おや……? 盾の勇者の様子が……?   作:やがみ0821

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カルミラ島へ!

 霊亀の封印を解こうとする元康達を説得して数日後、メリエルはオストにある提案をした。

 元康達は結界に引っかかったが、隠蔽に優れる者がこっそりと封印を解く可能性があるので、ちょっとした罠を仕掛けておきたい、と。

 

 オストも承諾し、メリエルにそれを任せてしまう。

 彼女は嬉々としてユグドラシルのアイテムをふんだんに利用した様々なトラップを作成し、設置した。

 霊亀内部にモンスターを湧かせても大丈夫とのことだったので、それはもう陰湿かつ、悪辣極まるものばかりだった。

 ゲームではないので、クリアさせなくとも全く問題がない為、メリエルも本気を出した。

 

 オストはメリエルからどのようなトラップを仕掛けるか説明を受けながら、作業を見ていたが、かなり早い段階でオストの顔は引き攣っていた。

 

 トラップの種類は非常に豊富であったが、オストが一番最悪なトラップだと感じたのは、転移トラップ。

 霊亀内部のどっかに転移させて、罠に嵌める、モンスターが大量に湧く部屋に転移させるなどと幾つか種類があるのだが、それらの比ではない最悪の転移先がある。

 

 メリエルの目の前に転移させるというものだ。

 

 道中には勿論、霊亀の奥深くに存在するコアにもその転移トラップを仕掛けた。

 メリエルはコアに触れずに霊亀の封印を解いたり、エネルギーを使用したりはできないことをオストに確認した上で、コアに触れた瞬間に転移トラップが発動するよう、設置した。

 なお、コアに触れた場合、オストの協力でメリエルからのメッセージが表示されるようにしてある。

 

 

 無数のトラップを掻い潜って、よくぞここまで来た。

 褒美として、私と戦う権利をやろう!

 

 

 そのメッセージの後、メリエルの前に転移する。

 

 そして、転移してきた相手には「こんにちは、死ね」って挨拶すると、すごくいい笑顔でオストに告げたメリエル。

 オストは自分の為にやってくれていることで嬉しくはあったが、非常に複雑な気持ちだった。

 

 そんなこんなで霊亀のセキュリティが大幅に強化し、フォーブレイで仕事に就いているマルティやトゥリナも誘う為にメリエルがやりくりし、どうにか彼女らも参加できるように調整を終えた。

 タクトはもはやマルティの操り人形と化しており、マルティがそうしたい、と告げれば彼はそれに従うしかない。

 本来なら彼の思考を戦争へと誘導したところで、マルティの仕事は終わったのだが、どうせなら開戦する5分前に戻ってくるのはどうか、というメリエルの提案にマルティは快諾した。

 全ての準備を終え、いよいよカルミラ島へと出発する日がやってきた。

 

 

 

 カルミラ島に関する手配は誘った元康が全て整えてくれた。

 

 とはいえ、メリエルはメルロマルク領ということもあり、事前にカルミラ島の件に関してミレリアに話をすると、何故か自分とメルティも行きますと宣言した。

 

 メリエルとしてはミレリアの水着姿が見られるなら、構わなかった。

 

 どうせなら、とメリエルは色んな女の子達を誘い、人数が膨れ上がり、その旨を伝えるが、ミレリアが手を回した為、問題はなかった。

 

 ミレリアには思惑がある。

 

 

 メリエルがたくさんの女の子を引き連れてやってくれば、その分、メリエルから出るお金も増える。

 結果として、カルミラ島の経済に大きく貢献する。

 更にこれを機に、メリエル御用達のリゾート地ということにでもしてもらえれば宣伝にもなる。

 プライベートビーチを持ってくれたら万々歳で、ミレリアとしては売り込む気満々だった。

 

 

 

 メリエル一行はシルトヴェルトから転移門(ゲート)で出発地であるメルロマルクの港へと出港の30分前に到着した。

 

 元康達も既に到着しており、メリエル一行を出迎えたのだが――

 

 

「……いや、何か増えてね?」

「気のせいではすまないほど、増えてますね」

「増えているな……」

 

 ナザリック観光御一行様と書かれた骸骨マークの入った小旗を振りながら、先頭を歩いてくるメリエル。

 その後に続く、ラフタリア、ヴィオラ、エレナ、フィーロ、ティアにフィトリア。

 ここまではいい。

 元康達も知ってる面々だった。

 

