学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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お気に入り登録、評価、感想をくださり、本当にありがとうございます!

感想欄で彼女の戦闘力に関してのコメントなどが多かったので、短めですが投稿しようと思います。

あらかじめ言います。戦闘シーンを期待してた方々はごめんなさい!


彼女の仕事

 自らを学園艦『大洗』と名乗った女性が着任して、2ヶ月程が経った。彼女は鎮守府に慣れたのか、今日も笑顔で洗濯物を物干し竿に掛けている。

 

 着任当初の歓迎会では、他の艦娘にとても驚かれた。特に翔鶴型の姉妹と、赤城と加賀の4人が驚いていた。

 

 

 そして彼女の役割だが…………“戦闘に出る”ことは不可能だった。

 

 

 そもそも、“人々が住む事”を前提として設計された艦である為、武装が殆ど無い。腕に装着されている甲板は“空母としての名残”なだけであって、艦載機の発艦は不可能だった。

 空母としては珍しく戦車を出すことは可能らしいが、それも『あくまで“競技用”である為戦闘には向かない』というのが、彼女の検査を担当した明石からの報告だった。

 

 陸・海・空、全ての戦闘が不可能な艦娘。それが、大洗という艦娘だった。

 

 では彼女はもうお役御免かというと、そうでもなかった。

 それは、着任して一週間が経った頃のことである……。

 

 

 

 

 

 

 

「大洗さんを遠征に?」

「はい。艦娘なのに海に出られないのは、いくら何でも可哀想なのです……」

 

 執務室で話をしているのは、提督と艦娘『電』。今日は第六駆逐隊のメンバーで遠征に行く予定だったのだが、そこに大洗を入れてみてはどうかと彼女は提案してきたのだ。

 

「電の言う事は分かるよ。だけどなぁ……」

「司令官さんは、大洗さんが嫌いなのですか?」

「そういう訳じゃないよ。その、な……。遠征へ向かわせる為の燃料が……」

 

 そう。大洗は、その巨大な船体故か、消費する燃料が尋常じゃない。大型戦艦とタイマン張れるのではないかと思うほどの消費量なのだ。仮に出撃させたとしても、武装を持たない彼女は敵にとって格好の的だ。攻撃を受ければほぼ確実に大破状態になるだろうし、ドックへ入渠させたらとんでもない待ち時間になる。リスクの割に得られるものが少ないというのが、今の彼女の評価なのだ。

 

「いつ大規模作戦が発令されるか分からない以上、そう無闇に資材を消費するわけには……」

「うぅ…………」

「うぐっ!?」

 

 電の泣きそうな表情に、提督も迷ってしまう。

 確かに資材の消費は惜しい。だが、大洗はその溢れんばかりの母性によって、既に多くの艦娘たちから慕われている。大洗が海に出られないことを不満に思う艦娘もいるだろう。下手に出撃を規制すれば、他の艦娘からの不平不満が爆発しかねない。

 

「うむむ……。だが、彼女の事をもう少し詳しく知るためにも、出してみるか……」

「本当ですか!?」

「あくまで、『お試し』だよ? もしコストに見合わない成果だったら、鎮守府の裏方に回ってもらうつもりだからね?」

「了解なのです!」

 

 こうして、第六駆逐隊に大洗を含めた5人が遠征へと向かった。

 

 

 暫くして彼女たちが帰投したのだが………。

 

 

「え、えーと、大洗さん? これは……」

「他の子達が持つには重過ぎたので~、私が持ちました~。こう見えて力持ちなんですよ~、えっへん!」

 

 提督の前には、漫画のように高く積み上げられた弾薬やボーキサイト、鋼材があった。燃料に至っては、彼女が出撃した際の消費量よりも多く手に入れている。

 普段遠征で手に入る量の2倍か3倍、いやそれ以上あるだろうか。敵が居ないルートを通った為に、彼女自身も損傷が無い。遠征成功どころではなく、()()()だ。

 

「まさかこんなに持ってくるなんて……」

「あわわわ……。これ、大本営からの支給も、暫くは必要なくなるんじゃないですか……?」

 

 唖然としている提督の横で、鎮守府の事務仕事などを担当している艦娘『大淀』が、大本営にどう報告するかで頭を悩ませていた。まさか別世界からの艦娘が建造されただけでも信じられないのに、戦闘は不向きでも資材の運搬が得意な艦娘というのは珍しいだろう。

 

「あの~、もしかして、何かいけないことをしちゃいましたか~?」

「い、いやいや! そんな事ありませんよ! むしろ大助かりです!」

「そうですか~!」

「今日はお疲れ様でした。 あとは、いつも通り休んでください」

「ありがとうございます~。それじゃあ、鳳翔さんのお手伝いをしに行ってきますね~」

 

 大洗はペコリと頭を下げると、鳳翔がいるであろう所へ向かっていった。取り残された提督は、ポツリと呟く。

 

「…………定期的な遠征なら、何とかなるかもしれないな」

 

 

 

 

 

 

 

 こうして彼女は、数週間に一回の遠征へ行くことが許された。もちろん、少しでも燃料を節約する為に、近場の遠征だ。

 では遠征をしてない間は何をしてるかというと……“鎮守府の家事”である。

 

「それでは~、今度は花壇の手入れをしましょうか~」

 

 彼女の肩や頭には、四人程の妖精さんがいた。一人はアホ毛が特徴的な妖精さんで、残り三人はおかっぱ頭の妖精さんである。

 彼女の妖精さんは、廃校の危機を救った『あの少女たち』の姿をしている者が多い。普段は自由気ままに暮らしているが、大洗のお手伝いはちゃんとこなすのだ。

 

「今日はいい天気ですね~。先にお布団でも干しちゃいましょうか~」

 

 今日も今日とて、彼女は笑顔を絶やすことなく家事に勤しむのであった。




というわけで、資源の運搬などが得意な艦娘という設定になりました。

本当に、戦車を出して戦うのを期待してた方々には申し訳ないです。

今のところ思い付いてる話はこれくらいなので、何かネタが思い付いたら投稿するかもしれません。連載はあまり期待しないでください。

読んでくださり、ありがとうございました。

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