フェアリー・エフェクト(完結)   作:ヒョロヒョロ

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【前回のあらすじ】
ルイ「政略結婚したくないので帰らない!」
ヘロヘロ「理想のメイドがいるから帰らない!」
モモンガ「よかったー!」

パンドラは紳士、アルベドは聖母。
モモンガを帰さないよう、ルイを利用しようなんて思ってない、いいね?


カルネ村、生存する/戦士長、邂逅する

 穏やかで代わり映えのない日常を送っていたカルネ村は、この日、異変の連続に見舞われた。

 始まりは、朝──唐突に、敵国の鎧をまとった兵たちに襲撃されたのだ。

 問答もなく矢をかけ、剣を抜いて村になだれ込んできた彼らによって、村人達は為す術もなく虐殺され──なかった。

 凶刃の錆となるはずだった彼らを救ったのは、唐突に現れた、魔法詠唱者と剣士の父子(おやこ)だ。

 父が魔法で矢を防ぎ、息子は剣を抜いて襲撃者の前に立ちふさがる。

 しかし、父子は二人きり。数の優位はこちらにあると言わんばかりに、兵たちは彼らへ襲いかかろうとして──瞬殺された。

 いや、瞬()という言葉は相応しくないかもしれない。なにせ、兵達は誰一人命を落とすことなく、無力化されたのだから。

 そうして、たった一つの呪文で兵たちを生きたまま無力化した、凄まじい技量の魔法詠唱者は、唖然となる村人たちを振り返って、気まずそうに言ったのだ。

 ──「ここは、どこなのでしょうか」と。

 驚いたことに、この父子、迷子であったのだ。

 何でも、マジックアイテムの実験中、誤作動で見知らぬ土地に飛ばされてしまったのだという。

 夜通し人を探して歩き続けて、やっとこさ見つけた人里。しかし、安堵しかけたのもつかの間、何やら剣呑な気配を察し──咄嗟に、兵たちを阻む形で動いた、という訳らしい。

 とにかくこの辺りの地理の情報が知りたい、ということなので、村を助けてくれた恩に報いるべく、村長は自身が知りうるだけの知識を惜しみなく告げた。

 しかし、彼らは、この村が所属する王国の名はおろか、近隣諸国の名にも全く聞き覚えがないという。つまりは、彼らの故郷はこの辺りと全く交流のない遠方だということだ。

 参ったな、と困ったように呟く父親と、悄然と肩を落とす息子の様子に、否応なしに同情は募る。

 しかし、都市に行けば、もっと他の情報も得られるかもしれない。捕らえた襲撃者を役人に突き出す必要もある。明日にでも一番近い都市まで一緒に行きましょう、と励ませば、彼らは気を取り直したように頷いた。

 とりあえず、今日はこれで一段落、と思った矢先──夕刻、更にもう一組、武装した集団が村を訪れて、もう一悶着あるのだった。

 

 *****

 

 王国の戦士長であるガゼフ・ストロノーフは、駆けつけた先で待っていた予想外の展開に、驚愕した。

 彼は、国境間際の開拓村を次々襲う犯人を追って、部下達と共にカルネ村へと駆けつけた。

 民を想う王の意向を無視し、自身達の権利ばかり主張する傲慢な貴族達の横槍のせいで、自身も部下も武装はお粗末だ。それでも、一人でも多くの民を救わんと、士気高く駆けだした。

 しかし、その道行きで見つかるのは、既に焼き払われてしまった村跡ばかり。間に合わなかった自身を呪い、それ以上に犯人への怒りを募らせつつ、次こそは、次こそは、と馬を急がせたのだ。

 しかし、犯人に追いつけぬままカルネ村までたどり着いて、無事な村の様子に間に合ったと安堵し──そうではなかったのだと知って、驚愕したのだ。

「こちらのモモン様とアクト様が、奴らを捕らえてくれたのです」

 そう言って村長に紹介されたのは、魔法詠唱者と剣士の二人組。

 父子であるという二人は、確かに、穏和な顔立ちがよく似ていた。どちらも、南方の血を引くガゼフと同じ黒髪だが、ガゼフの褐色の肌とは違って、二人の肌は微かに黄みがかった白色をしている。

 間に合わなかった自分たちに代わり、村を救ってくれたことへの感謝の念は、自然、ガゼフに下馬をしての礼をとらせた。

 魔法に疎いガゼフにでも、呪文一つで襲撃者たちを生きたまま無力化するという離れ業をなしたモモンは、とんでもない実力者なのだと察せられる。

 また、息子のアクトは、ガゼフから見ても、なかなかに隙のない立ち振る舞いである。まだ18という伸び代のある若さを加味すれば、将来は相当の剣客になるだろうと思わせた。

 しかし、そんな技量の持ち主でありながら、父子は少しも偉ぶったところのない、誠実な人となりのようだった。

 不幸な事故で見知らぬ土地に飛ばされたという苦境の中、それでも他者に降りかかろうとする理不尽を見過ごさなかった時点で、人格者なのは間違いない。

 故郷への手がかりが欲しいという二人のために、ガゼフは自身にできうる限りの手助けを決意した。

 とりあえずは、明日の朝一番、捕らえた襲撃者たちを連行するついでに、最寄りの都市へ案内すると約束した。

 ──そうだ、身銭を切ってでも、まとまった額を礼金として渡さねば。きっと、彼らはこの辺りの通貨も持っていない。

 そんな風に考えるガゼフの表情は、村を訪れる前とは打って変わって清々しい。

 

 そうして、翌日、ガゼフ達は、父子と共にカルネ村をたった。




本来、村を取り囲むように襲撃するはずだった偽装兵たちは、どうして一方からまとまって突撃してきたのか?
皆大好きニグンさんはどこへ行ってしまったのか?
何より、モモン・アクト父子の正体とは!?(バレバレ)
次回、【ナザリック、暗躍する】!
お楽しみにね!

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