フェアリー・エフェクト(完結)   作:ヒョロヒョロ

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本当に誤字報告ありがとうございます……なんで誤字脱字はなくならないのか……(遠い目)
なんか今回、色々迷走している気がします……
(6/7 15:55)本文の一部を修正しました

【前回のあらすじ】
ガゼフ「モモン殿……帰ったのか、故郷に……」
モモンガ(クソ恥ずかしい設定ついたから、モモンはやめます)
ラナー「クライムを鎖で繋いで飼いたいの!」
パンドラ(引きつつもマジックアイテムを渡す)
クライムの犠牲を代償に、トブの大森林は南に拡大した!


大森林、炎上する

 “八本指”の運命が、決まった日──

「まともな判断力があれば、勝ち目もメリットもない戦争なんて仕掛けません。──ようは、()()()()()()()()であることを先に明示してやればいいのです」

 至高の方々と己の妻へ、パンドラズ・アクターは()()()()()()()()()()を語った。

「しかし、あまりに脅威的な存在だと思われると、恐怖で噛みつかれる可能性があります。なので、()()()()()()()()()()()()()()()()()()を作り上げましょう」

 一拍おいて、核心を告げた。

 

「そう──祀れば応える、“神”のような存在を」

 

「──“神”って……まあ、この世界にとって、ユグドラシルプレイヤーは一種の神様らしいですし、あながち嘘でもないのが、また……」

 ヘロヘロの言葉に、モモンガがげんなりした声をもらした。

「……私はスルシャーナじゃない……」

「はい。既存の六大神や四大神ではなく、新たな神格を作り上げます。──モモン・アクトの郷里で祀られる“異邦の神”という設定で」

 しれっとした態度で話を続けるその息子(NPC)に、ヘロヘロは苦笑しつつ、話に乗っかる。

「あー、信者との縁でついて来ちゃった的な設定で?」

「そういう感じです」

「……言いたいことは色々あるけど……さっき言っていた“八本指”への武力行使とは、つまり“神”の力のデモンストレーションか」

 諦めたような調子で、モモンガも話に加わった。

「はい、そういうことですね」

「ああ、なるほど。巨大犯罪組織とはいえ、ナザリックの戦力なら一掃するくらい訳もないだろうし、名声にはなっても悪名にはならないですね」

 と、ルイがそこで首を傾げた。

「……捕まえた後、どうするんです? 王国の人に引き渡すんですか?」

「えっ」

「え?」

 ──()()の意味が噛み合っていないことに気づいて、男たちは一瞬黙り込み──

「──ルイ殿、王国に引き渡すのは悪手です。管理能力が低いので、うっかりまた逃がしてしまうかも。……トブの大森林の奥に収監所でも作って、適当に労役でも科せばいいかと」

