魔が創るは理想世界   作:Rさくら

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狩猟

 

 

 

 

 

 狩りという名の、命を奪うゲーム。道徳の是非など、仲間と笑いあえればそれで良い。

 

 

 

 森の違いなど、やはり自分には分からないなと、たっち・みーは周囲を見渡して思う。

 なんとなく違う種類であることや、全体的にどれもがトブの大森林に比べ大きく、明るい色の花々が多いことは見て分かる。だが、それ以上の詳細な何かは全く分からなかった。

「何か良い発見があると良いな」

「そうですね、たっち様!」

「きっ、綺麗なお花とかあったら、持ち帰ってモモンガ様に、お、お見せしたいです」

 左右から相槌を返すダークエルフの双子に微笑ましさを感じながら、聖騎士はまた一歩鎧を鳴らして前へと踏み出した。それから、特に警戒する理由もないかと長閑な空気に判断して、その手を左右の双子に差し伸べる。

 差し伸べられた御方の手に、双子の階層守護者達は目を見開いて驚く。そして、恐る恐るとダークエルフ達はその手甲と革手袋に覆われた無骨な手を掴んでみる。

 すると優しく握り返され、彼らはドキドキとしなからも歩き始めた。暫くして歩調が小さな自分達に合わせられていることにも気が付き、双子達は擽ったい想いに晒される。

 たっちに追従するナザリックの仲間達の羨望の眼差しを受けながら、アウラ・ベラ・フィオーラもマーレ・ベロ・フィオーレも、にこにことしたまま歩いていた。

 

 ナザリック地下大墳墓から見てかなり南下した土地にある名も無き大森林。

 たっちはナザリックの者達を引き連れ、そこに足を踏み入れていた。

 冒険者達からの報告を受けて知ったそこは、地元民も深部には立ち入らず、冒険者達も疲弊していたため調査していない未知の領域だ。

 そして今、冒険者達が作成していた転移のポイントを利用し、ナザリックの者達はそこに苦も無く訪れていた。

 訪れた理由は、これから先、冒険者と調査員達が調べるより前に森に本当に何も無いのか確認の探索のため。そして、狩猟のためだ。

「そういえば、それぞれ狩りの狙いはあるのか?」

 振り返って、たっちは付いて来たナザリックの面々を見渡す。

 たっちの後ろから粛々と付いて来ていた中で、目視できる者達は三名。コキュートス、そしてソリュシャン・イプシロンとナーベラル・ガンマだ。

 巨大な樹木が生い茂るせいで晴れているのに薄暗い森の中、大きな二足歩行する昆虫の見目をした彼とメイド服の美女が並んでいるのは、何とも奇妙な光景だ。

 コキュートス単体ならまだしも、メイド服の彼女達は森林探索に向かない見た目すぎて違和感がとても強い。恭しく一礼するその姿は、どこかの館にいる方がそれらしかった。

「綺麗な鳥の羽根がほしいですわ。ウルベルト様がご使用されている羽根ペンが傷んできたので、僭越ながら新調させて頂きたいのです」

「メイド達が装飾具を作る際の材料を欲しがっていたので、その分も可能なら調達したいと思っております」

 メイド達の希望を聞いたたっちの右隣から明るい声で次の要望が飛び出した。

「はーい、毛皮がほしいです! いい動物がいたらですけど!」

 ここまではスラスラと要望が出てきたが、残された二名は考え込んだ末に希望らしき希望は出してこなかった。

「……私メハ、御方ト狩リヲ楽シメレバ、ソレデ」

「ぼ、僕も……、えっと、ほしい物はないです。綺麗なお花ぐらいかな」

「そうか、分かった。それじゃあ、コキュートスとマーレはソリュシャンとナーベラル、アウラのそれぞれの手伝いを頼む」

 了解の意を示し、コキュートスとマーレは頷く。

 そうして、たっちはまた周囲を伺いながら歩みを再開した。

「まぁ、本来の目的はこの森の調査だが……」

 そうひとりごちると、たっちはちらと横を見る。視線を受けたアウラが、不思議そうにこてんと首を傾げた。

 冒険者達からの調査報告書は事前に調査参加者達に配り、仕事前の打ち合わせもして来ている。未開の森への来訪目的は間違いなく森の調査、仕事だ。しかし実際はアウラとその護衛だけで事足りるような仕事であることは、周知の事実である。それ以上は余剰戦力であり、半ば遊び目的であることもだ。

