学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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ご指摘を受けて、少し大洗さんの設定を練り直そうと思います。ですが、今回はその前に思いついたお話です。

それでは、どうぞ!


艦娘と妖精さん

 大洗は、元が学園艦なだけあって、妖精さんの人数も多い。しかし全員が必ず大洗の近くにいるとは限らない。初めて見る景色に興味を惹かれるのか、鎮守府の色々なところを歩いているのだ。

 そして、鎮守府内をうろついていると、必然的に他の艦娘との接点も出来てくる。

 今回は、その一部分を紹介しよう。

 

 

 

 

 

 

「今日は何しようかな~」

 

 そう呟きながら廊下を歩くのは、夕立だ。今日は遠征も出撃も無く、かといって戦術に関する授業があるわけでもない。即ち暇なのだ。

 

「ぽい?」

 

 夕立の視線の先に、妖精さんがいた。癖毛が特徴的なその妖精さんは、トボトボと歩いては立ち止まって、キョロキョロと辺りを見回している。

 

「もしかして、大洗さんの妖精さんっぽい?」

 

 着ているセーラー服で、夕立は誰の妖精さんなのか判った。彼女も大洗にはよくお世話になっていた。食堂では美味しいご飯を作ってくれるし、出撃している間には部屋の掃除や洗濯。布団干しまでやってくれている。この間なんかは、ほつれてしまったお気に入りのぬいぐるみを直してくれたのだ。

 

「迷子っぽい?」

「!」

 

 妖精さんに声を掛けると、驚いたように飛び上がった。夕立は少しでも怖がらせないように、しゃがんで話し掛ける。

 

「大洗さんとはぐれちゃったっぽい?」

 

 尋ねると、フルフルと首を横に振った。すると彼女のお腹から、キュウ~という可愛らしい音が鳴る。

 

「あ! お腹が減ってるっぽい?」

「!」

 

 今度は首を縦に振ってくれた。どうやらお腹が空いて食事処を探してたようだが、見つからずに迷子になっていたようだ。

 

「じゃあ、間宮さんの所に行こっか! 私も間宮さんのお菓子食べたいっぽい!」

「!!」

 

 笑顔で掌を差し出すと、癖毛妖精さんは嬉しそうに飛び乗った。夕立がそのまま肩に乗せると、更にご機嫌になった。

 

「じゃあ、レッツゴ~!っぽい!」

 

 二人は大好きな菓子の味に胸を膨らませて、間宮の甘味処へ歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 鎮守府にある駆逐艦の寮。そこの一室、望月の部屋は白熱していた。

 

「むむむ……! 中々やるねぇ!」

「ニャー!」

 

 望月はガチャガチャとコントローラのボタンを連打しまくるが、瓶底眼鏡を掛けている妖精さんが素早くコマンドを入力してくるものだから、中々コンボから抜け出せない。

 

「あー負けたー!」

「ニャフン」

 

 フンスー!と自慢気になる妖精さん。その後ろでは、グレーの髪をした妖精さんと桃の眼帯を着けた妖精さんが拍手をしていた。望月は悔しくなる。

 

「ぐぬぬ……。こうなったら別のソフトで勝負だ!」

「ウニャン」

「あー、でもその前に片付けるかぁ……。面倒臭いけど」

 

 部屋を見回すと、積み重なってる本に畳んでない布団、出しっ放しのゲームソフト等が散らばっている。片付けるのは確かに面倒臭いが、“放置してしまうと後が大変だ”というのは、望月の経験談だ。

 

「よっこらしょっと。……お? 妖精さんも手伝ってくれるの?」

 

 三人の妖精さんがコクコクと頷いた。そしてそのまま、積み重なっている本へと向かう。

 

「ちょっ、ダメダメ! 本は重いから……」

「ぴよー!」

「ニャー!」

「モモー!」

「……へ?」

 

 本の山は重過ぎるだろうと思って止めようとした望月だったが、三人だけで持ち上げてしまったことに唖然とする。そんな望月を余所に、三人は掛け声で歩幅を合わせながら、本棚へと向かっていった。

 

「ゲームも上手くて、力持ちとか……。羨ましい」

 

 明日から筋トレでもしてみようかなと思う、望月であった。

 

 

 

 

 

 

「またネジが欲しいの? はい、どうぞ」

「♪」

 

 工作艦の明石は、工廠にやって来た妖精さんにネジを渡す。この妖精さんは橙色の作業着を着ているが、大洗の妖精さんなのだ。そしていつも4人で行動している。

 

「思えば、あの子たちとの出会いは衝撃的だったなぁ」

 

 明石はポツリと呟く。

 最初の出会いは、それはもう驚いたものだった。いつものように工具のチェックをしようと工廠へ入ると、何やら工廠の妖精さん達が騒がしい。何があったのか尋ねれば、案内されたのはネジが大量に入っている木箱だった。中を覗くと、ネジの海に上半身を突っ込んで足をバタバタとさせている妖精さんが。

 

『うわぁぁぁ!?』

 

 驚いたものの、他の妖精さんが「早く助けてあげて」と言うように慌てているので、急いで助けてあげた。1人だけかと思いきや、まるでゴボウのようにスポンッと4人一気に出てきたのはもっと驚いたが。

 

 それからというもの、この4人の妖精さんはちょくちょく工廠に来るようになった。たまにネジやナットといった“部品”を欲しがるので、あげている。

 

「そう言えば、あの子たちっていつも何してるんだろう?」

 

 ちょっとした好奇心で、日焼けしている妖精さんの後を尾いていくことにした。

 

「え……? あれって、戦車?」

 

 後を尾けてから暫くして、鎮守府の中庭に辿り着いた。そこに鎮座しているのは一輌の“戦車”。それを4人で整備している。その戦車が何なのか、明石は知っていた。

 

「あれって確か、ドイツのポルシェティーガー……だよね? 何で大洗さんがドイツの戦車を持ってるの……?」

 

 この時の明石は、“大洗は日本の艦だから日本の戦車を持ってるだろう”という考えだった。戸惑うのも無理はない。

 因みに、何故明石がドイツ戦車のことを知ってるか?というと、ドイツの艦娘が発見されて以来、大本営はドイツの資料も取り寄せるようになったのだ。この他にもイギリスやイタリア、フランス等の資料も取り寄せている。

 

「……今度、戦車を走らせることが出来ないか相談してみよっと」

 

 明石は4人の様子を見守りながら、そう決めるのだった。

 




出てきた妖精さんは、秋山優花里、アリクイさんチームの皆さん、レオポンさんチームの皆さんでした。

これからも、思い付き次第書いていこうと思いますので、よろしくお願いします。

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