フェアリー・エフェクト(完結)   作:ヒョロヒョロ

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誤字報告ありがとうございます!
ここのところ時系列が迷子なのは、同時に発生した複数イベントを、筆がのって書き終えた分から上げてった結果です。
わかりにくくて申し訳ない!

【前回のあらすじ】
おめかしした少女に「似合ってる」の一言もない残念な至高の御方々は、ナザリックの独立を決意した!


新妻少女、動揺する

 昏睡から目覚めた翌日の夜。ルイは、第六層での晩餐会に招かれた。

 晩餐会とはいうものの、メニューは割とジャンクで、マナーもラフなもの。ホームパーティー、という方が近いだろうか。

 ホストは階層担当の双子。ゲストはルイとシャルティア。パンドラズ・アクターも誘われていたが、仕事の引継が発生したため欠席となってしまった。

「ルイさんっ……元気になって、よかったですっ……」

「ああぁ~、ありがとうございますっ、ご心配おかけしました!」

 会うなり泣きそうになったマーレの様子に、ルイはあわあわと礼と謝罪を述べる。

「こら、マーレ、泣かないの! ルイが困っちゃうでしょ」

「チビ、いっそルイは少し困らせて、懲らしめてやった方がいいでありんす」

 弟を叱るアウラに、シャルティアがつんとした表情で言い放つ。

「どうでもいい人間を助けるために、自分が倒れてちゃ世話ありんせん! よーく、反省するでありんす!」

「は、はい……すみません……」

 真っ当なお説教に、ルイは縮こまって謝るしかない。

「まったく……素直に心配したって言えばいいじゃん。倒れたって報せの直後、一番動揺してたのは誰だっけ?」

「──う、うるさいでありんすよ、チビ!」

 アウラの言葉に真っ赤になるシャルティアの様子に、騒ぎを起こしたことで嫌われたわけではないと悟って、ルイはほっとした。

 見た目年下のこの三人を、ルイは友達だと思っている。

 見た目年齢だけならメイド達にも近い人はいるのだが、どうしても恭しい態度を取られてしまって、友達という感じになれない。

 その点、守護者たちは割と気安くルイと接してくれるのだ。

 同性のアウラとシャルティアは、トブの大森林の調査に出るまで、よくかまってくれたし、マーレとも【巻物(スクロール)】の灌木の件で親しくなった。

(──パンドラさんにも言われたけど……もっと自分のこと、気をつけよう)

 自分に何かあったら、きっとこの優しい三人も傷ついてしまう──ルイは改めて決意した。

 その後の晩餐は、主にアウラとシャルティアの息のあった掛け合いで盛り上がり、いよいよお開きという段になって、シャルティアが思い出したように何かの包みを渡してきた。

「快気祝いでありんす。夜寝るときにでも使いなんし」

「わあ、ありがとうございます!」

 受け取るルイの隣で、アウラがちょっと変な顔をする。

「ねえ、それ──」

「──おや? まだご歓談中でしたか?」

 何やら言い掛けたタイミングで、迎えに来たらしいパンドラズ・アクターが顔を出した。

 シャルティアがにっこり笑って、

「いえ、今ちょうどお開きになったところでありんす。──ルイ、よい夜を」

「はい、おやすみなさい」

 アウラとマーレとも挨拶してから、パンドラズ・アクターと共に、宝物殿の奥にある自室に戻った。

「おかえりなさい、ルイ殿」

「──あ、はい、ただいま戻りました」

 柔らかな笑みを含んだパンドラズ・アクターの声に、ルイは思わずはにかむ。

 殆ど意識がなかったためあまり実感がないが、昏倒してからは看病の関係で第九層の客間で寝かされていたため、ルイがこの部屋に戻るのは実に数日ぶりのことなのだ。──それ故の「おかえり」なのだろう。

「──ところで、その包みは?」

「あ、シャルティアさんが快気祝いにって下さったんです。──寝間着かなぁ?」

 あの台詞と包みの感触からして予測をつけていえば、パンドラズ・アクターは「これはうっかり!」と手のひらで自身の額を軽く叩いた。

「装備は整えましたが、休む時の服までは用意していませんでしたね! シャルティア殿のお気遣いに感謝しなくては」

 ですね、と頷いて、さっそく使わせて貰おうと包みを開き──

 寝間着──というより、ひどく扇情的なデザインの夜着が出てきて、ルイは思わず固まった。

「……っ!?」

「──没収ッ!」

 パンドラズ・アクターが引ったくるようにソレを回収し、速攻でアイテムボックスに放り込む。

「……あんのエロ吸血鬼が……ッ! ──失礼。ルイ殿、今見たモノは忘れなさい。あとで私から返しておきますから」

「は、はい……」

 一瞬荒れた口調をすぐに正し、生真面目な口調で言うパンドラズ・アクターに頷くも──ルイはかなり動揺していた。

(──今の……今の服って……()()()()……)

 明らかに女性が男性を誘惑する類の衣服であり──

(……そ、そうだ、私、パンドラさんと()()だったんだ……!)

