

「もしかしなくても、悪いことをしているわね」

「何でお主、盾の勇者に選ばれたんじゃ……? いやむしろ、あれか、どんな困難でも必ず打破してみせるとかそういう気質でも買われたのか……?」

「そこは知らないけど、まあ、私がここにいる以上、この世界を好きにはさせないわ。私以外が勝手に世界をどうこうしようなんて言語道断」

 

 トゥリナは勿論、ラフタリア達も何となく察した。

 

 大魔王な気質が一周回って世界の為になっている、と。

 毒をもって毒を制すとかそういう感じだと。

 

 世の中、うまいことできているもんだと感心してしまう。

 

「ところでご主人様、レールディアさんはどこにいますか? ドラゴンとして、お話したいんですが……」

 

 ティアの言葉にそういや見てないな、とメリエルはトゥリナへと視線を向ける。

 

「あやつなら、巣に引き篭もって、メリエルから貰った宝石やら財宝やらに頬ずりしているぞ」

「なんかここらに私の巣を作るとか言ってたけど、もう作ったの?」

「うむ。本人曰く、早く宝石を愛でたいからとかなんとか」

「私が言うのも何だけど、ドラゴンって本当に光り物が好きだったのね」

「種族の悲しい性というやつじゃな」

 

 だ、そうよ、とメリエルはティアに視線を戻すとティアは何とも言えない微妙な顔だった。

 

「ティアは宝石とか好き?」

「ちょっとだけ……」

 

 その言葉にメリエルはサファイアを適当に作って彼女へと渡した。

 ティアは満面の笑みで、それを受け取り、頬ずりする。

 

 それを見て、頬が膨れる者達が4人。

 

「仕方がないわねぇ……」

 

 メリエルは特に効果などはない、見た目だけのアクセサリーを彼女達にプレゼントしようとする。

 その際、フィーロ以外の3人は指輪を、フィーロは髪飾りがいい、と宣った。

 彼女達の要望通り、メリエルは指輪と髪飾りをプレゼントする。

 きゃーきゃー、と喜ぶ彼女達にメリエルはジト目で問いかける。

 

「で、私が人を信じていないとかそういう話はどこいったのよ?」

「あんまり疑いすぎても仕方がないので、これまで通りにします」

 

 笑みを浮かべて、そう答えるラフタリアにそれならば、とトゥリナが提案する。

 

「信頼の証として、仕事を任せてみるというのはどうじゃ? おそらくじゃが、メリエルが1人で何でもできてしまい、ラフタリア達に仕事を任せたことはないんじゃろ?」

「そうですね……基本的にメリエル様が私達に任せたことはないですね。この間の人質を救出するのが初めてなくらいでした」

「というわけでメリエル。何か任せてやるが良いぞ」

 

 上から目線なトゥリナであるが、素直に可愛いのでメリエルは彼女の頭を撫でる。

 子供扱いするでない、と不満そうだが口だけであり、尻尾はよく振られている。

 

「じゃあ、私のやろうとしている仕事、やってみる?」

「是非に!」

 

 目を輝かせるラフタリアにメリエルは仕事内容を告げる。

 

「実はこれからフォーブレイに潜入して、重要人物を片っ端から拉致する予定なのよ」

「……はい?」

 

 予想以上にヘビーな内容に、ラフタリアは目が点になった。

 さすがのトゥリナもこれは予想していなかった。

 

「……もうちょっとマイルドなのはないかのぅ?」

「……メルロマルクで復興のお手伝いとか?」

「それじゃ! メルロマルクでの亜人の見る目も変わるじゃろうから、一石二鳥じゃ!」

 

 トゥリナの言葉にラフタリアはうんうんと頷く。

 

「じゃあ、私の方から話は通しておくから。でも正直、あなた達はまだ訓練途中なので、実力が十分になってからそういうことはさせたいのよねぇ……ところでグラスは?」

「グラスさんなら、モンスター狩りに出かけています。技を磨いてくるとかで……」

「レベルは?」

「私達と同じです」

「現時点ではカンストってことね。クラスアップして上限を解放しないと……」

 

 うんうんと頷き、時間は与えたので、そろそろクラスアップをしてもらおうか、とメリエルは考えた。

 そこでラフタリアが告げる。

 

「メリエル様、上限はないようですよ」

「そうなの?」

「はい。同じレベルになったとき、聞きましたが、勇者には上限はないそうです」

 

 異世界も同じなのか、とメリエルは納得しつつ、トゥリナへと告げる。

 

「あ、言い忘れていたけどトゥリナ。タクトの女達を引き抜いていきたいので、引き抜きの優先順位のリスト作成と引き抜き役、お願いね」

「さらりととんでもない仕事をわらわに押し付けるでない!」

 

 するとメリエルはトゥリナの目線にまで屈んで、その瞳をまっすぐ見つめて告げる。

 

「あなたの知恵と話術と経験を見込んでのことよ。この仕事はあなたにしかできない」

 

 真剣な顔で断言するメリエルに、トゥリナは口を尖らせる。

 

「そう言われてしまうと……断れぬではないか……よかろう、引き受けてやるぞ」

 

 意外とチョロいのでは、とトゥリナの反応にメリエルは思ってしまうが、ともあれこれで撹乱役のマルティと引き抜き役のトゥリナを確保できたので、メリエルとしては問題がなかった。

 

「メリエル様、フォーブレイにちょっかいを掛けるんですか?」

「ちょっかいを掛けるというか、放置していると四聖武器を狙ってタクトがちょっかいを掛けてくるから。その前に力を削いでおくわ。彼、何かしらの力を使って勇者の武器を複数所持しているみたいよ。勿論、所有者を殺して」

 

 事実にラフタリア達は厳しい顔となるが、すぐに自分達の主を見て、同情的な顔になった。

 

「タクトさんも、可哀想に……」

「ちょっとラフタリア、私がおかしいの?」

 

 メリエルは不満を訴えたが、ラフタリアや他の面々もまた視線を逸らしたのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、グラスは不思議な状況に陥っていた。

 

「グアグアうるさいですね……」

 

 郊外でモンスターを狩っていたら、大量のフィロリアルに取り囲まれた。

 フィロリアルは雑食と聞いていた為、まさか人も食べるのか、と考え、グラスは臨戦態勢だ。

 しかし、彼女の思いは杞憂に終わる。

 

 フィロリアル達が一斉に二列縦隊を形成したのだ。

 明らかに統率が取れており、グラスは何がなんだか予想がつかない。

 

 タクトの女にはフィロリアル使いがいて、そいつが仕掛けてきたのか、とグラスは考えるが、その考えよりも遥かに斜め上の輩が登場した。

 

 列が綺麗に左右に割れて、通り道ができる。

 そして、人型ではなく、鳥型のときのフィーロと同じような大きさのフィロリアルが現れた。

 

 豪華な馬車を引っ張っている。

 そのフィロリアルはグラスの前まで来ると、ぼふんという音とともに人型になった。

 

「盾の勇者様に会いたい。シルトヴェルトにいると聞いた」

「……盾の勇者ですか?」

 

 グラスは思わず誰だろうか、と問い返し、そして気がついた。

 

「ああ、メリエルさんのことですね。いいですよ」

 

 メリエルさんの知り合いか何かだろう、とグラスは思って二つ返事で引き受けた。

 

 

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