学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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お待たせしました。今回は、サブタイトル通り、大本営の様子をお送りします。

1日遅れですが、愛里寿ちゃん誕生日おめでとう!


紛糾する大本営

 大本営の会議室。普段は厳粛な空気で行われる会議も、今回ばかりは怒号が飛び交うものと化していた。

 

「既に洗脳されてる可能性がある! 即刻、彼女ごと敵を粉砕すべきだ!」

 

 軍服を着た大柄な男が大声で叫ぶと、後ろにいる軍人たちも「そうだそうだ!」と賛同する。彼らは反学園艦娘派の軍人だ。彼らは、“敵が学園艦を鹵獲したのは、自身の手駒にするためである。そうなる前に彼女を轟沈させるべきだ”と主張している。

 

「学園艦の象徴たる大洗が死亡したとなれば、国民が黙っていませんぞ!」

 

 眼鏡を掛けた軍人が叫ぶと、後ろの方から「そんな事も分かんねえのか!」とヤジが飛ぶ。彼らは学園艦娘と共存すべきと唱えている者たちである。彼らは“まだ洗脳されているとは言えない。手遅れになる前に救助隊を編成すべきだ”と主張しているのだ。

 

 反対派の人間が、他の者が見たら腹が立ちそうな笑みを浮かべる。

 

「ほ~う? では、彼女が洗脳されてないという証拠はどこにあるんです? 確かだと言える証拠は?」

「そ、それは……!」

「それで敵に寝返っていたらどうする! 海からだけでなく、陸からも攻撃されるかもしれないのだぞ!」

 

 大洗を始めとする学園艦娘たちは、尋常じゃないほど防御力が高い。そんな艦娘が深海棲艦化したらどうなるだろうか? 大規模作戦で確認された強力な個体の中には、バリアを張る者も居た。そのような能力も付与されたとしたら? 例え武器を持っていないとしても、連合艦隊の迎撃を物ともせずに、本土へ向かって進行するだろう。

 そして、上陸したら最後。学園艦娘が操る戦車たちによって、陸上まで攻撃される恐れがあるのだ。

 

 一瞬だけ言葉に詰まった肯定派だったが、すぐに反論した。

 

「では逆に伺いますが、洗脳されているという確証はあるのですか!」

「何だと!?」

「あなた方が学園艦娘のことを快く思っていないのは、既に我々も知っています! 適当な理由をつけて彼女らを轟沈させる気ではないですかな!?」

「貴様ぁ! 国の危機だというのにその様な事を言うか!」

 

 会議室は、一触即発な空気に満ちていた。そのような空気でありながら、中将と元帥は喧嘩腰になる事も無く、ただ黙って両派閥の主張を聞いていた。

 

「元帥。これでは……」

「うむ……」

 

 悔しいが、今回ばかりは反対派の意見もあながち間違っていなかった。下手すれば国民を危機に晒すことになる。だからと言ってすぐに攻撃するのも憚られる。厄介なことに、両陣営とも“大洗が洗脳されてるか否か”という事を決定づける証拠を持っていなかった。だから会議は平行線のままなのだ。

 

「このまま手をこまねいていては、我々が決定を下さぬ内に、横須賀提督が無断救出を行なうでしょう」

「彼は、艦娘を無下に扱うことはしない。その優しさ故か……。しかしそれでは、仮に救出できたとしても敵を刺激することになる」

「はい。敵は今の所、軽巡ツ級のeliteとflagshipのみ確認されていますが、その他の強力な個体が居ないとは断言できません」

「最悪、“鬼”や“姫”も居るかもしれんな……」

「いずれにせよ、まずはこの空気をどうにかしないといけませんな」

 

 二人が視線を戻すと、乱闘が始まりそうな空気へと変貌していた。その事に溜め息を吐きつつも、元帥は立ち上がる。

 

静粛に! 攻撃派の意見も然りであり、救出派の意見も然りである。しかし諸君、考えてみたまえ。既に学園艦娘という存在は、一部の国民から“平和の象徴”として見られている。その彼女を見捨てたらどうなる? 国民たちは『平和の象徴を捨てた』と我々を罵るだろう。我々は国民を深海棲艦の脅威から守るためだけに存在するのではない。ちと臭い台詞かもしれないが、国民に希望を与えるのも我々の務めではないかね?」

 

 元帥のこの言葉に、この場にいた者は皆口を閉じた。元帥は続ける。

 

「故に私から提案をしよう。学園艦娘を所有する横須賀、佐世保、呉の各鎮守府に救出任務を与える。その他の各鎮守府は深海棲艦の襲撃に備え、警戒態勢を取るのだ。彼女が健在という事であれば、救出する。しかし仮に敵の手に落ちていた場合は、至急連合艦隊を編成し、迎撃する。これでどうかね?」

 

 両派閥とも、元帥からの提案に対して派閥内で相談を始める。そして全員が元帥へと向き直ると、一斉に返事をした。

 

『『『『異議なし!!』』』』

 

 元帥が頷いたことで、この会議は解散となった。部屋に元帥と中将が残る。

 

「中将。横須賀提督君を呼んでくれ。私から直接命令を与えよう」

「はっ!」

 

 中将が敬礼すると、部屋から出て行った。元帥は窓から見える海に目をやる。

 

「彼女が無事で居てくれると良いが……」

 

 彼はポツリと呟いたのだった。

 




読んでいただき、ありがとうございました。

それでは、次回もお楽しみに!

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