学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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今回は、個人的に物凄いシリアスです。

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大本営にて

「横須賀提督、もう少しで大本営です」

「あぁ。ありがとう」

 

 整備された道路を、海軍が保有する車が走る。その行き先は大本営、後部座席に座っているのは、横須賀提督と大洗とリーナである。

 

「提督。大本営の方々は、何の御用なのでしょう~?」

「分からん。何か不正や軍規違反をした覚えは無いのだが……」

 

 それは三日前。突如憲兵が来たことから始まった。

 最初こそ、何か不正をしてしまったのか?と大騒ぎになったのだが、憲兵は大本営からの通達を届けに来ただけだった。

 内容は、『学園艦大洗及び聖グロリアーナを連れて、大本営まで出頭せよ』。しかも、断りや無視した場合は、“出頭するまでこの通知を届ける”という、地味に嫌な脅しも掛けてきた。尚、この文言に対し、まるで“犯罪者への通知書”みたいだとリーナが憤慨したのは、余談である。

 

「関わったとすれば、私たち“学園艦娘を建造した”という報告書を送ったことと、鎮守府には保管しきれない資源を大本営に送って、“『予備』として備蓄している”ことですわね」

「上の方々からすれば、資源は有り過ぎて困るものでは無い。いざという時は他の鎮守府にも配給できるから、大本営にとっては悪くないことだと思ったんだけど……」

 

 三人の疑問や不安をよそに、レンガ造りの大きな建物……大本営が見えてきた。

 

「到着しました」

「ご苦労」

 

 提督が運転手に短く礼を言うと、三人は敷地内へと入っていった。

 

 

 

 

「やぁ。よく来てくれたな、横須賀提督くん」

「中将! お久しぶりです!」

 

 穏やかな笑顔でゆっくりと海軍式敬礼を行なう老人に対し、ビシッと早くて綺麗な敬礼で返す提督。

 

 この老人―――呼び名は中将―――は、横須賀提督にとっては、士官学校時代の恩師である。

 

「もしや、あの文書は中将が……?」

「どのような文書かは分からんが、()()()からして、“誤解を招くような文”だったのかね?」

「はい。他の艦娘曰く、“犯罪者への通知”のようだと」

「全く……。それで誤解を招いたまま話を進めたら、どうなっていたのやら……」

 

 あの文書は、中将ではない“他の誰か”が書いたのだろう。誤解を招きそうだったことに溜め息を吐きつつも、中将は学園艦の二人を見る。

 

「その二人が、“未来の平行世界”から来たという艦娘かね?」

「はい。こちらの翔鶴に似た女性が大洗、イギリス空母アークロイヤルに似た女性が聖グロリアーナです」

「ふむ……。第二次世界大戦からの未来が異なる世界……。戦車は競技となり、空母は人々の第二の大地となっている世界か……」

「中将、お詳しいですね?」

「うむ。ここでは何だ、会わせたい者もいる。歩きながら話そう」

 

 中将が建物の方へ向かうと、三人もそれに尾いて行く。

 

 

 

 

 

 少々豪華な廊下を歩きつつ、中将は話し始めた。

 

「実は、大本営が君を呼んだのは……ここ大本営で、“()()()が建造された”からだ」

「何ですって!?」

「まぁ……」

「あらあら……」

 

 三人は驚く。普段はお淑やかなリーナですら、口をポカンと開けてしまっている。

 

「中将。彼女は、何と名乗ったのです?」

「“その答え”は、この先の応接室に在る」

 

 中将の視線の先には、『応接室』と書かれた扉が在った。この扉の向こうに新たな艦娘が、“同胞”がいると思い、三人はそれぞれ唾をゴクリと飲み込む。

 中将は三人の準備が整ったと判断し、扉をノックする。

 

『はい?』

「私だ。君が会いたがっていた方々を連れてきたよ」

『おぉ! 本当でありますか!?』

「本当だ。入っても良いかね?」

『はい! どうぞ!』

 

 

 そこには、黒い髪をポニーテールにした、空母『赤城』に似た女性がいた。しかし身長は赤城本人よりも高く、着ている服も異なっている。

 

 

「大洗殿、聖グロリアーナ殿、お久しぶりであります!」

「まぁ、知波単さん~! こちらの世界では初めまして~!」

「まさか、“タンクジャケットを着た姿”とはねぇ……。よく似合っているわ」

 

 知波単と呼ばれた女性は、大洗やリーナと握手をしている。一方で、提督は中将に質問をしていた。

 

「中将。彼女は赤城型と見受けますが、確か赤城は我が鎮守府に……」

「うむ。君のところには、翔鶴が所属している。そしてイギリスで建造された歴史を持つ金剛もいる。だから大洗と聖グロリアーナが建造されてもおかしくなかった」

「では、何故“赤城が所属していない”大本営にて、知波単という学園艦娘が?」

「それなんだがな……。その時は偶然にも、陸軍所属の『あきつ丸』が来訪しておってな……。知波単曰く、『日本戦車を保有しているが故に、“陸軍の人間がいる環境下”では自分が建造される可能性が高かったのではないか』とのことだ」

「……“学園艦が建造される条件”は、複数に及ぶということですか?」

「そういうことになるな……」

 

 

 

 

 

 

 中将がソファに座るよう促す。すると三人は、自分たちの世界に入っていたことに気付き、気不味さを感じながら座った。最後に提督が「失礼します」と軽く礼をして座った。

 全員が座ったのを確認すると、中将は部屋の中を歩き回る。まるで“探し物をしている”かのように。最後に窓やドア等に近付いて頷くと、ソファに座った。

 

