ウルトラトンチキグラン君   作:マッキー⭐︎

5 / 5
たいへんたいへんたいへん長らくお待たせしました(約1年)
一応完結まで脳内プロットは存在しているので、後はそれを文字にするだけなんですけどね。それが難しいんですよね。

よかったら引き続きお付き合いください。

ちなみに今回の話を一言で表すならば
「綺麗な本気おじさん爆誕」


第5話

 放射能は生物の細胞を死滅させる。微量でも浴びてしまえば機能に支障をきたすことに相違なく、可視できるほどの濃度を持った絶滅光(ガンマレイ)を浴びれば、最早生物は形すら保っていられないだろう。

 ゆえにグランへ突貫した帝国兵、それら総ては死体すら残らず、文字通り消滅していた。

 血痕は大雨が洗い流し、暴風は痛んだ路面をさらに荒らす。まるで命のやり取りなどなかったかのように、後に残ったのはグランとその仲間たちのみだった。

 

 

「……一応警告しておく。お前はそれを二度と使うな」

 

 

 決して大きくない声は、嵐に掻き消される事もなくグランを咎める。勿論会ったばかりのカリオストロに、彼を心配する気持ちは微塵もない。だが自分を守るという契約を為したのだから、すぐに死んでしまっては元も子もないと判断した。

 そして同時に、この警告は何の意味もないと理解していた。

 

 口元に付いた己の血液を拭うこともなく、分厚い雲に覆われた空を見上げるグラン。例え自らの身を滅ぼそうとも、彼は星辰光の使用を躊躇わないだろう。

 

 返事もせず、いつまで経っても動き出す気配もないグランに苛立ちながら、カリオストロは屋根を探そうと踵を返す。

 

 

「一先ずの危機は脱した筈だ。いい加減雨宿りでも――」

 

「いいや、まだだ」

 

 

 だが返って来たのは予想だにしていない言葉。周囲の仲間たちも耳を疑った。

 それ以上何も語らないグランに倣って、皆が空を見上げる。

 

 

「なんだよ、あれは……?」

 

 

 曇天の空、遥か高み。幾重にも重なる灰色の雲から姿を現したのは――

 

 

「ティアマト、あれが島の守り神であり、俺達が払うべきツケって奴さ」

 

 

 巨大な蛇を従えた女性。神々しさは女神と呼んで差し支えなく、しかし纏うどす黒い瘴気がそれを掻き消し、恐怖を撒き散らしていた。

 

 どこからともなく現れた声に、カタリナが剣を構える。しかしそれは杞憂に終わり、呆けたように筋肉が弛緩していく。

 

 

「ラカム? 避難した筈じゃ……」

 

 

 先程まで何処にいたかもわからない男が、今こうして姿を現したのだった。しかしカタリナは違和感を覚える。目の前にいるこの男は、本当にラカムなのか?

 初めて出会ったのはつい数時間前だが、その時と纏う雰囲気が豹変している。

 歩く姿は雄々しく、瞳に宿る強い意志の光。それではまるで――

 

 

「行くんだろ? 鋼の英雄。なら着いてきな」

 

「その決断に敬意を払おう。どうか力を貸してほしい」

 

 

 光の奴隷に言葉は要らず、突如舞い降りた災厄――ティアマトに立ち向かう意志だけが互いに伝播する。

 男同士の結託に、女性陣は口を挟む事すらできない。カタリナが何か言う前に、男たちは歩き始めてしまった。

 仕方なく、といった風にカリオストロが溜息を吐いてそれに追従する。それを追いかけるようにして、他の面子も慌てて駆けだした。

 

 

 

/********************************/

 

 

 嗚呼、そうだ。

 

 本気でやればなんだってできる。正にその通りじゃないか。

 

 生憎天気は土砂降りで、遊覧日和だなんて口が裂けても言えないが。

 英雄の門出には、これくらいの逆境がちょうどいい。

 

 今まで自分たちが居た地表から大きく離れた高み。町がミニチュアサイズにまで見える高度まで、ラカムたちは一気に飛び上がった。

 騎空艇、グランサイファー。その門出を祝福するが如く、他のメンバーから感嘆の声が上がる。

 

 今まで燻っていたのが馬鹿らしく思えるほどあっさり、グランサイファー(相棒)は自分に応えてくれた。

 当然、こいつは只の船、意思など持っている筈もない。だがそれでも、

 

 

「そうじゃねえよな、相棒」

 

 

 舵を持つ手に力が入る。他の誰に笑われようとも、自分だけは自らの想いを笑わない。

 

 

「いい船だ」

 

「そりゃ当然、俺の家族だからな」

 

 

 そしてこの鋼の男も、決してそれを笑わないだろう。

 想いの強さを尊重し、光を仰ぐこの男ならば――

 

 

「いこうぜ団長。俺達であいつの目を覚まさせてやるんだ」

 

 

 眼前に聳え立つ異形の化物、ティアマトを目の当たりにしても、二人の闘志に陰りは見えない。

 

 

「創生せよ――――」

 

 

 後ろで何やら騒いでいるな。ああ、またこの力を使うのを糾弾しているのか。

 なあ団長、お前さんはそんなこと気にしねえよな。

 

 勿論、俺だって止めるつもりはないさ。だってそうだろ?

