それでは、短めですが、どうぞ!
黒森峰も落ち着いたところで、大洗は事情を話した。そして、深海棲艦の秘密も打ち明けた。もちろん他の深海棲艦たちも、補足などを付け加えながら説明した。
「深海棲艦には、友好的な者も居る……」
「にわかには信じ難いですが……」
「こうして話してる間にも攻撃してこないところを見ると、大洗さんの言ってることは本当みたいね~」
横須賀鎮守府の三人を始め、一同はとりあえず納得してくれたようだ。
「それにしても、この子が“私たち”から生まれたとはね~……」
ヲ級の飛ばしている艦載機と追いかけっこをしている姫を見て、サンダースが感慨深そうに頷く。
「確かに、私たちは後継艦にあとを託したつもりだった。だが、恐らく無意識に、『消えたくない』と願っていたんだろうな」
「そんなボク達の願いが集まって、姫ちゃんは生まれたという事だね」
アンツィオと継続も、姫を微笑ましく見守っている。するとプラウダがあることに気付いた。
「つまり、私たちの妹かもしれないのよね?」
「そういう事になるかもしれないな。だとすると、何故彼女は大洗を『お母さん』と呼ぶか疑問になるが……」
「それに関しては、まだ分からないんですよ~……。“夢”に出てくるらしくて……」
「うーむ……。謎だ……」
唸っている黒森峰たちを見て、大洗は意を決したように、“本題”を打ち明ける。
「あ、あの!」
『『『『ん?』』』』
大洗は、あることを願い出た。それは『姫たち友好的な深海棲艦を、鎮守府に招けないか』という事だった。これには一同も驚愕し、すぐに賛成しかねた。
「そ、それは難しいですわ……。いくら大洗さんでも……」
「人間たちは、深海棲艦に対してもはや敵意と恐怖を持ってます……」
「私たちはOKでも、反対する人がいると思うわ~。提督も賛成してくれるかどうか……」
リーナ、知波単、フリーの三人が、難しいと答える。
「それだけじゃないぞ。大本営には、私たちのことを良く思ってない連中がいる」
「私たちがもし深海棲艦を招き入れたら……」
「向こうはボクたちを、“敵のスパイ”として扱うだろうね」
アンツィオ、サンダース、継続も難色を示した。
「大洗。私たちだけだったら、まだ良かったのよ。ただ、深海棲艦の秘密だって、まだ私たちしか知らない。それに、『敵には友好的な者がいます』って言って、簡単に信じる人間がいると思う?」
「うぅ……」
「もし反学園艦娘派の人間がちょっかいを出して来たら、それこそ、姫を傷つけるだけなんじゃないのか?」
プラウダと黒森峰も、悔しそうな顔をしながら大洗を諭す。彼女は悲しそうな目で、ツ級たちと遊んでいる姫を見る。
彼女はこのまま、ひっそりと過ごすしかないのだろうか。愛を知らないまま、他の深海棲艦たちと共に、“怒りの深海棲艦”と艦娘の攻撃に怯えながら、一生を過ごすしかないのだろうか……。
そんな時だった。上空でプロペラ機の音がした。その場にいた全員が空を見上げる。
「あれは……偵察機?」
「なんでこんな所に……。偵察機を飛ばすという話は聞いて無い……」
大洗やリーナたちが訝しむ中、サンダースは怪しい気配を察知して、無線傍受機を飛ばした。
段々と彼女の顔は怒りに染まり、最終的にはヘッドホンを投げ捨てた。
「Fu〇k you! 何考えてるのよ、大本営は!!」
突然発せられた汚い言葉に顔をしかめながらも、リーナが落ち着くように諭す。だが、それは無意味だった。
「落ち着きなさい。何を聞いたの?」
「あいつら、ここにいる深海棲艦を私たちごと爆撃するつもりよ!!」
とうとう大変な事態になってしまいました。彼女たちは一体どうなってしまうのか。
次回を、お待ちください。