翌日からメリエルは本格的にレベリングを始めた。
グリーンシークレットハウスをひとまず撤去し、ラフタリアを連れて西へ東へ南へ北へ。
モンスターを探してはぶっ殺すというメリエルからすると極めて単調なルーチンワーク。
だが、ネトゲ廃人を舐めてはいけない。
つまらない単純作業に対するストレス耐性はピカイチだ。
どうせなら、とメリエルはうまく加減して、モンスターを身動き一つ取れない虫の息にしておいて、トドメをラフタリアに任せてみた。
すると、ラフタリアに大きく経験値が入り、自分にも経験値が少し入ったのでこれ幸いとパワーレベリングを敢行。
ぐんぐんとレベルアップし、日に日に背丈が伸びていくラフタリアであったが、メリエルは気にしない。
亜人ってすごいわねーくらいの認識だ。
さて、そんなメリエルとラフタリアは人跡未踏という言葉がぴったりな場所を中心にモンスター狩りに精を出しており、それはメルロマルクの王都からは遥かに離れた――というか、メルロマルクという国家からも飛び出していたので、オルトクレイをはじめ、三勇者達もさっぱりメリエルの消息どころか、噂すらも掴めなかった。
これ幸いとオルトクレイとマインは共謀して、メリエルに関する色んな悪い噂をでっち上げていたが、3週間も経つとまったく音沙汰がないことから実は死んだんじゃ、という噂がいつの間にか出ていた。
こればかりはオルトクレイとマインの2人も予想外で、出処は民衆だ。
城下町どころか、近隣の村にすら誰も見た者がいない、というのがその根拠で強姦魔呼ばわりされて、自殺したのでは、というのが噂の内容だ。
オルトクレイ達からすれば盾の勇者が死んだのなら万々歳、三勇者で何とかなるという楽観的な考えだった。
そうこうしているうちに、波がやってきた。
メリエルはすっかり波のことを忘れて、レベリングに夢中だった。
制限を取っ払っている為に当然レベルキャップなども外れている。
しかし、ユグドラシルのレベルは元々100レベルであったことから、次のレベルアップまでの経験値が膨大なようで、全く上がらないものの、盾の勇者という職業のレベルはみるみるうちに上がっている。
勿論、彼女はユグドラシル時代に入手していた様々な取得経験値に補正が掛かる装備やアイテムを使って、そして盾にそれらのアイテムを吸わせて経験値ブーストがかかるものを新たに開放したことも原因の一つだった。
メリエルとラフタリアは日課となったモンスター狩りに精を出して、そろそろ一休みするかというときに突如として、浮遊感と共に景色が変わった。
強制転移――耐性貫通――ワールドエネミークラス――
メリエルは即応した。
すぐさま彼女はバフをありったけ自分とラフタリアに掛けながら、同時に無限倉庫からお遊びナシのガチ装備を引っ張り出す。
瞬時におしゃれ着から、さながら戦女神とでもいうような格好へ。
レーヴァテインを片手に引き抜いたところで、状況を確認する。
空に亀裂が入り、その色は不気味なワインレッドに染まっている。
そして、亀裂の中から膨大な数のモンスターらしき異形が降ってきた。
無限湧きタイプ――ギミックの停止もしくはボスの排除――
瞬時にどのような状況であるかを判断し、動こうとしたときラフタリアが叫んだ。
「メリエル様! ここは農村部で、人がまだ!」
メリエルは状況評価を修正する。
無限湧きする雑魚を排除しつつ、それを行っている原因を除去。
同時に村人の避難。
クエスト失敗条件は村人や村に被害が出ること。
燃えてきた――!