 本気で、全力で、燃え尽きる覚悟で挑んでこその男ってもんだ。

 

 並び立つ事に憂いなし、後悔だって当然ない。

 男なら誰もが憧れる英雄譚――その一節に名前を刻めるのなら、命だって惜しくはない。

 

 それを他でもない英雄(グラン)に教えてもらったから。

 

 

「待たせたな。それじゃあ始めるか」

 

 

 今、その苦しみから解放してやる。

 

 

 

/*****************************/

 

 

 当然の話だが、翼や羽を持たない生物は飛ぶことはできない。勿論魔法の力で空を飛ぶ人間は居るが、一部の例外だけだ。

 加えて騎空艇での戦闘、これは慣れがないと厳しいものになる。微々たるものだが揺れる地面、風に煽られる身体。快晴の状態でもそれが牙を剥くが、現在の天候は大荒れ。まともに戦闘行動が取れる人間がどれ程いるだろう。

 

 しかし、何事にも例外が存在する。

 

 

「おかしな奴だと思っていたが、まさかこれ程とはな……」

 

 

 カリオストロの言葉に、カタリナ、ルリア、そしてビィまでもが首を縦に振った。

 彼女らの目の前で繰り広げられているのは正しく英雄譚。絶望的な状況を前に雄々しく輝く光だった。

 

 グランサイファーを前にして、ティアマトが選んだ手段は単純明快。蛇の巨大な質量を利用した薙ぎ払いだった。威力というものは質量と速度で決まる。どちらも十分に満たした一撃はしかし、操舵士であるラカムの技量によって悉くが無に還る。

 

 まるで未来が見えているかの如く、振り下ろされ、薙ぎ払われる災厄を躱し続けていた。それでいて、船に乗っているカリオストロ達が振り落とされることはない。必要最低限の動作で最大の効率。それは偏に、ラカムの類稀なる技術に依るものだろう。

 

 当然、ティアマトは攻撃手段を変えた。避けられる可能性の有る重い攻撃ではなく、威力は劣るが確実に当たる攻撃。

 自らの権能である風を最大限利用した波状攻撃だ。

 

 地表から巻き上げられた岩石、空間を切り裂く鎌鼬、騎空艇を削る竜巻等、攻撃手段は選り取り見取り。

 

 しかしその程度、この男(グラン)が見過ごす筈が無い。

 

 星辰光によって極限まで上昇した身体能力は、本来人が太刀打ちできない現象をいとも容易く捻じ伏せる。

 飛来する岩石は、グランの振るった刀に触れた瞬間に砕け散る。

 荒れ狂う竜巻は、極限まで圧縮した絶滅光によって掻き消える。

 幾重にも重なる鎌鼬は、こちらも同じく幾重にも振るわれた刃が相殺する。

 

 内側はボロボロの筈なのに、発狂して然るべき苦痛が襲っている筈なのに。

 英雄は止まることも知らずに、愚直に刀を振り続けた。

 

 腕が二つしかない以上、単身では成すこともままならない妙技。それを可能にしているのは、グランの持つ七つの刀だった。

 抜刀と納刀、それらの換装時間(タイムラグ)が微塵もない。ティアマトから放たれた攻撃ごとに、グランの持つ状況判断能力は常に最適解を吐き出し続ける。

 

 様々な角度から飛来する致死性の攻撃を、常に紙一重でいなし続けていられるのはそういうこと。例え死角から岩が飛んでこようと、驚異的な直感は容易く察知し、最も迎撃しやすい位置の刀を選択し切り払う。

 

 更に驚異的なのは、彼の成長速度だ。

 闘いながら成長する。お伽噺の主人公でしか成し得ない幻想を、彼は自らをもって体現していた。

 

 並外れた観察眼はティアマトの癖、風の流れ、それら総てを白日の下に曝け出す。

 

 戦闘と共に蓄積されていく経験則。時間が経てばたつほどに、グランの戦闘勘は冴えわたり、対象を敗北へと追い詰めていく。

 

 それが功を奏してか、徐々に近づいて行くティアマトとの距離。

 グランの絶滅光、その射程圏内へと突入していく。

 

 しかし、それを浴びせる事だけはできなかった。

 

 

「やっぱりまだ吸収できません! もう少し弱らせてからじゃないと……!」

 

 

 ルリアの叫び声に、内容を予想はしていたカリオストロが歯噛みする。

 

