艦隊これくしょん -とある艦娘ノ戦い-   作:艦本式

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【第三話】

結局、第六駆逐隊が到着したのは次の日の、早朝だった

それに、仮転属報告だとか言って、日が昇ってない時間に叩き起こされたのだ

「こんな時間じゃなくても良いだろ…」

「なんでも、戦果報告もあるからだってよ」

叢雲は全く眠そうにせずに、桟橋に向かっていた

桟橋には、横須賀鎮守府から臨時転属してきた、第六駆逐隊がちょうど桟橋から上がったところだった

「司令官だね?第六駆逐隊、只今リンガ泊地に到着したよ」

未熟な体だが、その闘志は無限大。白い髪に常に眠そうな目をしている

ぱっと見、ただの少女だが、立派な駆逐艦なのだ。それも、駆逐隊の中でもトップレベルである

彼女の名前は響。第六駆逐隊の司令駆逐艦でもある。司令駆逐艦とは、駆逐隊を率いる役職の事だ

第六駆逐隊には、他にも暁、雷、電の三人もいる

横須賀鎮守府の中では、もう一つの駆逐隊とトップ争いをするぐらい技量がある

「第六駆逐隊か。君が確か…響だな?」

「その通りだよ。とりあえず戦果報告する。敵前衛部隊と交戦。重巡リ級一隻、駆逐艦ロ級二隻を撃沈。その他に軽巡ト級に損害を与えた」

「そ、そうか。良くやったな」

正直言って、よく分からない。それが良いのか悪いのかなんてな…

だが、敵にそれだけ損害を与えて、彼女らは無傷なのだから流石としか言えない

「もっと褒めてくれても良いのよ?」

そう言って近付いて来たのは、同じ第六駆逐隊の雷だった

「えーと、よく頑張りました!」

「そうじゃ無くて、具体的に言えば頭撫でるとかよ」

頭を撫でるだって?俺は独身だし、子供なんて相手にした事無い。そんな事を出来る訳無いだろ…

「うちの司令官はしてくれるのよ?…もしかして嫌なの?」

嫌な訳無い。なんならしてあげたいのだが…

「あー、こいつは着任したばかりでね、艦娘の扱いがよく分かってないのよ」

叢雲がフォローになってないフォローをしてくれた

まぁ、こいつ呼ばわりした事は忘れないがな

「その通り。着任したての素人だ。お前達には迷惑を掛けるだろうけど、よろしく頼む」

「うちの提督が迷惑掛けるわね。まぁ…そこは許してあげて」

何も言えない自分が情けなかった…

とりあえず、仮転属報告を聞いたので、朝食にするとしよう

「おはようございます。隊長殿」

「多分、そう呼べって教わったのだろうけど、提督か司令官と

呼んでもらえるとありがたい」

あきつ丸は、前のリンガ泊地の提督が退役すると、しばらくは横須賀鎮守府に居たのだが、陸軍の方から呼び出され、そこで訓練を受けていたらしい

「前の隊ちょ…司令官殿も同じ事を言ってたのであります」

あきつ丸は、釜戸の火を調節しながらそう言った

「ここには、一等士官室(ガンルーム)が無い。野外設営してある、炊事施設が調理場で、その隣のトタンで出来た屋根の下が仮食堂だ」

一等士官室(ガンルーム)が無い訳でない。ある事にはあるが、肝心の炊事施設が設置されてないのだ

その為、前は駆逐艦寮まで食事を運んで食べていたらしいが、最近になって、仮食堂が出来たらしい

なんでも、前に仮転属という名の休暇で訪れた、とある駆逐隊が、退屈しのぎに製作したらしいのだ

「それと、駆逐艦寮は一部屋しか無いため、四人で雑魚寝してもらう事になる」

第六駆逐隊の面々は、それぞれドラム缶を曳航して来ている

その中身は、衣類や生活雑貨などが詰まっていた

前までは、定期便が来ないときに、仮転属で訪れる駆逐艦が食料を詰めたドラム缶を曳航して来てもらうのが唯一の手段だったのだが、今は建築資材などを運ぶ輸送艦や、補給艦などが定期的に行き来している