(……実際は遊びに来たような状態だよなぁ。いや本当に打ち合わせの時から気が緩んでいたしな……。まぁ、偶には息抜きしないと心配させてしまうみたいだし、それに、)

「お前達も楽しそうなら、それでいいか」

 ナザリックの者達を眺め、そう独りごちて、たっちは自身を納得させる。

「アウラ、何かめぼしい報告はあったか?」

 隣のアウラに、たっちは問いかける。ちょうど彼女が使役する獣の内一匹が戻り、森林内について報告をしてきているところだった。

「いいえ、何も無いです。遺跡どころか人がいた痕跡も全く報告無し。この辺りの住人が森の奥へは滅多に立ち入らないって話は、嘘じゃないみたいですね。それから……」

 戻ってきた獣が先導するように歩き出したのを見て、たっちはそれに追従する。当然たっちに続いて、ナザリックの者達も歩き出した。

 暫くして、突然ぽっかりと森の中に開いた空間が目前に見え、一行は警戒し一旦脚を止めた。

 たっちもその両手から双子を解放し、剣の柄に手を伸ばし構える。

 まず始めにアウラがスキルを使い周辺を伺いながら、そこへと近寄った。そのすぐ後ろに居るのは補佐役のマーレだ。そして残りの皆も身構えながら、そろりとそれに近づく。

「……これか」

「はい、こういう大きな何かが通った跡の報告がいくつかあるので、あの話も嘘じゃないみたいです」

「この辺りは巨木ばかりで小さい草木が生い茂ってないなとは思っていたが、これのせいか。あの話が事実なら、地元民が滅多に立ち入らないのも納得だ」

 地面と森に線を引くように、一直線に森を抉ったような跡の上でたっちとアウラは話し込む。その足元には、若木と草花をなぎ倒し踏み倒し、地面を抉った巨大な四足獣の足跡が残されていた。

「! たっち様、来ます!」

 アウラが接近を察知し叫び、近くの巨木の影へと彼らは急ぎ退避した。そうしてすぐに誰もが体感できる地鳴りが届き、そして獣の猛々しい足音がたっち達に近づいてきた。

 そうして、近くを通り過ぎた話には聞いていたそれを見て、たっちは驚愕する。

「……本当にいたのか。巨大な牛」

「あれも話通り、何もしなければ物凄い勢いで走り去って行くだけでしたね」

「とりあえず……、進行方向に行ってみて生態調査だな。ハムスケみたいに一匹だけしか存在しないレアなら、下手に狩ったらモモンガさんに怒られる」

 たっちの言葉にナザリックの者達が了承の意を示し、そしてふと疑問を抱いたマーレが首を傾げる。

「あ、あれって、ハムスケみたいに話ができるのかな、お姉ちゃん」

「んー……、どうだろうね、大きさはハムスケより少し大きいぐらいだったけど……」

「言われてみれば、そうだな……、会話ができるのかどうか……。皆はどう思う?」

「仮に話ができるとして、森の中をああも無意味に駆け抜ける知能ではまともな会話ができないのではないでしょうか」

 ナーベラルの口から出てきた冷静な意見に、周りがしんと静まり返る。

「た、確かに……」

「あはは、ト、トロール程度の知識だったらちょっと困っちゃうね」

「トロールか……。報告であまり良い話は聞かなかった名前だな」

 先程までは会話ができれば何かしらの情報が期待できるのではと思考していたたっちだったが、その願いは今は綺麗サッパリ消えてしまっていた。

 どうか話せませんようにと、面倒を避けるため祈りながら、そうして仕事のためと一歩たっちはまた歩み始めたのであった。

 

