それでは、どうぞ!
(あれ……? 私は……)
風が頬を撫でる。最初はおぼろげだった視界が、段々と鮮明になっていく。
(そうだ、暁ちゃん達と遠征に行っていて、いきなり敵が現れて……)
自分に肩を貸している者が、左右にいる。ゆっくりと右に視線を向けると、向こう――軽巡ツ級も気付いたようだ。
「おっ、ようやく起きたか」
「ここは……」
「安心しろ。そんなに離れてねえよ。つか、お前が重くて―――」
「私はそんなに重くないです! 船だった頃の体が重いだけです!」
すると、左にいた軽巡ツ級(こちらはeliite)が、何かをflagshipに呟いた。
「―――――――――」
「え? 『相手が同性でも体重の話はNG』? 分かったよ、あたしが悪かったって……」
どうやら、この二人は仲が良いらしい。eliiteは聞き取れないほどの小さな声で話しているが、flagshipの方は聞き取って反応している。
(何でしょう、この違和感は……)
妙な違和感を覚えながらも、大洗は二人に連れていかれる。また「重い」と言われては堪らないので、途中からは自分で航行した。どのルートを通っているのかハッキリしない以上、抵抗して振り切ることは出来ないだろう。
「そろそろ着くぞ」
やがて、島影が見えてくる。岩礁しかないような小島ではなく、浜辺や森なども見える立派な島だった。
(私、どうなるのでしょうか……)
不安を胸に、上陸した。
浜辺と森は、そこまで離れていないようだ。ツ級たちも上陸すると、茂みがガサガサと揺れた。警戒する姿勢を取る間もなく、その音の正体が露わになる。
「お帰りなさいです! お待ちしてましたよ~」
出迎えたのは、重巡リ級だ。彼女も、flagship特有の黄色いオーラを纏っている。
「……他の奴らはどうした?」
「チ級さんは“姫様”の遊び相手に、ル級さんはヲ級さんと一緒に島周辺の散策、カ級さんは『食べ物を獲ってくる』と言って近くへ素潜りに行きました」
「あいつ等……」
ツ級flagshipが呆れたようにため息をつくと、彼女の肩を相棒のeliteが軽く叩いた。
「――――――――」
「『連れ戻してくる』。頼むぜ。何なら拳骨ぶちかましても良いから」
eliteが頷くと、ノッシノッシと歩いて行った。
「ほら、あたし達も行くぞ。……どうした?」
大洗はポカーンとしていた。彼女たちは強力な個体である筈だ。だというのに、まるで“普段の自分たち”のような光景を見せているのだ。
「あなた達は、一体……」
「んな事は別に良いだろ。とっとと来いよ。『姫様に会わせる』ってのが、お前をここに連れてきた目的だからな」
「“姫様”……?」
「私はeliteさんと一緒に、ル級さん達を連れ戻してきますね~!」
そして、森の奥へと二人は歩き始めた。大洗は、気になっていたことを尋ねる。
「あの、先程から言っていた“姫様”というのは、一体……」
「あたし達が守るべき存在……としか言いようがねえな」
一時間もしない内に、何やらはしゃぎ声が聞こえてきた。
「高いか~?」
「たかーい! でもル級がもっとたかーい!」
「ぐっ、やはり肩車の高さではアイツに勝てないか……」
雷巡チ級(もちろんflagship)が、小さな女の子を肩車していたのだ。その様子はまるで、妹と遊んであげてるお姉ちゃんのようだ。
「でも肩車好きー!」
「おぉ、そうかそうか~!」
「……あっ!」
ふと、大洗と目が合った少女は、チ級から飛び降りると、そのままトテトテと走ってきた。
少女は白い肌に、赤い目、グレーの髪をしている。服はワンピースのような物を着ている。そんな少女は……大洗に抱きついた。そして、眩しい笑顔でこう言った。
「会いたかったよ、
「…………え?」
読んでいただき、ありがとうございました。
なぜ少女は、大洗のことをお母さんと呼ぶのでしょうか。
それでは、次回もお楽しみに!