おや……? 盾の勇者の様子が……?   作:やがみ0821

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本日3話投稿しました。


地獄の前の天国

 

 

 

 ビーチに現れたメリエルとラフタリアであったが、メリエルは視線を独り占めだった。

 女神の如き容姿は伊達ではない。

 シミひとつないきめ細かな白い肌に、黄金の髪をポニーテールにしている。

 彼女の水着は黒いビキニであり、アクセントとして左の手首に黄金のブレスレットを着けている。

 

 三勇者、特に元康は顕著な反応を示した。

 だらしなく鼻の下を伸ばす彼を奴隷の少女が思いっきり脛を蹴飛ばした。

 あまりの痛さに飛び跳ねる元康を笑いながら、メリエルは寄ってくるマルティ達と軽く会話し、碧い海に視線を向ける。

 

 

 白波が立っているのが見えた。

 

 リアルではできなかったマリンスポーツ、色々やるぜとメリエルは気合を入れる。

 

「メリエル様、よく似合っておりますよ」

 

 そう声をかけてきたミレリアにメリエルは視線を向けると、彼女もまた碧色のビキニ姿だった。

 子持ちとは思えない抜群の体型だ。

 

 その傍にはメルティがきらきらした純粋な視線をメリエルに向けている。

 メルティもまたビキニであった。

 

「ミレリア、メルティ。よく似合っているわよ」

「今は女なのですね?」

「さすがにね。それより、話はちょっと後回し」

 

 メリエルはそう告げて、無限倉庫からサーフボードを取り出した。

 ユグドラシルではミニゲームとして色んなスポーツが実装されていた、その名残だ。

 

 出てきたものに不思議そうな目を向けるミレリア達。

 

「良い波だ……行くぞ!」

 

 サーフボードを片手に抱え、メリエルは海へと突っ込んでいった。

 

 

 

 

 メリエルの波乗りにビーチからは一斉に黄色い歓声が上がる。

 事前に人払いはされているので、一般人はいない。

 歓声を上げているのはラフタリア達は勿論、女王と王女の護衛についてきた騎士団と影達だった。

 

 騎士団――女性のみで構成されている――は直接的に女王や王女の周辺に。

 影達は隠れて、あるいは変装しての護衛であったが、隠れているものはひっそりと変装している者達は遠慮せずに大歓声を上げていた。

 

 

「……くっそ、俺だってやれるぞ!」

「え、できるんですか?」

「できるのか?」

「少しだけ習ったことがある」

 

 樹と錬の問いかけに元康は堂々と返す。

 2人は溜息を吐く。

 

 メリエルの波乗りはどう見ても素人などではない。

 持ち前の身体能力とかそういうのもあるだろうが、明らかに慣れている動きだ。

 

「あっ、すごい! 波の中を!」

 

 女の子の声に3人は視線を再度、海へ向ける。

 

 巨大な波が作り出す隙間をメリエルは器用に入って、くぐり抜けていった。

 

「俺もやるぞ!」

「……あんたが死んだら、誰が私の面倒を見るの?」

 

 やる気に満ちた元康に横からの声。

 奴隷の少女である、マリー。

 彼女はヌイ種の亜人だ。

 

「俺は死なないぞ」

「嘘くさい」

 

 マリーの言葉に元康は膝から崩れ落ちたが、すぐに立ち直る。

 事情に関しては錬も樹も、何となく察しているので、2人は何も言わない。

 

 マルティと一緒になってメリエルに歓声を送っているレスティとエレナの姿がよく見えたからだ。

 

 捨てられたんだな、捨てられたんですね――2人の考えは一致している。

 錬と樹だけでなく、彼らのパーティーメンバーからも元康は可哀想な視線を向けられているが、ともあれ元康にとっては過去よりも未来である。

 

「……正直、メリエルさんの方が良かった。お金いっぱい持っていそうだし……」

 

 痛恨の一撃により、元康はダウンした。

 そりゃそうだろうな、と錬も樹もうんうんと頷く。

 

 もしも元康とメリエル、どっちの奴隷になるかと問われれば躊躇する余地はない。

 色々と問題はあるが、少なくとも命の危険や貧乏とは無縁そうだし、ちゃんと育ててくれそうなのがメリエルだ。

 

「でも、あんたにはあんたの良さがあると思うから、我慢する」

「……お、俺、頑張るからな……」

 

 マリーの言葉に決意し、元康は彼女の頭を撫でようとするが、はたき落とされた。

 

 大変だなぁ、と錬と樹がそのやり取りを見ていると、メリエルがこっちにやってきた。

 海水が滴り落ちていて、妖艶さを醸し出している。

 

 目に悪い、と2人はそっぽを向き、元康は欲望に従ってガン見した。

 

「いい波だった!」

 

 サーフボード片手に満面の笑みでそう言われ、何かいつもとは違う爽やかさに3人は意外な顔をする。

 こんな顔もできるんだ、という思いで一致していた。

 

