学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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何事もなく過ごすことが出来ました。台風怖かったぁ………。

読者の皆様は、大丈夫でしたか?


呉提督は仕事が早い

 横須賀提督が帰るのを見送ると、呉提督は黒森峰と共に建物内へ戻る。すると、ガングートがやって来た。

 

「おはよう提督、黒森峰」

「おはよう~」

「おはよう」

 

 横須賀提督が来訪する前に、すでに他の艦娘には説明済みだ。一部の艦娘は黒森峰と口調が似てることもあって、すぐに意気投合した。ドイツ艦娘との仲は言わずともわかるだろう。

 

「今日の秘書艦は私だったな」

「そうだよ~。早速、建造やるから」

「し、指揮官! まさか、もう学園艦を建造するつもりか!?」

「ふっふ~。数が多い方が、黒森峰ちゃんも寂しくないでしょ?」

「そ、その気持ちは……少しだけあるが」

「それで良いのか黒森峰よ……」

 

 黒森峰は分かっていた。そのためだけに建造をするのではないと。

 パレードだ。横須賀提督の提案した軍事パレードへの参加艦を増やすつもりなのだ。理由はきっと、「盛り上がるから」とか「面白そうだから」に違いない。

 

「ロシア艦であるガングートと、学園艦の私……。出現する確率は高くなってるだろうな」

「そういうこと~。だから、やっておきたいのさ」

「黒森峰。確か学園艦というのは、海外の文化を取り入れてる艦もあるのだったな。だとすれば、今回提督が建造しようとしてるのは……」

「そうだ。ロシア文化を取り入れてる艦だ。使用する戦車はソ連戦車だぞ」

「おぉっ! どのような艦なのか楽しみだな!」

(だが問題は、プラウダは戦後に建造された艦をモデルにしている……。この世界で言えば未来艦だ)

 

 大洗から聞いた話によると、佐世保にいるというサンダースは、前世の歴代隊長の中で最も印象に残っていた娘をモデルに顕現したらしい。つまり、未来艦の娘は歴代隊長の誰かの姿をモデルに顕現する可能性があるのだ。

 そしてプラウダで有名な隊長と言えば……。そう考えてると、工廠に着いた。

 

「さーて、そんじゃあ回してみるか~」

 

 鋼材と燃料を大量に投入し、弾薬とボーキサイトは少なめに投入してみる。すると建造時間が表示された。

 

「ガングートちゃん。これ、何型の時間だと思う?」

「ちょっと待て、資料を確認中だ。……どのタイプにも一致しないな。初めて見るタイプだ」

「可能性はあり、ねぇ……。お茶でも飲もうか? 折角だし、ロシアンティーにする?」

「昼間から酒という訳にはいかんからな。すぐ用意しよう」

 

 建造完了までの時間、三人はティータイムを取ることにした。

 

「提督、ジャムだ」

「お~、ありがと~」

 

 呉提督がジャムを紅茶に溶かそうとする。

 

「ちょっと待て提督!」

「うぇ!?」

「ジャムを舐めながら飲む。これがロシアンティーだ」

「ほえ~。そうだったんだ」

 

 そんなやり取りをしつつ過ごしていると、建造完了のベルが鳴った。

 

「さぁ、開けるよ……」

「あぁ……」

 

 黒森峰は唾を飲み込む。これから再会するかもしれない娘は、前世では色々と因縁のある艦だった。大洗の隊長妖精さんの転校のきっかけでもあった、『豪雨の試合(黒森峰命名)』。彼女は忘れたことが無い。だがそれでも、『あの戦い』では頼もしい戦友であることに、間違いはないのだ。

 そして、開かれた装置の煙が晴れていく……。

 

 

「やっと呼んでくれたわね! 学園艦『プラウダ高校』の参上よ!」

 

 

「やはり来たか……!」

 

 黒森峰は、再会の喜びに顔を輝かせる。

 だが、呉提督とガングートはというと、困惑していた。

 