 開けた場所が現れ、たっちは感嘆の声を漏らす。

 円形の窪地になったそこは、巨木が無い背の低い草原であった。鬱蒼とした森を抜けた先であることもあって、そこはとても明るく、まるで輝いているかのように感じられる。

 窪地の中央には水がずっと湧き出ており、森の動物達が思い思いに寛いでいた。

 たっち達の出現に対して動物達は僅かに距離を取っただけで一斉に逃げ出したりはしなかった。人間など敵対動物が現れない場所のためか、警戒心がどの動物も薄い様子だ。

「た、たっち様、ここは、人為的に出来た場所、ですよね?」

「あぁ、この綺麗な円形はそうだろうな。何か強い攻撃で大地を抉ったのだろう。しかしこの植物の生え具合だと……」

「かなり前の話ですよね、きっと」

「ひとまず周囲を探索してみよう。各々この場で探索をしながら狩りをしてくれ。何かあったら、私に連絡を」 

「たっち様、お手伝い致します」

「えぇ、私達も周辺を調査しますわ」

「少し周りを見て回るだけだ。そんなに手伝いは要らないよ」

 ついうっかり、きっぱりと断わってしまった後にたっちは失態に気づく。振り返れば、要らないと拒否されたことで顔を俯かせるメイド達がいて慌ててたっちはフォローを入れる。

「そ、それに、ソリュシャンとナーベラルには目的があるだろう? 私は狩りも楽しみに来たんだ。二人の邪魔はしたくないから、な?」

「わ、私達のことを気遣ってくださるなんて、なんと御優しい……。さすがは至高の御方。しかし、」

「い、いいからいいから」

 モモンガやウルベルトならばもっと上手く切り抜けただろうかとも思いながら、たっちはメイドの言葉を遮る。

「コキュートス、二人に協力を。あと、もしものことがあればだが、ナザリックに撤退して救援要請をしてくれ」

 そう言うとたっちは、さっとアウラとマーレの元へと歩みだした。

 そうして、たっちとアウラとマーレ、それからコキュートスとソリュシャンとナーベラルは各々の目的のために動き出したのであった。

 しかし、巨大な牛が知能を持たないことは即刻分かったため、たっち達の興味はあっという間に人為的に造られた円形の窪みへと移る。

 いくつかの窪みを通り過ぎ、それからちらっとたっちは背後を伺う。たっちはメイド達が突っ立ってこちらを見詰めてなどいないだろうかと懸念していたが、幸いそのようなことはなくてホッとする。

 

「あの赤い鳥、綺麗ねぇ」

「私が魔法で撃ち落としましょうか、ソリュシャン」

「ありがとう、ナーベラル。あっ、でも、それだと鳥が焦げちゃうわ。コキュートス様、申し訳ありませんが、お力添えをして頂けませんか?」

「ウム……、ソウシタイノハ山々ダガ、シカシ私ガ攻撃シテハ、アノ鳥ハ粉々二ナルノデハナイダロウカ」

「それもそうですわね……。困ったわ。狩りってとても難しいのね」

「ウルベルト様に贈る物にしては、脆弱すぎるかと思います」

「でも、今回はあくまで装飾品、羽根ペンの材料だもの。弱さには目を瞑ってあげましょう?」

「……気付カレズニ近付キ、鳥ノ脚ヲ酸デ溶カシ身動キヲ取レナクシテカラ、羽根ガ汚レナイヨウニ殺スノハドウダロウカ」

「素晴らしいですわ、その手でいきましょう」

「後は近付く方法ですね」

「弱イ生キ物ハ気配二敏感ダ」

「一気に近付き、逃げられる前に仕留めるしかないですわね」

「次ノチャンスガアルトハ限ラナイ……。慎重二イコウ」

 

 会話が聞こえないが何やら盛り上がっている様子に、たっちは微笑ましく思う。

「コキュートス達も楽しんでいるみたいだな。鳥の観察をしている」

「そうですね、たっち様!」

 良かった良かったと独り言を零してから、たっちは周囲をまた改めてぐるりと観察してみた。

「……どうやら、何発もここに撃ち込んだみたいだな」

「何発か撃って、それからこの窪地の真ん中にあのアイテムを転がしたのでしょうか。……一体何の意味が?」

「特に意味はなかったんじゃないかな。あのアイテムもそこまで貴重な物じゃないしな」

 たっちの視線の先では、“ダグザの大釜”の水バージョンと言ってもいいアイテムが窪地の真ん中に転がされていた。湧き出ているのはゲームと変わらず何の効果もない唯の水であろう。だからこそ対価なしに無限に水を出し続けるアイテムなのだから。当然そのため、レアアイテムではない。無限の水差しも持ってるなら不要と感じてもおかしくないアイテムである。

(森の奥でこんな攻撃を乱発……、大きな戦闘の記録も伝説もないとなると、試し撃ち、だろうか? ……プレイヤーが、ここに来ていたのか?)

