事件の始まり
「それでは皆さん~。帰りましょう~」
大洗は、いつものように遠征で資源を運んでいた。彼女の声に、暁たちは「はーい!」と返事する。
学園艦娘たちによるパレードは、大成功に終わった。彼女のことが多くの国民たちに知られ、“このような未来もあるのだ”と希望を与えた。
彼女たちの存在を認めない者が上層部の一部にいたようだが、それも元帥たちによってマークされているおかげで、妨害といった事態も起こらなかった。
彼女たちは、時に深海棲艦の撃退をしながらも、平和を謳歌していた。
「……あら?」
大洗は何かに気付いた。遠くに黒い影が見えるのだ。
「暁ちゃん。あれって、もしかして深海棲艦かしら~?」
「え!? あ、本当だ。でもあれだけ遠くなら無視しても――――」
その瞬間、黒い影は一瞬にして距離を詰めてきた。その驚異的なスピードと“ある事”に、暁たちは一瞬だけ動きが止まってしまう。
その敵は軽巡ツ級であったが、
「け、軽巡ツ級のflagship!? 何でこんなところに!?」
ツ級は暁たちには目もくれず、大洗に接近する。攻撃してくるのかと思い彼女は甲板で防御しようとするが―――
「悪いな。ちょいと来てもらうぜ」
「っ!? あなた、言葉が……!」
深海棲艦の中には喋る個体もいると聞いていた。しかしそれは、“鬼”や“姫”と呼ばれる個体であって、〇級とつく個体が喋ったというのは聞いたことが無かった。
「ふんっ!」
「あっ――――」
ツ級は器用にも大洗に当て身をした。気を失い倒れそうになる大洗を、ツ級は支える。
「艦娘共! とっとと帰りな。お前等に用はねえんだよ」
「ふざけないで! 私たちの大洗さんを返して!」
「私たちだって、いつも大洗さんに守られてばかりじゃないのです!」
雷がツ級に啖呵を切り、それを機に電、暁、響が砲を構える。だが相手は呆れたようにため息をつく。
「はぁ~。ったく、動くんじゃねえぞ。当たるからよぉ!」
ツ級が砲撃を行なう。しかし、撃ったのは暁たちではなく海面であった。激しい水しぶきと、着弾と爆発による衝撃波で、思わず目を瞑ってしまう。
攻撃が治まると、すでに大洗はツ級に連れ去られていた。
「ま、待って!」
「暁ちゃん、敵!」
暁が追おうとするも、突然現れたもう一体のツ級、それもelite級が立ちはだかった。
「くっ……!」
確実に直撃する距離で砲を構えられ、暁はそれ以上動けなかった。そしてツ級eliteは、リーダーであろうflagshipの進んだ方角へと去っていった。突然の出来事にしばし呆然となったが、たちまち暁たちは混乱する。
「ど、どうしよう! 大洗さんが!」
「急いで提督に知らせた方が良い! 緊急事態だ!」
「響の言う通りよ! 電! 急いで提督に連絡! 信じられないことかもしれないけど、ありのまま起こったことを伝えるのよ!」
「は、はい!」
横須賀鎮守府の執務室。そこで書類仕事をしていた提督だったが、突如バンッ!と開けられた扉に、怪訝な顔になる。
「大淀? どうしたんだ、そんなに息を切らして」
「提督! 遠征に行っていた大洗さんが……!」
「……何かあったのか?」
「遠征に行っていた大洗さんが、深海棲艦に拉致されたとのことです!」
「何だと!?」
このニュースは、横須賀提督に大きな衝撃を与えたのだった。
読んでくださり、ありがとうございました。
次回も、お楽しみに!