 フィトリアの後にマルティが出てきたのも、まあ、ありえなくはない。

 元康としては色々と複雑ではあるのだが、マルティが選んだのなら、という具合に納得していた。

 

 だが、そこからは知らない輩だった。

 金髪のメイドから、どこかの王族っぽい格好をした少女やら、その他色々だ。

 

 軽く30人はいそうなメリエルが連れてきた御一行様に元康は思わず声を掛ける。

 

「あー、メリエルさん……彼女達は?」

「色々あって、こうなって、そうなった。元康なら分かると思うけど、女の子は愛でるもの」

「分かりますけど、分かりません……30股とか無理っす」

「実は30股では終わらない……まあ、あれよ、女の子の口説き方とかについて、じっくりと教えてあげるから」

「マジですか!?」

 

 いよっしゃ、と張り切る元康を白い目で見る錬と樹。

 

「で、女王陛下は?」

「陛下はカルミラ島に一足先に行っているそうです」

「じゃあ、私達も行きましょうか」

 

 そんなこんなで各自、船へと乗り込んでいよいよ出港となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 カルミラ島へと向かう道中、 三勇者が船酔いになっていたので、エリクサーをぶっかけて、回復させ、メリエルは奥まった船室に彼らを集めた。

 

 そして、彼女は宣言する。

 

「女の口説き方と扱い方に関して説明します!」

「いよっ! メリエルさん! 最高!」

 

 ついさっきまで船酔いで死にそうな顔だったとは思えない程に、ノリ良くメリエルを煽てる元康に、メリエルは満足げに頷く。

 

「いや、何で俺達まで?」

「そうですよ、僕達は元康さんやメリエルさんみたいな、不特定多数の女の子と付き合いたいとか考えていないので」

 

 錬と樹も何故かこの場にいた。

 元康とメリエルが引きずり込んだのだ。

 

「まあ、待ちなさいよ。これは対策でもあるのよ。ハニートラップってご存知?」

 

 その言葉に錬と樹は何とも言えない微妙な顔になる。

 

「どこに罠が潜んでいるか、分からない。親切心で助けたあの子が惚れたとか何とか言って、言い寄ってきたらどうする? 泣き落としされたらどうする? あなた達、非情に徹しきれないでしょ?」

 

 そう言われると、錬も樹も返す言葉がない。

 特に樹は正義の味方のようなことをやっていた時期に、仲間になった女性のパーティーメンバーがいるので心当たりがあった。

 

「ぶっちゃけると、童貞はコロッと女に騙される可能性があるので」

「そうだぞ、メリエルさんの言う通り!」

 

 元康はうんうんと頷く。

 

「まずはじめに、あなた達の勘違いを一つ解きたいんだけど……マルティっているでしょ?」

 

 メリエルの問いに3人は頷く。

 

「彼女、悪女だから。あなた達が彼女をどうこうするのはぶっちゃけ無理」

「え、そうなんですか?」

「そうなのか? 元康」

「いや、そんな感じは全然なかったが……むしろ、男心を分かっていると思って……」

 

 メリエルはニヤリと笑みを浮かべる。

 

「そこよ。悪意のある女ってのは大抵、男に慣れているわ。男がどうしたら喜ぶか、どう振る舞ったら喜ぶかってのを知っているのよ。そして、そのように喜ばせておいて、甘い汁だけ啜る」

「で、でも、マルティは処女だって……」

「それも嘘。実はマルティは留学していた当時、フォーブレイでタクトってやつに処女を捧げているわ。本人から聞いたので」

 

 元康は両手を膝について、落ち込んだ。

 

「タクトって鞭の勇者ですよね? フォーブレイの王子の」

「以前、聞いたな」

「そのタクトよ。ただまあ、もう彼はまな板の上に置かれた魚みたいなもんだから」

 

 意味を3人は悟ってしまう。

 

「……何をするんだ?」

「波が来るのも空が青いのも全部タクトが悪い。タクトが加害者、私達被害者。そういうことになるよう、仕組んだ。マルティを使って」

 

 メリエルの言葉に3人は顔を引きつらせる。

 

「マルティって、そういうことができるのか?」

「できるわよ。彼女、人を陥れるのが大好きで、かつ、悪口の天才。タクトのハーレムを潰す為にマルティを送り込んだら、メイドとかその他色々な女の子を引き抜けたし」

「えげつねぇな……俺のところから、マルティが抜けたのは良かったんだな……」

「ちなみに本人が言うには、私に乗り換えた理由は楽しそうだから、というものですって」

 

