「本当なのですか?」
詳細を説明し終えたメリエルに対し、ミレリアはそう問いかけた。
半信半疑といったところだろう。
雲を掴むような話だ。
「本当よ。どちらにしろ、信じようが信じまいが、3ヶ月後には結果が出る。何なら1週間以内に本人そっくりの分身が来てくれる」
メリエルの言葉にミレリアは深く溜息を吐く。
「何というか、唐突ですね」
「物事はいつだって唐突よ。ま、どうやらトリガーとなったのは私が始末した転生者が、女神とかそういうことを喋ったかららしいわ」
「なるほど……それで」
ミレリアは言葉を切り、メリエルの瞳を真っ直ぐに見つめる。
「勝てますか?」
「勝てる」
「根拠は?」
「相手は神じゃないから」
そう答えるメリエルの顔は自信に満ちている。
「あなたが全力で戦うと、どの程度になりますか?」
「人間がどうこうできる領域ではないことは確かね。ただ問題はメディアが悪辣な輩なら、私との勝負中にこの世界に波を起こしまくったり、転生者の大軍を投入する可能性がある。三勇者や各国の協力は急務よ」
メリエルはそこまで告げて、ミレリアの瞳を真っ直ぐに見つめる。
そして、告げる。
「私が説明するから、仲介をして欲しいわ」
「分かりました。大国だけではなく、小国も?」
「ええ。もし言うことを聞かないところがあれば圧力を掛けて」
ミレリアは頷いたところを見て、メリエルは更に告げる。
「相手は神じゃない。だけど、私が仕えていた主達は神を僭称したことを酷く怒っていてね。だから、何を見たとしても、驚かないことよ」
「……あなたが仕えていた主達?」
次元の違う力を持つメリエルが、仕えていた主達。
ミレリアは察してしまった。
「……そちらは本物ですか?」
「コメントは差し控える」
メリエルとしても、正直ちょっと分からない。
ゲーム上ではよく作ってあるな、と感心するくらいだったが、現実のものとなった今、思い出してみると、とんでもない経験をしてきたな、という思いだ。
アレらが偽物とは思えない。
特に印象的なのは混沌の天使のときに仕えた主で、今でもくぐもったフルートとオーボエ、太鼓を連打する音やその光景が脳裏に蘇ってくる。
メリエルが現実のものとなったから、それらも現実になったのか。
それとも人類は感知しえないが、太古より現実に存在しており、メリエルが現実のものとなったことで、それらとチャンネルが繋がってしまったのか。
メリエルは考えていると、ミレリアが尋ねる。
「タクトに関してはどうされますか?」
「前倒しか、あるいは戦争は起こさず、サクッと処理するか、どちらが良いか? そちらで各国首脳と検討して欲しいわ。どちらにしろ、メディアのことで各国と協議をしないといけないからそこで決めてもいい」
「被害という観点から見ればサクッと処理するほうが良いのですが、そうすると色々なものを処分するということが難しくなりますね」
「私はどちらのプランでも実行できるから、そちらに丸投げよ」
「検討します。1週間以内には各国との協議の場を設けますので……」
ミレリアの言葉に頷き、メリエルは告げる。
「そろそろ戻るわ」
「ところで、この島にある勇者の石碑は見ましたか?」
「ちゃんと習得したわ。気休めかもしれないけれど、そちらも集めておかないとね」
メリエルの言葉に不穏なものを感じたが、ミレリアに止める術はない。
何しろ、たった1人で神に等しい存在と世界の命運を賭けて戦うのだ。
できることは全てやる必要があった。
メリエルが部屋に戻ると、そこではマルティが起きており、不安そうな顔をしていた。
彼女はメリエルが戻ってきたのを見ると、駆け寄って抱きついた。
「メリエル様、私は……誰なの?」
「あなたはあなたよ」
そう答え、メリエルはマルティを優しく片手で抱きしめながら、もう一方の手でその頭を撫でる。
「夢を見ているようだった。私じゃない、私があなたと喋っていて……」
マルティはそこで言葉を切り、体を震わせながら、泣きそうな声で問いかけた。
「私は、誰なの?」
演技とかではないだろう、とメリエルは即座に判断する。
メディアがこんなことをする理由がない。
メリエルの力がどの程度かを推し量るため……ということでもないだろう。
彼女がそんなことを回りくどくやるとは思えない。