 その想像は、悪くない仮説だとたっちは思えた。たっちも転移したばかりの頃には、自身が持つ装備とその力の確認をしたのだから。

(……独りだった、のだろうか)

 何やら黙り込んでしまった聖騎士を左右から不思議そうに覗き込むダークエルフの双子を見て、たっちは自身に問いかける。

(もしも、私独りしかこの世界にいなかったら……、その時は今のように、せめてこの世界は救おうと努力できていただろうか)

 その問の答えは、たっちには明確なものに思えた。

 誰か独りを救えても、世界は救えなかったのではないだろうかと、たっちには思えてならなかったのだ。

「あれ? あそこだけがらんとしてますね、何でしょう?」

「本当だ。ど、動物が、いっ、いないね」

 気になる場所を見つけてトテトテと奥へと駆け出して行った双子に、その子供らしさに微笑ましく思いながらもたっちは後を追いかける。

「こら、アウラ、マーレ、あまり離れるな。一応警戒しよう。私の後ろに居なさい」

 足を止めた双子の前に、彼らを庇う形でたっちは前に出る。

「……たっち様は、御優しいですよね」

「優しい、か。そんな風に振る舞えているのなら良いのだが……、それよりも、急にどうした?」

「たっち様は、怖い方なのかと思っていました。あのような宣言をされたから……」

「ぼ、僕も、僕達のこと、モモンガ様やウルベルト様のこと、お、お嫌いなのかと、思ったんです」

 思い切った言葉は発言者自身とその姉も傷つけたようで、双子は揃って暗い顔を俯かさせる。そんな彼ら双子のそれぞれのまだ小さな頭を優しく撫でてあげながら、たっちはこほんと一つ咳払いをした。

「……まあ、若干一名違うとも言い難い奴がいるが、それは置いといて。……私は、お前達のことを、皆を、仲間のことを、大切だと思っている」

 ぱあっと明るくなった純粋な子供達に、しかし騎士は毅然とした態度で事実を突きつける。

「唯きっと、愛してはいない」

 子供達の表情がころりと変わる。

 大切だけど、愛していない。

 矛盾するような言葉に、彼らはおろおろとするばかりだ。

「モモンガさんのように、全てを投げ捨ててまで盲目には愛せない。きっとモモンガさんは、ナザリックの皆が自殺する以外のことなら何だって、許してしまうだろう。だけど私は嫌なんだ」

 だからこそ私は傲慢だと悪魔に謗られるのだろうと、心の中で自嘲しながらたっちは言葉を続ける。

「正しくないこと、そうあらねばならないものが歪むことは、認められない」

 そうたっちが言い切るのと、轟音が轟いたのは同時であった。

「アウラ! マーレ!」

「はい!」

 その轟音原因究明よりも先に、たっち達は自分達に突っ込んで来たパニックになった様子の巨大な牛の一匹を躱す。

「大丈夫か!?」

「問題ありません!」

「た、たっち様は!?」

「こちらも問題ないが……、先ほどの巨大牛の様子が……」

 たっちは何故か動物が一匹も居なかった地帯に突っ込んで行ってしまった巨大な牛の様子を見て、警戒していた。明らかに、何か様子がおかしかったのだ。

 そこは少し離れていて植物で分かりにくかったが同じく窪地になっていたらしい。突進した巨大な牛は穴に足を滑らせ、ドスンと大きな音をたてた。そうして舞い上がった煙は何故か薄紫色で、それに取り巻かれた巨大な牛は何故か暴れ始め鼻息荒くし始めたのだ。

