おや……? 盾の勇者の様子が……?   作:やがみ0821

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微グロあり。


三勇教の闇

 メリエルは三勇教の総本山へ乗り込んでいた。

 総本山は大聖堂を中央に、その周辺を数多の建造物が取り囲む形となっている。

 

 勿論、彼女は完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)を使っている為、誰も気づかない。

 

 メルロマルクまで来たついでに宗教の正体を暴いてやろうと考えたわけだ。

 宗教は厄介であることはリアルで十分承知の為、さっさとどうにかするに限る。

 

 盾の勇者である筈なのに盾の悪魔と、悪魔扱いされるのはちょっと頂けない。

 とはいえ、これが盾の堕天使とかだったらメリエルは許しちゃってたかもしれない。

 

 総本山は下手をすればメルロマルクの王城よりも広大であるように思えたが、メリエルからすればダンジョン探索気分で、進んでいく。

 

 幸いにもマッピングやらのダンジョン探索お役立ち系のアイテムは持っているので、それらを使いながら。

 

「うーん、どうせなら宗教対決してもらおうかな」

 

 狂信的な宗教テロリスト共もメリエルは潰して回る側であった。

 スキルのホムンクルス作成を使えば余裕で作れそうだし、何よりもそんなことをしなくてもできそうだ。

 

 特に子供。

 知らない人からモノをもらってはいけません、お願いを聞いてはいけませんと教育されているかどうか。

 そこが分かれ目だ。

 

「お前らが私を悪魔と断じるならば、私はお前達を異教徒と断じよう。聖戦(ジハード)の洗礼を味わうが良い」

 

 なんちゃって、とそんなことを言いながら、メリエルはずんずんと進む。

 部屋に片っ端からお邪魔していき、人がいれば眠らせて、文書があれば機密ではなくてもスクロールに転写して、印鑑があればそれを複製していく。

 

 途中ですれ違うシスター達に目を惹かれしてしまうのはご愛嬌。

 

 しかし、意外と真面目なようで、シスター同士やシスターと神官がこっそり部屋でヤッていたり、奴隷を囲っていたりということはなかった。

 メリエルとしてはつまらない限りだ。

 

 宗教の末端はともかく、中枢に近ければ近いほど腐敗するという考えがあった為に。

 

 

 ともあれ、面白い会話も聞けた。

 要約してしまうと、三勇者は素晴らしい、抱いて、子供産みたいとかそういうのであり、反対に盾の悪魔は汚らわしい、死ねというようなもの。

 

 面白いことを言う連中だ、殺すのは最後にしてやるとメリエルは思いながらも、総本山全体を回り終えた彼女は何となく違和感を覚えた。

 

 長年の経験と勘とでもいうべきものであり、何かがおかしいのだ。

 

 じーっとこれまでにマッピングされた地図を見ていると、あることに気がついた。

 もしやと思い、彼女は飛行(フライ)でもって空へと飛び上がり、総本山全体を俯瞰し、地図と見比べる。

 

「ふーん、やるじゃないの」

 

 全部の建造物を回ってマッピングした筈なのに、マッピングされていない建造物が多くあった。

 それらのうちの1つに降り立ってみれば案の定だった。

 扉はどこにもなく、またどこかと通路で繋がっているわけでもない。

 唯一鉄格子付きの窓が高い位置に数箇所あるくらいだ。

 

 倉庫とでも言われれば納得してしまいそうな見た目だろう。

 空を飛ぶか、高い所から見ない限り、この答えには辿り着けない。

 

 

「これは相当、闇が深そうね」

 

 宗教なんてそんなものかとメリエルは思いつつ、こういう場合の簡単な解決方法を使うことにした。

 周囲に誰もいないことを確認し、アイテムを使って壁を溶かし、自分が入った後に巻き戻し薬で壁を元通りに直した。

 

 ユグドラシルのアイテムってホント便利だわー、とメリエルは思いつつ、周囲へと視線をやる。

 人の気配がないことは確認済みだ。

 メリエルが入った建物は本当に物置として使われているみたいであり、様々なモノが置かれていた。

 しかし、それらは普通の宗教施設にあって良いものではない。

 

