学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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さてさて、佐世保に来てしまったポーラとアンツィオ姐さん。保護はしてくれそうですが、どうなるのでしょうか?

短編から連載に変更しました。たくさんのお気に入り登録、感想ありがとうございます!

それでは、どうぞ!


佐世保に学園艦が着任しました(アンツィオ高校)

 佐世保鎮守府の提督は、俗にいう『ショタ提督』というものである。士官学校を最年少で卒業した秀才だ。

 しかし、この佐世保鎮守府に着任したのはつい最近で、まだまだ戦場での指揮経験は浅い。だからこそ、目の前の艦娘についても内心は驚きがあった。

 数十分前、気分転換にと鎮守府近くの防波堤を散歩していると、“見慣れない艦娘”が海上にいた。二隻のうち一隻は、空母らしき艦娘に曳航されている。

 

「ここが横須賀かな~?」

「多分そうだろう! む? あそこに軍服を着た人間が見えるな。おーい!」

 

 こうして応じることになったショタ提督だったが、彼女が言うにはこうだった。

 曰く、元いた鎮守府には二人しか居らず、妖精さんを連れて近くの鎮守府に保護して貰いたい。その為に“()()()を目指していた”のだと。

 

(どうやったら、横須賀と佐世保を間違えるんですか!?)

 

 彼女が連れてきたポーラを見て、ショタ提督は見当が付いた。海外艦娘に対して差別していた提督が逮捕されたと聞いたのは最近のことだ。おそらく、そこの艦娘なのだろう。

 しかし、横須賀と佐世保ではえらい違いである。最早“方向音痴”というレベルを通り越している。

 

「アンツィオ姉さま~! 場所違うじゃん~!」

「な、何故だ! ちゃんと海図とコンパスを使って……このコンパス壊れてるじゃないかぁ!」

「あぁ、それで……」

 

 だが、『行方不明となった艦娘を保護せよ』という命令が来ていたのでちょうど良かった。ショタ提督は微笑む。

 

「事情は分かりました。では、私の所で保護しましょう」

「ありがとう。目的地とは違うが、そもそも保護してもらうことが目的だったしな!」

「では、こちらへ……」

 

 こうして、ポーラとアンツィオは、佐世保鎮守府の所属になったのである。

 

 

 

 

 

「皆さん、紹介します。この鎮守府で保護することになった方々です」

「ポーラです~。みんなよろしく~」

「学園艦アンツィオ高校だ! ドゥーチェと呼んでくれ!」

 

 その瞬間、提督も含め、全員が頭にハテナマークを浮かべた。巡洋艦『北上』が挙手をする。

 

「はいは~い、質問~。学園艦って?」

「そうか、道中ではポーラにしか話してなかったんだった。学園艦というのはだな―――――」

 

 その場にいる艦娘たちと提督に、話をするアンツィオ。戦車が競技になってることや空母が街になっているという世界に、みな興味津々だった。特に提督は、平行世界や未来の世界といった、まるでSFのような話にキラキラと目を輝かせていた。

 

「そうだ提督~。どうせなら歓迎パーティーしようぜ~!」

 

 テンションを上げながら提案するのは、軽空母『隼鷹』である。

 

「なるほど……。良いかもしれませんね」

「だろぉ~? 何かポーラって奴とも気が合いそうだしな!」

「アンツィオ姉さま、パーティーだって!」

「おっ! ならば私の出番だな!」

 

 アンツィオが腕まくりをする。それに待ったを掛けるのは『大井』だ。

 

「あの、主役はあなた方ですからお料理とかしなくても……」

「ふっふっふ。私の前世は、料理に力を入れてると言っても過言ではない学校だ。そんな私にパーティーで料理を作るなというのは、唐揚げに勝手にレモンをかけるようなものだ!」

「目に炎が見える……」

 

 こうして、歓迎パーティーの準備が進められた。

 

 

 

 

 

 佐世保鎮守府の食堂。そこは今はパーティー会場と化していた。テーブルに並ぶ数々のイタリア料理に、イタリア艦であるポーラも唖然とする。

 

「こ、これ全部アンツィオ姉さまが作ったの?」

「私だけじゃなくて、妖精さん達にも手伝って貰ったけどな。みんな手際が良くて助かった~」

 

 彼女の肩には、緑髪のドリルツインテール妖精に、金髪ロングヘアー妖精、黒髪ショートヘアー妖精さんが乗っている。三人共コックが着るような服を着ていて、フンスと自慢気にしていた。

 

「さあ、食べよう! ピザやパスタは勿論、カプレーゼにカルパッチョ、イタリアワインもあるぞー!」

 

 こうして、パーティーが始まった。みんな思い思いに楽しんでいる。

 

「このピザ美味しい~!」

「ノンノン! 正しくは、“ピッツァ”だ! 旨いだろ~? 私の自慢だぞ!」

「ピッツァピッツァ~!」

 

「うひひ~! 今までで一番美味しいワインかも~!」

「おぉ! お前やっぱりイケる口だな! ほらほら、日本酒も飲んでみろ~!」

「ならワインと日本酒を交換で~、かんぱーい!」

 

 提督もカルボナーラを食べていた。そこへアンツィオがやって来る。

 

「おぉー、食べてるな。どうだ、旨いか?」

「はい! カプレーゼなんて初めて食べましたよ」

「それは何よりだ! 深海なんちゃらとの戦いの真っ只中らしいが、飯を食べて笑顔でいるのが一番だ!」

「本当に、アンツィオさんは笑顔なんですね」

「それが、我が校の在り方だからな! あっ、そうだ」

「?」

「ありがとな。ポーラを保護してくれて」

「え?」

 

 提督を見て、笑顔で礼を言うアンツィオ。きょとんとしてる彼をよそに、当の本人の視線はポーラへと向いていた。

 

「道中で聞いたが、あいつには姉がいるらしい。派遣とはいえ、ポーラは見ず知らずの土地で暮らすことになったんだ。だというのに前の奴がひどい男だったらしくてな……」

「僕も、海外艦娘に対して差別的な態度を取る提督がいるということは聞いていました。酷い話です……」

「だが今は、あぁして笑いながら酒を飲んでる。最高だな!」

「アンツィオさん……」

 

 提督は思う。ここまで“別世界の存在”を思うその態度。とても不思議だった。

 

「んー、何か暑くなってきちゃった~」

「なにぃ? そりゃあ大変だ、脱げ脱げ~!」

「ポーラ、いっちゃいまーす!」

「おぉーい!? ポーラ何やってんだぁ! 隼鷹も煽るな煽るな!」

 

 酔っ払った勢いで脱ごうとするポーラを、必死に止めるアンツィオ。その様子に、提督はクスリと笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

~おまけ~

 

「アンツィオ姉さま~……。頭痛い~……」

「だから飲みすぎるなとあれほど言ったのに……」

 

 何だかんだ言いつつ、お粥と水を用意するアンツィオだった。




読んでくださり、ありがとうございました。

それでは次回もお楽しみに!

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