ー龍光寺由紀也ー
喫茶ブライアンに連行された上で話を聞けば、…銭屋の奴等が関係者も含めて約五〇人で来るとか来ないとか。迷惑極まりない、速攻でお帰り願いたいと思うのは俺だけか? 明のバカはやり合いたいとか言ってるし。…やり合うやり合わないの前に理由を知りたいんだが? 俺の気持ちを察してくれたのか、将五の奴がイレズミ君に理由を聞く。
聞かれたイレズミ君は感情的になりながらも語ってくれた、…内容はなかなかにヘビーだったが。…とにかくこのイレズミ君、いや…千春はやんちゃではあるが真っ当な良い男ってなわけだな? こりゃーアレだ、銭屋が来ても渡すわけにはいかねーってヤツだ。
千春の話を聞き重くなる雰囲気、そんな中で俺は、
「銭屋の奴等が来ても粉砕すりゃーいいだろ、…六代目的にはそんな感じじゃねーか? …もっとも、鉄生さんを含めた上の者は熱いからなー。大阪まで行くかも知れねーぞ? ドスケンのおっさんの所までよ。」
と言えば明と金は笑い出し、千春とそのツレがきょとんとする。そこに将五が、
「…とにかく、六代目を張る俺の兄貴達は頼りになる男達さ。任せておけば悪いようにはならないぜ!」
と断言すれば、千春とツレの二人にも笑みが浮かんだ。
…結果的に言えば銭屋との抗争は回避された。やり合っても構わねーと考えていた鉄生さん達だったが、相手側の副総長が現れて謝罪してきたから水に流したんだと。千春があっちでやらかしたことも解決に向かっているとのことで、今日の内に千春とそのツレが帰ることになった。
まぁ頑張れや…と激励してから帰ろうとすれば、他の奴等に気付かれぬように、
「由紀也はん、…月島花の居場所を教えてくれまへんやろか?」
千春がそう尋ねてきた。…コイツ、自由になった途端にやんちゃする気か。…俺が月島へ対象を変えさせた手前、…断るのもアレだから教えてやった。そーすりゃー、
「由紀也はん、おおきに!」
と笑顔で返してきたわけで。…悪い気がしねーけど、輝くばかりの笑顔を向けられてもなー。…男にさ。
………帰ろうと思ったのにまた捕まった。せっかく将五達を撒いたと思っていたのに、
「鉄生と清広が
五代目幹部だった稲田源次、鉄生さんと義巳さんがいるらしい場所まで乗せろとかって! どうせガソリンが勿体ないとの理由だろ? …本当にドケチな人だよな、…このおっさんはよ!
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河原でやり合う二人を橋の上から見る俺達。この場には俺と源次さんの他に、五代目の甲斐泰典と六代目の戸川将太もいた。その四人でやり合う二人を見ていれば、源次さんは切なそうにタメ息を吐いている。暴れ足りないこの人は二人を羨ましく思っているんだろう、…解散理由がアレだもんな。…仕方がないっちゃー仕方がないとは思うけど鬱陶しい、泰典さんと将太さんも苦笑しとるし。
そんな中で俺は将太さんに聞いてみた。
「…将太さん。…あの二人のどっちが
と言えば、将太さんは苦笑しながら…、
「…どっちが
とか抜かしやがる。
「…だから俺は武装のメンバーじゃないっつーの! 何なんスか…、アンタ達は!!」
と文句を言えば、俺以外の三人は笑い出す。何なんだよ、…本当に。