「ギロチンにアイアンメイデン、この牛はファラリスの雄牛? あそこの棚には苦痛の梨がいっぱい……異教徒を嬲り殺しにでもしているのかしら」

 

 まさか地球にもあったものが異世界にもあるなんて、どこの世界でも人間の考えることは同じなんだなぁ、とメリエルは遠い目になってしまう。

 名前は違うかもしれないし、よく見れば細部が異なっているが、使用用途は同じだろう。

 

 人間の業の深さが如実に分かる代物だった。

 

 幸いにも物置からは通路に出ることができ、そこをメリエルは進んでいく。

 通路は石造りであり、また天井には照明が一定間隔であり、さながら秘密基地といった趣だが、そんなワクワクしたものではない。

 

 ヒトの欲望が渦巻くダンジョンだ。

 さすがのメリエルも単身で敵の本拠地に潜入という映画のスパイみたいなことはやったことがない。

 しかし、不安や恐怖はない。

 むしろ、何が出てくるかという楽しみすらあった。

 

 エロあるかな、グロあるかな、できれば女の子だといいな、という自らも欲望を抱きながら。

 意外とすぐにメリエルの欲望は叶った。

 

 

「うーん! 最高!」

 

 エロもグロも女の子も全部あったのだ。

 具体的には女の子がエロい目に合わされたりグロいことになっていたりするが、メリエルからすればパーフェクト。

 三勇教会の連中に勲章の一つでもくれてやりたいくらいだ。

 

 全体的に背徳的だ。

 男と女のノーマルから女同士、男同士はいたような気がしたがメリエルの記憶にない。 

 そんな具合に風紀は乱れに乱れており、フリーセックスが教義なら私、入信します、とメリエルが言いたくなるくらいだった。

 

 とはいえ、それらは愛する者同士というわけではなかった。

 どちらかに必ず奴隷紋があったのだ。

 また、見た限りでは人間の奴隷は少なく、対して亜人の奴隷は多い。

 比率にすれば人間2割、亜人8割といったところだ。

 

 とはいえ、教会の連中は同時に仕事もちゃんとやっているようだった。

 奴隷を這いつくばらせながら、会議をしたり、何やら研究をしていたり、書類を纏めていたり――

 

 奴隷をペットと置き換えればペットOKな職場とでもなるかもしれない。

 ペットというには愛でられておらず、ストレス解消の為に蹴られたりしているのも多いが。

 ともあれ、メリエルはアイテムを使って部屋にいる連中を眠らせては文書を転写し、印鑑を複製していく。

 念の為に映像や画像としても残しておく。

 また、王城や地上部分の施設でもやったのと同じように不自然に思われない為に、椅子やソファに座らせたりするなど、疲れから寝落ちしたという感じに偽装する。

 勿論、体を触る際は指紋を残さないように手袋を装着する。

 魔法で浮かせるなどをしてもいいのだが、この世界独特の未知の魔法に対するカウンターなどがあったら厄介な為、そうはしない。

 

 地道な作業だったが、着実に成果は出るのでメリエルは頑張った。

 

「しかし、これ、研究の成果は出ているのかしら?」

 

 メリエルは研究区画と思しきところで、無造作に台の上に並べられ、鎖で拘束されている亜人や人間の奴隷達に首を傾げる。

 何の研究をしているか分からないが、少なくとも人類全体の役に立つような特効薬の開発とかそういうものではないことは分かる。

 

 無駄に費用を垂れ流すだけで、成果が全く上がっていないのではないか、とメリエルは心配になってしまう。

 研究者っぽい連中を眠らせて、これまた文書を転写して頂いていく。

 

 

 研究区画をメリエルは進んでいくと、悪魔崇拝者保管場というところに出た。

 そこではよくありそうな光景が広がっていた。

 

 四肢を切り落とされ、更に耳も半分くらいまで切り落とされた亜人の女達が壁に鎖で繋がれており、教会と思われる連中に嬲られていた。

 

 嬲る側には男だけでなく、女も混じっており、性器を蹴り飛ばしたりするなど、中々に愉快なパーティが行われていた。

 悪魔崇拝者とやらと通常の亜人奴隷をわざわざ区別する必要があるのか、とメリエルは不思議に思いつつ、嬲っている連中の声を聞いてみる。

 