そのおかげで、こんな僻地でも食料問題は特に無かった

「さて、こんなものでありますかね」

あきつ丸が手早く朝食を作り終えた

「こんな南方だと、冷える事はありませんが、どんな物でも出来たてが一番であります」

駆逐隊総出で、朝食をテーブルに運んだ。どうやら本人達は、これが楽しいようだ

「司令官と食事だなんて久しぶりだわ」

「そうだね。私も久しぶりだよ」

雷と響は楽しそうだったが、残りの二人は、どうやら馴染めてないらしい

「(確か、電と暁だったっけ…)」

書類に書いてあったはずの名前を、なんとか思い出した

「(とは言っても、どっちがどっちなのか分からない…)」

響と雷の場合は、当てずっぽうだった。つまり勘だ

「その様子じゃ、名前と顔が一致しないんでしょ? 仕方ないわね。第六駆逐隊はまず、自己紹介かしらね」

叢雲ってもしかして心読めるのか?

「そうでありますな。互いに交流を深めるのは良い事であります」

「自己紹介? 私は雷よ。かみなりじゃないわ。困った事があれば言って頂戴。出来る事はなんでもするわ」

この、母性溢れる駆逐艦が雷だ。ちなみに横須賀鎮守府の提督とは一応同期だが、階級はあちらの方がはるかに上だ

理由は簡単で、あいつには才能がある。そうでもないと、鎮守府勤務など出来ない

話が逸れたが、あいつは雷などの少女に頭を撫でられると、なんでもしてくれるらしい

まぁ、たまに空母や戦艦の方にも甘えに行くらしいがな

「私が響だよ。よろしく頼む」

白い髪に、その表情は何を考えているか分からない。だが、立派な駆逐艦であることには変わりない

「次は私の番ね。暁よ。一人前のレディなんだから」

自称レディの暁だ。本人は一番お姉さんとか思ってるらしいが、俺から見ると大して変わらない

とは言っても、彼女も艦娘なのだ。見た目だけで決めつけてはいけない

「はわわっ、電の順番なのです」

この、危なっかしい娘は電で、雷と容姿が似ている

まぁ、同型艦だから当たり前なのだが。気弱そうな見た目に、危なっかしい行動。本人は分かってないようだが、かなりのおっちょこちょいだ

見てるこっちが心配になるレベルなのだ

「こんな小さい娘を戦わせるとは上も非常識だな」

「戦いに常識とか非常識なんて無いでしょ。それに、艦娘は一応志願制なんだから」

「私は上官殿の命令でしたけど、後悔はして無いであります」

あきつ丸は志願した訳では無いのか。それに、叢雲の言っている事は正しい

本人達は自ら艦娘になる事を選んでいるのだ。理由はどうであれ、艦娘である事には変わりない。そして、人類の救世主である事も

「司令官さんは自己紹介しないのです?」

俺は自己紹介する必要あるのか?

「えぇ…と、リンガ泊地に着任したばっかりだ。司令官とでも提督とでも好きに呼んでくれ。横須賀の奴とは一応、海軍士官学校の同期だ」

「鎮守府勤務の提督と同期って事は、ほとんど昇級してないのね」

叢雲の言ってる事は間違ってない。だからこそ傷付くな…

「…そうだ。見ての通りかっこ良くも無いし、才能も無い。だから大尉までしか昇級してないんだ」

「まぁ、才能が無い事は置いて、どうして提督なんかに?」

叢雲がやけに質問してくるな

「志願した訳じゃないんだが、上層部が異動の辞令持ってきたからだな…」

「やりたく無いなら辞めれば?」

退役か…悪くは無い話だが、今のところは考えて無いな

「今は退役する気は無い。それに、知らない世界を知れて意外と楽しいからな」

これは本当だ。海軍にはなんの希望も持っていなかったが、こうして知らなかった事を知るのは悪くは無い

「楽しい…ね。良い事ばかりじゃないのよ?」

そんな事は知っている

「だからこそいろんな事を知っておきたい。それに、良い事ばかりじゃないのは、軍に入った時点で百も承知だ」

「もしかしたら横鎮の提督よりまともかもね」

こんな時間がずっと続けばいい。俺は心から願った。こんな幼い女の子に戦わせるのは辛かった

だが、戦いに情けなどない。深海棲艦は艦娘を沈めようと全力で潰しにくる

こんな事を考えていたらあっという間に時間が過ぎた

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