「とりあえず、今日は完全にお遊び。明日から特訓。だから、あなた達も遊びなさい」

 

 メリエルはそう言って、3人分のサーフボードにビーチボール、その他色々な遊び道具を取り出した。

 

「え、いいんですか?」

「いいのいいの。今日の私はご機嫌よ」

 

 樹の言葉にそう返し、メリエルは再びサーフボードを担いで海へと向かっていった。

 

「とりあえず、遊びましょうか」

「俺は、あんまり……」

「まーまー、メリエルさんがああ言うんだから。遊ばないとな!」

 

 樹の提案に渋る錬を元康が引っ張り、海へと3人は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 三勇者達がパーティーメンバー達も交えて遊んでいるのを横目で見ながら、メリエルは水着の美女達に囲まれていた。

 

「ママ、年甲斐もなく……」

「あら、マルティ。メリエル様はとても情熱的にしてくれますよ?」

 

 母と娘の小競り合いが起こったりもしたが、メリエルとしてはどっちも違った良さがあるので、どっちも頂くのである。

 

「メリエル様! 一緒に泳ぎましょうよ!」

「メルティは可愛いわねー」

 

 純粋なメルティにメリエルとしてはにっこり笑顔。

 

「メリエル様、私も!」

 

 タクトの妹ちゃんことナナもまたメリエルにアピールする。

 それを見て、フィーロとティアがむーっと頬を膨らませる。

 

 

 ちびっ子達による取り合いにメリエルは癒やされる思いだ。

 彼女達に加え、フィトリアも連れてきてみんなで泳ぎ回った後、トゥリナとレールディアがメリエルに声を掛けた。

 

「メリエル、オイルを塗ってくれぬか?」

「私にも塗って」

 

 どちらも大人の姿であり、抜群のプロポーションだ。

 ビキニ姿であることが、余計に彼女達の体型の良さを際立たせている。

 

「仕方ないわねぇ」

 

 メリエルがそう言えば、他の女の子達も私も私も、と詰めかける。

 ハーレムも楽じゃないわ、とメリエルは怪しく笑う。

 

 

「むー」

「むー」

 

 一方のラフタリアとヴィオラは不満そうに頬を膨らませている。

 メリエルが他の女の子達と仲良くしていることが不満――というわけではなく、単純に自分達も構ってくれ、という意思表示だ。

 メリエルが女に手を出すことに一々、気にしていたらキリがない。

 

「ラフタリアちゃん、どうかしたの?」

「リファナちゃん……」

 

 ラフタリアに声を掛けたのはリファナだった。

 その横にはキールがいる。

 キールを見て、ラフタリアは呼ぶ。

 

「キールくんちゃん……」

「ラフタリアちゃん、その呼び方はやめて。俺だって、知らなかったんだから……」

 

 衝撃的な事実が一つ発覚している。

 キールは男ということで、水着は海パンが用意された。

 

 そして、それに着替えてみると、当然上半身が露出するわけで。

 

 胸は小さかったが、それでも膨らみがあり、ラフタリアとリファナはもしかして、と尋ねると、キールはとんでもない認識をしていた。

 

 男のアレは後から生えてくる、今はない――

 

 メリエル様じゃないんだから生えてくるわけがない、とツッコミを入れてしまったラフタリアは悪くない。

 ともあれ、キールは男として両親に育てられていたらしく、今まで気づかなかったリファナとラフタリアとしては驚きも大きかった。

 

 それはさておき、今の悩みを素直にラフタリアは打ち明ける。

 

「私とかヴィオラさんとか、もっと構ってくれてもいいと思うんです」

「待った、ラフタリア、待った。私、全然構われていないんだけど。あなたは何だかんだでタヌキチちゃんとかタヌキちゃんとか呼ばれて撫で撫でされたりしているでしょ?」

「それはそうですけど……」

「私もウルフちゃんとかワンコちゃんとか言われて撫で撫でされたい」

 

 ヴィオラの言葉にラフタリアは視線を逸らした。

 ヴィオラも決して影が薄いというわけではないのだが、いかんせん、メリエル本人やその周りの人物が濃すぎる。

 

 マルティさんくらいに濃いか、トゥリナさんとかレールディアさんとかくらいに飛び抜けていないとダメなんですよね――

 

 ぐっ、とラフタリアは握り拳を作る。

 一番目の従者は自分だ、だから、むしろ、後からのメンバーを飲み込むくらいの勢いで――

 そのくらいになればメリエル様もきっと――

 

 そのとき、突如として響き渡る2つの咆哮。

 

「あ、レールディアさんとトゥリナさんが本来の姿に……」

「何あれすげぇ! かっこいい!」

「大きいねー」

 

 巨大なドラゴンと巨大な九尾の狐が浜辺に現れた。

 その間にメリエルがいる。

 

 ラフタリアは決意がゆらぎそうになった。

 大方、どっちがオイルを先に塗ってもらうかで戦争になりかけているのだろう。

 