「衝撃の事実というやつだけど、聞く?」
問いにマルティは頷いた。
「あなたはメディア・ピデス・マーキナーという女神を名乗る輩の分身らしいわよ」
メリエルはそう告げ、先程のやり取りを全てマルティに打ち明けた。
マルティはメリエルの言葉をただ黙って、真剣な顔で聞いた。
そして、全てを語り終えたメリエルにマルティは縋り付く。
「メリエル様……私、どうすれば……」
彼女の瞳からは涙が溢れ始める。
嘘泣きなどではない。
メリエルは彼女の涙をその指で拭う。
「私に任せて。あなたは死なないし、これまでと同じように贅沢三昧の生活を永遠に送るのよ」
すると、マルティはくすりと笑う。
「あなたがそう言うなら、そうなるわね」
「ええ。それに負ける気がしない。だって、マルティの本体なんですもの」
「それはどういう意味かしら?」
「キスして押し倒せば何とかなるって意味よ」
メリエルはそう言って、マルティに口づけし、そのまま押し倒したのだった。
夜が明けて、メリエルは早速に動いた。
まず身近な面々に昨夜の出来事を打ち明ける。
「えっと、夢でも見たんですか?」
「タヌキチくん、流石に泣いていい?」
ラフタリアにそう言われたメリエルはそう返した。
「正直、信じられないので……」
「まあ、そりゃそうよね」
ラフタリア以外の面々もそれなりにいる。
この場に集まっているのはメリエルがカルミラ島に連れてきた者達だ。
マルティはまだメリエルの部屋で眠っている。
昨夜、マルティは激しく求めて、内容が非常に濃厚であった為に、疲労困憊のようだった。
また各地に残っている者達にもメリエルがアイテムを使って映像と音声を飛ばしている。
「私は信じます」
エリーがそう言った。
「私も信じる。メリエル様が嘘をつくはずがないもの」
ナナが続けて言った。
他のタクトから引き抜いてきた者達は同じように口々に肯定してくれる。
メリエルとしては有り難いが、いかんせん、彼女達は盲目的なのでこういう場ではあまり頼りにならない。
メリエルが白だと言えば黒であっても白だと肯定しちゃう為に。
「ふむ……わらわも信じよう」
「私も信じるわ」
しかし、ここで大きな味方が加わった。
トゥリナとレールディアだ。
「あ、いえ、別に信じられないというだけであって、信じないというわけじゃないですよ」
ラフタリアは変な勘違いをされそうなのでしっかりと訂正をしておく。
「メリエル様、失礼を承知でお尋ねしますが……」
ネリシェンが言いにくそうに口を開いた。
「その女神に勝てますか?」
それこそまさしく、この場にいる誰もが知りたかったことだ。
世界が滅んでしまっては何もかも意味がない。
「100%と言い切ることはできないけれど、大丈夫よ」
「その根拠は?」
「簡単よ。あいつは私のことを舐めているから。そこに隙がある」
メリエルとしては舐められている為、ブチ切れ案件にあたるのだが、怒ったところで相手のほうが圧倒的に強いので仕方がない。
自分より強い奴がそうするのは許せるタイプだ。
むしろ、レールディアとトゥリナに肩透かしをくらった分、思いっきり全力でぶつかっていこうと、やる気に満ちている。
「私も全力を出す。出し惜しみはしない」
「メリエル様の全力とは、どの程度ですか?」
アトラの問い。
フォウルが変な答えをしたら、承知をしないぞという視線をメリエルに向けている。
メリエルは不敵に笑い、答える。
「全力を出せば1分以内に世界を滅ぼせる。文字通り、木っ端微塵にできるわ。それこそ、文明の痕跡すら残さないくらいに」
メリエルの言葉に誰も彼もが息を呑む。
彼女は更に続ける。
「メディアも当然、それくらいはできる筈よ。それこそ時間停止や時間跳躍、因果律の逆転とかそういうのもできると思う。それでも私は勝つ」
メリエルは自信に溢れた表情で、そう告げた。
その顔を見て、ラフタリア達も何だか勝てそうだという気がしてくる。
「しかし、1対1で大丈夫なのか?」
「あらフォウル、心配してくれるの?」
「うるせー!」
そう返すフォウルにメリエルは笑いつつも、答える。
「それが賭けだからね。どこまで守るかは分からないけど……」
「罠にしか感じられませんが……」
ラフタリアの言葉にメリエルは獰猛な笑みを浮かべた。