 すると、面白い単語が聞こえてきた。

 シルトヴェルトの悪魔崇拝者共め、と。

 

 メリエルは満面の笑みを浮かべた。

 わざわざシルトヴェルトの偉い人達を説得しなくても、戦争理由を自分達で作ってくれていた、と。

 

 シルトヴェルトの密偵か、あるいは国民かまでは分からないが、ともあれ重要なのはシルトヴェルトの亜人が酷いことになっていることだ。

 まさに正義は我にあり、大正義降臨状態。

 

 これならばシルトヴェルトの国内世論どころか、国際世論すら味方につけ、錦の御旗を掲げて征伐できる。

 

 ここまで馬鹿な連中だとは思わなかったが、得てして宗教にどっぷり浸かってしまうと異教徒には何をしてもいい、という状態に陥りがちだ。

 ある意味、三勇教の信者達も被害者と言えなくもないが、ともあれメリエルにとってはそんなことはどうでもいい。

 

 そして男の悪魔崇拝者がここにいない理由なんて簡単だ。

 嬲るなら女と古今東西決まっている。

 そっちのほうが楽しめるからだ。

 

 嬲られている亜人達は四肢が切り落とされただけではなく、全身が傷つき、顔が腫れ上がっていたりする者ばかりだ。

 妊娠している者も多くいるが、マトモに出産はさせてもらえないだろう。

 精神的に壊れている者もいるらしく、笑い声が響いて絶え間なく聞こえている。

 臭いも酷い。

 血や糞尿、その他体液の臭いが混じり合っている。

 

 メリエルは保管場を見て回る。

 捕らえられている亜人はやはり女のみ。

 年齢は幅広く10代前半から20代後半くらいまで。

 シルトヴェルトが子供に密偵をやらせる国なら年齢は関係ないが、やらせないならば国民を攫ってこうしているということで確定だ。

 奴隷商から買ったという言い訳で――それが事実かもしれないが――押し通すかもしれないが、シルトヴェルト側はその程度では納得しないだろうし、メリエルがさせるつもりはない。

 

 何よりも聖職者の腐敗ということで、格好に叩ける材料だ。

 メリエルは映像でもって記録する。

 

 そして、区画の奥まったところでは数人が並んで順番待ちをしていた。

 奴隷の順番待ちなんて珍しいもんだ、とメリエルは思い、彼女は列が解消されるのを待ち、大人気の亜人を見てみた。

 

 金髪のフォクス種の女性だった。

 20代前半から半ばくらいであり、他の亜人達と同じく四肢を切り落とされ、狐耳どころか尻尾も半分くらい切り取られている。

 だが、唾を吐き出して忌々しく嬲っている相手を睨みつける余裕はある。

 とはいえ、それがそそるらしく、今、メリエルの前で嬲っている男は嗜虐的な笑みを浮かべ、彼女の股間を蹴り上げた。

 男は言うまでもなく、女であっても急所だ。

 絶叫し、体を痙攣させる様を見て、男は笑う。

 

「お前が来てからもう2年になるか?」

 

 そう言いながら、男は蹲る彼女の頭を思いっきり踏みつけた。

 

「そろそろ廃棄してもいいという話が出ているんだ。だから、殺してもいいってな。廃棄するにもカネと手間が掛かる」

 

 全くその通り、とメリエルは思わず同意してしまう。

 捕まえておく場合、殺さず生かさず適度に痛めつける為、ほどほどに栄養と水分も取らせる必要がある。

 それもまた結構に手間であるし、どっかに売り飛ばすにしても輸送費や人件費その他経費が掛かってくる。

 

 しかし、殺せばコンクリ詰めにして海に落とすか、あるいはバラして埋めるだけでいいのでそこまで手間は掛からない。

 

 そんなことを思いながら、さてどうするかとメリエルは考える。

 

 今ここで助けるかどうか、ということだ。

 あいにくと彼女は義憤とかそういうものは持ち合わせていない。

 面白いか、楽しいか、利益になるか、その3つが基本的な判断基準だ。

 

 しかし、彼女はあっさりと決める。

 ここで助けた方が利益になりそうだし、色々知っている可能性がある、と。

 