「! こっちに来るぞ! 構えろ!」

「はいっ!」

 先程までは無かった敵意と殺意を漲らせ、巨大な牛はたっちとアウラ、そしてマーレへと突っ込んで来る。

「様子がおかしいです、たっち様! たぶん、狂戦士みたいになっちゃって理性がない状態です! 調教できません!」

「それならば、切り伏せるだけだ!!」

 鞘から剣が抜き放たれ、そして騎士が鎧の重さを感じさせぬ跳躍をみせた。青空を背景に、赤いマントがはためき、そして剣の切っ先が煌めいた。

「《切断》!!」

 手加減し過ぎかというたっちの杞憂を嘲笑うかのように、巨大牛の首と胴があっさりと離れる。血飛沫の雨が、さぁっと通り過ぎた。

 先程まで生きていた肉体が土に倒れ伏し、その上に静かに聖騎士は降り立った。その白銀の鎧を、血で滴らせながら。

「……私が、死刑執行官になったのは、つまりこういうことだ」

「え……」

 唐突な言葉と、そして向けられた血濡れた切っ先にダークエルフの双子達がさあっと顔を青褪めさせる。

「自我もなく、唯意味もなく殺すだけの存在になってしまったら、それはもう“モモンガさん”ではないんだ」

 その切っ先が本当に指し示している場所が分かり、アウラとマーレは少しばかり気を緩めた。そして彼らは、先程まで近くで草を食むだけだった巨大な牛の生首に視線を遣る。

 確かに、正気を失ったその姿は唯の動物でなく、倒すしかないバケモノであった。

「……モモンガ様は、御優しいから、」

「……うん」

 意味もなく殺す行為、それがモモンガの好きではない行為であることは双子もよく知っていた。そして、そんなことを許し行うモモンガを想像したら、少し哀しくなることにも気付く。

「……たっち様も、同じ、ですか?」

「勿論だ。きっとその時には、モモンガさんと、それから嬉々としてウルベルトさんも私を殺しに来てくれるだろうな」

 巨大な牛の胴体から降りて血振りをしてから納刀し、たっちは少し離れた所から双子へと言葉を続けた。

「アウラ、マーレ、君達にとって私は認められないだろうが……」

 諦めの気持ちを抱いて言ったたっちの言葉を、しかし力強い声が遮った。

「至高の御方には、誰にも死んでほしくないです! だけど、優しくないモモンガ様を見るのも、嫌です。至高の御方が殺し合いなんて、見たくないです……!」

「……私もだよ」

 そんなものは一度きりで充分だと、俯くたっちは足音が聞こえ顔を上げる。

 アウラとマーレが、自ら血まみれのたっちの手を握り締めるのを見て聖騎士はハっとする。彼らは守られるばかりの子供でなく、守護者でもあるのだと。

「……アウラ、マーレ、これからもモモンガさんを、そして良ければ私も、君達が支えてくれないかな」

「ぼ、僕達が、ですか?」

「ああ、ナザリックの皆に、私達を助けてほしい」

「っ、は、はい……!」  

 にこやかに双子が返したところで、背後から慌てた様子のコキュートスとナーベラル、ソリュシャンがやって来る。

「たっち様、お怪我は!?」 

「申し訳ありません! 魔法に下等生物があそこまで驚くとは思わずに……!」

「シカシ、見事ナ太刀筋デ御座イマシタ……」

 銘々わいわいやって来た彼らの賑やかさに、たっちは思わず吹き出してしまう。

「私は大丈夫だ。それよりもっと大変なことがあるぞ」

 たっちの言葉に周囲はきょとんとする。たっちが指差す先には、ごろんと大きな首なし死体が横たわっていた。

「コレの血抜き作業だ。狩ったからには責任を持って使い切らないといけないからな。皆、協力してくれ!」

 たっちの依頼に、当然全員から了承の言葉が勢い良く飛び出てくる。

「これの作業が終わったら、鳥のハンティングだな」

「ありがとう御座います、たっち様」

「狩りというものは思っていた以上に大変で難しいのですわね、勉強になりましたわ」

「動物のことなら私に任せてよね」

「ぼ、僕も、頑張ります……」

 そうして彼らは、仕事と称して訪れた森での狩りというゲームを存分に遊んでからナザリックに獲物を携え帰還した。

 

 尚、その後に提出された報告書には、とても簡素に“めぼしい存在なし”とだけ書かれた物が提出されたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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