 俺、楽しくなかったのか、と元康のプライドに傷がついたが、そこは錬と樹がフォローする。

 

「元康さん、良かったじゃないですか。変なのに捕まらなくて」

「そうだぞ。メリエルさんが嘘をついてまでこんなことをする理由はない。だから、本当にマルティはそうなのだろう」

「ああ、そうだな……ということは、メリエルさんが連れてきた女の子達はタクトから引き抜いた子達なのか?」

 

 元康の問いにメリエルは頷く。

 

「勿論、タダで引き抜いたわけじゃないわ。さ、こっから口説き方と扱い方よ。とはいえ、そう難しいことでもない。勇者ならすぐにできるんじゃないかしらね」

 

 メリエルはそう前置きし、告げる。

 

「口説き方は女の子に対して、利益を与えること。私は自分の女に対して、カネを惜しまない。生活費から、欲しいものまで全部、私が負担する」

 

 いきなり生々しい話に元康は勿論、錬も樹も黙り込んでしまう。

 

「女を囲う、いわゆるハーレムを作るってなったら、彼女達の全ての面倒を見る覚悟が必要よ。勿論、子供が生まれればその子供にも」

「いや、確かにそれはそうだけど……もうちょっとこう、ほら、好きだから一緒にいる、金銭的なあれこれは一緒に負担とかそういう感じは……?」

「できないことはないけど、相当に難しいわよ? 何しろ、感情って論理的ではないからね。たぶん気疲れして、割に合わないってなると思う。金銭に関する問題がないだけで、相当に心に余裕ができるから、一番簡単だと思う」

 

 なるほど、と元康は頷く。

 

「最初からお金とかそういうのを女の子に提示するのはちょっと……」

「いや、娼婦との交渉じゃあるまいし、直接的にはしないわよ。あくまで、さり気なくね」

 

 そうメリエルは樹に答えながらも、ネリシェンには普通に金貨を渡していたな、と思いつつ、あれは口説くのではなく、引き抜きだからセーフと思うことにした。

 同じ理由でレールディアとかトゥリナとかその他の女の子達も引き抜きであるのでセーフだ。

 

 

 

「扱い方に関しては会話をして関係を深めて、適度にプレゼントを贈ったり……」

「そこらは普通だな」

 

 元康の言葉にメリエルは頷く。

 

「前半は為になりましたけど、後半は僕にはあんまり関係ない話でした」

「ああ、俺も同感だ」

「いやいや待てよ、お前ら。ハーレム限定じゃないぞこれ。普通に1人の女の子と付き合うときでも、通じるからな」

 

 樹と錬に元康はそう告げる。

 しかし、2人はピンとこない。

 

「元康、こればっかりは歳を取らないと分からないものよ。たぶんあと数年くらいしたら、彼らも彼女欲しいーって言っているでしょうし」

 

 そう告げるメリエルに樹が告げる。

 

「でも、メリエルさんって強くてニューゲームみたいな状態ですよね? その力があるから、余裕というだけで……」

 

 元康と錬は顔色が一瞬にして青くなった。

 そんな、明らかに地雷と思われることを真正面からぶっ叩きにいくなんて――

 

「え? そうよ? 当たり前じゃない。むしろ、力があるのに使わないなんて馬鹿じゃないの?」

「……いや、そりゃそうですけど」

 

 意外にもメリエルは怒っていなかった。

 それどころか、理解できないという感じで不思議そうな顔だ。

 

「強くてニューゲームですから、アイテムとかそういうのも全部あるから何でもできますよね? そういうのがない状態ではどうですか?」

「中々面白い話ね。まあ、今みたいに万事順調という具合にはいかないでしょうね」

 

 あっさりとメリエルが認めた。

 元康と錬は互いに顔を見合わせたが、どうなるか見守ることにした。

 

「盾一本で頑張ることになるだろうから、レベリングしながら、行商でもして、資産作りと人脈作りに勤しむ感じ……いやでも、その前に……」

 

 そうメリエルが呟くのを聞いて、元康達は彼女の経歴的に、完全に裏に潜ってしまい、暗躍する未来しか想像ができない。

 彼女の手腕にもよるが、時間は掛かるが、似たような結果に落ち着くのではないだろうか。

 

 何しろ、平然とテロを実行できちゃうような精神の持ち主だ。

 それこそ不屈の精神で自分の目標を達成するだろうことは想像に難くない。

 

