ー金山丈ー
狂犬、加東秀吉は強かった。…わしが、…わし等が思っている以上に。純粋に力だけで見たらわしの圧勝、しかし心っちゅーか何ちゅーか…。こなくそっ!! っちゅー気合と根性にわしは脱帽。殴っても殴っても向かって来おるし、その目に宿る熱い闘志にこのわしが一瞬でも怯んじまうとはのー。
殴って勝利を確信したのに立ち上がっては蹴りを一撃じゃ、…その一撃でわしの身体はもう体力がのー。最後の力を振り絞って殴ればクロスカウンター、互いにぶっ飛んだわけじゃが…。わしに起き上がる気力はのーなって、雨雲を見上げているだけ。横目でみりゃー秀吉は立ちおって、…凄いやっちゃのー。
…あの日、光信に呼び出されて苦言を言われた時。その時には既に折れとったのかもしれん、駆け足で鳳仙に君臨しとったわけじゃからのー。わしなりに気張ってここまで来たけー、何も分かっちょらん下の者に言われたとなっちゃーのー。しかも色々とあったが共に来た光信を中心にじゃけー、そりゃー折れるっちゅーもんじゃ。
しかし何ちゅーか、…肩の荷が下りたとでも言うんかのー。清々しい気分じゃけー、…もう何も考えとーない。もう三年じゃけ…気張る必要ものーなったわけで、……もういいわな。月光兄弟の時代になるけー、…兄弟力を合わせて鳳仙を守り立ててのー。
…雨が、………雨が心地好いなんてのー。…初めて知ったわ。
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ー月本光政ー
壮絶なタイマンは両者ノックアウトと思ったが、鈴蘭の狂犬が立ち上がってボスは……。俺が九里虎の次に強いと思っていた金山丈が、鈴蘭の狂犬…加東秀吉に負けた。何かの間違いだと言いたいが、先程のタイマンに魅せられた者としては認めざるを得ない。
ボスはタイマンの最中も力強く、この男こそが鳳仙の大将だぞ! と胸を張れる程の人。対する加東秀吉は、名を大きく売ってはいるがそれだけ。ボスにも、同じ鈴蘭のゼットン、その他大勢にも劣る男だと思っていた。…なのにその男の気合は、…根性は誰よりも気高く見えた。…狂犬加東秀吉、…カッコいいぜ!
……そういえばボスが言ってたっけな? 『鈴蘭の奴等をよー見とけーよ。』って。…何でそんなことを言ってきたのかと思ったが、うん…よく分かったぜ。ブッチャーと黒澤? ってーのはまー悪くないが、それ以上に月島花、龍光寺由紀也、加東秀吉、…スゲー男達がいやがる。自分自身を張って生きるには、鈴蘭という大きな壁があるってな。
俺も負けねーように男を張らなきゃならねー。……鳳仙の番長でも目指してみるか?
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ー氏家純ー
ジョーが負けた、…秀吉なんかに。どーいうことだよ! 松尾に始まり真島、光義、光信と続きジョーまで! 五戦五敗…全敗だなんて!!
あり得ねー、…あり得る筈がねー! たかが鈴蘭、鈴蘭如きに手足が出ないなんてよー!!
…そもそも中島に立会人を任せ、五対五のタイマン勝負ってことを宣言させたことが間違っていたんだ。そんなもんより総当たり…、鳳仙の全てでぶつかれば負ける筈がねー! 俺達は殺し屋鳳仙だ、…数でぶつかってこその鳳仙なんだ。……タイマン勝負なんざクソ食らえ!!
「……こんなタイマン勝負なんざ関係ねー! 五対五もクソもねー! 全面戦争をしてこその決着だ! …お前等、…行くぞーーーっ!!!」
そう声を張り上げて叫べば、後ろの奴等も俺に続いて…、
「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」
叫び声を上げて走り出す。…それでこそ鳳仙! 覚悟しろや、…鈴蘭!!