今回は鎮守府サイドです。それでは、どうぞ!
時間は、大洗が深海棲艦の住む島に辿り着くところまで遡る。
「先輩、お待たせしました!」
「前は招いた側だから、今度は招かれる側として来てやったわよ~」
「二人共、よく来てくれた!」
佐世保と呉の提督が、横須賀鎮守府に到着した。提督が抜けても大丈夫なのかと思われるかもしれないが、それぞれの地方に小さいながらも鎮守府が複数ある。それらの鎮守府が、抜けている分をカバーすることになっているのだ。
「早速、学園艦娘を招集しよう。今回は彼女たちを出撃させるからな」
「あ、それなら少しだけ済ませたいことがあるんだけど、良いかな~?」
「済ませたい事?」
「たぶん、他の学園艦ちゃんもビックリすると思うの」
呉提督の笑みを見て、横須賀提督は察した。これでも長い付き合いである。『何か悪戯めいた事』をするつもりなのだろう。
横須賀鎮守府の会議室。そこには三人の提督と七人の学園艦娘がいたのだが、少々騒がしかった。
「呉提督が何かをしたいという話でしたが……」
「おい黒森峰。お前何か隠してるだろ? さっきからニヤニヤしてるじゃないか」
「ふっ。何のことかな?」
「プラウダも笑ってるわね~。何か企んでるとか?」
「そ、そんな訳ないわよ?」
「隠しきれてないわね~」
学園艦娘たちの反応(特に黒森峰とプラウダ)を見て、横須賀提督は「呉で何かあったな」と思い、彼女へ話し掛ける。
「おい、そろそろ良いだろう? 何を隠してるんだ?」
「僕も気になります、呉先輩!」
「ふっふっふ~! 佐世保くんのそういう反応、嬉しいねぇ~。という訳で、出-ておーいで~!」
ドアへ向かって大声で呼ぶと、ゆっくりとドアが開かれた。そして、その姿を見た瞬間、黒森峰とプラウダを除く学園艦娘たちは、驚きのあまり目を見開いた。
「これは……予想外でしたわ」
「な、何と……!」
「嘘でしょ~!?」
「おいおいおいおい! これは驚いたな!」
「何てサプライズ……!」
そこにいたのは――――
「やぁ。随分と待たせてしまったようだ。『継続高校』も、この作戦に参加させてもらうよ」
何と、そこにいたのは、“あの戦い”の時に颯爽と現れ、そして颯爽と去って行った『継続高校』だったのだ。
「あ、新たな学園艦だと!?」
「継続高校って、確か戦車だけをプラウダさんが持っていたはずでは……?」
学園艦娘と同じく困惑している二人に、呉提督は「ドッキリ大成功」と言わんばかりに笑うと、理由を説明した。
「佐世保くんの言う通り、継続ちゃんの戦車だけを持っていたわ。でも、その戦車が“きっかけ”になったのよ」
「……そうか! 『学園艦娘が居ること』と『継続高校の戦車を持っていること』という条件を満たした事で、艦娘として顕現したのか!」
「横須賀も大正解~! 数が多い方が良いでしょ?」
「助かる……!」
「それにしても、随分と来るのが遅かったですな? 条件が既に満たされてるなら、いつでも来れたのでは?」
知波単の問いかけに、継続はダラダラと汗を流した。それをプラウダが、若干不機嫌そうに説明する。
「それが聞いて! 継続ったら、この世界でモデルとなった艦が居ないなら“前世の隊長”の姿を取れば良いって事を、忘れてたんですって!」
「……人の秘密を暴露するのは感心しないなぁ」
「遅くなったことにゴメンナサイでしょ!」
「……ごめんなさい」
彼女の姿は、前世ではカンテレをよく弾いていた隊長の姿を取っている。服装も継続高校の物だ。一瞬だけ言い訳をしようとした彼女だったが、流石に負い目を感じてるのか、プラウダの言葉に身を縮こませていた。
そんな継続の姿に苦笑しつつも、横須賀提督は作戦の説明を始めた。
「当時の大洗の遠征ルートから、敵が潜伏してると思われる島をいくつか候補に挙げた」
「海図に書かれてる、この赤丸がそうね?」
「あぁ。だが、この明らかに小さな島は除外する」
黒いペンでバツを付けた。
「その理由は何故でしょうか?」
「恐らくだが、敵は我々を誘き寄せるつもりだ。我々が救出へ向かったところを、eliteやflagshipの艦で叩く……と言ったところか」
「つまり、艦娘を迎え撃つんだったら、敵さんは資源を備蓄しとかないといけないのよ。だったら、出来るだけ面積の広い島が良いでしょ?」
「なるほど! だとすると、あとは距離の問題ですか」
「大洗は、気絶された状態で拉致された。目が覚めて抵抗でもされれば危険だから、敵は慎重に彼女を運ぶ必要がある。航続距離なども考えると……」
別の赤丸にも、バツを付けた。
「彼女が捕まってる可能性が高いのは……この島だ」
その島をグルグルと何重にも円を描く。
「今回の主目的は、大洗の救助だ。戦闘を避けるためにも、学園艦を出撃させる。敵は強力な個体が多いかもしれん。だが、君たちならば大丈夫だと俺は信じている」
「私たち学園艦娘は、その存在自体が“第二の大地”。何度か深海棲艦と遭遇することもありましたが、砲撃を受けても問題ありませんわ」
リーナの言葉に、他の艦娘も頷く。佐世保提督が横須賀提督に声をかける。
「では、行きましょう!」
「あぁ! 学園艦、総員出撃!」
横須賀提督の掛け声に、全員が敬礼で返すのだった。
そして、時間は夜に、場所は深海棲艦の島へと移る。
「おいおい、あたし達は見ての通り、正真正銘の深海棲艦だぜ?」
「今日、姫ちゃんや貴女達を見て気付きました。貴女達は、“普通の深海棲艦”とは違うような気がするんです」
大洗の言葉に、ツ級flagship以外の深海棲艦たちは、不安そうな顔になる。
「ど、どうします? まさか一日で気付かれるなんて思いませんでしたよ……」
「話してみても良いんじゃないか?」
「ですが、信じてくれるでしょうか……」
「話さないと何も始まらないと思うけど~……」
すると、ツ級は静かに言った。
「教えてやるよ。私たちの秘密を」
焚火は、まだパチパチと音を立てていた。
と言うことで、継続高校も参戦です。モデル艦が艦これ世界に居ないなら、隊長の姿で出せば良いと言うことに今さらながら気付きまして……。
それと、作戦の説明シーンは悩みました。本当はもっと綿密に作戦を立てるかもしれませんが……。
さて、いよいよ次回は『深海棲艦の秘密』です。どうぞ、お楽しみに。