体調よろしくなくて、若干スランプ。申し訳ない。
【前回のあらすじ】
シャルティア「プレゼントでありんす」
ルイ「!?」エッチな服に赤面
パンドラ「エロ吸血鬼自重して!」
「──モモンさん、これまですみませんでした……」
「えっ?」
ニニャの謝罪に、モモンは何を謝られているかわからない、という顔をした。
──あの野盗討伐から5日間、モモン・アクト父子は行方知れずだった。
盗賊達からの聞き取りで、逃げた用心棒が
つい先刻、モモンがアクトとは別の人間を伴って帰還した際も、もしや、と嫌な想像がよぎったものだ。
しかし、ニニャのその想像は、いい方向に裏切られた。
アクトは、モモンより一足先に故郷への帰還を果たしたのだという。
モモン・アクト父子が、マジックアイテムの暴走で
モモンたちが帰還方法を探しているのと同様に、故郷の方でも彼らを連れ戻す方法を模索していたらしい。
そして、故郷の者が
エ・ランテルに戻ったモモンが連れていたのは、文字通りアクトの
位置交換の儀式のごたごたで結局ブレインを逃してしまったと、肩を落として報告するモモンに、冒険者組合の人間は頬を引き攣らせていた。──それは彼の失態を責めるものではなく、故郷での彼の素性を想像して胃を痛めていたのだろう。
儀式魔法を行使してまで帰還を望まれる、品のいい執事に仕えられるような血筋──上流貴族か、まさか王族か。
その推測に、ニニャも穏やかでない心地を覚えた。
ニニャは、大事な姉を権力でもって無理矢理攫っていった貴族を、心のそこから憎んでいる。
とはいえ、モモンの生まれがどうあれ、彼の人となりが好ましいものであることは間違いない。その評価を今更変える気はない。
問題はそこではなく──モモンの前でも、貴族への憎悪をことあるごとにこぼしていた自分の言動の方だ。
すべての貴族を十把一絡げにしたようなニニャの言動は、モモンにはどのように映っていたのだろう──そう思ってしまえば、思わず謝罪せずにはいられなかったのだ。
「……いえ、何でもないです、気にしないで下さい」
しかし、モモン自身が表立って明かしていない以上、その素性についてどうこう言うのも別の意味で失礼だと気付いて、ニニャはそう誤魔化す。
(せめて、これからはモモンさんの前で
モモンは不思議そうな顔をしていたものの深くツッコみはしなかった。
代わりに、気を取り直したように、穏やかな笑みで一礼して、
「──“漆黒の剣”の皆さんには、これまで大変お世話になりました。私は明日、エ・ランテルを発ちます」
「故郷への帰還方法がわかったんですか?」
ペテルの問いに、モモンは軽く頭を振った。
「いえ──下手に動き回るより、次の儀式が可能になる方が早そうで……でも、それだとセバスのように
モモンの言葉に合わせて軽く黙礼する老執事の姿に、ああ、と納得した。──彼に、モモン・アクトのように冒険者をやれという方が無茶である。
「王国戦士長の伝なら、執事としての勤め先も見つかるか」
「……むしろ、主人の格が試されそうであるな……」
ルクルットは納得したように頷いているが、ダインは懸念の呟きを漏らしている。──ニニャとしては、ダインの方に同感だ。
そうして、ひとしきり別れを惜しみ──翌日、モモンはエ・ランテルを発った。
──その数日後、ニニャは奇妙な夢を見た。
気がつけば、貴族の館にあるような立派な寝室にいた。
つめれば“漆黒の剣”全員が寝転がれそうな立派な寝台に、見覚えのある女性が一人、横たわっている。
「──姉さん!」
思わず叫んで駆け寄った。恐る恐る触れれば、温かな体温を確かに感じる。──幻ではない。
『似てるのでもしやと思いましたが、やはり貴女の姉でしたか』
「──誰!?」
どこからともなく響いた声に、ニニャは咄嗟に周囲を見渡すが、姉の他には誰もいない。
虚空から響く、男女も老若も不明瞭な声は、ニニャの戸惑いを余所に話を続ける。
『お姉さんを、返して欲しいですか?』
「そんなの、当たり前じゃないか!」
『じゃあ、貴女自身が持つもので、最も価値ある物を対価に下さい』
──咄嗟に思ったのは、これは悪魔の契約か何かなのだろうか、ということだった。
『あ、別に悪魔との契約とかじゃないですよ。ただ、貴女にとってお姉さんは大切な存在のようなので、それを対価もなしに引き渡すのは、かえって侮辱かと思いまして。──助けるのに、それなりに手間もかかりましたし』
「……助けた?」
『ええ。その人、“八本指”とかいう犯罪組織の違法娼館にいたんですよ。──見つけた時は、酷い有様でした』
ニニャは思わず姉の姿を見直した。──深く眠っている様子の姉は、傷一つなく健やかな顔色をしている。
「……治療してくれたの?」
『ええ。放っておいたら、死にそうだったので』
「……代わりに、僕の命を捧げればいいの?」
『いや、だから、悪魔の契約じゃないですから。命をどうこうする系の対価はいらないです』
──ということは、代わりに大事な仲間の命を寄越せ、という展開でもないようだ。
(自分や仲間の命の他に、わたしが持つ最も価値ある物……?)
そう考えて、はたと思い至った。
「──タレント?」
『はい、正解!』
ファンファーレのような音まで響いてきて、おちょくられているのかとも思ったが──
「……いいよ、あげる。それで姉さんを返してくれるなら」
『では、商談成立ということで』
商談だったのか、とツッコむより早く──そこで、ニニャの意識が反転した。
目が覚めたら、宿のベッドではなく、床に転がっていた。
(──寝ぼけて落ちた?)
しかし、その割には、どこも痛めた感覚がない。
疑問符を脳内に浮かべつつ、起き上がり──ベッドに横たわった人影が視界に入って、硬直した。
「──え……?」
寝台の質やサイズを除けば、まるで夢の再現だった。
恐る恐る手を伸ばし、触れる。──温かな体温。幻ではない。
「──姉さん!」
ニニャの歓声とも悲鳴ともつかない声に、姉が飛び起き、仲間が駆けつけてくる。
誰も彼もが事態を把握できずに混乱する中、ニニャはひたすら泣いていた。
嬉しくて、嬉しくて──ひたすらに、感涙し続けていた。
──王都から“八本指”が消えた、という噂がエ・ランテルまで届いたのは、この日の昼のことだった。
パンドラ「弱体化した嫁に、【魔法適正】のタレントをプレゼント!」
モモンガ「【流星の指輪】っていうか、《星に願いを》の効果、チート化してんじゃん……フレーバー効果、ヤバくない?」
アル&デミ「悪魔への風評被害が酷い」
王都で何が起きたかは、また次回!