それでは、どうぞ!
明朝。学園艦娘たちは、大洗を救出するために横須賀鎮守府から出撃した。遠征に使用するルートを通り、そのまま目標となる島へと接近するという、実に単純なルートである。しかし、本来ならば出現しない筈のflagshipが潜んでいる可能性もある。警戒しつつ、遭遇した場合はむやみに戦闘せずに速度を上げて前進、そのまま大洗救出を優先する。それが彼女たちの作戦だった。
しかし……
「おかしいですわね……。
「遠征のルートって、こんな物じゃないか?」
「そうではありません。私も、聖グロ殿や大洗殿と同じように、ここを通ったことがあります。何事もなく終わる時もあれば、襲撃を受ける時もありました」
「じゃあ、今日が襲撃のない日だとか?」
「それは無いわ~。これは、もしかしたら~……」
「敵戦力を、島付近へ集中させてる可能性あり、か……」
一行は、警戒をより一層強めて島へと向かう。
だが、その数時間前……。
起床した深海棲艦たちは、集まって話し合いをしていた。
「来ると思う~?」
「来るさ。あたしが攫った時、艦娘たちは大洗を守ろうとしていた。つまり彼女は、向こうにとって“大切な仲間”だ。取り返しに来るだろうよ」
「この島、艦娘たちの遠征ルートからそう遠くないですからね~」
「じゃあ、どうするんです? 姫様は大洗さんに懐いてますから、離れ離れにしたら悲しみますよ……」
「それは問題ない。ほれ」
カ級の問いに答えるように、ツ級が指をさすと、大洗と姫は仲良く朝食(どこから出したか不明だが、大洗のおにぎり)を食べながら、話をしている。
「お母さんのお友達が来るの?」
「そうよ~。お母さんにとって、大切な大切なお友達なの。姫ちゃんともお友達になれないか、話してみても良いかな?」
「……痛い事しない?」
「大丈夫! 痛い事されそうになったら、お母さんが守ってあげる!」
「……うん! 私、お友達たーっくさん作るんだ! お母さんの友達、楽しみだな~」
姫の頬にご飯粒が付いているのを大洗が取ってあげたり等、微笑ましい光景があった。
「……な?」
「え、あそこまで心を開くものなんですか!?」
「―――――――――――――」
「『よっぽど、大洗を信じている』、か……。そうだな。だったらよ、その『お友達』に誤解を与えるような状況にしたらマズいよな?」
「……あらかじめ“怒りの連中”を倒しておくってこと~?」
「そういう事だ。……仕方ないのさ。向こうは聞く耳持たずなんだからよ」
「……分かりました。駆逐艦はお任せください! 私が水中から魚雷で吹っ飛ばしてあげますよ!」
「頼むぜ、カ級。チ級も手伝ってやってくれ。ヲ級は偵察機を飛ばして、『お友達』の様子を逐次報告」
「「了解」」
「リ級とル級は、あたし達と島近海を警備。『お友達』が来たら武装解除して歓迎だ」
ツ級の言葉に、ル級が尋ねる。
「攻撃されたらどうするのかしら~?」
「……その時は、命を懸けて姫様と大洗を砲撃から守るぞ。逃げ足は鍛えられてるんだ。注意を引き付けるくらいは出来るだろうよ」
「……それほどまでの覚悟なのね~。了解よ」
「リ級も、了解です!」
「うっしゃ! 『歓迎作戦』の開始だぜ!」
『『『『おうっ!!』』』』
そして、視点は再び学園艦娘たちへ、時間は昼へと進む。
「おかしいわね……。だいぶ島に近づいてるのに、ここまでenemyが居ないなんて……」
「返って不気味さを感じるぞ……」
サンダースとアンツィオが訝しむ。
「先ほど、深海棲艦の偵察機と思しきものが接近しましたが、すぐに引き返していきました」
「島にギリギリまで引き付けて叩く、かしら?」
「敵の狙いが分からん……!」
そして、一行は島へと到着する。
「到着……っ! 右方向より深海棲艦!」
「っ! やはり罠か……!」
全員が防御の陣形を取ろうとすると、ツ級flagshipは大きく手を広げる。
「よぉーっ! 歓迎するぜぇ!」
『『『『…………は?』』』』
一行は、まさにポカーンという音が聞こえそうな、間の抜けた顔になった。
読んでいただき、ありがとうございました。
とうとう学園艦娘たちと遭遇しましたが、果たしてどうなるでしょうか?
それでは、次回もお楽しみに!