困難なクエストであればあるほど、廃人は燃えるもの。
勿論、メリエルもまたそうであった。
先走った連中が波の根源らしき場所に向かっていくが、メリエルは鼻で笑う。
馬鹿め、状況確認がなっていない、と。
敵を倒しました、けれど被害は甚大です、では意味など無い。
最優先は人命であり、また彼らの財産だ。
「ラフタリア、村人の護衛及び避難を優先する。タゲは私が取るから」
問いかけにラフタリアは笑みを浮かべて、頷いた。
モンスター達よりも早く、メリエルとラフタリアは農村へと到着した。
あと少しというところまでモンスターが迫ってきているが、そこへ現れたメリエルとラフタリアに防衛線を構築していた騎士や冒険者達は目を丸くする。
農村内にこの顔にピンときたら連絡を、という文言と共にメリエルの似顔絵が家屋に張られているのを目撃したが、彼女はそれを見なかったことにする。
村の状況はよろしくない。
防衛線は吹けば飛ぶようなものでありながら、村人の避難は全く済んでいない。
突如として訪れた波に理解が追いついていないようだった。
メリエルはラフタリアへ避難誘導を命じつつ、防衛線へ。
「あなた達も逃げていいわ。ここは私が受け持つから」
「お前は盾の勇者!? 死んでいなかったのか!?」
「犯罪者風情が何を言うか!」
面白いことを言う連中にメリエルは笑いつつ、さっさとタゲを取ることにする。
物理・魔法防御の高さからタンク役をしたこともあったので、お手の物だ。
ヘイト値を稼ぐスキルに更にアイテムを幾つか使用して、その効果範囲を極大にまで広げる。
そして、メリエルはタゲを取った。
一斉に様々な種類のモンスター達がメリエルへと顔と視線を向け、我武者羅に突撃を開始した。
先走った連中――3人の勇者とその仲間達の間をすり抜けて。
慌てて彼らは手近なモンスターを数匹殺すが、そんな程度ではタゲは外れない。
この状況に仰天したのは防衛線を張っていた騎士や冒険者達だ。
大地を埋め尽くす数のモンスターの群れがこっちに向かって突進してくる。
その恐怖に抗える程に彼らは強くなかった。
我先にと逃げ出して、程なく防衛線はメリエル1人が残された。
「さて、ちょっとこっちへ行くわよ」
メリエルはタゲが剥がれない程度に距離を保ちながら、人家のない方向へとモンスターの群れを誘導する。
モンスターの群れもメリエルに釣られて、そちらへと綺麗に移動する。
頃合い良し、とみたメリエルは蹂躙を開始する。
「
千本という名称だが、その程度の量ではない。
メリエルを中心とし、大地より無数の神聖属性が付与された槍が突き出し、それらは手近なモンスター目掛けて飛び出していく。
貫かれたモンスター達は即死したのか、全く動かない。
もしやと思いつつ、メリエルは二撃目を選択する。
「
龍の如き白い稲妻が迸り、モンスター達を一瞬にして蒸発させていく。
メリエルは二撃目は位階を落としたが、それでもオーバーキルのようだった。
そして、その魔法でボスを倒してしまったのか、ギミックを停止もしくは破壊したのか、亀裂は急速に閉じていき、やがて元通りの空となった。
「……えー」
メリエルは、やっちまったと思った。
あの強制転移は、もしかして勇者とそのパーティーメンバーを波の起きるところまで飛ばしてくれる便利機能だったのでは、と。
そうと決まれば話は早い。
「メリエル様!」
タイミング良く、ラフタリアも駆け寄ってきてくれた。
メリエルはラフタリアの手を引っ掴んで、そのまま
さらに転移先で
「やっちまった」
「え?」
そこでメリエルはそうラフタリアに告げた。
首を傾げる彼女にメリエルは端的に説明する。
「要するに、私を強制転移させるなんて相当なツワモノに違いない、きっとそうだ。だから、開幕から全力の装備で……」
「あっ……」
ラフタリアも察した。
ただでさえ、メリエルは規格外の力を持っているとラフタリアは日々のモンスター狩りで実感している。
ドラゴンだろうが何だろうが、大抵はワンパンチで虫の息だ。
そのメリエルが全力の装備で戦闘を行った。
どういう影響がメルロマルクに出るか、またそこに留まらずに他国にまで波及するか、計り知れない。
「やってしまったことは仕方がないのでは……?」
