パレードが終わり、多くの観客が笑顔で帰っていった。中将たちも、軍内に潜む厄介者をマークすることが出来たらしく、大成功と言っても良いだろう。学園艦娘一同はその日、横須賀鎮守府にて打ち上げをすることになった。
「みんなお疲れ様~!」
『『『『お疲れ~!!』』』』
大洗の音頭と共に、ジョッキが心地よい音を立ててぶつかり合った。
「いやー、今日は成功も成功、大成功だったな!」
「そうかしら? 私から見て大成功ではないと思うけど」
「え? プラウダは不服なのか?」
「大成功じゃなくて、大大大成功よ!」
「あっはっはっ! そうだな! 言われてみればそうだ!」
普段は厨房に回ることが多いアンツィオや大洗も、今日ばかりは酒の席に座る。アンツィオは隣に座るプラウダと共に、成功を祝ってビールをグビグビと飲んでいた。
「それにしても、改めて見ると壮大だな」
「いずれも『あの戦い』に集結したメンバーだったりするからね~。あ、注ぐわよ」
「ありがとう、サンダース。そう言えばフリー。お前が大洗と初めて会ったのは、無限軌道杯だったな?」
「そうよ~? 生徒ちゃんたちは喧嘩ばかりしててね~。試合の時だけでも仲良くできたと思ったんだけど~……。でも、大洗ちゃんと会えたおかげで、あの子たちもきっかけを持てた。そう思ってるわ~」
「その通りだ。大洗は、私たちにきっかけを与えてくれた艦だな」
黒森峰、サンダース、フリーが話題にしている人物を見る。……そして、ぎょっとした。
「ふえ~。えへへ~。体がポカポカします~」
「大洗殿!? しっかりしてください!」
「ビールはともかく、熱燗がトドメになっちゃったみたいね……。手を貸すわ、知波単さん」
「感謝であります、リーナ殿……って、大洗殿!?」
頬を赤くした大洗は、ふにゃふにゃと立ち上がる。この時学園艦娘たちは、嫌な予感がした。
「みなさん! 私は嬉しいですヒック! 皆さんと会えたことに感激しています!」
「プラウダ。私は嫌な予感がするぞ」
「私もよ、黒森峰」
「ていうか、大洗ちゃんってあんなに大きな声出せたのね~」
「酔ってる時限定でありましょう」
「サンダース、リーナ。逃げるぞ! 嫌な予感がする!」
「え、えぇ!」
「え? みんなどうしたの?」
全員が適当にはぐらかしてこの場を離れようかと思ったが、それよりも前に大洗が宣言した。
「みなさん! 踊りましょう!」
『『『『…………は?』』』』
横須賀、佐世保、呉の提督たちは学園艦娘たちの様子を見に来た。せっかく全員集合したんだからという理由で、提督と艦娘たちとで分かれて打ち上げをしていたのだ。酒や食事で程よく気分が良くなったところで、彼女たちの居る部屋へ向かう。
「……ん? 何か騒がしいな」
「酒に弱い子が暴れてるんじゃない~?」
「何やら音楽が聞こえますが……これは、お祭り?」
ドアをそっと開けた瞬間、三人は驚きのあまり固まった。
学園艦娘たちが、ピンク色のぴちぴちスーツを着て踊っていた。
「な、何やってんだあいつ等……」
「佐世保くんは見ちゃダメ! 刺激が強すぎるから!」
「わっぷ!? 真っ暗です~!}
呆然とする横須賀提督。慌てて後輩の目を手でふさぐ呉提督。真っ暗になった視界に慌てる佐世保提督。
彼らは知らないが、学園艦娘たちが踊っているのは『あんこう踊り』と呼ばれるものである。
「くっ……! 大洗を酔わせてはいけない……!」
悔しそうな顔で、それでいながら頬を赤くしている黒森峰が踊っている。その悔しそうな顔が、どこかいけない雰囲気を出していた。
「まさか大洗さんが下戸だったなんて……」
どこか諦めたように、そして恥ずかしそうに踊るリーナ。ふくよかな胸が揺れるその様子は、佐世保には刺激が強いだろう。
「何で私まで踊らないといけないよ!」
恥ずかしそうに怒鳴るプラウダ。幼い体にぴちぴちスーツは、いろんな意味で犯罪臭がする。
「ふえ~ん! 恥ずかしい~!」
素直に恥ずかしさを口にするフリー。金髪のお嬢様が色々と凄い格好で踊っているのは、見る者を仰天させるだろう。
「こうなったら、羞恥心はかなぐり捨てましょう!」
「そうよ~! それに案外楽しいじゃない!」
「お前、結構ノリノリだな!?」
もはや恥ずかしさは無いと言わんばかりに堂々と踊る知波単。キリっとした顔で踊るその姿は、やはり美しい。
他とは違い、笑顔で楽しそうに踊るサンダース。めちゃくちゃスタイルが良い彼女の踊りは、いろんな部分が揺れていた。
そんなサンダースにツッコむアンツィオ。彼女は着やせするタイプなのか、なかなかのスタイルだった。当然、彼女たちの妖精さんも、全員が同じスーツを着て踊っている。
そんなメンバーの中で一番楽しそうに踊っている娘が一人。
「うふふふ~! 楽しいですね~!」
酔いで頬を赤く染め、踊りで銀髪を揺らす大洗。そんな彼女の笑顔は、飛び散る汗と共に輝いていた。
最後はあんこう踊りで締めましたw
さて、もう少し書きたいことがありますので、次回をお楽しみに。ちょっとした予告を書くつもりです。