 彼が普通に家族として、兄のように接してくれていたものだから、すっかり頭から抜け落ちていた事実を、思い出してしまった。

(──っていうか、これから一緒に寝るの!?)

 小妖精形態だったこれまではよかった。パンドラズ・アクターの枕元におかれたクッション入りの籠が、ルイの寝床だった。

 だが、今のルイは人間の姿で、小妖精の姿に切り替わることも出来ないのである。

 広々とした作りの寝台なので、人型が二人並んで寝るくらいは余裕だが──それは、何というか、()()()()()()になってしまうのでは?

 意識してしまったルイは、顔に熱が集まってくるのを自覚する。

「……ルイ殿?」

「えっ、あっ……そのっ……」

 パンドラズ・アクターが気遣わしげな声をかけてくれるが──それにも、混乱してまともに応えられない。

 視線すら合わせられずに俯くルイに、しばしして納得したような呟きが届いた。

「──あぁ……身体によって意識が変わる、というのは、こういうところにも出るんですね……」

 それから、パンドラズ・アクターは、俯くルイの前にしゃがみ込むと、視線を合わせて告げた。

「ご安心を、ルイ殿。我らドッペルゲンガーは、生来、性別を持たない種族ですから」

「……え?」

 言われた意味がうまく飲み込めず、きょとんとなったルイに、パンドラズ・アクターは、穏やかな声で説明してくれる。

「私は、モモンガ様の“息子”として、人格は男性寄りになってはいますが──この身体自体は、男でも女でもない無性のものです。当然、男性としての機能もありません」

 ──言外に、ルイが想像したようなことは、そもそも()()と言われ、ルイは別の羞恥で真っ赤になった。

「──あああぁぁ、すみません! わ、私、勝手な想像でパンドラさんに失礼なことを……っ!」

「いえ、年頃の女性として、至極真っ当な危機感です。むしろそれは大事にしてくださいね。ルイ殿は、ちょっと無防備過ぎるところがあります。私はともかく、他の男性の前で不用意な隙を見せてはダメですよ」

 めっ、と小さな子供相手のような調子で言い聞かされる始末である。

「お返事は?」

「……はい、気をつけます……」

「よし」

 両手で顔を覆いつつも、か細い声でそう答えたルイに、パンドラズ・アクターは満足げに頷いたようだった。

「──では、就寝用の衣服を見繕ってきますので、ちょっと待ってて下さいね」

 言うなり、宝物殿の方に向かっていったパンドラズ・アクターの背を見送って、ルイはヘナヘナとその場にしゃがみ込む。

(──恥ずかしい……すごい恥ずかしい……ッ!)

 色んな羞恥で、ルイの脳内はもうしっちゃかめっちゃかだった。

 

 その後、パンドラズ・アクターが随分と時間をかけて戻ってきたことに、おそらくは自分が落ち着くための時間をくれたのだと悟り、

(……本当に優しいなぁ、パンドラさん)

 ()になった相手がこのヒトでよかったと、ルイは心底、数奇な巡り合わせに感謝したのだった。




パンドラは紳士です。妻に嘘などつきません。
擬態で“男性体”になれることを言わなかったのは、余計に混乱させないようにという、純粋な気遣いですとも。
騙して無理強いなんて考えてもいません。ただ、いつかルイが子を望んだり、そういう行為に興味を抱いた場合、それは当然“夫”の役目だとは思ってますが、ね。

<おまけのユグドラシル時代>
ナザリック第三階層
モモンガ「で、この子が、例のペロロンチーノさんの嫁です」
ルイ「わぁ! 映像で見るより綺麗です!」
シャルティア(私は、ペロロンチーノ様の嫁だった!?)
このやりとりを覚えているので、この世界線のシャルティアはモモンガ様に求愛しません。ペロロンチーノ様一筋です(なお、百合は別腹)

ナザリック第六階層
モモンガ「えーっと……ズボンの方が姉で、スカートの方が弟です……」
ルイ「なるほど~、健康祈願と魔除けの異性装ですね!」
モモンガ「えっ、なにそれ」
ルイ「新しい命を育む女性を生命力の象徴に見立てた上で、女装させて健康長寿を願ったり、可愛い女の子が悪い魔物に狙われて浚われないように、男の子の格好で育てて魔除けにしたりする風習があったって、おじいちゃんから聞いたことがあります!」
双子(そういうことだったんだ!)
この服装が、紛れもなく創造主の愛の証だと知る(なお、ぶくぶく茶釜さんにその知識があったかは不明)

ユグドラシルでのナザリック巡りで、こういうイベントを起こしてるので、ルイはわりと守護者に好かれてます。
シャルティアのプレゼントは、100%好意(自分が貰って嬉しいものあげただけ)
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