「破った瞬間、彼女は終わる。私が持っている切り札を幾つか切らせてもらうから」
どんな切り札か分からないが、少なくとも碌なものじゃないことだけはラフタリア達には予想がついた。
「波を起こしたり、転生者を大量に投入したりしてくる可能性が高いし、メディアの仲間の神がちょっかいを掛けてくるかもしれないので、あなた達も今まで以上に鍛えて」
メリエルの指示に一同は頷いた。
それを見て、彼女はにっこりと笑い、告げる。
「遊びは終わり。仕事の時間よ。この仕事が終われば、あとはお気楽に過ごせるから。バカンスの為に全力で頑張ろう」
ラフタリア達への事情説明と指示を出し終えた後、メリエルは三勇者達と面会し、ラフタリア達と同じように説明をする。
彼らはあっさりと信じた。
むしろ、やる気を出して自分達も決戦に参加を、とせがむくらいだ。
とはいえ、メリエルがメディアの強さについて伝えると、彼らは渋々諦めた。
だが、彼らに希望を持たせることを忘れない。
メディアがこの世界に対してちょっかいを掛けてきたり、彼女の仲間がちょっかいを掛けてくる可能性を指摘する。
自分が戦っている間、この世界を守るのは元康達の役目だとメリエルは彼らへ伝えた。
そして、メリエルは一足先にシルトヴェルトの自分の屋敷へと
やることがあったのだ。
カルミラ島で戦域を展開すればいいのだが、念には念を入れる必要があった。
彼女は屋敷の広い庭で戦域を発動し、その中で流れ星の指輪を身に着け、ウィッシュ・アポン・ア・スターを使用する。
願い事は簡単だ。
失われたものも含め、四聖勇者及び七星勇者の為に有用な書物や石碑などを完全に解読可能な状態に修復・復元した上で原本を複写したものをそのままここに4つずつ持ってきて――
メリエルの目の前に膨大な書物と石碑が現れた。
原本は持ってきていないからセーフと彼女は自己正当化しながら、リキャストタイムが終わるのを待つ。
メディアにはウィッシュ・アポン・ア・スターは効かないよなぁ、とメリエルは思う。
効いたら一瞬で解決するのだが、そうはいかないだろう。
そうこうしているうちに、リキャストタイムが終わった。
次に唱えるものはマルティだ。
マルティ=メルロマルクをはじめ、メディア・ピデス・マーキナーの分身を全て本体から解放し、完全に繋がりを断った上で、何の不都合や悪影響もなくそれぞれが独立した生命体として活動できるようにして――
これが効かなかったら、メディア本人にお願いするしかなくなるが、現状確認する術はない。
1週間以内にやってくるメディアそっくりの分身に尋ねるか、とメリエルは思いつつ、書物やら石碑やらを片っ端から無限倉庫に放り込み、全部を収納したところで再度、カルミラ島へ戻った。
カルミラ島へと戻ると、メリエルは三勇者達の前にそれぞれ書物と石碑を置く。
書物やら石碑やらをわざわざ4つずつにしたのはこの為だ。
メリエルが1つ、三勇者達がそれぞれ1つずつ配分すれば一々貸し借りする手間が省けるというもの。
元康達は仰天するが、メリエルは彼らに時間を掛けている暇はない。
盾に関するものを彼女もまた目を通さなければいけないのだ。
メリエルが宿の自室に引き篭もって、無限倉庫からちょっとずつ出した古文書やら石碑やらを読み解いていると、そこへグラスが訪ねてきた。
グラスの方からやってくることは珍しく、メリエルは彼女を招き入れた。
「私の世界も、おそらくそうでしょうか?」
単刀直入にグラスは尋ねた。
何が、と言わずともメリエルは理解する。
「おそらくね。この世界にくっつこうとしている世界はどうやらメディアが原因みたいよ」
「そうですか……ゲームで、私達の世界が……」
怒りに満ちた顔のグラスにメリエルは告げる。
「世の中、そんなものよ。私だって、勇者なんて柄じゃないし、利益の為に間接的に殺してきた人間なんて数えきれないし、ぶっちゃけちょっとメディアのやっていることに興味があるお年頃なので」
「……そういや、そうでしたね。どっちかというと、あなたもそっちの側でした」
ジト目で見つめるグラスにメリエルは肩を竦めてみせる。
「相談する相手を間違えたわね。理不尽に対して怒りたいだけなら、ラフタリアあたりに話せばいいと思う。私のタヌキちゃんは真面目くんなので」
