学園艦が鎮守府に着任しました   作:G大佐

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前回、謎の少女に「お母さん」と呼ばれた大洗さん。一体どうなるのでしょうか。

それでは、どうぞ!


謎の少女

「私が……お母さん?」

 

 深海棲艦の島で出会った少女に、いきなり「お母さん」と呼ばれて困惑する大洗。だが、当の本人はお構いなしだ。

 

「ずっとね、ずっと会いたかったの! ツ級、ありがとう!」

「どういたしましてだぜ、姫様」

「ま、待ってください! 私がお母さんって、どういう事なんですか!?」

「あ? 知らねえよ。姫様がお前を見て『お母さん』って言ってたから連れて来ただけだ」

「そんな無責任な……! いきなり連れてこられて、いきなり『お母さん』と呼ばれるなんて……!」

 

 すると、服をクイクイと引っ張られるのを感じた。下を見ると、寂しそうな顔をしている姫の姿があった。

 

「お母さん、ごめんなさい……」

「え?」

「私ね、お母さんとは“血が繋がってない”って事は、知ってるの。でもねでもね、お母さんはいつも『夢』に出てくるの」

「夢……?」

「私をね、いつも撫でてくれるの。だから、ずっと会いたかったの……」

「姫ちゃん……」

 

 最初は断ろうと思っていた大洗だったが、目の前の少女の寂しそうな顔を見て、その気が薄れていった。自分は前世から人々見守り続けてきた。そしてこの世界でも、鎮守府の艦娘たちを、文字通り“娘”として見てきたのだ。相手は深海棲艦である。だが……見捨てることなど、出来る筈がなかった。

 

「……分かりました」

「お母さん……?」

 

 そっと、優しく姫のことを抱きしめる大洗。

 

「いつか、私の仲間がここへ来るでしょう。でも、その間は……私は貴女のお母さんですよ」

「……うん!」

 

 ギューッと抱きしめ返す姫。その光景に、ツ級とチ級は微笑ましく見ていた。

 

「癒されるな」

「あぁ。……ところで、いつも一緒にいるeliteの奴はどうした?」

「リ級と一緒に、他の奴らを連れ戻しに行っている。そろそろ来るんじゃねえの?」

 

 すると、遠くから賑やかな声が聞こえてきた。

 

「もう~。拳骨することないじゃない~」

「私まで巻き込まれたのは納得いきません……」

「まぁまぁ、私が獲ってきた貝とか食べて、元気出しましょう~」

「――――――――」

「えっと、『今日は姫様が喜ぶ日』と言ってるんですかね?」

 

 上から順に、戦艦ル級、空母ヲ級、潜水カ級、そして先ほどのツ級eliteと重巡リ級flagshipである。大洗が驚いたのは、()()()()()()3()()()f()l()a()g()s()h()i()p()()()()ということだ。

 

「戻りましたよ~!」

「おう、ご苦労さん。お前ら! 今日からしばらく、この艦娘が姫様の母親だ!」

「あら~、この方が~?」

 

 興味深そうに見るのは、ル級だ。他の深海棲艦たちも「この人が……」「遠くで見るのとは違いますねぇ」等と反応しており、少なくとも敵対するような雰囲気ではない。

 

「お前らに戻ってもらったのは、仕事を与えるためだ」

「――――――?」

「そうだ、仕事だ。姫様の癒しの時間を壊さないためにな」

 

 すると、姫を除く深海棲艦たちの顔が、真剣なものになった。空気が変わったことを察した大洗は、姫に声をかける。

 

「そうだ、姫ちゃん。お母さんと一緒に浜辺に行こっか?」

「何するの~?」

「何か落ちてないか、宝探しよ~。もしかしたら蟹さんも居るかもね~」

「蟹さん!? お母さん、早く行こう!」

「そんなに走ったら、転んじゃうわよ~」

 

 二人が浜辺へ向かうのを、ツ級たちは見送る。

 

「……な?」

「姫さま、凄く笑ってたわね~……」

「“あいつ等”に攻撃されてから、泣いてることが多かったのに……」

「だからこそ、私たちが守ってあげないといけないんですね?」

「そういう事だ。ヲ級。艦載機を飛ばして、空から警備してくれないか? カ級は水中から頼む」

「分かりました」

「任せてください」

「他の奴らは、島周辺を巡回。夕方になったら集合しよう」

『『『『了解!』』』』

 

 こうして、深海棲艦たちはそれぞれの持ち場へと向かっていったのだった。

 

 

 

 

 

 一方、大洗と姫は楽しく遊んでいた。

 

「お母さーん! 綺麗な瓶~!」

「あら、綺麗ね~」

「チャプチャプしてる~。ジュースかな~?」

「飲んだらお腹壊しちゃうから、飲まない方が良いわね~」

「あっ、何か光った!」

「あ、こら~! ポイ捨てしないの~!」

 

 好奇心旺盛なのか、色々な物を拾っては大洗に見せてあげる姫。見つけるとすぐに走って行ってしまうため、追いかける大洗は汗をかいていた。

 

(とても深海棲艦とは思えませんね……。本当に子供みたい)

 

 そう考えていると、浜辺へ誰かが歩いてくるのが見えた。チ級のようだ。

 

「楽しんでいるようだな」

「はい。とても楽しそう……。本当に娘みたく見えちゃいます」

「……そうか」

 

 チ級が微笑む。今まで見てきた深海棲艦は無表情だったので、大洗は少し驚いた。

 

「お母さーん! こっちに蟹さんいたー!」

「はーい! 今行きますよ~!」

「おーい! 私も混ぜてくれ~!」

 

 大洗とチ級は、姫のもとへ走って行った。

 

 

 

 

 

 その日の夜。姫は遊び疲れたのか眠ってしまった。自分の膝の上で眠る少女を、大洗は優しく撫でている。

 

「ふふ……。可愛い寝顔。遊び疲れちゃったのね~」

「それだけ嬉しかったって事だろ。……お、この焼き魚うめえな!」

「大洗さん、凄いです! 私が獲ってきた魚介類をこんなに美味しくできるなんて!」

「学園艦ですから、調味料とか道具とかも出せるんですよ~。それに、魚料理も得意ですしね~」

「羨ましいわ~」

 

 カ級やル級は大洗を誉め、ツ級コンビは美味そうに魚の塩焼きを食べている。ヲ級とリ級は貝のみそ汁を一口啜って、ほっこりとした笑顔でため息をついた。

 

「…………」

「どうした?」

「あの、聞きたいことがあるのですが、良いですか?」

「……あぁ。構わねえよ」

 

 静かになった。焚火の音が、やけに大きく聞こえた。大洗は、意を決して“「目の前の存在”に尋ねる。

 

「あなた達は……本当に深海棲艦なのですか?」

 




読んでいただき、ありがとうございました。

次回は説明回………の前に、また鎮守府サイドを書こうと思っています。救出作戦が発動され、再び学園艦娘が集合です。

それでは、次回もお楽しみに!

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