それでは、どうぞ!
横須賀鎮守府の通信室。そこには四人の艦娘が居た。リーナ、知波単、フリー、そして大淀である。リーナは椅子に座って紅茶を飲み、知波単とフリーはまるで臣下のように側に立ち、大淀は巨大な機械の前で暗号を打ち込んでいる。
「“秋の日の ヴィオロンの ため息の ひたぶるに 身にしみて うら悲し 北の地にて 飲み交わすべし”」
「この暗号も、久しぶりでありますな」
リーナの暗号を、大淀は佐世保と呉に送る。彼女からすれば不思議な詩だが、これは学園艦娘たちにとっては“大きな意味”を持っていた。
「再び集合ね~」
扇子を優雅に扇ぎながら、フリーはクスクスと笑う。彼女は“あの戦い”には参加していなかったが、どういう戦いだったかは知っている。だからこそ、今度は自分もその輪に入ることが出来るのだと内心喜んでいた。
紅茶を飲んでいたリーナは、ゆっくりと目を開けた。
「今回は戦車道が絡むような“お茶会”ではないわ。例えるならば、“大宴会”よ」
その言葉に、知波単とフリーは頷き、気を引き締めた。
元帥から呼び出しを受けた横須賀提督は、内心震えていた。少しでも早く救出に向かえるように、リーナに「佐世保と呉に、救出作戦を行いたい旨を伝えてくれ」と頼み込んでいたのだ。まさか、それがバレたのだろうか。緊張しつつも、ドアをノックした。
「横須賀提督です」
『入りたまえ』
「失礼します!」
動きが少しぎこちなくなる。それを見ていた元帥は苦笑した。
「そう緊張しなくても良い。君を呼んだのは、罰ではなく“任務”を与えるためだよ」
「任務、でありますか」
「うむ。では、改めて言い渡そう、形から入るのも大事だからな」
ゆっくりと立ち上がり、コホンと咳払いをすると、真剣な顔で横須賀提督を見据える。その力強い眼差しに、横須賀提督の気がさらに引き締まる。
「君に、『大洗救出作戦』の全指揮権を与える」
「……っ! よろしいので、ありますか……?」
「全ては私が責任を取る! 元帥直々に、横須賀、佐世保、呉の各鎮守府に命ずる! 学園艦『大洗』を救出せよ!」
「はっ!!」
ついに、発動された。元帥が宣言したこの瞬間から、『大洗救出作戦』がスタートした。しかも、佐世保と呉という、強力な仲間にも同じ任務が与えられたのだ。
「彼女は、我々にとって希望の一人だ。失う訳にはいかん……。だからこそ、頼む! 大洗を救ってくれ!」
「げ、元帥!? 頭をお上げください!」
深々と頭を下げる元帥に、横須賀提督は慌てた。やがてゆっくりと頭が上がる。
「君が大本営に資源を送ってくれていたおかげで、現在の備蓄量は凄まじい事になっている。出撃の際に大量の資源が必要になったら、遠慮なく言ってくれたまえ。無条件で補給させよう」
「あ、ありがとうございます!」
元帥のありがたい言葉に、今度は横須賀提督が深く頭を下げたのだった。
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次回もお楽しみに!