いけしゃあしゃあと告げるメリエル。
苦労しているなぁ、とグラスはラフタリアに同情してしまう。
「性格的に、あなたは真っ先に女神に対して怒る側なのでは? 自分がやるのはいいが、他人はダメっていう性格の典型でしょう、あなたは」
「怒って喚いてどうにかなるのは、子供だけよ。そんな非生産的なことに時間を費やすよりも、抵抗したほうがいい。向こうが滅ぼそうっていうなら、こっちも徹底抗戦するだけ」
グラスはまじまじとメリエルの顔を見つめた。
そんな彼女にメリエルは告げる。
「ただそれだけのシンプルな話でしょうに。感情を挟むと得られるものも得られず、面倒くさいことになる」
「得られるもの? 何を狙っているのですか?」
グラスの問いにメリエルはドヤ顔となり、答える。
「メディアは女神、彼女をぶっ倒して仲間にする。そして、ここらの世界の守護女神となってもらう。完璧では?」
「完璧に穴が空いている理論という意味ですね、分かります」
「ダメなの?」
「ダメです。あなたから聞いた限りでは、そんなことは絶対にしませんよ」
「精神的にも、たぶん10代後半から20代前半くらいの貴族のワガママ令嬢みたいな感じの女性だから、適当に貢ぎ物をして、ご機嫌取っておけば何とかなるわよ? 古来より、神に対してお願いをするときは貢ぎ物をするのは常識でしょうから、受け入れやすいし」
そういうことじゃなくて、とグラスは告げる。
そんな彼女にメリエルは不満そうな顔をしつつ、問いかける。
「第二第三のメディアが現れたとき、どうするのよ? 100年後、200年後……もしかしたら1000年後かもしれない」
「……さすがにそれは、その時代の勇者達に頑張ってもらうしか……」
「時間跳躍とかそういうことができる相手に?」
「情報を残して……」
「残したところで、100年程度でその領域まで辿り着けると思うの?」
ああ言えばこう言う、しかも、それが正論である為に反論もできない。
グラスは精一杯の抵抗として、メリエルを恨みがましく睨みつけた。
メリエルはけらけら笑い、言葉を紡ぐ。
「世界が自ら寿命を迎えるそのときまで、外敵によって滅ぼされないこと。そういう話になってくるわけよ。メディアに護ってもらうのが一番手っ取り早くない?」
「……意地悪ですね、あなた」
「意地悪だけど、これも勇者の仕事なので」
メリエルはそう答える。
何だか盾の精霊がそんなことまではしなくてもいい、と言っているような気がするが、気のせいだろうと彼女は思うことにした。
勇者の仕事は世界を守ること。
強制的に請け負わされた仕事とはいえ、大いに楽しませてもらっている。
その恩返しもかねて、そして何よりも一度手を付けた仕事は最後まで成し遂げないと、メリエル個人の信用に関わってくる。
「それに、第二第三の神がもっと頭が回ったら、厄介よ。メディアなら与し易い。だから、これが最初で最後のチャンス」
「どうしてあなたは発想が突拍子もないんですか?」
「現実的と言って欲しいわね。グラス、あなたは何か良い案がないの?」
問われ、グラスは沈黙する。
数分程、彼女は考えたが、全く良い案が浮かんでこない。
「ないのね?」
「ないですね……成功率はどのくらいですか?」
「分かんない。まあ、何もしないよりはマシ」
ジト目で見つめるグラスにメリエルは笑いつつも、そういえば、と思い出す。
「あなたのレベルっていくつなの? 結構上がっているんじゃない?」
「レベルですか? あなたとかつて戦ったときと同程度ですよ」
「どうして具体的に言えないの?」
メリエルの問いに、グラスは返答できない。
それにより、メリエルは訝しげな視線を送る。
「レベルくらいは教えてくれてもいいんじゃない?」
グラスは観念したかのように、告げる。
「私の種族にはレベルという概念がありません。エネルギーの総量で強さが決まります」
グラスとしては別に騙していたというわけではない。
かつて、レベル1になってしまったと告げたときも、メリエル達に分かりやすいように、そう表現しただけだ。
それで彼女達は納得していたので、グラスとしても今の今まで放置していた。
「あっ……ふーん。そうかそうか、君はそういう種族なんだぁ」
メリエルはとてもにこやかな笑みを浮かべて、グラスの肩に手を置いた。