「おそらく召喚されて早い段階でシルトヴェルトか、あるいはゼルドブルに渡る決意をして、悠々自適な生活を目指すでしょうね。今みたいな好き勝手に振る舞うのは無理だろうし、三勇教の排除にも時間と手間と労力が掛かりそう」

 

 ラフタリアとかフィーロとかヴィオラとかティアとかは、傍にいないかもしれないとメリエルは何となく思う。

 

 マルティが罪をでっち上げてくる可能性は高い。

 だが、飲むことを防げなかったとしても、急な眠気に襲われた段階で、盛られたと判別ができる為に自傷しながら、窓から飛び降りて逃げる。

 その後は人気のない路地裏で、ゴミ箱の中にでも入って寝てしまうだろう。

 

 

 逃げた段階ででっち上げられた罪で指名手配されるだろうから、奴隷を購入したり、フィロリアルやドラゴンの卵ガチャをやっている余裕はない。

 勿論、経済的にも食料や医薬品、その他消耗品の購入などでカネは消えていくので、単純に奴隷やガチャの購入代金が工面できない。

 

「中々面白い……」

 

 メリエルはメルロマルク国内からの脱出、ゼルドブルもしくはシルトヴェルトへの亡命を考え、ミッションとして見るとかなり楽しく、面白いとニヤニヤと笑みを浮かべてしまう。

 

 まさに映画のスパイ。

 007並みのような活躍をするしか、生き延びる道は無くなる。

 とはいえ、たとえ泥を啜ろうとも生きて、心が折れていなければどうにかなる。

 寝たきりになるような、致命的な病に罹ったり、怪我を負わなければ万々歳だ。

 

 だが、盾の勇者であることの証明でもある腕に装着された盾を隠蔽する必要があるが、隠蔽できなければ片腕を切り落とすことも最悪の手段であるが考慮しなければならない。

 

 あるいは、背格好が似た浮浪者を始末して、衣類を着させ、頭部を焼いて顔や髪型からの判別を不可能にして、死を偽装するのもいいかもしれない。

 浮浪者ならば親族などから身元が割れることもあるまい。

 

 またウィッシュ・アポン・ア・スターによる制限の解除がなく、攻撃手段がない為に、レベリングに相当苦労する。

 どうにかして攻撃ができる奴隷を得るのは必要だが、あのタイミングで奴隷商のところに行かなければラフタリアは死んでいる可能性もある。

 

 真剣な顔で考え込んでいるメリエルに樹は恐る恐る声を掛ける。

 

「あの、メリエルさん?」

「樹、ありがとう。何にもない私も、面白そうなことになりそう」

 

 ただ、本当に仕事のようなことになるとメリエルは苦笑してしまう。

 

「はぁ、どういたしまして……」

「映画のタイトルはトゥモロー・ネバー・ダイってのはどう? ダイ・アナザー・デイもいいけど……」

「いや、何で映画になっているんですか?」

「考えていたら、007みたいな活躍をしないと、到底生き延びられそうにないので……」

 

 やっぱり007だと元康は分かりやすく、錬は密かに興奮する。

 

「残念だけど、現実にボンドはいなかった……というか、別の世界なのに、そっちにもあるのね?」

 

 メリエルの問いかけに3人共頷く。

 ただ、詳しく聞いてみればその内容はそれぞれの世界の実情に沿ったものだった。

 

 当たり前といえば当たり前だが、改めてメリエルはこの3人も自分から見れば異世界の人間なんだよなぁ、としみじみと思った。

 

「……ところで、メリエルさん。水着は……?」

 

 元康の空気を読まない欲望丸出しの問いかけ。

 しかし、メリエルはこういうのは嫌いではなく、大好きである。

 

「各種揃えてあるわ。ビキニからスクール水着……マイクロビキニどころか、紐まであるわ」

 

 元康はぐっとサムズアップ。

 メリエルもまた同じくサムズアップ。

 

 そんな2人に樹と錬は視線を交わし、深く溜息を吐く。

 そこで、あることが気になった元康が尋ねる。

 

「ところで、メリエルさん。マルティが悪女だって分かっているのに、どうして?」

「女が裏切らないものは自分の気持ちだけよ。というか、女の裏切りを気にしていたら女遊びなんて楽しめない。それに、そのくらいお転婆な方が一緒にいて面白いでしょ?」

 

 まー私が単に悪女フェチっていうだけなんだけど、と付け足したメリエルに元康は敵わないなぁ、と思い、錬と樹は呆れて溜息を吐くしかなかった。

 

 

 

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