「第六駆逐隊は?」
「夜戦訓練しに行ったわよ」
俺は桟橋近くの船舶用の岸壁に腰掛けていた。隣には釣り道具を持った叢雲も一緒だ
俺がここに来てから早くも一日が経とうとしている
「釣り好きなのか?」
「ここが暇過ぎて、前の提督の釣りによく付いて行ったら、いつの間にか出来るようになったのよ。だから、私は暇になるとこうやって釣りしに来るのよ」
「へぇ…俺も海上勤務のときはたまに釣りしてたなぁ…」
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これは、俺が海防艦で近海の滅多に深海棲艦が出ない海域を航行中の話だ
珍しい事に、水中聴音機(パシッブソナー)に反応があって、警戒体制を取っていたら、船尾のすぐ近くに敵潜水艦が浮上したんだ
俺は慌てて、近くにあった9mカッターのオールでそいつをぶん殴った
そのまま沈んでいったが、撃沈はしてない
だが、その騒ぎのせいで近くにいた敵艦隊に気が付くのが遅くなってしまった
俺の乗っていた海防艦はあっという間に囲まれた
救援を呼ぶにも無線が破壊されてしまい、絶体絶命だったそのとき、助けは来た
付近を航行中だった駆逐隊が駆け付けてくれたのだ
その駆逐隊のおかげで、海防艦はなんとか沈む事なく港に戻る事が出来た
あのときの事は感謝してし切れない
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そんな事を暇だったから叢雲に話した
「その駆逐隊はどこ所属とか分からないの?」
「分からないな。なんせ、今ほど艦娘に詳しい訳じゃないからな」
今も大して詳しい訳では無い
「それにしても、本当に釣り上手いんだな」
小一時間ほど釣りをしていたが、叢雲の持ってきたバケツは魚で一杯だった
「さて、夕食の材料も揃った事だし、そろそろ準備をしなきゃね」
空は星がはっきり見えるほど暗くなっていた
「やっぱり都会とは違うな。こうやって星空を眺めるのも悪く無い」
「いずれ飽きるわよ。ここなら星空なんて死ぬほど見られるんだから」
「でも、こうやって叢雲といつまで眺めてられるか分からないんだぞ?」
そう、叢雲も秘書艦とは言えど艦娘なのだ
ましてや、ここリンガ泊地は所属艦艇が少ない
いつ叢雲に出撃命令が出るか分からなかった
それが明日なのか、明後日なのかは誰にも分からない
「…そうね。私もずっとこうしてたいわ」
「なんか言ったか?」
「…なんにも言ってないわよ」
そのまま叢雲は早足に泊地庁舎に戻って行った
…俺なんかしたっけ?
「ま、待ってくれ…」
叢雲が持ってるランタンが唯一の明かりなんだから、なんにも見えなくなる…
庁舎に戻ると、既に第六駆逐隊は帰投していて、あきつ丸と夕食の準備を進めていた
「今日は大漁ですな。余ったら干物にでもするのであります」
「暁、魚ばっかり飽きたわ…」
「あら?私は美味しいから構わないけど?」
「雷はいいかもしれないけどさぁ…」
「暁はレディなんでしょ?これぐらい我慢しなさいよ」
「うっ…そ、そうよ、暁はレディだもの。これぐらい我慢出来るわ!」
こう見てると、雷の方がレディな気が…
「そう言えば、こっちのお肉美味しいわね。なんのお肉なの?」
あっ、それ言うと暁泣くぞ…
「内地の方では無いでありますか。これは蛇の肉であります」
「………え?」
「この肉は蛇肉であります」
わざわざ二回言わなくても…
「へへへ蛇!?……これが?」
第六駆逐隊全員が箸を止めた。いや、響だけは黙々と箸を動かしていた
「蛇肉は淡白で美味しいね」
「新鮮じゃないと臭みが出てくるので、素早く捌く必要があるのですよ」
あきつ丸と響はそんな会話を交わしてる
響、他の僚艦はどん引きしてるぞ…
「この周りには蛇がうようよいるのよ。あなた達小さいから食べられちゃうかもね」
叢雲はからかうなよ…
「ひっ…た、食べられちゃうの?」
「安心しろ、流石に部屋までは来ない…だろ?」
「司令官の言ってる事なんて信じられない!」
あれ?俺ってそんなに信用されてないのか?
「ふふっ、嘘よ。食べられはしないけど、この周りにうようよいるのは本当だからね?」
「と、トイレはどこにあるの?」
暁はトイレの場所を聞いた。怖くなったから行ける場所にあるのか心配なのだろう
「泊地庁舎の中と、駆逐艦寮の中だけね。一人でいける?」
「い、行けるわよ!暁はレディなんだから!」
そう言うと、暁は立ち上がった
「あれ?食事中にトイレ行くのはマナー違反じゃないのかい?」
響、お前もか…駆逐隊ってこんなに煽る奴が多いのか?
「き、緊急事態だから良いの!」
あーあ、走って行ったけど大丈夫かなぁ…
「ぴゃぁーーー!!」
「あら、自称レディさんの悲鳴ね。お化けでも出たのかしら?」
「やれやれ、暁には私が必要だね」
「私も付いて行ってあげる」
響と叢雲は駆逐艦寮に向かった
「はぁ…暁はどこに行ったのよ」
「私にも分からない」
トイレ見たけどいないし、寮の中には見当たらなかった
「という事は…外か」
「その通りだね。早く探そう」