学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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おはようございます。短めですが、投稿します。

一応、台風の対策はしましたが……窓が割れないことを祈りたいです。


呉鎮守府での一夜

 横須賀から佐世保へ、そして呉へと移動が続いたため、横須賀提督一行は少しの間、休息をとることになった。

 その日の夜……。

 

 

 

「クッハー! この姿でビールを飲むのは初めてだが、美味いものだな!」

「でしょ!? やっぱりドイツ文化取り入れてる艦なだけあるわー!」

「ソーセージ、茹で終わりましたよ~」

「大洗、次は焼きで頼む!」

「はいは~い!」

 

 口の周りに泡をつけながらも上手そうにビールを飲む黒森峰と、同じようにジョッキを持ち彼女の背中をバンバン叩くビスマルク。二人ともアルコールが少しだけ回ってるのか、ほんのりと顔が赤かった。

 大洗は、ここでも料理を担当してるのか、次々とつまみを作ってる。

 

「黒森峰ちゃん、最初は堅物な印象だったけど、話してみると結構可愛いのね」

「そうみたいだな。……ん? 大洗の妖精さんか?」

 

 ドイツ軍帽を被った金髪の妖精と、茶髪で少しオドオドしている妖精さんが、テーブルを見上げるように立っていた。二人の視線の先には、酔った勢いで『エーリカ』を歌うビスマルクと黒森峰がいる。

 

「ふふ。良いわよ、行っておいで?」

「「!!」」

 

 大洗が微笑みながらテーブルに乗せてあげると、二人はトテトテと走って行った。金髪妖精さんはビスマルク、茶髪妖精さんは黒森峰へと向かう。

 

「あら? どうしたの?」

「ビスマルクさん。その妖精さんは、大洗さんによるとドイツの歴史が好きみたいなの。あなたの肩に乗ってみたいらしいわ」

「そういう事なのね。良いわよ、おいで~」

 

 こんな時でも紅茶を飲んでるリーナが、金髪妖精さんことエルヴィン妖精さんのことを話す。ドイツ好きという事にさらに気を良くしたのか、ビスマルクはエルヴィン妖精さんを肩に乗せてあげていた。

 一方、黒森峰は……。

 

「む? その妖精さんは……『あの隊長』か」

「黒森峰殿。姉妹の再会としゃれこんではいかがでしょう?」

「姉妹どころか、旧友との再会とも言えるだろうな」

 

 すると、黒森峰のポケットや服の合間などから、沢山の妖精さんが出てきた。全員みほ妖精さんに集まり、再会を喜んでいる。

 

「おや? 銀髪妖精さんがウズウズしてますな」

「この子はツンデレだからな。素直に表現できないのだろう」

「おぉ! 隊長妖精さん、そちらのお姉ちゃん妖精さんに抱きつきましたよ!」

「おぉ、よしよし。泣くな泣くな」

 

 みほ妖精さんとまほ妖精さんが羨ましいのか、泣きながら黒森峰の腕にしがみつくエリカ妖精さん。だが、軽く撫でてから二人を指さすと、姉妹はエリカ妖精さんを誘っていた。顔が一瞬輝いたかと思うと、彼女はトテトテと走って行った。

 

「はっはっはっ! 可愛らしいでありますな!」

「そういう知波単の妖精さんも、元気いっぱいじゃないか」

 

 別のテーブルに視線を移すと、各校の妖精さん達がパーティーをしていた。その中でも知波単チームは特に元気で、少々昭和チックな部分があるものの、宴会芸などを披露して盛り上がっている。

 

「ねえ、少し良いかしら?」

「指揮官か。構わないが……」

「なんで、大洗ちゃんの妖精さんと黒森峰ちゃんの妖精さんが、あんなに盛り上がってるの?」

「あぁ、その事か。前世でのことなんだが、大洗の隊長妖精さんは、かつては私の艦に居たんだ」

「あら、そうなの?」

 

 知波単は席を外し、大洗の手伝いへと回った。酒のつまみなら自分も手伝えるからである。何よりも、黒森峰と呉提督のコミュニケーションもあった方が良いだろうという考えがあった。

 

「でも、何で大洗ちゃんに移っちゃったの? 学校というくらいだし、いじめがあったとか?」

「…………」

(やば、地雷踏んだかも)

 

 みほ妖精さんが転校した理由を聞くと、彼女の顔は暗くなった。呉提督は、このことはタブーだったかと後悔する。

 

「……まぁ、似たようなものだ。だが、前世での戦車道全国大会の抽選会で、私は彼女と再会し……大洗とも出会った」

「へぇ~」

 

 

――――あなたが黒森峰さんですね?

――――貴様は? 新顔のようだが。

――――大洗女子学園と申します。……貴女の生徒の転校先でもあります。

――――なっ!?

――――絶対に、貴女に勝って見せますから。

 

 

 

「初めての出会いは、お世辞にも良いものとは言えなかったな」

「信じられないわね……。だって、会った途端にハグされてたじゃない?」

「そりゃあ、雨降って地固まるというやつだ。色々とあって、互いに気の知れた仲になれた。それだけのことさ」

 

 黒森峰は最後の一口となったビールを喉に流し込む。食堂は今もなお騒がしい。聖グロとビスマルクは紅茶とコーヒーの良さについて語り合い、知波単は大洗や横須賀提督と共に日本酒を飲んでいる。妖精さんたちは相変わらずの賑やかさだ。

 

「今でもこうして賑やかだからな。他の奴らも集まれば、大宴会になりそうだ」

「出会えると良いわね、他の学園艦娘に」

「出会えるさ。そう信じてる」

 

 そう微笑むと、再びジョッキにビールを注いだのだった。

 




読んでいただき、ありがとうございました。みなさんも、台風にお気をつけください。

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