 と思ったら、どちらもメリエルが鎖で縛り上げた。

 すると、どちらも人型に戻って、エロティックに縛り上げられた美女が2人出てきた。

 浜辺に転がされた2人に対して、メリエルがオイルを塗りたくり、そしてラフタリア達の方へやってきた。

 

「はぁい、ラフータリーアー」

「変なイントネーションをつけて呼ばないで下さい」

「水着、素敵よ。さすが私のタヌキチちゃん」

 

 そう言って笑顔でラフタリアの頭を撫でる。

 彼女の尻尾がぶんぶん振られる。

 

「メリエル様、私は……」

 

 メリエルはヴィオラに対し、鷹揚に頷き、ぐっとサムズアップ。

 

「最高だわ。ヴィオラはウルフ……とはいえ、ウルフちゃんだとちょっと……何か良い言い方ない?」

「ワンコとか……」

「私のワンコちゃんは可愛いくて綺麗だわ」

 

 もう一方の手でヴィオラの頭を撫でる。

 彼女の尻尾がぶんぶん振られる。

 

「め、メリエル様……私は……」

 

 ちらちらとメリエルへと恥ずかしそうな視線を送るリファナ。

 メリエルはその小動物的な可愛さに射抜かれた。

 

「リファナ可愛い」

「えへへ」

 

 はにかんだ笑みを浮かべるリファナにメリエルは満足げに頷きながら、ラフタリアの次にリファナの頭を撫でる。

 

「お、俺は別に……」

「キールくんちゃん……」

「メリエル様までその呼び方を……!」

「いや、だって、その呼び方をしたのは私だもん。ラフタリアから聞いて、それならキールくんちゃんねって」

 

 そうなのか、とキールがラフタリアへ視線を送ると、そうだ、と頷く彼女。

 

「というか、ラフタリアもリファナも呼び捨てなのに、俺だけおかしくないか?」

「可愛いのは嫌い?」

「カッコいいのがいい」

「そういうところが可愛いので」

 

 メリエルはキールの頭も撫でる。

 彼女は恥ずかしそうだが、それでも尻尾が振られているので喜んでいるようだ。

 

「おい、メリエル」

 

 そこへ呼ぶ声。

 メリエルを呼び捨てにできる輩は限られるので、すぐに誰か分かった。

 メリエルはその名を呼ぶ。

 

「フォウルくんちゃん……」

「俺は男だ。実は女だった、なんてことはない」

「ここに性転換薬がありましてね」

「やめろ。それよりも、アトラだ」

 

 フォウルはそう言って、指で示した。

 ワンピースタイプの水着を着て、麦わら帽子を被ったアトラがいた。

 

「メリエル様、私はどうですか?」

「とても綺麗だわ。まるで浜辺に降り立った天使のよう」

 

 そう言いながら、メリエルはアトラへと歩み寄り、彼女に微笑みかける。

 

「……メリエル、お前、よくもまあ、そんな言葉がポンポン出るよな」

「そのくらい出てこないと、女は口説けないわよ」

 

 フォウルはメリエルの返事に肩を竦めてみせた。

 

「さて、じゃあ人数もいることだし、遊びましょうか? 他の女性陣はあなた達くらいにアクティブじゃないので」

 

 そう言われて、ラフタリア達が視線を向けてみれば、マルティをはじめとした面々はビーチパラソルの下で寝そべっていたり、デッキチェアで優雅に寛いでいたりとそういう具合だ。

 

 唯一、ナナとメルティ、フィーロとティアがビーチボールで遊んでいるくらいだった。

 フィトリアはビーチパラソルの下で、体育座りをして海を眺めている。

 

「あそこの4人と、フィトリアを拉致して、ビーチバレーとかスイカ割りとか色々やろう!」

 

 メリエルは満面の笑みだった。

 ラフタリア達がそれを拒む筈もない。

 まずはナナ達を呼び、合流した後、メリエルは宣言する。

 

「フィトリア拉致作戦を発動する!」

 

 メリエルの宣言と同時に、ラフタリア達は全速力でフィトリアの下へ向かっていった。

 フィトリアは仰天するも、彼女達の説明により、お遊びへの参加を承諾する。

 

 フィトリアがあっさりと参加を承諾したのは、ラフタリア達の背後でレーヴァテインを鞘に入ったまま素振りしているメリエルの姿が見えたからだった。

 なお、メリエルはただ突然、愛剣の素振りをしたくなっただけなので仕方がなかった。

 

 そんなこんなで、メリエル達は存分に遊んだ。

 途中からトゥリナやレールディア、エリー達も加わり、レベル的な意味で人外大決戦ビーチバレーが繰り広げられたが、最終的にビーチボールが犠牲となることで、争いは収まった。

 

 そして、昼食は浜辺でバーベキューを行い、メリエルの大食いっぷりに誰も彼もが驚愕し、午後もまたスイカ割りやサーフィン、ボディーボードなどマリンスポーツやマリンレジャーに日が暮れるまで興じ、最高の一日を過ごしたのだった。

  

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