「そうよね……まあ、次もまた同じようにすれば問題ない」
転移、殲滅、そして逃走。
それなら波にも対処しているので、文句が出ることはない。
勇者とやらの役目を果たしているので。
「ただ、メリエル様。報酬などが出るようでしたら、受け取ったほうが……」
「えー、面倒くさい。どうせ端金だし、そもそも金塊を捨てる程持っているし、私も作れるし……」
ラフタリアは溜息を吐いた。
彼女個人としてはメリエルは優しいことは十分理解している。
奴隷に対してここまでやる主人なんて、滅多にいないだろう。
ラフタリアは毎日三食におやつまで美味しいものを食べ、夜は天蓋付きベッドでメリエルと一緒に並んで寝る。
たまにメリエルが尻尾や耳でもふもふしてくるが、それくらいは罰にもならない。
奴隷紋が発動したことも一度もなく、自分は本当に奴隷なのだろうか、とラフタリアはよく考える。
「勇者なので、人望とか色々と……」
「勇者は品行方正で、正義の味方みたいな感じじゃないと駄目なんでしょ? 私の柄じゃない」
そう言われるとラフタリアも困ってしまう。
確かにメリエルは普段の生活はともかく、モンスター狩りを見る限りだとバーサーカーなのである。
ヒャッハー! モンスターだ! 殺せー! みたいなノリで。
「んー、まー、そーねー、あなたがそこまで言うなら行ってやらないこともないけどー」
メリエルの言葉にラフタリアは何を考えているんだ、とジト目で見つめる。
「メルロマルクって三勇教ってのが主流で、その三勇ってのが剣と槍と弓なのよ。何でかというと、先代の盾の勇者が亜人に味方しちゃったもんだからね……」
「あー……」
ラフタリアは何とも言えない顔になった。
色々な事情があると察してしまった為に。
「私からすれば別に亜人だろうが何だろうが、大して変わりはないと思うんだけどね」
メリエルの何気ない言葉にラフタリアは何だか嬉しくなった。
こんな人がないがしろにされるなんて、という怒りも同時に湧いてきた。
他の勇者達はどうか知らないが、少なくともメリエルは良い人だとラフタリアは思う。
「メリエル様、やはり行くべきです。訣別するにせよ、和解するにせよ、話し合いは大事です」
「話し合いは大事だけど、宗教ってのは厄介よ。本当に」
メリエルはラフタリアに押される形で、メルロマルクの王城へと行くことに決めた。
一応、盾を持った状態で。
メリエルとラフタリアが王城へと到着すると、まだ村で戦っていた連中が帰ってきていないようなので、時間をおいてから来ることに決めた。
勿論、それまでの間は戻ってモンスター狩りだ。
夕方くらいに再度、城を訪れるとちょうど良いタイミングだった。
兵士やメイドなど、すれ違う者達に嫌な顔をされたが、メリエルにとっては慣れっこだ。
大規模な戦勝の宴、メリエルとラフタリアは端っこでオルトクレイの宴の始まりの挨拶を聞いて、並んだ料理の数々を食べ始めた。
メリエルが1人で波をどうにかしたようなものだが、オルトクレイの挨拶では三勇者が鎮めたと言っていた。
良い具合に現実と妄想を置き換えているようで、メリエルはますますこれはダメだと判断する。
切り捨てるとなればメリエルはリアルでの職業柄早いものだ。
「美味しいですけど……」
そんなことをメリエルが考えながら料理を食べているとは知らないラフタリア。
メリエルが出してくれた料理には遥かに及ばないという顔だ。
しかし、当のメリエルは美味しい美味しいとどんどん料理を平らげていく。
その食べっぷりは見ていて気持ちが良い程だ。
「メリエル!」
そんな声で呼ばれた。
ラフタリアがそちらへと視線を向けると、怒り顔の男が1人。
しかし、メリエルは気づいているのかいないのか、料理を食べる手を止めない。
それがより男の怒りを煽ったのか、彼は片方の手袋を外してメリエルに投げつけた。
それは顔に当たる直前でメリエルの手により掴まれた。
「何か用?」
「決闘だ!」
「決闘? え、マジで?」
メリエルは思わず尋ね返してしまった。
決闘――PvPを挑まれるのは本当に久しぶりだったが為に。
「あのー、やめたほうがいいですよー」