「「ちっちゃぁぁぁ!?」」

 

 そう。プラウダと名乗った学園艦娘は、学園艦であるにも関わらず、駆逐艦並の身長だったのだ。

 彼女の容姿は、金髪のショートボブに青い瞳が特徴だった。着ている服は深緑を基調としている。左胸元にはハサミと定規をXの字のように交差させたマークがあった。

 

「やはり、彼女の姿で顕現したか」

「ふふーん。あの子は、このプラウダを強豪へと導いた歴代最高の隊長よ? この姿で来てやるに決まってるじゃない!」

 

 前世の因縁とは裏腹に、再会を静かに喜ぶ二人。一方で呉提督とガングートは、小声で話していた。

 

「ガングートちゃん。あの子は確かに学園艦娘よ」

「どこがだ!? 学園艦は私よりも巨大なのだろう!? あれではまるで駆逐艦ではないか!」

「いいえ、彼女は大きいわよ。プライドと態度がね」

「…………そういう事か」

 

 確かに、やたらと胸を張ってドヤ顔で話すところなどは、彼女の性格を表してるように見えた。

 

「あ、そうそう。連れてきた子がいるのよ」

「何?」

 

 プラウダが左腕を突き出すと、バシュンッ!という音と共に戦車が現れた。黒森峰は驚いたようにその戦車の名を口にした。

 

「これは……BT-42じゃないか」

 

 BT-42と呼ばれた戦車には、右半分が青、左半分は白の下地に、中央に大きく「継」の字が入っていた。

 

「確か、この戦車は継続高校が保有していたな? プラウダからの盗品という噂もあったが、返してもらったのか?」

「違うわよ。『あっち』の方で継続のやつ、『ボクはそっちの世界に行けないから、この子たちを頼んだよ』って一方的に言ってきて、この戦車を渡されたの!」

「そうか……。継続の奴は来れないのか……」

 

 そこへ、呉提督が声をかけた。

 

「えーと、プラウダちゃん……で良いわよね?」

「ちゃん付けなんて馴れ馴れしいわね。まあ、このプラウダ様は寛大だから許してげるけど」

(別に呼び捨てでも怒らなかっただろ、お前……)

「さっきから言ってる継続ってのは……?」

「継続高校っていう学園艦があるのよ。フィンランド文化とかを取り入れた学校よ」

「なるほどね……。未だに、フィンランド艦が建造されたって噂は聞かないわ。たぶん、その継続ちゃんが来れないのは、そう言った理由よ」

「ふーん……」

 

 黒森峰は、プラウダが一瞬だけ寂しそうな顔をしたのを見逃さなかった。色々と関係は複雑そうだが、それでも『あの戦い』で駆け付けた仲間の一人でもある。来れないのは寂しいものがあるのだろう。

 

「大丈夫だ、プラウダ。面白いことがこの後待ってる」

「面白い事?」

 

 その後、呉提督からパレードの説明を受けたプラウダは、その身長に似合うほどの目の輝きを見せるのだった。

 

 

 

 

 

~おまけ~

 

「そう言えば、BT-42がお前の所に渡されたってことは、もはや返してもらった事にして良いんじゃないか?」

「何言ってるのよ。このプラウダ様は寛大なのよ? そんなこと、気にしないに決まってるじゃない! だから継続の戦車のままで良いの!」

「やはり、そういう態度なのか……」

 

(それに……継続の戦車があれば、もしかしたら建造で……)

 

 プラウダの密かな思いは、誰にも聞かれなかった。

 




というわけで、プラウダ登場です! そして残念ながら継続高校は、戦車のみがパレードに参加になりました。ですがプラウダ本人は諦めてない様子……?

ですが、分かった方はいるんじゃないでしょうか? 継続高校が艦娘化したら……ボクっ娘ですw

それでは、次回もお楽しみに!

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