「あなたならメディアと戦えるかもしれない」
「すごく嫌な予感がしますが、何をやるつもりですか?」
「エネルギー総量を無限にして、さらに供給量も無限にして、ちゃんと意識とか思考とか体の制御とか保てるようにしてあげる」
すんげぇいい笑顔でサムズアップするメリエル。
絶対碌でもないことをやらされるとグラスは確信した。
まさに問題は解決するが、その後はより酷い状況になるという典型ではないか、と。
「イヤです」
グラスの拒絶にメリエルは思いっきり舌打ちをした。
しかし、気を取り直して、彼女はちょうどいいとばかりにあることを告げる。
「ところで、あなたの友達の件だけど……」
「キズナのことですか!?」
前のめりになったグラスにメリエルはイヤラシイ笑みを浮かべる。
「メディアとの戦いがどうなるか分からないから、ささっとここに連れてきてあげる」
「本当ですか!?」
「本当よ、本当。ただ、ちょっと私の切り札を一つ、使用するので部屋の外に出ていてくれないかしら? 5分くらいで終わるんだけども」
そんな切り札を持っているのか、とグラスは驚くが、メリエルの言葉に素直に従う。
「分かりました。お願いします」
グラスは頭を深く下げ、部屋から出ていった。
さて、とメリエルは取り掛かる。
まずは念の為に戦域を展開し、いつも通りに指輪をはめて、ウィッシュ・アポン・ア・スターを唱える。
グラスの仲間であり、友人である風山絆を一切の不都合や悪影響なく、ここに召喚して――
「キズナ! 良かった、本当に良かった!」
グラスが絆に抱きついて号泣している。
抱きつかれている側は何だか恥ずかしいようで、視線をあっちこっちへ彷徨わせている。
「グラス、その、とりあえず離れてくれると……」
「無理じゃないかしら」
メリエルの冷静なツッコミに絆は渋い顔になる。
悪い気はしないのだが、いくら何でも恥ずかしい。
「で、オレを助けてくれたあなたは?」
「メリエルよ。面倒くさいのでグラスに色々と詳しい事情を聞いて欲しいんだけど、早い話が世界の危機で、今度女神とサシで勝負するっていう感じかしら」
「よく分からないけど、分かった。グラスに聞くよ」
「そうして頂戴」
メリエルの言葉にグラスを連れて、絆は部屋から出ていった。
これでグラスとの約束は果たしたので、心置きなくメリエルは自身の修行に打ち込めると確信する。
単純なレベリングも同時並行して行わねばならないが、ちまちま雑魚モンスターを狩っていては間に合わない。
大量の経験値を持つ敵を一気にどかっと狩る必要があった。
幸いにも、メリエルにはモンスターを大量に呼んだり、湧かせることができるアイテムがある。
ユグドラシルのレベリングでも多用していたものだ。
「そういや、プラド砂漠とかいう、いかにも怪しい場所があったわね……」
長年の経験と勘から、赤い輪郭みたいなのが持続的に浮かび上がっているという、あのへんてこな土地には何かがあるとメリエルは確信している。
ともあれ、探索がてら、実験とレベリングにはうってつけの場所だ。
太陽落としをはじめとした、大規模破壊をもたらす魔法やスキル、アイテムの実験はできていない。
さすがのメリエルも人口密集地域でぶっ放そうとは思わない程度に良心がある。
砂漠なら人もいないだろうし、広さも十分。
100匹どころか1000匹、1万匹単位で湧かせたりしても大丈夫だろう。
思い立ったが吉日。
早速ラフタリア達を誘っていくとしよう。
三勇者は今回は誘うのをやめておく。
勇者同士はそれぞれが半径1km以内にいると経験値が入らないという制限があるが、砂漠は広いので問題はない。
正直、どんなモンスターが湧くか、ちょっと想像がつかないので、メリエルは今回は連れて行くのはやめた。
湧いてくるモンスターが彼らでも対処できそうであったなら、勿論、呼ぶつもりだ。
「ラフタリア達と今回来ている面々で、戦闘ができる子達と……シルトヴェルトにいる子達と……フォーブレイと……」
メリエルは指折り数えて、総数がもはやパーティーというよりも、部隊と言ったほうがいいレベルになりそうだと笑ってしまう。
「ま、世界の為にこれも仕方がないことね」
そして、彼女はラフタリア達と、報告としてミレリアに