ラフタリアはさすがに可哀想だと横から口を出すが、何故かその男――元康は爽やかな笑みを向けてきた。
そして、再びメリエルを睨みつける。
「聞いたぞ! お前と一緒にいるラフタリアちゃんは奴隷なんだってな!」
「奴隷……だったっけ?」
「一応、奴隷だった気がします」
メリエルの問いにラフタリアも自信なく答える。
「あー、そっか。じゃ、あとで奴隷じゃなくて、従者として雇用契約を結んでおこっか」
「あ、そうですね」
「元康、ありがとう。すっかり忘れていたわ」
「お、おう……って、そうじゃない!」
元康は流されそうになったが、どうにか踏みとどまった。
「人は人を隷属させるもんじゃない! まして、俺達は異世界人で、勇者だぞ!」
「私の世界については教えたと思うけど……」
「そ、そういうことじゃなくて! ともあれ、勇者として相応の振る舞いをすべきだ!」
「強姦魔なので、勇者もへったくれもないのでは?」
「いや、認めるのかよ!?」
「認めるも何も、なんかそういうことになっているので。そういうことなんじゃない? 知らないけど」
どこまでも他人事な言い方のメリエルに元康は埒が明かないと告げる。
「ともあれ、俺が勝ったらラフタリアちゃんを解放しろ!」
「じゃあ、私が勝ったら全裸で土下座して謝罪しろ」
「おうとも! 女だからといって手加減はしないぞ!」
やる気満々の元康にラフタリアへとメリエルは視線を向ける。
面倒なことになったでしょう、とそれには込められていた。
ラフタリアは申し訳なさそうに軽く頭を下げる。
そこで、オルトクレイが割って入った。
「話は聞かせてもらった! モトヤス殿が不服ならばワシが命じる! 決闘せよ!」
「ここでやるの?」
「庭だ。奴隷は決闘の賞品となる。故に参加は許可しない」
「当然ね。そちらはフルメンバーでも構わないわよ?」
「いや、俺が1人でやる!」
メリエルの問いに元康はそう答えた。
メリエルからすれば親切心でのことだったが、彼がそう言うのならばそれはしょうがない。
というわけで城の庭にて、決闘が行われることになった。
しかし、メリエルはタダでは受けてやるつもりはさらさらなく、どうせなら映像として、そして写真として残してやろうと幾つかのスクロールをこっそりと使用した。
「では、これより槍の勇者と盾の勇者の決闘を開始する! 勝敗の有無はトドメを刺す寸前まで追い詰めるか、敗北を認めること!」
説明を聞きつつ、メリエルは盾を構える。
単純に自分がどの程度、やれるか試してみようという魂胆だ。
「では、開始!」
合図と共に元康が槍――というよりは矛を構えながら、メリエル目掛けて突進してくる。
矛って槍の一種だったっけ、とメリエルは思いつつ、蝿が止まって欠伸でもしそうな程の鈍い突進に、タイミング良く合わせる。
「乱れ突き!」
矛が瞬時に無数に分裂して飛んでくるが、メリエルからすればよくある攻撃の一つに過ぎない。
盾で矛の穂先部分を全て弾き、そのまま盾を真っ直ぐに元康に向ける。
矛を弾かれて大きく体勢が崩れた彼にメリエルはそのまま盾を持ったまま突進。
元康の胴体に盾の前面がめり込み、嫌な音が周囲に響き渡る。
後ろへとよろける彼へ、メリエルは追撃を行う。
彼女は盾を元康の顔面に叩きつけた。
彼は、ゆっくりと崩れ落ちた。
観客達は静まり返っていた。
誰も彼もが呆気に取られていた。
盾の勇者が槍の勇者を圧倒した――
その事実はあまりにも衝撃的だった。
だから言ったのに、と結果が分かりきっていたラフタリアは呆れるしかなかった。
「こ、これは何かの間違いだ! 我が娘、マルティが選んだ勇者が……!」
「き、きっと盾の勇者がモトヤス様に毒か何かを盛ったに違いありません!」
ラフタリアは宗教の厄介さをその言葉で何となく感じた。
現実にメリエルが圧勝したのに、ラフタリアからすれば何を言っているんだ、という思いだ。
「え、マインって王女だったの?」
「マインとは気安いぞ! 我が娘のマルティだ!」
「あ、そうなんだ」
納得した、とばかりにメリエルは頷きながら、微笑みながら告げる。
「それじゃ、私は帰るから。次の波のとき、また来てやるから咽び泣くほどに有り難く思いなさい」
メリエルの言葉にラフタリアは慌てて彼女の傍へ。
