学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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朝早くからの更新です。さて、横須賀提督の目的とは……?
それでは、どうぞ。


横須賀提督の目的

 応接室へと案内されると、横須賀提督は部屋の各所を調べた。

 

(人の気配、無し。盗聴器も仕掛けられてる様子はない……。大丈夫だな)

 

 最後に窓や扉の近くに人の気配がないことを確認して、佐世保提督と向かい合うように座った。

 

「どうぞ、粗茶ですが……」

「ありがとう」

 

 佐世保提督がお茶を4人分出すと、横須賀提督が礼を言う。

 

「さて、今回の来訪について話すかな」

 

 佐世保提督の気が引き締まる。艦娘を変装させてまで来訪した目的は何か。それが明らかになるのだ。

 

「実は……学園艦娘による軍事パレードを行なおうと考えている」

「……え? パレード、ですか?」

 

 ポカンとしてしまう。要はパレードの誘いのためにわざわざ佐世保までやって来たというのだ。

 

「いやぁ、変に緊張させて申し訳ない」

「ほ、本当ですよ! 何かしらの陰謀とか、そういう物かと思っちゃいましたよ!?」

「まぁまぁ、そう怒るな。あの時の電話で使ったのは軍用回線だ。下手すると盗聴される恐れがあるからな」

「ぐ、軍用回線の盗聴なんて、犯罪じゃないですか。そんな事……」

「あるはずない。本当にそう思えるか?」

「……え?」

 

 横須賀提督の顔が怖い。睨むかのような目つきで、冷や汗が流れそうになる。

 

「大本営や陸軍の一部には、学園艦娘の存在を快く思わない者がいる。もしその者が盗聴していたら? 大本営の人間は己の権利を使って、盗聴をもみ消すだろう。さらには盗んだ情報をもとに、ありもしない罪を並べ立ててお前を拘束、最悪の場合一方的な軍法会議にかける可能性も、ゼロではない」

「うっ……」

「だから、他の者に聞かれるわけにはいかないんだ」

「わ、わざわざ電話ではなく来訪でのお誘いの理由は分かりました。で、ですが、パレードの理由を教えてください」

 

 横須賀提督の顔が元に戻った瞬間、佐世保提督の口は一気に乾いた。お茶をほんの少量口に含んで、口の中を潤す。

 

「実は、まだ学園艦娘のことは公表されていない。これも恐らく反学園艦娘派のものによる動きだが……大洗」

「はい~。私、聖グロさん、知波単さん、アンツィオさん、サンダースさんの他にも、学園艦娘はいると思います~。向こうの世界も時間は流れてるでしょうから、老朽化で解体されてこちらへ生まれ変わる人も沢山いると思うんです~」

「そういうことだ。他の所でも、条件さえ満たせば新たな学園艦娘が生まれる可能性がある。だが、突然異世界の艦娘が現れては、混乱するだろう」

 

 もしも学園艦娘が知られないまま別の鎮守府で生まれたら、その提督は運用方法を手探りで模索することになるだろう。これは、場合によっては鎮守府の運用に影響が出る恐れがあると、横須賀提督は言いたいのだ。

 

「そこで、だ。軍事パレードを開くことで、改めて学園艦娘の存在を公にしようという訳だ」

「なるほど……。しかし、それでは先ほど言った、反学園艦娘派の人間がちょっかいを出してくるんじゃないですか?」

 

 佐世保提督がそう質問すると、横須賀提督はニヤリと笑みを浮かべた。

 

「お前ならそこを突いてくると思ったよ。……俺たちにとって最高に運が良いのは、中将や元帥が、学園艦娘の存在を肯定してくださってることだ」

「ちゅ、中将に元帥がですか!?」

「もちろんお二人だけじゃなく、何名かの大本営の人間もな。さて問題だ。もしお前が反学園艦娘派の人間だとしたら、学園艦娘のパレードが開催されると知ったらどうする?」

「え、えーっと、僕だったら、何かしらの妨害を仕掛けます」

「それだ。連中は焦って何かしらの妨害を仕掛けてくるはずだ。だが、すでに大本営などは元帥たちが目を光らせている。つまり……」

「……あっ! 尻尾を出した、というやつですね!?」

「そういう事だ」

 

 横須賀提督は、再び茶を一口飲む。

 

「軍用回線の盗聴だと、向こうは色々とでっち上げる準備を整えることが出来るだろう。だが突然パレードが開催されれば、妨害しようにも粗が出る。元帥たちにとっては証拠を掴めるチャンスってわけだ」

「学園艦娘の公開だけでなく、軍の動きを抑制しかねない人間を特定できる。そういう事ですね?」

「あぁ。その場ですぐに逮捕とはいかないだろうが、マークしておけば何かあったときにすぐ対処できるからな」

 

 二人同時に茶を飲む。湯呑の中身は飲み干された。そして、佐世保提督は真剣な表情で返事をする。

 

「分かりました。喜んで、参加させていただきます。アンツィオさん、サンダースさん。よろしいですね?」

「問題ないぞ! またみんなで集まれるなら何よりだ!」

「もしかしたら、他のみんなにも会えるんでしょ? 最高じゃない!」

「ありがとう。今回話した件については、完全な極秘だ。まだ中将たちにしか話していない。口外はするなよ?」

「分かっています。それにしても、他の学園艦娘が生まれるとしたら、どこの鎮守府でしょうかね?」

 

 横須賀提督は少し考える。

 

「おそらくだが、呉鎮守府の可能性はあるかもな」

「呉鎮守府というと……初めて海外艦娘の建造に成功したところじゃないですか!」

「あそこには、確かドイツ艦娘がいる。学園艦の一つに、戦車道でドイツ戦車を使う学校があるそうだ。もしかしたら……」

 

 彼の言葉に、学園艦娘たちは笑う。

 

「黒森峰女学園ねぇ……。どんな姿でやって来るのかしら」

「きっと、長門殿のようにキリっとした姿だと思いますよ!」

 

 かつての仲間との再会を心待ちにする、娘たちだった。

 

 

 

 

 

 

 呉鎮守府の工廠にて。

 

「我が名は学園艦『黒森峰女学園』である! 我が戦車隊は鋼の如く! 貴官にも見せよう、我が戦車の雄姿を!」

「ど、どうしよう、ビスマルク……。とんでもない娘が来ちゃったんだけど……」

「そう言われても困るわよ~!」

 

 さすがの横須賀提督も、同時刻に学園艦が建造されてるとは思わなかっただろう―――――

 

 




読んでいただき、ありがとうございました。ついに彼の狙いが明らかになりました。
そして、新たな提督と学園艦娘の登場です。一体どうなるのでしょう?
それでは、次回もお楽しみに!
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