「あ、ああ! それいいな! そうしよう!」

 素早く立ち直ったパンドラズ・アクターがフォローし、その父がすかさず乗っかる。

「……そうですね、終わらない労働という苦痛を、罰として与え続けましょう……ふふふ……やってもやっても仕事が減らない……」

 と、何やらトラウマを刺激されたのか、いきなりヘロヘロの言動がバグった。

「ああっ、ヘロヘロさん!? しっかりしてください! ここは職場じゃないです! ナザリックです!」

「はっ……そうだった、ここはリアルメイドのいる楽園!」

 ヘロヘロの言葉に、よくわからない様子ながらもルイが問う。

「えっ、えっ? メイド?──ペスさん呼んできます?」

「ソリュシャンの方がいい──って、ああ、ルイさん! すいません、ただの戯れ言なんで本当に呼びに行かないでいいですよ!」

 真に受けて腰を浮かしかけたルイに、ヘロヘロは慌てたように叫ぶ。

「え? あ、はい?」

「ヘロヘロさん……」

「……すみません、自重します……」

 モモンガの苦い声と、パンドラズ・アクターの無言の圧力に、ヘロヘロは縮こまった。

 こほん、と一つ咳払いし、パンドラズ・アクターが話を戻した。

「──まあ、組織の人間をまとめて捕縛するのは容易いでしょうが……しかし、組織に囚われて搾取されている人間はどういたしましょうか」

「うーん……怪我とかだけ治療してあげて、それこそ王国に返すしかないかなぁ……ちょっと、面倒見きれないだろうし、それくらいは王国自身でどうにかしてもらおう」

「ですかねぇ。──ただ、どうやって、組織側の人間と搾取されてる人間を判別すればいいのか……助かろうとして、嘘つく奴もいそうですし」

 モモンガの言葉に頷きつつも、ヘロヘロが新たな懸念を口にする。

「……その辺りは、デミウルゴス殿の《支配の呪言》で解決できるかと。──40レベル以下にしか効かないにしても、《こちら》の人間相手なら無双でしょうし?」

 パンドラズ・アクターの微妙に棘のある声に、モモンガが怪訝な顔になった。

「……パンドラ、お前、デミウルゴス嫌いなの?」

「ソンナコトハゴザイマセンヨ、父上」

「わあ、清々しいまでの棒読み」

 思わずと言った調子で、ヘロヘロが感心したような呟きをもらす。

 困惑したような表情でパンドラズ・アクターを見るルイの顔を見て、モモンガが思い出したように声を上げた。

「──あっ! まさかお前、《こっち》来る前にルイさんがデミウルゴスのことベタ褒めしてたの、根に持ってるのか!?」

「えっ」

「……そんなことは、ございませんよ」

 言いながら、ルイの視線から逃れるように顔を逸らすパンドラズ・アクター。

「あ、これ当たりですね。……男の嫉妬は醜いぞ~、パンドラ~」

 完全にからかうような調子のヘロヘロの声。

 ルイはオロオロしつつも、

「え、えっ? パンドラさんも格好いいですよ? シンプルで可愛いのにちょっと得体の知れない雰囲気のお顔に、軍服が合わさって底の見えない強さって感じがします!」

「──可愛いのは貴女です(Du bist es, der niedlich ist)……!」

「うぐっ」

 顔を覆ったパンドラズ・アクターのドイツ語に、モモンガがダメージを負った。

「えっ?」

「なんて?」

「──気にしないで! っていうか、頼むから追及しないで!」

 空気がグダグダになり、あとは実働するパンドラズ・アクターたちシモベが細かい作戦を詰めるということで、その場はお開きになる。

 

 そうして数日後、パンドラズ・アクター主導で作戦は実行され、“八本指”の捕縛、トブの大森林の拡大と実質占拠までは、滞りなく進んだ。

 

 しかし、パンドラズ・アクターの見通しは、些か甘かった。

 

 このやり方は、ある程度まともな者には十分な抑止になったが──()()()()()()()()()には、通用しなかったのだ。

 

 

「──王国の第一王子が、拡大森林部(ナザリック方向)に向かって進軍しています」

「はっ?」

 外部からの情報をとりまとめているデミウルゴスからの報告に、ヘロヘロは目をむいた。

 モモンガは【流れ星の指輪(シューティングスター)】──ひいては《星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)》で“タレント”移植が可能と知り、新たにやりたいことが出来て、マーレを供に外出中だ。

「え、その王子、正気なの……? 一晩で犯罪組織一掃して、森を拡大したような相手に、勝てると思ってんの……?」

「元々武張ったタイプで、お世辞にも賢いとは言えない人間だったようですが……“八本指”のアジトに放置してきた資料で、彼の支持派閥が一気に窮地に陥ったらしく。──今回の進軍は、起死回生を狙ったもののようです」

「……あ~、“八本指”と繋がってた派閥……」

 第一王子は既に死に体──一種の自棄を起こしているのかもしれない。

「でも、まあ、こっちがそれにつき合ってやる義理はないよなぁ」

 何にせよ、どうするかはモモンガと相談して決めねばなるまいと、《伝言(メッセージ)》を起動して、連絡をとる。

「モモンガさん、ヘロヘロです」

『何かありましたか?』

 事情を説明し、相談した結果──「適当に幻惑魔法とかで森の浅いとこでもグルグルさせて、諦めてくれたら放り出そう」ということになった。

「……始末しないで宜しいので?」

「一緒に進軍している人たちは、嫌々命令に従ってるだけかもしれないし……その王子も、どんな馬鹿でも王族だから……下手に殺すと、後が面倒くさそうだからね」

「なるほど──では、そのように」

 デミウルゴスは、何やら納得したように頷いて下がった。

(まあ、しばらく森で遭難すれば、諦めてくれるだろう)