 さっさとシルトヴェルトに行けばいいものを、メリエルはモンスター狩りとラフタリア達の育成が楽しいので行っていなかった。

 とはいえ、今それは良い方向へ転んでいた。

 

 手土産かつ、案内人を連れていけば話はスムーズだろう。

 見たところ、女は2年もこの環境にいたという。

 ただ気が強いだけでは精神が保たない。

 となればこそ、リアルのメリエルと同業者。

 すなわち、密偵だ。

 

 男が踵を返して、背を向けた。

 奥まったところにある為、他の利用者はおらず、また他所から死角になっている。

 

 メリエルは素早く、無限倉庫からナイフを取り出し、男の背後へ。

 攻撃行動に移った為に完全不可知化(パーフェクト・アンノウアブル)は解除されたが、男が気づいたのはメリエルに片手で口を押さえられてからだった。

 蘇生魔法がある可能性を考慮して、余計なことは言わずに喉にナイフを滑らせる。

 鮮血が迸り、男がもがくが、それも儚い抵抗だ。

 

 あっという間に男の体から力が抜けた。

 音がしないように、ゆっくりとメリエルはその体を横たえた。

 

「……あなたは?」

 

 掠れた声による問いかけにメリエルはそちらへと顔を向ける。

 女が苦しそうな顔をしつつ、メリエルへと顔を向けていた。

 

 どうやら見ていたようだ。

 

「通りすがりの盾の勇者よ」

 

 そう言いながら、無限倉庫から盾を取り出して見せ、更にメリエルは彼女に巻き戻し薬とエリクサーを振りかけた。

 みるみるうちに彼女の全てが元通りになっていく。

 彼女は信じられずに自分の体を見て、メリエルの顔を見る。

 

「あなたの所属は?」

「シルトヴェルトです。三勇教を探っていました」

 

 すぐさま彼女は答えてくれた。

 信じたわけではないが、状況的に話した方がいいと判断したのだろう。

 

「シルトヴェルトは子供を密偵に?」

「いいえ」

「それは重畳。実はメルロマルクで一悶着あってね。そっちに拠点でも移そうかって思っていたところなのよ」

「あなたのお名前は? 私はエレナです」

「メリエルよ。ここにいる連中を助ける。その後、順次色々と素敵なことをやるから指示に従って頂戴」

「分かりました」

 

 そうと決まれば話は早い。

 メリエルは鎖を破壊し、エレナを自由の身とすると、彼女には隠れてついてくるよう指示し、そのまま堂々と進む。

 そして、嬲る連中全員を視界に収めるように、飛行(フライ)でもって宙に浮かび、うまく位置取りする。

 

集団標的(マス・ターゲティング)真なる死(トゥルー・デス)

 

 一瞬だった。

 次々と嬲っている連中が床に倒れ伏した。

 エレナは信じられないという表情だが、頭の切り替えは早い。

 現実に起こったことをいつまでも信じられずにいることなど愚かなことだ。

 

 そして、メリエルは捕らわれた女性達に巻き戻し薬と同時に念の為にエリクサーを振りかけ、奴隷紋をディスペルでもって解除し、鎖を破壊していく。

 彼女らはパニックに陥ることはなく、ただ信じられずに唖然とした顔を披露するのみだ。

 

 悪魔崇拝保管場という区画に囚われていた人数はエレナを含めて40人程だった。

 そして、メリエルは転移門(ゲート)を開いて、彼女達と共にいつもの拠点へと戻り、驚くラフタリア達に事情を説明して、再びメルロマルクの城下町へと戻る。

 今度は別のことをやるためだ。

 

 

 女王と会って彼女がどう判断するかまで、三勇教を潰しはしない。

 だが、過去の遺恨やらの理由はあれど、一方的に悪魔と断定し、誹謗中傷し、罠に嵌めようとしてくる相手に報復をしないという理由はメリエルにはなかった。

 王城にあった機密文書によれば、召喚前から王達と三勇教は共謀しており盾の勇者――メリエルはあのようなことになるのは彼らの計画通りだったようだ。

 

 

 

 汚いことをしてくる相手にはそれ以上の汚いことでもってやり返す。

 やられたからにはケジメはつけさせてもらう。

 

 

 それが彼女のやり方だった。

 

 

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