「さて、横須賀提督くん。君を呼んだのは、“学園艦の二人に知波単を会わせる為”()()ではない」

「と、おっしゃいますと?」

「単刀直入に言おう。彼女を、君の鎮守府に所属させて欲しいのだ」

「……えぇぇ!?」

「わ、私が横須賀鎮守府にでありますか!?」

 

 知波単が驚いている辺り、本人にも知らされていなかったのだろう。中将は申し訳なさそうな顔をしている。

 

「突然で本当に申し訳ないと思っている。だがな、“事は急を要する”のだ」

「……()()()ですか」

「そうだ。君も薄々感じているとは思うが、この大本営は一枚岩ではないのだよ」

 

 そこから、中将による説明が始まった。

 

「この大本営には、“様々な思想”を持つ者がいる。『海外艦の協力が無くとも深海棲艦を打倒できる』と豪語する者。これは、ここ最近の大規模作戦で日本が連勝を飾っていることが大きい」

「敵に勝利することが続き、それにより舞い上がって“士気が歪んだ”ということですわね……」

「そして、もう一つ。『陸軍との協力を拒む』者だ。これは“深海棲艦が現れる前からのしがらみ”とも言うべきか……」

「それは自分も知っていますが……」

「厄介なのが、君たち学園艦娘の存在が現れたことにより、反陸軍派の動きが過激になりつつあるということだ……」

「「「えっ……?」」」

 

 大洗を始め、三人はショックを受けた。“自分たちの所為”で、一部の人間が過激になることを許してしまうとは思わなかったからだ。だが中将は、手と首を振って否定した。

 

「いやいや、君たちは悪くない。向こうの言い分はこうだ。『海軍に属する空母の姿をしておきながら、陸軍のものを持っているとはどういうことだ』と」

「そんな……! 彼女たちのせいではないです! そんなの言いがかりというものですよ!」

「私も同意見だよ、横須賀提督くん。だが、“これと似たような主張”をする者がいる。……反海軍の思想を持つ、一部の陸軍将校だ」

「まさか、『陸軍が誇る戦車を持っておきながら、空母の姿をしているとは何事だ』と言ってるんじゃないですよね?」

「“一字一句”間違いがないよ。出来れば間違いであって欲しかったが……」

 

 すると、ドンッ!という音が響き、続けてティーカップが揺れてスプーンとぶつかる音が響いた。少量だが紅茶は零れてしまっている。提督が怒りのあまり、拳をテーブルに叩き付けたからだ。

 

ふざけるな! 海軍もダメ、陸軍もダメ。では、彼女たちはどうしろというのだ!」

「提督、落ち着いてください~。あくまで一部の人たちだけですから~……」

「いや、それではダメなんだ、大洗さん。自分の言葉一つで軍を動かせる者たちが自軍の者を否定するなど、あってはならない!」

 

 ここまで激昂する姿を見るのは初めてなのか、大洗はオロオロしていた。リーナと知波単の二人もどうすれば良いか分からず、中将の方を見る。

 だが彼は、「言いたいことは言わせてやれ」と言わんばかりに微笑んでいた。まるで“子供の言いたいことを最後まで黙って聞く親”のように。

 

「そもそも上の連中は事態を分かっているのか!? 深海棲艦によるシーレーンの崩壊によって苦しんでいる人々がまだ居るんだぞ! それなのに面子ばかりを主張して、これが国民のために戦う軍人か!? 同族で足を引っ張りあっている場合ではないだろう!!」

 

 粗方言い終わると、すっかり温くなった紅茶を一気に飲み干し、大きく息を吐く。その後に深呼吸を2、3度すると、徐々に落ち着きを取り戻した。

 

「……すいません。取り乱しました」

「構わんよ。そのように自分の意見を大きな声で言えるのならば、安心して彼女を君の下へ行かせられる」

「はい。今理解しました。大本営は、彼女にとって“敵が多過ぎる”のですね?」

「そうだ。しかし君の所へ行かせれば、向こうは手出しできなくなる。何せ、君には()()()があるからな」

「私は、いつでも“大本営への資源提供”をストップ出来るのですね?」

「強行しようものなら、儂や元帥を始めとした人間で、軍法会議に掛けることも出来る」

「元帥も協力しているのですか!?」

「うむ。そして、横須賀鎮守府へ配属させようと考えたのも、元帥なのだ」

 

 自然と体が震える提督に、中将は一枚の書類を差し出す。

 

「あとは、ここに君が署名して捺印した瞬間、知波単は横須賀鎮守府所属となる」

「……はいっ!」

 

 提督は、今までで一番と思えるほどの綺麗な字で名前を書き、判子を押した。

 中将はそれに頷くと、知波単に顔を向け、命令する。

 

「現刻を以て、学園艦『知波単学園』は横須賀鎮守府の所属とする。横須賀提督の指揮の下、奮迅せよ!」

「はっ! 不肖知波単、誠心誠意努力致します!」

 

 中将の言葉に敬礼で返す知波単。それに満足そうに頷くと、提督へと向き直り肩に手を置く。

 

「“上のこと”は儂等が何とかする。君は知波単を……いや、“これから生まれるであろう学園艦娘のこと”を、頼んだぞ」

「……はっ!」

 

 提督も敬礼で返すと、大洗とリーナも続いて敬礼するのだった。

 




読んでいただき、ありがとうございました。

それでは、次回もお楽しみに!
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