 そんな風に、ヘロヘロは考えていた。

 

 モモンガとヘロヘロは知らなかったのだ。

 ──本物の愚者というものは、恐ろしいことを平気でしでかすものだと。

 デミウルゴスはそれを知っていたが──だが、そんなことはわざわざ告げるまでもなく、至高のお方はご存じだと判断し──その上で、()()()()()()()()という言葉の意味を深読みした。

 つまり、()()()()()と──しばらく泳がせて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と、言われたのだと。

 

 

 果たして、焦れた愚か者はやらかした──()()()()()()()というとんでもない愚行を。

 

 

(……馬鹿だとは思っていたけど、ここまでとはね)

 兄の訃報を聞いたラナーは、クライムの手前、表情だけは悲壮なものに固定していたが、内心はどこまでも冷ややかだった。

 数日に渡って遭難させられ、大森林内への進軍がどうあっても不可能だと悟ったバルブロは、あろうことか兵たちに()()()()()を指示した。

 もちろん、兵たちは反対した。火事とは恐ろしいものだ。燃え広がれば、被害がどこまで拡大するかも知れない。

 しかし、バルブロは特に強硬に反対した兵の首を刎ね、「お前等もこうなりたくなければ指示に従え!」などと宣ったのだという。

 乱心した王子を恐れて、兵たちは言われるがまま、森に火を放ち──

 

 次の瞬間、突然()()()()()()()()()()()()()()

 

 兵たちが森に放った火は、不思議と瞬く間に消え──ただ、黒こげになった第一王子の亡骸だけが残った、と。

 報告を受けた一部の貴族は、兵たちがバルブロを殺した上で口裏を合わせているだけだ、などと喚いているが──

(下克上を起こす気概など、王国兵にはないわ。……つまり、これは間違いなく、例の“神”の仕業)

 しかしなかなかに上手いやり方をする、とラナーは感心した。

 兵の言い分を信じた者からすれば、この事態はバルブロの自業自得である。森林への放火など、許されることではないのだ。実現していたら、王国にどれだけの被害が出ていたかもわからないのだから。

 逆に、兵の言い分を信じない者にとっては、単に兵たちによる王子の謀殺ということになる。

(どっちにせよ、悪感情は“神”に向かわない)

 むしろ、命じられた者ではなく、命じた側だけを罰したことで、平民からの感情はいい方に傾くかもしれない。

 さらには、誰かに命じて“神”をどうこうしようと考えていた者たちへの、強い牽制にもなったはずだ。

(……ただ、あの時会った“神”と、今回の狡猾なやり口は、微妙に印象が噛み合わない……)

 あの“神”は、頭は悪くなさそうだったが、どことなく対人交渉に慣れていないような()()が滲んでいた。──今回の手口には、それがない。

(……“神”は単体ではなく、複数いる? もしかしたら、一種の組織を形成している可能性も……だからこそ、大規模な土地を欲した?)

 そんな風に考察するも、ラナーは“神”に弓引くつもりなど欠片もない。

 

 ──勝てない相手に喧嘩を売ることほど、愚かなことなどないのだから。




正式タイトル:大森林(の中で馬鹿が)、炎上する

なんちゃってドイツ語はエキサイト先生頼みです……許して……


<おまけのユグドラシル時代>
モモンガ「この階層の守護者のデミウルゴスです」
ルイ「映像で見たときも格好いいなぁって思ってましたけど、近くで見るとより格好いいですね、この悪魔さん!」
モモンガ「すごい食いつき。もしかして、ルイさん、デミウルゴスみたいのが好み?」
ルイ「いえ、なんて言うか、全体的にすごいセンスいいと思って! 人の形と異形の部分のバランスとか、スーツとかメガネのデザインとかも!」
モモンガ「あ~、そういう……ウルベルトさんが聞いたら喜んだだろうなぁ……すごい凝ってたし」
デミウルゴス(なかなか見る目のある娘ですね!)創造主のセンス誉められてご機嫌
パンドラ(私と対面したときよりテンション高い……)実は巡回ツアーの最初からずっと一緒に連れ回されてた
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