…と行きたいが、忙しい!
ー龍光寺由紀也ー
…色々と騒ぎがあったものの、遂にこの鈴蘭も卒業式の日を迎えた。そんな目出度い日に俺はというと、
「…大学入試に何故体育がないんだ! 分数がこの世にあることも意味不明だよ!!」
ゼットンに呼び出されて愚痴を聞かされていた。勉強…特に算数・数学についてガタガタ言っとる、そしてモノに当たる様は何とも情けない。近くで白目を剥いているアクツ…だっけ? …八つ当たりを食らったんだろう、可哀想に。
…愚痴が一段落したようだから言っとかなきゃならん、祝いの言葉にってヤツをよ。
「…くだらねー話題は置いといて、ご卒業おめでとうございます。」
という言葉を贈ったら怒鳴られた。くだらねー話題ってーのはやはりマズかったかね?
その後もグチグチと何かしらの文句を言い出すゼットン、…それを聞きながら落ちるんだろうなーと確信する俺。やや哀れみの籠った視線をゼットンへ向けていると、
「………そういえば、秀吉達がいねーな。由紀也、アイツ等が何処に行ったか知ってる?」
周囲を見回しながらそう聞いてきた。…そりゃー情報を流した張本人だからね、知っているわけよ。しかしながら、
「あの人達が何をやっているのか、…俺が知るわけねーでしょ。…つーわけで、俺もやることがあるんで失礼させて貰いますわ。」
教えるわけにはいかんでしょ、内緒にするって約束をしたしな。…しつこく聞かれるのも面倒だしここから立ち去ろう、…と思ったら逃げられなかった。…その
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ゼットンの愚痴にウンザリしていた所、白目を剥いていたアクツが目覚めた。目覚めたばかりの彼に目線でどうにかしろと訴えれば、それを察したっぽいアクツが懐から一枚の写真を取り出す。ゼットンと共にそれを覗いてみれば卒業する顔役の六人が…、いつもの五人の他に野間先輩も入っとる。そんな写真をゼットンは目を細めて懐かしみ、鈴蘭の校舎を見上げて何かを思い出しているようだった。そんなゼットンの姿を俺は、アクツと共に見守るのであった。
写真を見た後のゼットンは愚痴を止めた、その代わりに聞き応えのある思い出話へ。伝説の男? と言われている坊屋春道の話で盛り上がっていると、タイミングが悪いことに秀吉先輩達が戻ってきた。…良い所だったのに! そのせいでゼットンが話を切り上げちまった! 内心ガッカリしている俺とアクツを余所に、
「…お前らーっ! 式にも出ねーで何やってたんだーっ!! …って何だその手に持っているバットは!?」
と叫ぶゼットン。式に出ないでずっと愚痴っていたお前が言うな、…と心の中でツッコミを入れておく。まぁそれはいいとして、バットを片手に晴れ晴れとした顔の先輩方。程よく暴れてスッキリした、…そういうことだろう。
ゼットンが五人の輪に入り、何やら盛り上がっているようだが一人だけ。…その中の一人だけは黙って校舎を見上げている、…秀吉先輩だ。それに気付いたマサ先輩も一緒に校舎を見上げ、続いて他の先輩方も同じように見上げる。
「………卒業か。」
秀吉先輩の発した一言、その一言にどれ程の想いが詰まっているのだろうか? この俺には分からない、勿論隣にいるアクツにも分からないだろう。この鈴蘭から飛び立とうとしている男達の後ろ姿、それを俺とアクツはただ見守るだけ。…今日は見守るだけだなー、俺もアクツも。
先輩方全員が見上げる状況、それをいち早く終えて振り向いた秀吉先輩が晴れやかな笑みでこう言った。
「俺はこの鈴蘭でお前達に出会えて本当に良かったと思っている、色々と…本当に色々と世話になった。…ありがとな!」
心から言ったであろう言葉にゼットンが感動の涙を流す。他の先輩方は泣かないがジーン…と来るものがあるようだ、ついでに俺とアクツはジーンと込み上げるものがある。…今日という日を忘れることはないだろう、…卒業する先輩方に幸あれ!
さぁ後はそれぞれの道へ進むだけ、…と行きたい所だが、
「…先輩方、まだ解散するには早すぎますよ。」
俺は彼等にそう言って立ち止まらせた。? を浮かべる先輩方に俺は笑みを浮かべ、
「
と言えば大袈裟に喜び出す。ついでにもう一言、
「…将来
この一言で喜びが一転、嫉妬によって秀吉先輩を追っ掛け回すマサ先輩以下モテない野郎達。それを見て笑う俺と野間先輩、因みについでだからアクツも参加すればいい。
ハッハハハハ! 今日は本当に良い日だぜ!!