そして、メリエルは小声で転移魔法を唱えた。
「こんな感じに、面倒くさいことになるって分かった?」
「ええ、よく分かりました。あと他の勇者達って弱っちいんですね……」
メリエル程とまではいかないものの、それでもそれなりの強さはあるんじゃないか、とラフタリアは思っていた。
しかし、蓋を開けてみれば何ということはない。
メリエルの足元にも及ばない程に弱かった。
槍の勇者だけでなく、剣と弓の勇者もあのとき、メリエルの速さに驚いたような顔だった。
ラフタリアでさえ、決闘時のメリエルの速さは目で追えるくらいに遅かったのに。
「さて、ケジメをつけてもらわないとね」
メリエルは、とても良い笑顔でそう告げた。
ラフタリアは短い付き合いながらも、ろくでもないことを考えたのだな、と容易に想像がつく。
「何をするんですか?」
「ちょっとした娯楽を大衆に提供するだけよ」
メリエルはそう言いながら、無限倉庫から幾つかのスクロールを取り出した。
それの1枚を使用すれば、空中に浮かび上がる先程の決闘。
そんなアイテムもあるんだ、とラフタリアは驚くが、メリエルがやりたいことに使うのは画像――様々なアングルから撮られた写真の方だ。
思いっきりメリエルに顔面を叩かれて崩れ落ちる元康の姿が写っているものをメリエルは選択する。
「これをこっちの紙にやって……さ、ラフタリア。明日の朝までには間に合わせるわよ」
そう言って笑みを浮かべるメリエルは勇者などではなく、やっぱり魔王がお似合いだとラフタリアは思うのだった。
翌朝、メルロマルクの城下町をはじめとし、各地の村や街に大量のビラがばら撒かれていた。
メルロマルクの王城での決闘は目撃者達も多かったが、盾が槍に勝つというのは信じられず、またそうなってしまっては都合が悪い。
また、オルトクレイもメリエル達が帰った後、口外した者は処罰するとその場で宣言したこともあり、誰も口にはしていなかった。
しかし、そんな思惑をぶち壊すようなビラだった。
そのビラはフルカラーであり、また大きく写真が載っていた。
写真という概念がなかった為に非常にうまく描かれた絵と人々には認識されたが、その絵に描かれた内容が大問題だった。
それはメリエルが思いっきり元康の顔面に盾を叩きつけているものだ。
そして、ビラの見出しはこうだ。
本紙独占!
槍の勇者、盾の勇者に圧倒される!
オルトクレイ王、マルティ王女、結果を受け入れられず現実逃避――!
メルロマルクは大丈夫か?
発行者:るし★ふぁー
あっという間に国中に決闘のことは伝わった。
見出しとは裏腹に記事の内容は比較的真面目であったが、三勇教と王室への批判と皮肉がこれでもかと込められていた。
たちまちのうちに、噂好きの民衆は決闘について、そして結果を受け入れられない王と王女について、盾の勇者について、好き勝手に話題にし始めた。
オルトクレイは激怒した。
必ずや邪智暴虐のビラの発行者、るし★ふぁーとやらを処刑してやらねばならぬ、と。
彼はすぐさまそのビラは偽情報であり、廃棄するよう命じたが、民衆がこれほど面白い娯楽を手放すわけがない。
また、オルトクレイの命令は当然、一瞬で国中に伝わるものではない。
一夜にして国中にばら撒かれたビラを回収し、廃棄するなど到底不可能であり、また厄介なことに国境を跨いで商売をする商人達にもそれらのビラが配られてしまったことだ。
一国の王と王女が結果を受け入れられずに現実逃避――オルトクレイの過去を知っており、今の彼は愚者を演じているだけだと信じる者も多くいたが、このビラにより本当に愚者になってしまったのではないか、と疑う者が多くなった。
またこれにより、隠蔽していた重大な事実が商人達により他国に伝わるのも時間の問題になってしまった。
メルロマルクが勝手に四聖召喚をしたことだ。
メリエルはたった1枚のビラを作り、それを複製してばら撒くことでメルロマルクの外交関係と民衆の王室への支持を危機的な状況に追い込んだ。
だが、これは彼女がリアルで仕事の一つとしてやっていた扇動工作をちょっとだけやったに過ぎなかった。
メリエル「盾が最弱? 役立たず? タゲ取りとタゲ固定、誰がやるんですか^^;」
三勇者「」