 ティアマトを消滅させるだけならば、実はそう難しい事ではない。射程圏内にまで入っているのだから、後はグランの渾身の一撃を叩き込むだけで総てが終わる。

 だがそれでは、同時にこの島も終わりを迎えてしまうのだ。

 

 星晶獣の加護によってこの島が成り立っている以上、その消滅は島の核の崩壊を意味する。守る筈の闘いが、大元を壊してしまえば本末転倒だろう。

 

 幸運なのは、この場にルリアが居たことだ。

 何の因果か、彼女は星晶獣の力を吸収する事ができる。確信ではなかったようだが、カリオストロがその説に太鼓判を押した。

 ならばそれしかないのだと、グランサイファーに向かう途中に作戦を立てたのだ。

 

 ラカムが、ティアマトを弱らせる。

 

 この役はグランでは務まらない。あまりにも強すぎる彼の力では手加減は難しい。加えて、現在も露払いをしているのだ。距離が近づいたことにより、攻撃も苛烈さを増している。その合間を縫って、加減した一撃を叩き込むなど不可能だ。

 

 カタリナ、カリオストロではそもそも無理だ。射程範囲が短く、攻撃が当たる保証はどこにもない。

 

 星晶獣を即死させず、またリーチの長い武器。

 銃を持ったラカムにしか、この役目は務まらない。

 

 人外の化け物に立ち向かうのは、ただ一人の人間。英雄などでは決してなく、つい先ほどまで路傍に転がる石ころのような存在だった。

 手にするのは無敵の神器……などではなく、何の変哲もない銃ただ一つ。逆襲の条件は何一つ揃っておらず、只人の化け物退治(英雄譚)などとは程遠い。

 

 

「関係あるかよそんなことッ!!」

 

 

 で、それが? 操舵輪から手を放し、ラカムは甲板へと走った。

 適わないから逃げる? そんなものは弱者の戯言。本気で生きている人間には関係がないだろう。

 諦めなければなんでもできる。その証拠に、なんの才能も取り得も無い俺がこの船を飛ばせたじゃないか。

 20年もの歳月を失ったものの、最後には夢は叶ったのだ。

 

 それに気づかせてくれたこの男には、決して頭が上がらない。

 力が報われるという保証はない? 意志の力で何とかなるなど夢物語?

 なんて馬鹿な勘違いだったのだろう。目の前にこれ以上ないほどの実例がこうして存在しているというのに。

 

 人間は不断の努力(本気)でどこまでも限界を超えられる。

 人間は意思の力(本気)で不可能を可能にできる。

 

 間違いに気づいた以上、もはや止まる術などありはしない。

 

 

「ああ、お前は紛うことなき英雄だ」

 

 

 一人甲板で戦っていたグラン。()()()()()()()()()()()()()()()()()英雄の姿を見て、つい言葉が零れてしまった。

 ならばこそ、自分が立ち止まる理由はどこにもない。

 

 愛銃を構え、狙いを研ぎ澄ませる。

 一撃では足らない。只の銃に星晶獣の相手は荷が重すぎる。

 

 ならばこそ――

 

 

「倒れるまで撃つだけだ! ナバルストライクッ!!」

 

 

 幾重にも放たれた弾丸は、正確な軌跡を描いてティアマトへと降り注ぐ。グランに気を取られていた彼女に迎撃の手段など残されているはずもなく……

 頭を除く人体の急所に、全て吸い込まれていった。

 

 

「今ならいけますっ!」

 

 

 ラカムに遅れて甲板に飛び出たルリアが、ティアマトの吸収を開始した。

 どのような理屈か、その場にいた全員が理解できていないだろう。しかし結果として、曇天は晴れ、空から光が降り注ぐ。

 暴走していたティアマトは、確かに調服されたのだ。

 

 

 差し込んだ光が、自分の新たな門出を祝福しているようで、

 

 ラカムは極度の疲労と安堵感から、その場にゆっくりと崩れ落ちた。

 




MAX LEVEL UP!!
★★★★★
MAX LV 80→100

最大レベルが80⇒100になった!
最大まで上限解放しました!
Lvが80⇒100になった!
攻撃力 8000⇒9500
 HP 1600⇒1900

ラカムのアビリティ
「ダブルタップ」が「ダブルタップ+」になった!

ラカムのアビリティ
「デュレーションⅡ+」が「デュレーションⅡ++」になった!

ラカムのサポートアビリティ
「スライトオブハンド」が「スライトオブハンド+」になった!

ラカムが
新たなサポートアビリティ
「光の殉教者」を習得!

光の殉教者
格上相手時には、ステータス1.5倍
相手が覚醒した瞬間に自身も覚醒(全ステータス2倍)
瀕死時「まだだ!」の台詞と共に覚醒(全ステータス2倍+HP半分回復)

ノア君と出会っていない為、導きの銃は習得してません。
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総合評価:17891/評価:8.21/完結:17話/更新日時:2026年05月26日(火) 21:00 小説情報


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