さて今回のお話ですが……この小説の中ではトップクラスの鬱回だと思います! 評価が下がる覚悟で書きました! あと、特殊タグもそこそこ使っています!
場は騒然としていた。サンダースの言葉に、ツ級flagshipは慌てて尋ねる。
「お、おい、どういう事だよ!? 何で艦娘のあんた等が攻撃されなくちゃいけないんだ!?」
「大本営の人間の中には、『大洗が洗脳されてるのではないか』と疑っている人間も居たそうだ。恐らく、そいつの差し金だろう……!」
「陸軍の戦車を持ってるだけという理由で我々を排そうとする方みたいですが、このような方法を使ってくるとは……!」
黒森峰や知波単が怒りをあらわにするが、それをリーナが宥める。
「今はともかく、この島から離れましょう! 大急ぎで!」
そして、一行は最大船速で島から脱出した。「姫様を守るため」という理由で、ツ級たちもついて来ることになった。
島から脱出して数分後。大洗達の目の前に、空を埋め尽くさんばかりの戦闘機たちが飛来してきた。
「来たぞ!」
「凄い数だね……!」
爆撃機や雷撃機なども居り、物量で押しつぶそうとする様子がひしひしと伝わってくる。
すると、後ろからついて来ていたツ級たちが、突然前へと出始めた。
「お、おい! 何のつもりだ!?」
「悪いが、あんた等とはここでお別れだ。あたし達で、あの戦闘機共を惹き付ける」
「何を言ってるのよ! 私たちは普通の攻撃じゃビクともしない! あんた達が囮になる必要なんてないじゃない!」
アンツィオとプラウダが止めようとするが、ヲ級が首を横に振った。
「姫様は、戦う力を持っていません。だからあなた方が守る必要があるんです」
「まさかツ級殿、最初からそのつもりで……!」
「良いから早く行け! あたし達とは別ルートを取るんだ!!」
黒森峰たちは、歯を食い縛るほどの悔しさを感じた。そして……ツ級たちとは別のルートを通った。
だが姫は、涙を流しながら、引き止めようとした。
「嫌だ! 行かないでツ級! みんなぁ!」
「…………」
「姫様……」
「―――――――」
「……振り返るな。あたし達は姫様の無事を祈りながら、戦うんだ」
「……はい」
「……行くぞテメェ等ぁぁ!」
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
深海棲艦たちは、雄たけびを上げながら戦闘機群へと突っ込んでいった。
姫は、その様子を見てしまった。
「ぐあぁぁぁっ! ぎょ、魚雷なんかにやらせない……!」
カ級が、無数の雷撃機からの魚雷を受けた。学園艦に向かわないように自らが囮となって。だが、例えflagshipと言えど、大量の魚雷には身が保たず……轟沈した。
「カ級がやられました!」
「私の艦載機じゃ追い付かない……! 多すぎる!」
「魚雷がまだ大洗達の方に向かってる!」
「っ!」
「ル級!?」
カ級が犠牲になっても、なお残る魚雷。それをル級が盾になって食い止めた。だが、そこへ追い打ちをかけるように爆撃機による猛攻が襲う。
「う、ぐっ……。姫様、どうかご無事で……」
「ル級ぅぅぅぅ!!」
ル級の轟沈に泣き叫ぶチ級。だがすぐに涙を振り払い、対空戦闘を始める。
「絶対に守り抜くぞ! 姫様に傷をつけるな!」
「がぁっ、あぁっ!」
「ヲ級!」
「――――――!」
「ツ級さん!」
次々と、仲間が傷付いていく。
「ぐっ、うぅっ、カ級さん、ル級さん、今行きます……」
リ級が倒れる。
「艦載機、全滅……。はは、少しは減らせたかな……?」
ヲ級が炎に包まれる。
「う、ぐっ、おぉぉぉ! 姫様に近づくなぁぁ!」
チ級が空へと砲撃し、戦闘機が機銃でその体を撃ちぬく。
「――――――」
「あー……まったく。どんだけ居るんだよ、こいつ等……」
そしてツ級のコンビも……沈んだ。
「あ、あぁ、みんな……」
「姫ちゃん、危ない!」
その時だった。ツ級たちの対空砲火を受けても、なお生き残った爆撃機が、姫目掛けて爆弾を投下した。
「姫ちゃんっ!!」
「……え?」
大洗が、姫を庇った。その爆発の音は、やけに大きく響いた。
――――――何でみんな、私を虐めるの?
――――――私はただ、お友達になりたいだけなのに……
――――――寂しい、寂しいよ……
――――――お母さん……
――――――お母さん? 何でお母さんが攻撃されたの?
――――――何でツ級たちが消えちゃったの?
――――――あぁ、そうか……
――――――ア イ ツ 等 ガ 傷 ツ ケ タ ノ カ
――――――ユルセナイ……
――――――ユルセナイ!
――――――ユルセナイ!!
姫の様子がおかしくなった。全身から赤いオーラが立ち上り、少女から美女へと変貌していく。目からは血の涙のようなものが流れ、爪は鋭く尖り、八重歯は牙へと変わる。
「ッ! 駄目よ、姫ちゃん! 憎しみに飲まれちゃ駄目!」
「大洗さん、危ない!!」
その瞬間、赤いオーラは竜巻となって、姫を包み込んだ。彼女に近づこうとした大洗を、リーナが引き寄せる。
「アァァァァァァ!!!」
姫の周りには、大量の対空砲が装備されていた。さしずめ『対空棲姫』と言ったところか。
「っ! 風向きが悪いみたいだ……!」
「敵駆逐艦!? どこから現れたんだ!?」
「……そうか! 姫が憎しみに飲まれたことで、“怒りの深海棲艦”が生まれてしまったんだ!」
「最悪の展開ね……!」
彼女たちの周りには、暗雲が立ち込めていた……。
読んでいただき、ありがとうございました。
ツ級たちは轟沈、姫は憎しみで覚醒、敵も現れると言う最悪な展開になりました。
一体どうなるのか……。次回をお待ちください。