それでは、どうぞ!
あと、みぽりん誕生日おめでとう!!
大洗が拉致されたことは、すぐに呉と佐世保にも伝わった。
~呉鎮守府~
「大洗が……」
「深海棲艦に……」
「拉致された、だと!?」
プラウダと黒森峰の二人が、驚いたように声を上げる。
「遠征に行っていた所を、軽巡ツ級、それもflagshipが拉致したみたい。あのルートでそんな敵は出ない筈なんだけど……」
呉提督が「信じられない」と言った様子で唸っている。すると黒森峰が執務室から出ていこうとした。
「どこへ行くつもりよ?」
「決まってるだろう! 彼女を助ける!」
「何言ってんのよ! 相手は敵の中でも強力な個体なのよ!? 大体、遠征にだって様々なルートがあるじゃない!」
「彼女を放っておけというのか!」
「あんたが行った所で、道に迷うのがオチよ!」
「何だと!」
「何よ!」
すると、机をバンッ!と叩く音がした。呉提督は笑顔だが、まるで般若のような恐ろしいオーラが見える。
「あなた達? 意見がぶつかるのは構わないけど、喧嘩してる場合じゃないでしょ~?」
「う、ご、ごめん……」
「……すまない。少し、冷静さに欠けていた」
「よろしい」
二人が大人しくなった事に頷くと、現段階での指示を与える。
「一先ず、プラウダちゃんの言う通り、今は大人しくしてた方が良いわ。何の情報も無い以上、むやみに動いたら黒森峰ちゃんが怪我するかもしれないからね」
「……了解だ」
「私はこれから、横須賀の奴に詳しく話を聞いてくるね。プラウダちゃん、黒森峰ちゃんを見てあげて」
「分かったわ。ほら黒森峰、コーヒーか何か飲んで落ち着きましょ」
「……あぁ」
二人が執務室から出ていくと、呉提督は苦笑した。
「急いで大洗ちゃんの居場所を特定しないとねぇ……」
~佐世保鎮守府~
「何だってぇ!?」
「それは確かな情報なの!?」
アンツィオとサンダースも大きな声で驚いていた。その音量に耳を塞ぎつつ、佐世保提督は事情を話す。
「はい。大本営にも、既に通達済みらしいです」
「何てことだ……。確か大本営の中には、私たちのことを快く思わない奴も居るのだろう?」
「やむを得なかったそうです……。何せ、遠征ルートにflagship級の敵が現れたとなれば……」
「他の鎮守府に被害が出る前に、そのルートを封鎖する必要があるものね……」
「私たちで何とかできないのか!?」
「無理です。どこへ連れ去られたかも判っていないのに、出撃させることは出来ません」
「クッ……! ドゥーチェでありながら、何てザマだ……!」
「悔しいわね……」
すぐに助けに行くことが出来ない事に、サンダースとアンツィオは歯痒い思いをしていた。そして佐世保提督は、先輩の身を案じる。
(敵に寝返る可能性を危惧して“大洗さんを轟沈させる命令”が発動されたら……。先輩は大丈夫でしょうか……)
~横須賀鎮守府~
「う~む……」
「提督殿、これは?」
「大洗が今回の遠征で使ったルート、その周辺の海図だよ」
提督が海図を広げて唸っていると、知波単が尋ねた。覗いてみると、大洗たちが通ったであろうルートには赤線が引かれている。すると、何かに気付いたように海図の一ヵ所を指さした。
「彼女たちのルートから少し離れたところに、島がある」
「そこそこの大きさでありますな」
「負傷させた状態ではなく、当て身で気絶させてから拉致したそうだ。となれば、そう長くは航行出来ないだろう。敵のルートは……こうかな?」
黒いペンで無人島から赤い線にぶつかるように、線を引いた。島から最短距離の線にもなっている。
「では、この島へ救助隊を派遣すれば良いのでは?」
「今すぐは無理だ。あくまでこれは推察でしかないし、何より大本営からの許可が下りなければ……」
「こんな時に、上層部は何をしてるのですか!」
知波単が声を荒げる。それに対して横須賀提督は、諦めたようなため息を吐いた。
「大洗を救うかどうかを、考え中じゃないか? 今回ばかりは反対派の連中にも隠せない案件だからな」
そう言うと、すっかり温くなってしまったお茶を一気に飲んだ。
読んでくださり、ありがとうございました。
それでは、次回もお楽しみに!