書きたいシーンがいっぱいあってどこから手を着けたらいいかわからなくなる病。
【前回のあらすじ】
陽光聖典「スルシャーナ様に我らの信仰を捧げます!」
モモンガ「えぇ……?(困惑)」
デミウルゴス「危ない儀式をしようとする邪神教団はしまってしまおう」
ズーラーノーン「えっ」
ぱくり、と串焼きにかじりつき、
(──あぁ~~~、美味しい~~~)
モモンガ──否、今はモモンとして振る舞っている男は、うっとりと目を閉じて、味覚からの情報を満喫する。
(……本物の食べ物って、こういうものだったんだなぁ……
実際、貧困層の彼がリアルで食べていた
「モモン殿は、本当に美味そうに食べるなぁ」
笑みを含んだガゼフの声に
「す、すみません」
「謝ることなどないでしょう、奢り甲斐があって嬉しい限りだ」
ガゼフの言葉は紛れもなく彼の本音なのだろうが、いい年齢したおっさんがだらしなく笑み崩れるのは、あまり見目よろしいものではないだろう。
(けど、食事の度に毎回やっちゃうし、もう周りに慣れてもらった方が早いかもしれないなぁ)
カルネ村で、質素な──けれど、村人たちの精一杯の持て成しである食事を振る舞われた時も、モモンはこんな感じで、「そちらのお
一緒に食べている
今も、アクトは早々に串焼きを平らげ、町並みを興味深そうに見回している。──さりげない仕草だが、モモンの警護と情報収集をきちんと果たそうとしての行動だろう。
(いけないいけない、俺もちゃんとしないと)
気を引き締めて、モモンも串焼きの攻略を急いだ。
──ここは、カルネ村から一番近い都市である、エ・ランテル。
帝国と法国、その両方と国境を接するこの場所は、国防的に非常に重要な拠点らしく、三重の防壁に囲われた城塞都市でもある。
当然、都市の入り口では検問も行われていたが、国王直臣の戦士長効果で、モモンとアクトは驚くほどあっさりと中に通してもらえた。
宿も、ガゼフが部下に頼んで手配してくれるという。至れりつくせりである。
設定上でも実際的にも異邦人であるモモン達は、身分を証明する手段がない。それでは後々不便だろうと、ガゼフから冒険者として登録することを勧められた。──宮仕えのスカウトも受けたが、「いずれ故郷に帰るので」と言えばすぐに引き下がってくれた。
何でも冒険者とは、“対モンスターの傭兵”であるらしい。
名前の割にロマンのないことだとモモンは内心落胆したが、冒険者として登録すれば、組合が身分を保証してくれる。仕事の内容はともかく、制度自体は有り難い。
そんなわけで、ガゼフの案内で冒険者組合に向かう途中だったのだが──途中でついついモモンが、屋台の串焼きの魅力に負けてしまったのである。
気を取り直して、今度こそ向かった冒険者組合での登録も、ガゼフ効果か、すこぶるスムーズに済んだ。
襲撃者がらみの仕事がある──それにも関わらず、よくここまで案内してくれたものである──ガゼフとは、手配してくれた宿で別れた。
案内された部屋に入り、室内に魔法的な防壁を展開し──そこでやっと、モモンとアクトは一息ついた。
「──いい人だったけど、やっぱ他人と一緒だと疲れるなー……」
「我らの正体を知られる訳にはいきませんからねぇ」
ぼふん、とベッドに寝転がりながらモモンが呻けば、アクトも隣のベッドに腰掛ける。
肉体的な疲労は装備で防げているが、気疲れはする。──人化中は、ポーカーフェイスも精神抑制もない。うっかりすると感情がダダ漏れになってしまうため、余計に色々気を使った。
「……ナザリックに、連絡いれないと……」
「それならば、私がやっておきましょう」
「……んー……じゃあ、頼むわー……」
言いながらも、モモンの瞼はうとうとと落ちてきて、だんだんと意識が微睡んでくる。
(──そういや、カルネ村では、パンドラと色々打ち合わせてて、結局徹夜だった……)
睡眠不要の装備もしているし、アンデッドとして眠
(ああ……この感じも、久しぶり……)
──そうして、彼は、異世界に来てから初めての眠りへと落ちていった。
視点で区切るもんで、一話ごとの文字数がまちまちで申し訳ない。